勇者が病んだ!   作:氷華枦

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癒者は思い出した。

 

 

 

ああ。

ああ。

こんなにも。

こんなにも嬉しいなんて想像もつかなくて。

記された文字がこんなに嬉しいなんて。

 

 

 

「おーい…エッチャン…?」

 

 

 

視界にいれて。

読んで。

認識して。

反芻して。

 

記された場所がたとえ。

たとえ下着であろうとも。

 

嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい…!

な、なんだかニヤニヤとしてしまいそう。

 

 

 

「エッチャン…?わ、笑ってるの?

と、と、とっても可愛いと思うわその笑顔…!

でもでもでもね?

下着を握りしめてする表情じゃないと思うの!

とっても可愛いけどね!?

自分のでも下着を握りしめて笑うのは変だと思うの!!

端的に言えば変態だと思うのアタシ!!!」

 

 

 

ああ。

どうしましょう。

どうしましょう。

ニヤニヤがとまりません。

高揚と動悸がとまりません。

 

アンナ様の声が聞こえるのに。

意識はこの文字ばかりで。

 

えへへ。えへへへ。

 

 

 

「うぅ…カイトぉ…!

エッチャンが変態になっちゃったー!」

 

 

 

アンナ様にも伝えたいです。

ぜひ伝えたい。

この嬉しさを。

この気持ちを。

この文字を。

 

そうです。アンナ様に伝えなければ。

聞いてくださいアンナ様。

見て下さいアンナ様。

 

 

 

「エッチャン!?

ど、どうしてわたしに寄ってくるの…!?

胸に抱えた下着はなんなのどうしてなの…!?

 

こ、来ないで欲しいわ!

怖い怖い怖いわ!

え?え?どうすればいいの??

アタシどうすればいいのぉ!!?」

 

 

 

泣き叫ぶアンナ様。

どうして泣いているのでしょう。

あんなに泣いたあとなのに。

 

それになんだか怯えているような。

なにか怖いことがあったのでしょうか?

 

歩みを止め。

アンナ様に声をかけます。

 

 

 

「アンナ様…?」

 

「エッチャン…分かったわ…

…アタシ受け入れるわ!」

 

 

 

受け入れる…?

 

 

 

「エッチャンが下着好きでも!変態でも!

アタシ受け入れるわ!お友達だもの!」

 

 

 

下着好き!?

変態!?

 

 

 

「でも許して!

アタシはエッチャンと同じ道は行けないわ!

下着好きならともかく自分の下着を抱き締めてニヤニヤするのはアタシにはハードルが高すぎるの!せめて5年は時間が欲しいの!」

 

「ア、アンナ様ッ!

違います!違うのです!

コレ!コレを見て欲しかっただけなのです!」

 

 

 

違うのです!

ニヤニヤしてましたが違うのです!

下着ではなく文字!

文字を見ていたのです!

変態ではないのです!

 

 

 

「エッチャン本当にごめんね!?

アタシまだエッチャンほど変態じゃないの!!

友達の下着で興奮できる変態になれてないの!!

いつかきっと追い付くから!!!

絶対追い付くから!!!

だから今は見逃して!!!」

 

「あ、アンナ様!話を…ッ!」

 

「は、話!??下着の!??

し、下着の話なんてそんな!!!

は、は、恥ずかしいじゃない!!!

そそそれが良いのね!!?

それが変態なのね!!?そうなのね!?

す、少し分かってきたわ!!!」

 

ちが!ちがうんです!

アンナ様!

アンナ様ぁ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もー!!!

ビックリしたじゃない!!!

怖かったじゃない!!!

 

無言で!ニヤニヤで!

下着をだきしめてるんだもの!!!

変態だと思っちゃったわ!」

 

「すみませんでした…」

 

「アタシも勘違いして悪かったけど!

それでも!

名前を見つけたからって下着を抱き締めてニヤニヤしたらダメよ!エッチャン!

変態になっちゃうんだから!」

 

「申し訳ありません…」

 

 

 

アンナ様に変態と言われたあの後。

なんとか誤解を解くことが出来ました。

 

下着の文字を見せようと。

アンナ様に寄っては逃げられ。

話しかければ誤解を深まらせ。

それでもなんとか。

なんとか誤解を解けました。

 

 

 

「それで?エッチャンの名前はなんだったの?」

 

 

 

アンナ様はわたしに尋ねます。

わたしの名前。

下着に記されていたわたしの名前。

やっと名乗ることができます。

 

 

 

「わたしの名前はえっちゃんです。」

 

「そう!やっぱりカイトの名前のが合ってたね!」

 

「いえ。アンナ様。

エッチャンではなくえっちゃんだったのです。」

 

「え?」

 

 

 

え。

 

 

 

「…エッチャンの名前はエッチャンだったのよね?」

 

「いえ。わたしの名前はエッチャンではなくえっちゃんです。」

 

「???

…エッチャン?」

 

「エッチャンではなく。えっちゃんです。」

 

 

 

あ、あれ??

 

 

 

「エッチャンはエッチャンですが。

えっちゃんはえっちゃんなので。

こう。…こう。

カタイ感じのエッチャンではなく。

やわらかな感じのえっちゃんがわたしの名前です。」

 

「…あ、アタシ。

エッチャンの言ってることが分からないわ…?」

 

 

 

そ。そんな。

伝わらない…?

どうして…ッ!?

 

 

 

「えっ」「エッ」「ちゃ」「チャ」「ん」「ン」

 

「えっちゃん。」

 

「エッチャン」

 

 

 

違う!違うのです!

エッチャンではなく!

えっちゃん!

 

えっちゃんです!

 

どうして!

どうして伝わらないのですか!

 

 

 

「ご、ごめんね?エッチャン?

そんなに落ち込まないで?」

 

「いえアンナ様。落ち込んでないです。」

 

「そ、そう?」

 

 

アンナ様はわたしを宥めながらそう聞きました。

落ち込んでないです。

凹んでないです。

ただちょっと。

なんというか。

上手く伝えられなかったのが。

堪えたというか…。

 

 

 

「んん。ん~!

あ!ほか!他にも!

名前と一緒になにか思い出したんじゃない?

うんうん!あるのよたまに!

一緒に思い出すことあるし!

ほら!なにかない?思い出してない?」

 

 

 

一緒に思い出す?

名前と一緒に思い出したこと。

思い出したこと。

 

 

 

「勇者様」

 

 

 

勇者様。

勇者様がえっちゃんと呼んでくれました。

 

 

 

「ユーシャ様?」

 

 

 

勇者様がえっちゃんと呼んでくれたのです。

名付けてくれたのです。

 

 

 

「勇者様です。」

 

「…ッ」

 

 

 

「わたしは勇者様と。

 

勇者様と2人で旅をしていたのでした。」

 

 

 

 






えっちゃん ユシャ・ノエールでも
      エッチャンでもねぇ!
      我が名はえっちゃん!
      勇者と2人で旅をしていた?

アンナ   黒髪ツインテール 泣き虫
      華奢な体にあわず力がある
      癒者を変態だと勘違いした人
      まだ少し疑ってる
      変態になるには5年いる
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