勇者が病んだ!   作:氷華枦

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勇者様はアル中?

 

 

 

ここはわたしたち勇者一行が利用している酒場です。

 

泣きついてきた勇者様のため。

わたしの有言実行のため。

件の話を聞くために。

パーティーの皆様に会いに来ました。

 

 

 

「よぉ!エール!どうしたそんな顔をして?」

 

 

 

そう話しかけられました。

勇者パーティーのリーダーのカルテ様です。

弓を扱いなんでも射抜くことができます。

すばらしい腕前をもつお方です。

 

 

 

「先ほど。

勇者様がわたしに相談してきたのです」

 

 

 

わたしは席に着き。

勇者様が。

勇者様をやめたい!お酒がないと死んじゃう!等。

相談してきたことを伝えました。

カルテ様は頭を押さえます。

 

 

 

「だあー!やっぱりかぁー!勇者~!」

 

「…気付くのが遅かったんだ。

…まさか本当に毎晩呑んでいたとは」

 

「勇者さま。

これまでの奇怪な行動は、お酒で脳がやられていたからなのですね」

 

 

 

カルテ様のやっぱりの言葉に。

戦士のダン様。

聖女のマキア様が。

各々答えました。

 

やっぱり?

やっぱりということは。

パーティーの皆様もこれまで知らなかったのでしょうか?

確信がなかったように感じられます。

 

カルテ様は続けます。

 

 

 

「旅を始めてから3年はたっているんだろう?」

 

「…まさか3年間かかさず呑みつづけていたのか?」

 

「勇者さまは立派なアル中ってコトッ…!?」

 

「アル中勇者ッ…!?」

 

「やめろ不敬だぞ………事実か」

 

「おいたわしや勇者さま…」

 

「むぅ…おいゾル!

お前は旅の初めからついてきてたよな!

どうして今さら勇者のアル中に気づいたんだ!?」

 

 

 

カルテ様はゾル様へ問いかけました。

ゾル様は件の傭兵。

勇者様からお酒を没収したお方です。

 

 

 

「…勇者サマが旅を始めた頃。

初めて大物の魔獣を倒したとき、村で宴が開かれたんです」

 

 

 

ゾル様はゆっくりと話し始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

村の宴です。もちろんお酒もありました。

 

勇者サマも最初は村の人のすすめる分だけ呑んでたんです。

 

でも一人一人からお酒をもらうモンだから、結構な量になって。

 

勇者サマはヒトがいいから断らないだけだろうなーって。

 

酔いつぶれたらすぐ俺が回収しよう、そうしようって様子を見てたんです。

 

でも勇者サマ。

 

村人全員からお酒をもらっても、ケロッとしてて。

 

心配になって聞いてみたら。

 

 

 

 オレ!勇者だからさ!毒とかすぐ回復されるじゃん?

 

 だからアルコール!お酒も毒としてすぐ解毒されちゃうみたいでさ!

 

 こんな量ぜんぜんだよ!勇者サイキョー!だからね!

 

 

 

って。

 

確かに宴の最中。勇者サマがお酒をのむたんびに、勇者サマの身体はチカチカ光ってた。

 

解毒の時の発光とおんなじだってわかったから、勇者ってのはそうゆうモンなのかって納得して。

 

だからお酒に関して勇者サマは失敗しないなー、何て思ってたんです。

 

 

 

でも。

 

でもですね。

 

 

 

野宿するとき勇者サマ。

 

絶対最後まで1人でおきてるじゃないですか?

 

見張り当番作ってからもずっとおきてるし、当番のヤツはいつの間にか寝てるってのが常で。

 

当番の交代の時間には必ず勇者サマにおこされるし。

 

なんかおかしいと思って、野宿のとき寝たふりして様子をみてみたんです。

 

その日の見張り当番は丁度エールで。

 

俺は見ちまったんです。

 

エールが一瞬のうちに背後から、勇者様に魔法かけられて眠らされるところを。

 

そのあと勇者サマが一晩中ずっとお酒を飲んでたところを。

 

眠らされたエールはそん時のリーダーに

 

見張りなのに眠るとは何事だー!って怒られてましたっけね。

 

あれは可哀想でしたね。

 

でもそん時は自分の目を信じられなくて、なんも言えんかったんです。

 

すまんエール。

 

他の日も様子をみました。

 

そしたら毎夜毎夜。

 

見張り当番のヤツの背後にササッと張り付いて。

 

魔法をかけて眠らせてひとりでお酒呑んでたんです。

 

毎夜毎夜かかさずに。

 

夜、焚き火ってきれいですよね。

 

パチパチって音がなって、炎が揺らいでるのが。

 

なんか知らんですけど、いいな~風情だなぁ~てさ。

 

でもこれまで焚き火で明暗してるんだな~って思ってたのは。

 

ぜんぶひとりでお酒のんでる勇者サマの、解毒の光だったんすよ。

 

 

 

 

 

 

 

「怖い怖い怖い怖い!」

 

「ギャー!!怖い話をしないで下さい!!!」

 

「イヤだ…そんな勇者イヤだ…」

 

 

 

パーティーの皆様は怖がっていました。

わたしも怖いです。

 

勇者様のアル中がそこまでひどいなんて。

野宿の時、見張り当番を最後までできなかったのは勇者様の仕業だったなんて。

 

おのれ勇者様ゆるすまじ。

 

 

 

「いやでも!そこじゃないんです!

俺が勇者サマのお酒を没収した理由は!」

 

 

 

ゾル様は続けます。

 

 

 

「朝まで呑んでた勇者サマ。でもソレはいいんすよ!」

 

「良くないだろ」

 

「良くないです」

 

「…良くはないな」

 

「聞いてくださいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに旅の初めから勇者サマがこんなにお酒呑みまくってるのは良くないよなって思ったんです俺も!

 

でもいかんせん実害がなかった!

 

旅の進行も悪くはないし。

 

むしろ勇者サマの旅はかつてないほど速かったし、誰も為し遂げなかったことを成し遂げてきた。

 

だから勇者サマのお酒呑みは問題はない。

 

目を瞑ろうと思ってたんです!

 

でも最近になって、勇者サマは食べる量が減ってるのがきになって。

 

元々そんなに食べる人じゃなかったから。

 

お酒呑んでる時にツマミ食いすぎてるのかなとか思って。

 

でも違ったんです。

 

食ってないんですよ。

 

ツマミもなにも。

 

なのに勇者サマは1日中ほぼなにも食わない。

 

それに勇者サマ寝てないんだ。

 

ここ1ヶ月張ってみたら一度も寝てなかった。

 

野宿のときも、村にいるときも。

 

一度も寝ているとこを見てないんです!

 

 

勇者サマの頭は完全にお酒に支配されてる。

 

お酒の呑みすぎで食べることも寝ることも麻痺してる。

 

勇者サマはもう勇者サマじゃない。

 

酒呑みマシーンです。

 

 

 

 

 

「ギャー!!!イヤー!!!

やめてください!やめてください!

怖い話はやめてください!」

 

「うっわ!?マキア!お前の声でビックリしただろ!!

しかしなんでそんなアル中になってんだ勇者!怖い!!」

 

「知りたくなかった…知りたくなかった…」

 

 

 

みなさま勇者様のお酒事情に恐怖していました。

わたしも恐いです。

 

 

 

「でも、そんな酒呑みマシーンでも勇者サマは勇者サマ!

勇者サマには旅を続け、魔王を倒し、世界を救ってもらわないと。

だからせめて最低限の睡眠と食事は取ってもらおうとおもって色々やってみたんす」

 

「…ど、どうだった!」

 

「…ダメでした。

 

食事を一緒に取ろうとしても

 

オレ!いま胃になにかいれたら吐く!

 

とかいって逃げられて。

 

食料を差し入れても謎空間にしまわれて。

 

お願いしまくって無理矢理飲ませた睡眠薬はすぐ解毒されるし、魔法も呪いも効かなくて。

 

夜、勇者様を寝かしつけようと思っても、おやすみ!!!ってどっかいっちゃうし。

 

宿屋の勇者サマの部屋には入れてもらえないし。

 

野宿で見張り当番の時は勇者サマに眠らされるし。

 

見張りじゃない時に身代わり用意して寝たふりして。

 

勇者サマがお酒を呑み始めたらでてって説得して寝てもらおうっておもって、やってみたこともありました。

 

そしたら勇者サマ。

 

自分が魔法効かないからって、高度な広範囲の魔法を使ってさ。

 

勇者サマに見つからないように遠くからみてたのに、目覚めたら魔獣にかこまれてた。

 

勇者サマには避けられて距離をとられるし。

 

勇者サマの酒呑みは悪化する一方だし。

 

お酒は強くなるし。量も増えるし。

 

ひどいヤツは、お酒をのまないと手が震えるってきいたことあるでしょう?

 

勇者サマの手が震えてるの。

 

みちゃったんですよ。

 

だからこれ以上悪化する前に、強行手段をとるしかない

 

勇者サマにお酒をこれ以上呑ませちゃいけないって

 

今日。勇者サマのお酒を没収したんです…」

 

「ゾル…お前、ひとりで…っ…そんなことがぁッ!

ぉおまえぇ~!がんばってたんだなあぁ!!!」

 

 

 

ゾル様。裏でそんなことを…

勇者様のため。勇者様と日々戦っていたのですね。

ゾル様の献身に報いがありますように…。

 

しかし。

 

 

 

「あの。ゾル様。

勇者様が寝ていないとおっしゃられていましたが。

勇者様は先ほどわたしに相談された際。

泣きつかれて眠りについていましたよ。

わたしが寝床へお運びしました。」

 

「えっ?勇者サマが泣いっ!?寝っ!!!!?」

 

 

 

「わたしに

お酒を没収されたー!お酒ないと死んじゃうううう!

と泣いて。

すやすやと寝ていました」

 

「え、えっ?泣いたの?勇者サマが?寝たの?勇者サマが???」

 

「はい」

 

「えっ…えぇぇ…」

 

 

 




勇者     呑んだくれ?アル中?
       酒呑みマシーン?
       3年ぶりの睡眠中???

癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん

傭兵 ゾル  勇者のお酒を没収した人
       勇者に食事と睡眠をちゃんと
       とってほしい

弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
       頼れる姉御 涙脆い一面も?

戦士 ダン  筋肉ムキムキマン
       勇者の呑みの日々に引いた

聖女 マキア あまり聖女しない聖女
       オーバーリアクションが好き
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