勇者様復活祭の夜明け。
早くに目が覚めたわたしは。
町をお散歩していました。
ちいさな石橋を渡り。
道にあった小石を跳ねて。
気ままに散策します。
昨日のお祭り。楽しかったです。
途中。
姿を見せた町長様にマキア様は小言をいったり。
お酒を楽しむダン様に。
それを羨むもぐもぐの勇者様だったり。
町の皆様にカルテ様は連れられて。
ゾル様は泣いたり喜んだり忙しそうでした。
ふふ。
勇者様。
お酒のみたくていっぱいもぐもぐしてました。
でも呑み込めなくて顔がショボくれて。
ふふふ。
リスのようで可愛かったです。
そんなことを考えていると。
小石が水路に落ちてしまいました。
なんと。
お散歩の相棒が。
坂道も階段も頑張って一緒に乗り越えてきたのに。
無念です。
辺りを見渡します。
あれ。ここどこでしょう。
ずいぶん歩いてしまいました。
鳥の声が朝を告げます。
朝日が射してきましたね。
戻らないと。
勘を頼りに歩いた道を戻ります。
見渡す町は祭の時と別に見えます。
日に照らされ始めた町は静かに朝の支度を始めます。
朝ごはんでしょうか。
いい香りがします。
少しずつ人が出てきましたね。
パン屋さんの前を横切ると。
声をかけられました。
「よぉ嬢ちゃん。
あんた勇者様のパーティーなんだろ。
ほら、これ持っていきな」
「わっありがとうございます」
「ちょっと少ねぇが、味は保証するぜ!」
パンを頂きました。
これは朝食にしましょうか。
まだ皆様は起きていないはず。
早く帰りましょう。
パンの仄かな良い香り。
なんだかお腹が減ってきました。
早く帰って。
勇者様をおこして。
そして皆様とパンを頂きましょう。
あ。帰り道。
聞けばよかった。
遠回りをしながらも。
無事帰りつくことが出来ました。
ほっと一安心です。
扉を開け。
中へ入ります。
広間にはマキア様がいらっしゃいました。
「おやエール?はやいですね。
お散歩にいってたんですか?」
「おはようございます。マキア様。
早くに目が覚めてしまったので。
少し歩いてました。
パン屋さんの旦那様にパンを頂きました。
朝ごはんにいかがでしょう」
今日の早起きさんはマキア様なのですね。
珍しいです。
いつもはゾル様やダン様が早起きさんです。
私はそのつぎに。
カルテ様はマキア様の寝相でおこされて。
マキア様は最後におきてきます。
マキア様にパンを渡します。
「これはッ!?
この町で美味しいと評判のパンですよっ
良い香りです…
そうですね朝ごはんを作りましょう。
エール手伝ってください」
「はい。マキア様」
マキア様と朝ごはんの支度をします。
マキア様は料理がとても上手です。
マキア様の料理を朝から食べれるなんて。
今日は運が良いです。
朝ごはんの匂いに釣られたのか。
カルテ様がおきてきました。
「ん~。いい匂いぃ。
ってマキア!?こんな朝早くどうした!
悪い夢でもみたのか!?
マキアが早起きだなんて珍しい!!
今日は槍でも振るのか!!!」
「ちょっと!朝からなんですかっ!
喧嘩売ってんですか!?
私だってたまには早起きして朝ごはんくらい作ります!
カルテさんの分作ってあげないですよ!?」
「あ、すまん!いや、珍しすぎてついな…!?」
もう!失礼しちゃいますねっとマキア様。
カルテ様がごめんってぇ~と謝っています。
背を向けて朝ごはんの支度を進めるマキア様。
舌をペッと出しています。
冗談のようですね。
マキア様。ほんとうにイタズラが好きですね。
でも可愛らしい人です。
「お!今日はマキアさんが飯作ってくれるんっすか!」
ゾル様がおきてきました。
それにダン様も。
「…カルテ。マキアになにを言ったんだ」
「ダン~。私が悪いんだぁ。
マキアが珍しく早起きだからびっくりして槍が振るとか言ってしまってぇ~」
「あちゃーカルテさん。
マキアさんの乙女心わかってないっすねぇ。
確かにマキアさんの早起きは?
槍が降ってくるのかって思うぐらい珍しいですけど。
黙っときゃ美味しい飯にありつけるんだからテキトーにおだてときゃ「ふーん?へー?」あっ」
「…バカめ」
あー。
賑やかな朝がきましたね。
「へえー!ゾルさんもそんなこと思っていたんですね!
そうですか!そんなに私が早起きなのは珍しいですか!
正直な感想ありがとうございますぅ!
お礼にこの激辛ソースを進呈しましょう!
大丈夫!カルテさんの分もありますよ!」
「なっ!ゾルお前!余計なことを!!」
「いや口が勝手に!そう!勝手に言っち待っただけでさ!!!
だからやめて!!やめてぇ!!
それ以上パンに塗らないで!!
見たことない色してるって!
絶対味わかんなくなるやつじゃん!」
「あらあら遠慮なんてなさらないで!
たっぷり塗ってあげますからねぇ!!」
「ぎゃー!」
わーわーと騒がしくなる広間。
激辛ソースをお二人のパンに嬉しそうに塗るマキア様。
勇者パーティーは朝から元気。
元気です。
そんなやり取りをしながら。
朝ごはんを完成させました。
出来上がった美味しそうなサンドイッチとサラダにスープ。
撃沈したお二人。
サンドイッチには激辛ソースで
『カルテさん♡』『ゾルさん♡』
とマキア様の似顔絵付きで描いてあります。
「ゾルぅ…私はこれ程自分の名前が長かったことに後悔したことはないぞぉ」
「俺とカルテさんの名前見比べて言ってますけど長いも短いもないですよ誤差ですよ誤差…
それよりも似顔絵の方が恐ろしいですよ。
俺のやつなんか槍に刺さってるんすけど。
俺っぽい絵がマキアさんに槍で刺されてるんすけど。
赤いソースが別の意味で捉えられそうなんすけど。
悪意ありますよね。
ヤッてますよね。これヤッてますよね。」
「うるさいですねぇ。
ちょっとした遊び心ですよ。
エール。
勇者さまをおこしてきてください」
「はい。マキア様」
項垂れるお二人を背に。
勇者様をおこしに。
勇者様のお部屋へ向かいます。
階段をのぼり。
そっと扉を開け。
中に入ります。
カーテンの隙間から朝日が。
微かに鳥のさえずりが聞こえます。
勇者様。すやすやでしょうか?
静かです。
「…」
広間とは違う静けさに。
全身の神経を逆撫でられた感じがしました。
静かすぎです。
ちょっと怖いです。
駆け足で勇者様に近寄ります。
喉に手を当てます。
ほっ。息をしていますね。
鼓動もあります。
安心しました。
はやく勇者様をおこしましょう。
「勇者様。勇者様。
おはようございます。朝ですよ」
「…おはよう」
パチッと目を開きました。
あれ?またオレ寝てた?あれ?
勇者様また混乱してますね。
寝ぼけているということでしょうか。
案外。勇者様は朝に弱いのかもしれません。
勇者様にも弱いところがあるのですね。
「今日はマキア様が朝ごはんを作ってくれました。
この町で美味しいと評判のパン屋さんのパンですよ。
早朝お散歩してるとき。
パン屋さんの旦那様に頂いたのです。
朝ごはんが冷めるまえにはやくいきましょう」
寝ぼけている勇者様の手を引き広間へと行きます。
うん。と手を引かれる勇者様。
ふふふ。
これは見事なエスコート。
従者として。癒者として。
なかなかいい仕事が出来てる気がします。
むふふ。
「オレ寝て…?寝たっけ?いつ?
昨日…ってうわっ!!!なにごと!!??」
「…あ。勇者サマ。お目覚めデスカ」
「…勇者…きてしまったか、この時が…」
「えっ!?えっ!?なんでなにが!!?
どうしてリーダーと傭兵こんな朝から絶望してんの!!!??」
「勇者さま?気になさらないで?
お二人は私の作った朝ごはんがたのしみでた~のしみで。
…ねぇ?」
「「ハイ。タノシミデ、マチキレマセンデシタ」」
「ぷふふっ…ふぅ。
勇者さま?朝ごはんを用意しました。
はやく食べましょう?ほらダンさんも」
「…ああ。いただこう」
「う、うん」
席について朝ごはんをいただきます。
美味しいです。
サンドイッチ。
美味しいです。
スープ。
そしてサラダ。
には赤いソースがかかっています。
この赤さは…
あれ。
あれ。
もしかして。
激辛ソース?
私も心のなかで。
マキア様が早起きなのは珍しい。
と思ってたことばれてしまったのでしょうか。
一気に冷や汗が。
いえ。いえ。大丈夫。
口には出していないはず。
いくらパーティーの皆様に心を読まれやすいからってそんな…
ちらりとマキア様をみます。
マキア様は勇者様にサンドイッチを食べさせています。
食べさせると言うよりも。
隙をみて口に突っ込んでいると言った方が正解ですね。
ゾル様とカルテ様はスープをゆっくりゆっくりのんでいます。
それを女神様のような微笑みで横目で見るマキア様。
ああ。マキア様の微笑みが黒いものに見えてきました。
朝のあの時から見透かされていたでしょうか。
おお。お許しを。
サラダを前に硬直していると。
ダン様がサラダを食べようとしているのが見えます。
あ!見るのですエール!
ダン様も同じソースが使われています!
そしていまダン様がサラダを!
「……うまい」
食べた…!この反応は辛くない?
わからないです。
ダン様黙々食べるので判りづらいです。
いやでも普通のソースです。
きっと美味しいソースです。
意を決し。
ぱくり。
もぐもぐ
おいしい。
わあ。おいしいです。
少し辛みのある味がします。
でもとても美味しいです。
なんだ。
やっぱりマキア様はイタズラ好きですね。
そんなに辛くないのに激辛だなんて。
案外ゾル様とカルテ様も。
美味しくたべられるんじゃないでしょうか。
そう思ってゾル様とカルテ様を見ました。
ちょうどサンドイッチを食べるところみたいです。
お二人は目を見開き。
ぐわっとサンドイッチに食いつきました。
「~~~ッ!」
「~~ッ!ウ"ッ!!!」
あ。辛いみたいですね。
悶えてます。
口直しをしようにも。
お二人ともスープもサラダもありません。
水を飲もうにも取りに動けないみたいです。
あれ。そしたらこのサラダのソースはなんでしょう?
赤いのは同じなのに味が違うだなんて…
「エールどうしましたか?サラダ辛かったです?」
「いえ。サラダはとても美味しいです。
ただ赤いソースがなんなのかとおもって」
「ああ。これですか。
トマトですよ。辛みは激辛ソースです」
「やはり激辛ソースが…ッ!」
「使いようですよエール。
本来はこうやって薄めて使うのです」
「なるほど」
「あのお二人には薄めずにパンに塗りましたが。
ギリギリ食べれる範囲です。癒しちゃダメですよ?」
「…はい」
「………うまい」
「むが…もが……もが……もが」
「~~~ッ!カッ!!ウッ!!」
「~~~~ウッ!!!」
辛さに耐えながら食べ進めるゾル様とカルテ様。
満足そうにそれを見るマキア様。
黙々と食べるダン様。
マキア様にサンドイッチを口に突っ込まれ。
もぐもぐしている勇者様。
朝の穏やかな時間。
あとになって。
ゾル様とカルテ様に激辛ソースサンドイッチの感想を聞きました。
「美味いけど辛かったな!美味いけど!」
「いやー辛いけど旨かったですよ?
ギリギリ食える辛さでしかもおいしいのがまた…
ほんとマキアさんの飯は美味いのにアノ性格がなぁ~意地悪だよな~」
「あらあら?気に入って頂けたなんて嬉しいですねぇ?」
「アッ」
勇者 聖女にサンドイッチを突っ込
まれた 頑張ってもぐもぐ中
癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん
聖女に心を読まれたと思って
ビクビクした
普通のサラダだった
傭兵 ゾル 苦労人ニキ
うっかり口を滑らした人
聖女に背後から槍で刺されそうで
ちょっとビビってる
弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
口を滑らした人
激辛ソースで口が痛い
戦士 ダン 寡黙キャラな筋肉ムキムッキマン
実は激辛ソース入りのサンドイッチ
だったけど美味しく食べた
聖女 マキア あまり聖女しない聖女
料理がお上手 イタズラで戦士の
サンドイッチに激辛ソースをいれ
たけど美味しく食べられた