勇者が病んだ!   作:氷華枦

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勇者様は眠れない?

 

 

 

「いやー!!!

 

3ヶ月ぶりだって!!!ハハハッ!!!」

 

「笑いごとじゃないぞ勇者!」

 

 

 

ハハハと笑う勇者様。

それに異を唱えるカルテ様。

 

でもその声色は明るいもので。

勇者様が目覚める前の弱々しく暗いものではありませんでした。

 

 

 

「ほんとっ大変だったんですよ?

勇者さまが3ヶ月も寝ているものですから、魔の付くヒトみ~んな活性化して大変だったんですから」

 

 

 

マキア様も余裕がない思い詰めた表情は消えています。

その微笑みは安堵に満ちています。

 

 

 

「勇者サマ…ッ!

目覚めてくれてホントに俺!…よかったッ!!」

 

「ハハハハ!ごめんごめんって!泣かないでよ傭兵!

オレもまさか眼を閉じて開いたら3ヶ月経ってるとは思わなかったからさ!!!ビックリだよー!!!」

 

 

 

ゾル様の死人のような顔は変わりません。

でも生気をまったく感じられないようなモノではなく。

元気なアンデッドといった感じでしょうか。

顔色は死人のようですが喜びに満ちています。

 

 

 

「…勇者よ。眠り続けていたことに理由はないのか?」

 

「理由?理由…う~ん?

寝てた実感がないからなぁ…?

寝る前にかわったこともなかったと思うし…?

…お酒を没収されたことくらい?」

 

「うわーん!!!勇者サマごめんなさい!!!

まさか3ヶ月も寝るなんて思わなくてー!!!」

 

「わー!ごめんごめんって傭兵!!!

責めてるわけじゃないよ!!!

心当たりがなさすぎただけだから!!!

お酒を没収されたことくらいで3ヶ月も寝込まないよ!!!!!」

 

「勇者!ゾルのこと許してやってくれ!

お酒を没収したのは勇者の身体を考えてのことだったんだ!」

 

「許す許す!許すよ!!!てか許すもなにもないよ!!!

お酒没収されるまでコソコソ呑んでたオレが悪いんだし!!!

お酒呑んでるのばれたら潔くやめる予定だったし!!!」

 

「あら?エールからあの日お酒ないなら勇者さまをやめると泣きついたと…「うわああああ!!!??

 

なんでぇ!!?なんで知ってるの!!?

 

えっちゃん言っちゃったの!!?

 

でもそうだよね!!!口止めとかしてなかったもんね!!?

 

泣きついただけだもんね!!?オレ!!!」

 

 

 

まじかー!オレ!

くっそダサいよー!オレ!!!

と勇者様。

 

すみません勇者様。

確かに勇者様が泣いたとかパーティーの皆様にお伝えしなくても良いことでした。

 

 

 

「えっちゃんごめん!!!大丈夫だよ!!!

そんな思い詰めた顔しないで!!!!!

そりゃ勇者じゃなくても泣きついてきたらパーティーの皆に報告するよ!!!

オレだってするよ!!!傭兵が泣いてるよぉおお!!!!!」

 

「うわーん!!!」

 

「あー…ゾルさんもうダメですね。勇者さまを摂取しすぎです」

 

「ゾル、可哀想に…ッ!

最近のゾルの勇者接触許容量は1日寝顔1時間だ…ッ!

勇者が目覚めた時点でとっくに限界を超えてたんだ!!!」

 

「ええ!!?なにそれ!!!

傭兵そんなのあったの!!!!?

オレいない方がいい??!!!」

 

「勇者はここにいて!」

「勇者さまはここにいてください!」

 

「ハイ!!!!!」

 

「…ゾルは隣の部屋へ移そう。あそこには寝台がある」

 

 

 

涙のとまらないゾル様はダン様に連れられ。

お隣の部屋へ行きました。

 

勇者様はカルテ様とマキア様に。

いなくなるとか言わないで!

と説教されています。

 

あ。ダン様が戻ってきました。

 

 

 

「…ゾルは寝かせた。あれでは朝までおきないだろう」

 

「む…そうか…仕方ないな!朝まで待つしかない!」

 

「そうですね。ゾルさまをのけ者にしたらまた泣い…っこほん。

話を進められませんから」

 

「…だが勇者はどうする?

また3ヶ月目覚めないなどあっては困るぞ」

 

「勇者!また3ヶ月寝るのか!?」

 

「いやいや流石におきるよ!!!たぶん!!!」

 

「うっわ怖いです。フラグの匂いがプンプンします。

今度は半年後におきるとかイヤですよ…?

エール?もう一度勇者さまをおこすことは可能ですか?」

 

 

 

マキア様から問いかけられました。

 

勇者様をもう一度眠りから目覚めさせる。

一度目が成功しました。

イメージはバッチリです。

二度目も勇者様をおこすことができるでしょう。

 

 

 

「はい。マキア様。

勇者様をおこした時の感覚は覚えています。

次に勇者様が眠り続けても。

無事に勇者様をおこすことができます」

 

「そうですか…ホッ

これなら勇者さまは寝かせても問題なさそうですね」

 

「大丈夫だいじょーぶ!!!オレ自分でおきられるって!!!」

 

「3ヶ月も寝続けてた勇者さまは黙ってください」

 

「…寝ていたことにも気付いていなかったんだ。

自ら目覚めるのは到底難しいだろう」

 

「そうだぞ勇者!」

 

「ハイ!スミマセン!!!」

 

「それではエール。

朝になったら勇者さまをおこしてください。

頼みましたよ?」

 

「はい。マキア様。

私は勇者様を朝になったらおこします」

 

 

 

それでは、私達も寝ますか。と。

皆様は自室へ向かわれました。

勇者様が目覚めたのは夜になったばかりの頃でしたが。

今はもう深夜と呼べる時間です。

 

わたしも寝たいところですが。

やらなければならないことがあります。

 

もう3ヶ月も前のことですが。

役目は果たさなければ。

 

 

 

「えっちゃん?なにそれ?」

 

「スープです。勇者様。

わたしが作ったものなので味は美味しくないかもしれませんが、栄養はたっぷりです。

お飲みください。熱いのでふーふーしてくださいね」

 

「え!ありがとう!でも今オレ腹減ってな「勇者様3ヶ月の間なにも口にしてないんですよ?少しで良いですから食べ物を口にしてください。はい。あーん」なんかすごい子供扱いされてる!!!」

 

 

 

勇者様の食事と睡眠をとらせる。

それを任されたのは3ヶ月前だったのに。

随分と時間がたってしまいました。

 

スープを口元へ運ぶと渋々ですがスープを飲んでくれます。

ゾル様の時のように逃げられなくて良かったです。

 

 

 

「勇者様。勇者様。

スープを飲んだらもう一度寝てみましょう。

もし寝れなかったらわたしもおきていますから」

 

「え!いいよいいよ!えっちゃんも疲れてるでしょ!

オレ3ヶ月も寝続けてたんだから絶対寝れないって!

ちゃんと静かにしてるからえっちゃん寝ちゃいなよ!」

 

「勇者様。勇者様から目を離したら何をするかわかりませんので。

とりあえず横になってみて。

寝れなかったらわたしとお話ししてください」

 

「うぅ…わかった、わかったよぉ…」

 

 

 

勇者様に納得していただき。

一杯のスープを飲みおえたあと。

勇者様をお部屋へ連れていきました。

 

 

 

「いや、ホント?眠気のネの字もないからね?

横になっても寝れないよ?」

 

「わかっています。勇者様。

試しに横になっていただくだけで良いのです」

 

「んえ~…

 

でもそれじゃえっちゃん朝までずっとおきてることになっちゃうし…

 

…あ!

 

じゃあさ!オレ横になるからさ!

えっちゃんも一緒に横に寝てよ!

 

オレ!えっちゃんも横に寝てくれないと寝ないよ~?」

 

 

 

意外な提案がされました。

勇者様と一緒に寝るなんてとても恐れ多いです。

それに私を眠らせて一人でおきているつもりですね。

なんとか阻止したいです。

 

 

 

「えっちゃん!ほら、はやくはやく!ここおいで!」

 

 

 

どうしましょう。

でも考えてる時間がありません。

魔法で眠らされる?

癒しの力で阻止できないでしょうか?

あー考える時間がたりないです。

 

 

 

「えっちゃ~ん!おーいーでー」

 

 

 

ああ。もういくしかありません。

勇者様。魔法で眠らせようとしても。

わたしはそう簡単に眠りません…!

 

そう決意を固め、わたしは勇者様のお隣へ行きました。

ふわっと毛布にくるまれます。

パンのように挟まれています。

 

 

 

「へへッ

魔法で眠らせたりしないよ!」

 

「…声にでていたのですか?」

 

「んや、なんとなく?

魔法使わなくてもオレにはね~!

えっちゃんを寝かし付ける100の技がある!

安心してすやすやしちゃいなよ!」

 

「…そうはいきません。勇者様を1人にできません」

 

 

 

コソコソと?勇者様は私に眠るよう促してきます。

魔法を使う気はないようです。

 

 

 

「ん~…そしたら早速1個目を試そう!

1個目はそうだな~子守唄!

この唄はすごいよー?

歌うたんびに歌詞が変わるんだ!」

 

 

 

それ勇者様が歌詞を覚えてないだけじゃ…

 

 

 

「それでは!

 

ねーむれー!ねーむれー!

 

…ん~ふ~ふふ~ふふーふー!」

 

 

 

勇者様。歌い出し以外覚えてなかったですよね。

全部ふんふんになってます。

 

それに勇者様。

子守唄にしては元気すぎます。

赤子にこれを聞かせても眠れないです。

 

そもそも子守唄って。

わたしはもう子供ではありません。

 

 

 

「ふんふんふー!ふんふー!

 

…あれ?まだ寝れない?

仕方ないなぁ!第2第3の技をくらうがいい!」

 

 

 

トントンと軽く叩かれます。

唄にあわせて叩いているようです。

あ。確かにこれ。いいかも。

 

 

 

「ねーむれー!ねーむれー!

 

…あ!そうだ!

 

えっちゃん!目をつむって!

 

つむった!?」

 

 

 

ええ。勇者様。

目をつむりました。

 

でも今はもう開いてます。

勇者様。目をつむっています。

 

あれ。これ。

目をつむり続けるのが正解なのでしょうか。

 

 

 

「いちばん眠くなるヤツ忘れてたよ!

このまま頭のなかに羊を思い浮かべて?

右から左に羊が柵を飛び越えて逃げるから1匹ずつ数えるんだ!」

 

 

 

えぇ…数えるんですか。ひつじ。

捕まえないんですか。ひつじ。

 

 

 

「数えかたはねゆっくりでね…

羊が1匹…

羊が2匹…」

 

 

 

ああ。

なるほど。

これは確かに眠くなりそうです。

でもどこまで数えるのでしょうか。

100匹いったら。

そのひつじたちを捕まえにいくのでしょうか。

 

 

 

「…」

 

 

 

あ。寝てる。

 

 

 




勇者     あっさり寝た勇者
       子守唄も羊数えも自分に効いた

癒者 エール 勇者からの呼び名えっちゃん
       勇者の寝かし付けに勝った

傭兵 ゾル  苦労人ニキ
       勇者接触許容量ができてしまった
       勇者が黙っても喋っても泣く

弓兵 カルテ 勇者パーティーのリーダー
       実は解散したあと勇者たちをつけ
       てた 勇者の元気な子守唄で寝た
  
戦士 ダン  寡黙キャラな筋肉ムキムッキマン
       すぐパーティーの空気になりそう
       でビビってる

聖女 マキア あまり聖女しない聖女
       解散したあとすぐ寝た
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