勇者が病んだ!   作:氷華枦

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勇者様は禁酒?

 

 

 

勇者様のお酒好きがパーティーに知れわたり早数刻。

わたしは苦悶していました。

 

 

 

「勇者サマが寝てくれたー!!

うわーん!よかったぁあ!」

 

「ゾル!ゾル!おまえは泣いていい!

おまえの行動は間違っちゃいないよぉ!」

 

「カルテさん!カルテさんまで泣いてしまっては収拾つかないでしょうっ!ふざけろしぃ!」

 

「信じない…勇者がアル中だなんて俺は信じない…」

 

 

 

勇者様はすやすや眠っております。とわたしが発言したあと。

パーティーの皆様は勇者様のもとへいきました。

 

勇者様の寝顔を誰も見たことがなかったようなのです。

物珍しさや安否確認をかねて。

勇者様の眠る寝床へ。

 

結果。

 

ゾル様は勇者様の寝顔を見て感極まり号泣。

カルテ様はそれを見てもらい泣き。

ダン様はまだアル中勇者様をいまだ受け入れられず困惑。

マキア様は泣いたゾル様とカルテ様にあたふたしてました。

 

そうして勇者様の寝顔を確認したあと。

パーティーの皆様は、やはり酒が全ての元凶であった。

と結論付け。

件の酒をなきものにするため腹にしまうことに。

 

話し合いどころではありませんでした。

わたしは流れに流されて。

どういう理由か一緒に乾杯してしまいました。

 

 

 

「勇者が寝た記念だー!飲み干せー!!!」

 

「勇者サマが寝てる…寝てくれた…っ!

うぅ…俺、よかった!

酒没収してよかったー!

でも勇者サマに嫌われたー!!うわーん!!!」

 

「ゾルさん泣くのか喜ぶのか嘆くのかどれかにしてください!

みたことないくらい面白い顔になってます!ぷぶォッ!」

 

「マキアよ。お前の顔も聖女とはよべない顔をしているぞ…」

 

「なー!失敬な!

ダンさんだって!さっきまで狼狽えて変な顔してたじゃないですか!

寡黙キャラつくったって勇者さまがいる限りそんなの貫けないですからね!ぷぷー!」

 

「むぅっ…!マキア!

ダンは寡黙キャラを作ってるわけじゃない!!

素で寡黙なの!!!イケオジなのっ!!!」

 

「勇者サマぁ!俺勇者サマがこのままお酒に溺れて死んじまうのかとおもってぇ!

寝てほしかっただけなんだー!!!うわーん!!!

でも寝たー!お酒没収しちまったー!

嫌われたー!!でも悔いはないよぉ!!!」

 

 

 

あぁカオスです。

お酒でここまで皆様テンションがあがるだなんて。

もうお話ししたくともできません。

 

勇者様のお酒。

なんと強いお酒なのでしょう。

呑む前からわかる酔いの味。

 

皆様ガブガブ呑みますので。

匂いはそこらじゅうに蔓延しています。

 

匂いに味に。

杯を飲み干せば。

皆様と一緒に面白おかしくなってしまうのは明白です。

 

ですがせっかくです。

せっかくなので。

 

一口ごくり。

 

 

あぁ…アルコールぅの味ぃ…

 

 

勇者様。勇者様。

勇者様のお酒美味しいです。

深いといわれる苦味と旨み。

喉が焼かれる感覚がなんともイイ。

内側から爆発したときみたいに身体が一気に熱くなりました。

 

 

ぐるり

 

 

てか。わたし。勇者様のお酒取り返せませんでしたね。

なんなら呑んでますね。わたし。無念。

 

 

ぐるりぐるり

 

 

いやまってください。

勇者様のお酒は取り返せたのでは?

少ない量ですが。このわたしの身体にお酒をとりこみました。

勇者様の分は取り返したといえませんこともありませんよね。

 

よし。有言実行でふ。

勇者様!わたひ、やりまひた!

あんしんひておねむりくらはい!

 

 

 

「うわーん!!!勇者サマぁ!!!

ありがとなぁぁあ!!!エールぅううう!!!」

 

「わたひやりまひた!ゆうひゃはま!」

 

「ゾルおまえぇ…!いけすかねぇ奴だとおもってたけどぉ!

勇者大好きかよぉ!!わたしも大好きだぁああ!!

そんなおまえも好きだぁあああ!!!

勇者ねてくれてよかったなぁあ!!!」

 

「カルテさん!うるさいですよ!しずかにしてくらさい!

ゾルさんもいいっかげん!エールを離してくらさい!

んぅ!この酔っぱりゃい!!

ダンさんなんとかいってくらさい!!」

 

「…こんな呑んだくれパーティー…いやだ」

 

 

 

 

 

勇者様のお酒はパーティーの皆様を酔わせに酔わせ。

酔いは夜を更けさせます。

そして朝がきました。

 

頭がガンガンと痛み。

目が覚めました。

痛いです。頭が。

頭を斧で叩かれているようです。

 

えと。あれ?

昨日パーティーの皆様に。

お酒が。勇者様はアル中で…?

 

 

 

「おきたか…」

 

「おはようございます。ダン様。

他の皆様は…」

 

「まだ寝ている。…ひどい有り様だ」

 

 

 

辺りを見ると皆様、死屍累々といったことばが似合う様相で寝転んでいました。

 

 

 

「んん…勇者サマ…いつになったら…寝てくれ…寝てくれフガッ」

 

「ゆうしゃー…おまえ…ねがお…ふふっ」

 

「ぞるさん…ゆうしゃさまの…ねがお…ぐがー」

 

 

 

あぁこれは酷い。

カルテ様のパーティーリーダーの格は消え失せ。

頼りになるクール兄貴だったゾル様はうなだれ。

マキア様は聖女の肩書きをどこかに投げ飛ばしてしまったみたいです。寝相がひどいです。

 

 

 

「…あぁ…昨日の朝までは、どこに出しても恥ずかしくないパーティーだったのに」

 

 

 

あぁ、マキア様。

寝返りの度にゾル様にキックしています。

やめてあげてください。

 

 

 

「酒浸りな勇者…パーティーに俺は…俺は…」

 

 

 

ダン様。ちょっと涙目です。

ダン様はとある場所で高名な戦士でした。

魔王討伐のため勇者様を見込んでパーティーに入られました。

寡黙な方で。強くたくましく。筋肉ムキムキです。

ですがお酒が残っているのでしょうか。

なんだかよわよわです。

 

 

 

「エール。…すまないが癒やしてもらえないか。

…昨日の酒がまだ消えてないみたいだ」

 

「承知いたしました」

 

 

 

ダン様は昨日のお酒で。

わたしと同じく頭が痛いようです。

頭を押さえています。

 

癒やしてほしいと言われたならば癒やしましょう。

わたしは癒者。癒す者。

お酒の酔い程度ならちょちょいのちょいです。

 

いざダン様の元へ向かいます。

向かいます。

向かいます。

あれ?

 

 

 

「…大丈夫か?エール」

 

 

 

おかしいです。

真っ直ぐ歩くだけなのに。

右へ左へ身体が吸い寄せられていきます。

 

 

 

「…おまえは宴の時もあまり呑まない方だったな。

昨日のは強すぎたんだろう。

自分を癒してからでいいから、俺も頼む」

 

「すみません。ダン様。そうさせていただきます」

 

 

 

ダン様のいわれた通り。自分を癒します。

 

お酒とは恐ろしいものですね。

まさか一晩明けてもこんなに酔いが残るなんて。

勇者様はこんなに強いお酒を常飲していらしたのですね。

さすがアル中勇者様。

 

癒やし終わりました。

 

 

 

「お待たせしました。ダン様」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 

ダン様にかけより。癒しを施します。

 

 

 

「…このパーティーに酒はしばらく不要だな」

 

「…そうですね」

 

 

 

すっきり目が覚めました。

両の眼もパチパチです。

手持ちぶさたになったので寝ている皆様に癒しを施しました。

 

ほどなくして皆様は起床します。

 

 

 

「うぅ、昨日の記憶が…思い出せない…」

 

「ゾルぅうう…おまえ!お前ぇええ!!いい奴!!頑張ったなぁあ!!勇者のためにぃいい!!!」

 

「カルテさん!いい加減にしてくださいッ!!その下りは40回目です!」

 

 

 

ゾル様はお酒の席のことを忘れてしまっているようです。

カルテ様はゾル様をみて号泣しています。

 

昨日のギル様の話を聞いて感銘。

寝顔をみたときのゾル様の涙で涙腺は決壊。

寝ておきて。まだまだ泣いています。

そしてそれにマキア様はキレてます。

 

 

 

「皆様。おはようございます。

酔いの残りや痛みはありませんか?」

 

 

 

てか。わたし。勇者様のお酒取り返せませんでしたね。無念。

 

 

 

「エール…痛みはないよ。ありがとう」

 

「エール!わたしも元気だ!」

 

「エール、私も問題ありませんよ」

 

 

 

皆様お元気そうです。

ダン様も今のまともな受け答えをみてホッと息をしていました。

一安心ですね。

よかった。

よかったです。

 

 

 

「しかし呑んだな!

量も尋常ではなかったが。

ありゃ相当強いぞ!」

 

「そうですねぇ…アル中勇者様はこれを毎晩嗜んでらっしゃるのですね…」

 

「しかもこれ一人でだぞ!

よくこれまでの旅で死ななかったもんだ!」

 

「勇者サマはお酒好きで食事と睡眠を疎かにしてしまうこと以外は、奇行が目立つだけの勇者サマなので…」

 

「まぁ!もう!ないからな!!

食べて寝る!!しっかりとした生活をしてもらわないと!!

エール!暫く禁酒の影響で勇者が荒れるかもしれないから、その前に勇者を癒やしてやってくれ!」

 

「承知いたしました。カルテ様」

 

 

 

あ。しまった。

交渉をしていません。

勇者様にパーティーの皆様へ禁酒期間を交渉すると言っていたのでした。

 

皆様今は酔っぱらっていないですし。

交渉するなら今ですね。

 

 

 

「カルテ様」

 

「ん?なんだ?」

 

「勇者様の禁酒の件ですが。

 

期間をもう少し短くしてあげられませんか?」

 

 

 

バッとわたしを見る皆様。

あー。まずいです。

 

 

 

「え、え、え、エール?

昨日ゾルの話きいただろ??

 

いまの勇者はもう勇者じゃない!

酒呑みマシーンだ!

情は捨てるんだ!

 

お酒から足を洗うためには!

周りが鬼になるしかないんだぞ!!?

 

勇者のお酒をおまえも呑んだろう!!?

あれは常飲するもんじゃない!!

あれはどっかの部族とか集落が度胸試しとかで飲むやつだ!!!」

 

 

 

カルテ様に両肩をつかまれ逃げられません。

ですが引けません。

それは勇者様のため。

そしてわたしの有言実行のため。

 

 

 

「カルテ様。

問題だったのは強すぎるお酒と量と。

不健康すぎる生活です。

 

勇者様も旅の初めは普通に食べて寝て呑んでいたはずです。

 

旅の初めの頃のような生活ならば問題がないはずです。

 

いきなり全てをとりあげては勇者様ももももももも」

 

 

 

カルテ様、そんなに、肩を、

前後に、ふらないでっ

首が、首が、とれるっ、とれちゃうっ

 

 

 

「エールぅうう!!!

酒呑みマシーンに慈悲はない!!!!

やるなら徹底的にやらないとっ!!!

じゃないと余計に勇者が辛いだけだっ!!!」

 

「かるかるてかてかるてさまままおちつついてくだささ」

 

 

 

カルテ様!

 

脊髄!脊髄が逝ってしまいます!

 

 

 

「カルテさん。エールを離してあげてください。首取れちゃいます。」

 

「ぬぁ!?すまん!!?」

 

「わぷっ」

 

 

 

あぁ首が曲がってはいけない方向に曲がるところでした。

あやうくあぶない。

やはり交渉は無理なのでしょうか。

 

あぁ哀れ勇者様。

お酒はやめましょう。

 

 

 

「…エールの言う通り。

いきなり全てをとりあげるのは危険かもな」

 

 

 

おや?

 

 

 

「…勇者に禁酒を強いたとして、暴走した勇者を止められる者がいないだろう。

エールの癒やしなら多少動転した勇者を落ち着かせられるだろうが…

本気の勇者じゃ誰も手も足も出ないだろう」

 

「…む。確かにダンの言う通り…か?

だが、ゾルがせっかく禁酒のチャンスをつかみ取ったんだぞ?」

 

「カルテさん。エールのいった通り一番の目的は勇者さまの睡眠と食事。

勇者さまの危ない強すぎるお酒は、みんなで昨晩なくしましたし。

お酒で脅して食べて寝てもらう方が、都合がいいかもしれません」

 

 

 

おぉ!

 

 

 

「むぅ…ゾル。どう思う?」

 

「そうですね…勇者サマのお酒による問題行動は、食事と睡眠をとらないことの2点のみですから。

 

勇者サマには勢いで半年禁酒といってしまいましたが、それで勇者サマが暴走しても誰もとめられないでしょうし…

 

少しのお酒を呑ませて食事と睡眠を促せるのであれば、そちらの方がいいでしょう」

 

 

 

来てます来てます。流れ来てます。

 

 

 

「…エール。唯一お前なら勇者サマを落ち着けさせられる。

負担は大きいと思いますが、勇者サマの睡眠と食事とお酒の管理、任せられますか?」

 

 

 

おおぉ!

きた!きた!やりました!勇者様! 

のるしかねぇ!このビッグウェーブに!

 

 

 

「勿論です。お任せください。

勇者様が勇者様を続けられるよう。

全力で支援するのがわたしの役目です」

 

 

 

わたしは勇者様の睡眠、食事、お酒の管理を任されました。

ほとんど諦めていましたが。

神様は勇者様を見捨てなかったみたいです。

 

 

 

「よし!エール!勇者のこと任せたぞ!

勇者がお酒で変になったらすぐ報告すること!

無茶はしないこと!」

 

「はい。カルテ様。承知いたしました」

 

 

 

 

 

正式に勇者パーティーのリーダーであるカルテ様から許可を頂けました。

 

勇者様。お酒呑めますよ。

 

これで安心して勇者様ができますね。




勇者     3年ぶりの睡眠中??
       傭兵を泣かせたわるい人

癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん
       勇者に睡眠と食事を取らせる
       だけの簡単なお仕事を請け負う

傭兵 ゾル  苦労人ニキ
       勇者の寝顔をみて感極まり泣いた
       たぶん思い出しただけで泣ける

弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
       お酒呑んでるとテンション高い
       お酒呑んでなくてもテンション高い
       同じことで3日笑い続ける
  
戦士 ダン  寡黙キャラな筋肉ムキムッキマン
       でも勇者パーティーの現状に
       涙目になることも

聖女 マキア あまり聖女しない聖女
       勇者の寝顔は傭兵に見せると面白い
       から今後イタズラするつもりでいる
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