問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



8.交錯するモノ

 

 グランドマザーと対峙するために地下へ降りて行った指導者(ソルジャー)を救出するために地下を目指して、どこまで降りてきたのだろう。

 

 今までは細い通路が張り巡らされていただけだったのに、そこは大きな広間だった。奥の方では厳かな装飾が施された扉が鎮座している。

 しかし、扉の前にはたくさんの瓦礫が転がっていた。施設全体の揺れも大きくなってきていたし、そろそろ自分たちの力も限界である。

 

 

「うわあああああん! 怖いよぉぉ!」

 

「助けてぇぇぇ!」

 

「どういうことじゃ!? こんなところに、人間の子どもがおるとは……」

 

 

 わんわん泣き叫ぶ子どもたちを目の当たりにした禿げ頭の老人――ゼルは、酷く狼狽した様子でこちらを見回していた。服に縋りつく少年をどうあやせばいいのか分からないようだが、彼は少年の片手を取り、痛がらぬ程度に加減しながら握り返してやっていた。

 

 広場で身を寄せ合って泣いていたのは、14にも満たない少年少女。何故、ユグドラシルの地下に子どもたちがいるのだろうか。この施設に勤めていた人間たちなら何か知っていたかもしれないが、多くの人間がユグドラシルから逃亡していた。

 ……いいや、逃亡できれば御の字で、断末魔の悲鳴を残して爆発に飲み込まれた者も多い。もっと言えば、このフロアには子どもたちしかいなかった。大人たちに見捨てられたのか――或いは、大人たちが先に力尽きてしまったのかは分からない。

 確かなことは、“子どもたちだけがここに取り残されている”くらいだ。崩れ続けるユグドラシルの様子からして、このフロアはもう持たないだろう。ここに降りてくるまでに多大な力を使ったミュウの長老たちは、進むことも戻ることもできそうになかった。

 

 

「もう大丈夫だ。安心しなさい」

 

 

 金色の髪と浅黒い肌が特徴的な男性――ハーレイは、優しく微笑んで少年の頭を撫でてやる。嘗て彼は、年若い世代のミュウたちの面倒を見ていたことがあった。

 最も、ハーレイは子どもの扱いに長けているタイプではなかったし、父性を感じて懐く者と強面の顔に怖がる者の2極化になりがちなタイプだったけれど。閑話休題。

 

 

指導者(ソルジャー)を探して降りては来たが、私たちはこれ以上先に進むのは無理なようですね……」

 

「ここも長くは持たないよ。どうするんだい!?」

 

 髭と義手が特徴的な老紳士――ヒルマンが悔しそうに現状を分析し、黒髪のドレッドヘアと浅黒い肌にオッドアイが特徴的な女性――ブラウが他の面々に問いかける。

 

 

「この子たちを救わなければ……」

 

 

 切羽詰まった状況である中で、盲目で金髪の女性――フィシスが、静かな面持ちで口を開いた。

 

 嘗てのミュウは“成人検査を筆頭とした要因でミュウの力を発現した者たち”を救出することで種族の数を増やしていた。逆に言えば、“成人検査等の理由によって因子に目覚める”ことでしか、種族の数を増やせなかったことを意味している。

 その固定概念はナスカに移住し、自然分娩による出産が行われるまでこびりついていた。故に、旧時代に行われていた自然分娩を取り入れて生まれたナスカの子どもたちは、ミュウたちにとっての希望になり得る存在だったのだ。

 “種族の総数をやすやすと増やせない環境下にあった”ことや“命懸けの自然分娩を経て子どもが生まれる現場を目の当たりにした”ことで、ミュウから見た子どもたちは“優先的に守るべき存在”と見るのは当然のことだった。

 

 

「しかし、こんな大勢の子どもたちを、どうやって……!?」

 

「ワシらが力を合わせれば、なんとかなるじゃろ」

 

 

 「戦線を退いたせいで怖気づいたか?」と、ゼルが老紳士――ヒルマンをからかうように声をかける。

 ヒルマンはムッとしたように老人を睨みつけたが、すぐに「まさか」と不敵に笑い返した。

 

 長老たちは互いの顔を見合わせた。浅黒い肌の女性――ブラウが苦笑し、艶やかな黒髪が特徴的な貴婦人――エラが優しく微笑む。

 

 

「……やれやれ。仕方ないか」

 

「この子たちのため、明日のために……!」

 

 

 長老たちは子どもたちたちを取り囲むように輪になって、互いの手を握った。

 

 

「力を合わせましょう」

 

 

 ミュウとしての力を発現する。輪の内側にいた子どもたちは白い光に包まれ、次々と転移していった。転移先はシャングリラの中庭だ。

 転移は問題なく進み、輪の中にいた子どもたちの人数が減っていく。それを確認した長老たちは互いに視線を向ける。

 今からすることは、長老たちの独断であった。自分たちのやることがエゴでしかないことは理解していたが、それでも、()()を死なせるわけにはいかない。

 

 自分たちにとっての()()は、嘗ての指導者(ソルジャー)――ブルーが連れてきた少女だった。()()がシャングリラに来た経緯(いきさつ)はよく分からないものの、“ステーションから連れてきた”訳アリの同胞であることは聞かされている。

 ()()は幼いながらも、青い星(テラ)光景(ヴィジョン)を抱く特別な存在であった。()()の見せる青い星(テラ)光景(ヴィジョン)が、多くのミュウたちの心を癒したのは事実。実際の■■(テラ)は人の住めるような環境ではなかったけれど、あの青い星(テラ)光景(ヴィジョン)がなければ、ここまで辿り着けなかったはずだ。

 

 ()()はブルーにとっての女神であり、長老たちにとっても特別な存在だった。未来を占って道を示していた頃も、ブルーの死後から未来を占うことをやめた後も、その認識は変わらない。だから――

 

 

「嫌! どうして……!」

 

 

 ()()――フィシスの体が浮かび上がる。何が起きたのかを理解したフィシスが悲鳴を上げたが、長老たちは構わず押し通した。

 

 

「貴女は生きるんじゃ!」

 

「私たちがいたことを、覚えていてください!」

 

「駄目、私も一緒に――」

 

 

 ゼルとヒルマンが祈るように告げて、何かを言いかけたフィシスを転移させる。

 程なくして子どもたちの転移が終わり、取り残されたのは長老たちのみ。

 

 そうして――

 

 

 

*

 

 

 

「なあ、ブラウ」

 

「何だい?」

 

「お前に対して、ずっと言いそびれていたことがあるんだ。聞いてくれるか?」

 

 

 金髪に褐色の肌が特徴的な青年――ハーレイの言葉を聞いて、浅黒い肌とオッドアイが特徴的な少女――ブラウが首を傾げる。

 ハーレイの視線は虚空とブラウの顔を行き来していたが、意を決したように咳払いをした後、口を開く。

 

 

「ええと、その……何と言ったらいいのか……。正直、色々な意味で自信が無いんだが……」

 

「なんだい、情けないねェキャプテン。もったいぶらずハッキリ言ったらどうだい?」

 

「し、仕方がないだろう!? ……さ、300年程生きてきたとはいえ、……好いた女性に、どう告白すればいいかなど、分からないから……」

 

 

 途中までは声を張り上げていたハーレイであったが、どんどん尻すぼみになっていく。ブラウは目をまん丸に見開き硬直した。そこでハーレイは自分の発言内容に気づいたらしい。シャングリラのキャプテンらしからぬ狼狽っぷりを披露しながら、彼は更に恥と無様を上塗りしていく。

 ハーレイとブラウの年齢は約300歳の同年代であるが、人間基準で見ると――良くも悪くも――『小児性愛者』が成立しかねない年齢差があった。故に、最初の頃はブラウのことを妹のように見ていたのだが、共に過ごすうちに異性として意識するようになったという。

 意識をし始めたとき、ハーレイを筆頭としたミュウたちの感性は人間寄り――ハーレイとブラウの年齢差から『小児性愛者』を連想する程度――だった時代。うっかり好意を口走ってしまえば最後、S.D.体制下では“抹殺確定の社会不適合者”扱いされるのが目に見えていた。

 

 ミュウの多くがS.D.体制下の常識や良識によって縛られ続けていたのは、ナスカ定住時に発生した自然分娩の一件で証明済みである。

 

 当時のハーレイも、S.D.体制の常識――“年の差婚や『小児性愛者』は好まれない風習である”と思い込んでいた身。

 色々な意味で自重したのは当然であろう。……まあ、それ以上に、ハーレイが黙ってしまった理由は他にもあった訳なのだが。

 

 

「それに……お前は、ブルーに想いを寄せていただろう。……(オレ)のような奴に、勝てる見込みなどあるはずがない……」

 

 

 元から弱弱しい声だったのだが、それが尻すぼみになったせいで、更にか細くなってしまった。何とも情けない有様なのだが、ミュウの初代指導者の外見や能力をよく知っているが故の自信喪失である。

 

 だってブルーは立派だった。メギドによってアルタミラが滅びゆく中、彼が先導してくれなければハーレイたちは生き残れなかった。ブルーですら取りこぼしてしまった命があったことは事実だけれど、あのとき彼が立ち上がらなければ、次世代の指導者にバトンを渡すことなど出来なかったであろう。

 体が弱いと言う問題点など何のその。唯一無二の荒ぶる青(タイプ・ブルー)であり、ミュウたちをまとめ上げるカリスマ性があり、心優しく芯の強い青年だ。ミュウの女性たちが憧れるのも当然と言えよう。茶髪の青年――ヒルマンと青髪の青年――ゼルもハーレイと同じ経緯で心折れた野郎どもだったので、真顔で頷いていた。

 

 ハーレイの情けない告白を最後まで聞き終えたブラウは、呆気にとられた顔をしていた。

 沈黙して俯いたハーレイの顔をまじまじと見つめていた少女が、ぐっと両手を握りしめる。

 

 

「なんだいそれ。よりにもよって、今、そんな話をするのかい……!?」

 

「……すまない」

 

「馬鹿! ――そういう話はねェ、もっと早くするもんだよ! 具体的には、300年くらい前に!!」

 

「――――へ?」

 

 

 怒髪天の声色で告げられた言葉に身を固めたハーレイは、一歩遅れて、ブラウの発言を理解した。

 内容を受け入れることが出来ず、間の抜けた声を漏らして顔を上げる。

 眦を吊り上げ、顔を真っ赤にした少女が、肩で息をしている姿があった。

 

 

「だってアンタ、アルタミラで亡くなった子と良い仲だっただろう!? アンタと同年代で、面倒見が良くて、優しくて、綺麗な――」

 

 

 ブラウはそこで言葉を切った。相変わらず、彼女は肩で息をしていたが、額を抑えてこれ見よがしにため息をついた。

 

 

「アタシの300年、どうしてくれるのさ! 本当に、本当に、今更……」

 

「……(オレ)の300年については、どうなんだ」

 

「こんな状況で、どうやって責任取りゃあいいんだい!? アンタだって、アタシの300年について責任取れるような状態じゃないくせに!!」

 

「それもそうだが……」

 

 

 ハーレイの胸板をぽかぽか叩くブラウの言葉は何も間違ってはいない。

 

 言いたいことを言い終えて、伝えたいことは伝え終えて、心が通っていたことを実感した所まではよかったのだ。

 だが、残念なことに、ハーレイたちには()()()()()()のである。変えようのない定めだ。

 

 

「貴方たち、私のことが好きだったんですか!? てっきり私、ゼル殿(くん)とヒルマン教授(くん)は出来上がっているとばかり……」

 

「「うわああぁーッ!!」」

 

 

 鼠色の髪を腰まで伸ばした少女――エラの言葉を聞いたゼルとヒルマンが絶叫しながら崩れ落ちた。あちらもあちらで、300年間すれ違いをしていたらしい。

 ゼルとヒルマンはエラに思いを寄せながらも、“彼女がソルジャー・ブルーに懸想していた”ために心が折れてしまった男たちである。

 そんな彼らもハーレイの告白に背中を押されたらしく、同じように高嶺の花へ本音を告げたのだろう。その結果が予想外の一撃であった。

 

 ゼルとヒルマンから好意を寄せられていたことを吐露されたエラは、酷く混乱し、狼狽している様子だった。

 今この場でどちらか片方の手を取ることも、両方に対してお断りをすることもできないためだろう。

 

 最早()()()()()()()()自分たちにとって、この状況は文字通り()()()()()()()()のだ。どれ程()()()()()に思いを馳せたくとも、道は既に絶たれている。頭を抱えたくなるのは当然だった。

 

 

「ところでゼル」

 

「なんだ、ヒルマン」

 

「古い資料文献に載ってたんだが、旧世紀では“輪廻転生”という概念が存在していたらしいんじゃ()。簡潔に言えば、“生まれ変わり”というヤツなんだが」

 

 

 300年越しに明かされた衝撃の事実から立ち直ったヒルマンが、すっくと立ちあがる。突飛なことを言い出した親友に対し、ゼルは訝し気に眉をひそめた。

 

 

「だいぶ前に言ってたな。“ヒトが死んだ後、その魂は長い時間をかけて、再びこの世界に生まれる”ってヤツ。――ワシ(ボク)からすれば、眉唾にしか思えないがな(けど)

 

(おいら)だって正直信じていない()。……でも、そういうのがあったら、この瞬間が無駄にならずに済むかもしれないだろ?」

 

「覚えていられるかどうかさえ分からないのに?」

 

「覚えているさ。なんてったって、魂に刻み付けてるんだから」

 

 

 「その方が、ロマンがあるでしょう(だろう)?」とヒルマンは笑う。

 それを聞いたゼルも、苦い顔をしたまま同意した。

 苦笑いしていたエラも、「そうだったらいいですね」と頷く。

 

 ハーレイにとっても眉唾な話だが、もし、輪廻転生なるものがあったのなら――お互いに責任を取ることは可能だ。

 ブラウに視線を向ければ、彼女は豪快に笑って頷いた。夢のある話であり、希望に満ちた話題ではある。

 

 

<――みんな!>

 

 

 ――不意に、懐かしい《聲》が聞こえた。

 

 振り返った先には、穏やかに笑う銀髪で赤い瞳が特徴的な青年――ブルーが佇んでいる。彼の傍らには、自分たちが探していた金髪碧眼の青年――ジョミーが大きく手を振っているところだった。

 ジョミーの隣にいたのは、つい数時間前、彼と共にグランドマザーへ向かった人類の指導者――キース。彼は黒髪黒目の少年や銀髪に金の瞳を持つ青年に絡まれており、それを見ていた茶髪の青年――サムに笑われていた。

 

 賑やかな声に導かれるようにして、4人は彼らのいる方角へと歩き出す。

 それが何を意味しているのかを正しく理解した上で、確かめるように踏み出した。

 

 

 

*

 

 

 

 崩れゆくユグドラシルの内部。大きな広場があったこのフロアは、嘗て多くの子どもたちが暮らしていた場所である。

 薄暗い部屋の中、数多の瓦礫が積み重なっていく。その傍らで、長老たちの命の炎は尽きていた。

 

 ある者は寄り添い合いながら、ある者は輪になった状態で、瓦礫に押し潰されているような有様だった。

 

 だけれども。

 不思議なことに。

 

 ――彼や彼女たちはみな、幸せそうに微笑んだまま息絶えていたのだ。

 

 死の恐怖に怯えなど抱いていないかのように。

 或いは――いつか来る未来に、夢と希望を馳せているかのように。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 チーム・トリニティは現在、悪の組織に身を寄せている。

 

 本来なら彼女たちはソレスタルビーイングのセカンドチームとして、チーム・プトレマイオスと合流するのが筋であろう。しかし、プトレマイオスの面々は――咄嗟の出来事で、反射や本能的な理由だったとしても――ミュウを拒絶している。あちらのガンダムマイスターとして加わったイデアが悪の組織に出戻って来たのもそのためだ。

 トリニティ兄妹も、ノブレス・アムに心を開いたことがきっかけでミュウ因子を覚醒させている。目覚めたばかりで感性や常識が人間寄りだとはいえ、“今の人類には、ヒトならざるモノを受け入れるための地盤が整っていない”ということもあり、身の安全が保障されていないのだ。今後の行動は、ソレスタルビーイングや地球連邦の判断が関わって来ることになろう。

 

 

「――そういうわけで、“僕らにも、チーム・プトレマイオスのような輸送戦艦が必要になる”と判断したんです」

 

「それで用意された戦艦が、このカテドラルなのですね」

 

「下地になっているのは、虚憶(きょおく)由来の戦艦――ブルワース旗艦と呼ばれる形状のヤツですがね」

 

 

 フランス語で“司教座聖堂”を意味する戦艦――カテドラルを見上げるヨハンに、ノブレスは補足を入れた。出典は分類IBで、GNドライヴが跋扈しているこの世界にとっての天敵になり得る技術――ナノラミネート装甲――が跋扈している悪名高い世界に存在する、無法者たちが使っていた強襲装甲艦である。

 一応、この世界にもナノラミネート装甲は存在していた。用途は“ソレスタルビーイング、及びガンダムに対する対抗策”である。ただ、IB世界におけるナノラミネート装甲と比較すると非常に脆い。戦闘時間やGN粒子にどれ程晒されたかにもよるが、多くて2~3回戦うと装甲が剥げるレベルだ。

 そもそもエイハブ・リアクター、及びエイハブ粒子を再現する時点で盛大に足踏みしている最中である。純度と精度の高いナノラミネート装甲、及び、その上位互換とされているナノラミネートコートを作り出すには、そちらの再現が上手くいかなければ難しい。技術革新は一長一短で行えるものではないのだ。

 

 蛇足だが、戦艦の名前を決めた後、知らない役人や軍人たちが「のうが はかい される」と頭抱えて叫んでいる夢を見た。

 なんでも、『異端(ガンダム)を裁くための機関の名前が、異端(ガンダム)の母艦の名前になっている』のが受け入れられなかったらしい。閑話休題。

 

 

虚憶(きょおく)のデータでは“宇宙適性以外は全くもって未知数”なのですが、その部分はクルーのサイオン波でカバーすることで補っています」

 

「で、そのクルーの大半が、予備のパイロット候補も兼ねてんのか……」

 

「本業は戦術指揮官ですよ。最終的に、この中の2名が独立して自分の艦隊を率いる予定だそうです」

 

「下積みってことかよ……。まあ、たまに協力して貰ったことはあるから、作戦遂行能力については把握してるし、信頼もしてるけど」

 

 

 ミハエルは端末を見つめる。嘗て、チームトリニティは今回配備される面々と一緒に仕事をしたことがあった。

 

 そのときの彼や彼女は、エイミーの部下兼教え子であり、ホワイトベースクルーの一員だった。そう思うと、彼や彼女たちはこの数年間で成果を積み重ねてきたのであろう。彼らの中にはミハエル――下手をしたら、初めてノブレスと出会った頃のネーナと同じ年齢の子どももいる。

 カテドラルに配属されたクルーの大半が、超兵機関の出身だ。ごく僅かだが、トリニティ兄妹たちが一時期身を寄せていた孤児院の出身者もいる。前者は“嘗ての自分たちが生まれたルーツ”由来のシンパシー、後者は“共に暮らし、面倒を見ていた”という経緯故、世話を焼きたくなるのだろう。何やらソワソワしている。

 

 元々、トリニティ兄妹はアレハンドロ・コーナーの意向によって生み出された強化人間だ。リボンズの遺伝子構造を解析し、コーナー一派の協力者から遺伝子提供を受けたのだ。

 試験管で産み落とされた3人は、その後は体や脳を弄繰り回され、以後はずっとパイロットとしての殺傷能力を磨くための教育を詰め込まれていたという。

 “あの頃は獣みたいな有様だった3兄妹が、今ではこうやって誰かのことを気にかけたり、世話を焼いたり、面倒を見たりしている”――そう考えると、何とも感慨深くなるものだ。

 

 

「あっ、ブラウ師匠(せんせい)いる! いろいろご教授頂けるかも!!」

 

 

 ミハエルの隣から一覧表を見ていたネーナが目を輝かせた。黄色い声を上げたネーナの様子を見て、兄たちは顔を見合わせハラハラし始めた。

 ネーナが師匠(せんせい)と慕う少女は、自分よりも一回り年上の青年にアタックして落とした猛者である。恋愛に悩んでいたネーナにとって、少女は頼れる師匠なのだろう。

 

 

(……なんだか、寂しいなあ)

 

 

 ノブレスは恋愛ごとに関しては非常に疎い。仕事――MSの設計開発、技術開発、歌手活動――が伴侶なので、全くもって力になれない。友人のエイフマンも似たようなものだ。力にはなれない。

 

 まあ、そんなことはどうでもいいのだ。今は、カテドラルの新人クルーとの顔合わせに挑まなければ。

 気合を入れるようにして掌に拳を打ち付ければ、乾いた音が響き渡る。雑談に興じていた3人も、真剣な面持ちになった。

 

 

「ある程度気心が知れた仲とはいえど、これからは運命共同体として苦楽を共にする仲間です。“親しき中にも礼儀あり”ですよ」

 

「「「了解!」」」

 

 

 元気よく返事をした3人を引き連れ、ノブレスはカテドラルに向かう。つい数か月前に出来上がったばかりの新型艦は、ノブレスやトリニティ兄妹たちの機体を始めとした物資の積み込みが行われている真っ最中だった。勿論、クルーたちも運搬を手伝っていた。

 彼らはノブレスたちの来訪に気づくと、作業の手を止めて整列する。その中でも一番年長の青年が、カテドラルの総指揮官として任命された艦長だ。クルーの中には先の兄妹同様ソワソワやハラハラしている者もいたが、今は公的な立場で顔を合わせている身。沈黙を貫く。

 

 

「おいそこ」

 

「まあまあ。そんなにピリピリしなさんな、ゼル」

 

 

 仲間たちの浮足立った空気を感じ取ったためか、青い髪の青年――ゼルが声を上げた。神経質そうというか、割と過激な印象を受ける。

 そんな彼を嗜めたのは茶髪の青年だった。飄々とした空気を纏ってはいるものの、温和で穏やかそうな雰囲気が漂ってくる。

 

 

「ヒルマンは甘いな。締めるところは締めるべきだろ」

 

「そこはゼルの言う通りだし、それがお前の役目だと理解しているとも。でも、締めすぎておかしくなった空気を緩ませるのがおいらの役目だと自負しているつもりさ」

 

 

 茶髪の青年――ヒルマンは、穏やかな空気を保ったまま微笑む。彼の言い分に一定の正しさがあると理解していたためか、ゼルはそのまま沈黙することを選んだ。

 タカ派の筆頭とハト派の有識者という関係性の2人であるが、そこまで険悪な仲ではない。お互いの主義主張に関して、正統性と信頼を寄せているようだった。

 彼らのやり取りを眺めていた浅黒い肌とオッドアイが特徴的な少女――ブラウが噴き出し、灰色の髪の女性に苦言を呈された。

 

 

「今は笑う所ではありませんよ、ブラウ」

 

「ごめんごめん、エラ」

 

「まったく、お前たちときたら……」

 

 

 仲間たちのやり取りを見つめていた青年は、灰色の髪の女性――エラとブラウ、ヒルマンとゼルのやり取りに対して苦笑する。

 クルー最年長故か、それとも生来の気質的な意味か、どことなく苦労人のような雰囲気が漂ってくるのは気のせいではない。

 

 もしかしたら、ハト派の筆頭も兼ねているのも影響していそうだ。堅牢なる守り手(タイプ・ブリーン)を体現するかのような、真面目で堅実な性格をしているから。

 

 クルーが真剣な面持ちに変わったのを見届けた艦長は、小さく咳払いしてこちらを見返す。

 真っすぐに背を伸ばし、綺麗な所作で敬礼をして、金髪と浅黒い肌が特徴的な青年は口を開いた。

 

 

「本日付けで、チーム・トリニティの支援用母艦・カテドラルの艦長として着任致しました。ハーレイです。以後、よろしくお願いします」

 

 

 

***

 

 

 

『最近、情報収集型のイノベイドが行方不明になる事件が多発しているみたいなんだ。調査をお願いできるかな?』

 

 

 徹夜明けで高笑いするリボンズの声をBGMにし、ノブレスに頼み事をしてきたのはリジェネだった。

 

 

『ヴェーダやアプロディアは“優先度低”の判定を下しているけど、僕個人で、ちょっと気になる人がいてね』

 

『トリニティ兄妹と因縁深い人間だから、キミたちにとってはかなり複雑かもしれない』

 

 

 その言葉と共に送られてきたのは、とある医者に関する情報だ。名前はクレーエ・リヒカイト。先々代当主が存命だった時期からコーナー一派に与していた生き残りの1人である。

 奴はアレハンドロからの依頼を受け、リボンズの遺伝子情報を解析し、ソレスタルビーイングの破滅を早めるための駒を作り出す。その駒が、何を隠そうトリニティ兄妹だった。

 

 遠い昔の話であるが、ノブレスは若い頃のクレーエと顔を合わせたことがある。少女の人形と可愛らしい洋服が大好きな、中性的で綺麗な美男子だった。その美しさはまさしく人形と見間違う程に。

 

 あれから約60年。奴が普通の人間のままならば、レイフ同様“しわくちゃのジジイ”になっていて当然だ。人形のように美しい美男子の姿など形も残っていないだろう。

 奴は予てから『不老が欲しい』と零していたし、血縁者が精神を病んで亡くなったという噂話を小耳に挟んだ頃から不老への執着を強めていった経歴持ちだった。

 美しさや若さを保つ――不老に関する研究分野への執着を強めるような“人の亡くなり方”に興味が無かったわけではないが、そこへ踏み込む程の親しさは無かった。

 

 

(……すっかり寂れてしまったんですね)

 

 

 断崖絶壁の上に立つ洋館は、古来の城を思わせるような外観となっている。庭の広さも壮観だ。だが、流れた月日と風化と劣化を経た建築物や庭は、館の主の生気や覇気の衰えを滲ませていた。そうして何より、ノブレス――テオドア自身が、美しかった頃の光景を知っているが故の感想だ。

 

 リジェネから貰ったデータを確認する限り、クレーエはこの屋敷に1人で住んでいる様子だった。一応定期的に業者が来て掃除や片づけをしていくようだが、頻度も空いてきているという。コーナー一派が社会的な死を迎えた後も、リヒカイト家の財産は家や研究を維持する程度には残っているらしい。

 ただ、気になることがあるとするならば、“つい最近、奴の私財に大きな動きがあった”ことだろう。リジェネの調査結果曰く、『反政府組織への援助と引き換えに、“この街で同時多発的に事故や騒ぎを起こす”ように依頼した』とのことだ。……ろくなことが起きない気がしたのは、きっと杞憂ではなさそうである。

 

 

<どうする?>

 

「内部の状況に気を付けつつ、家探ししましょう。――フェニックス」

 

<任せとけ! 俺のコードが火を噴くぜ!>

 

 

 <使い方としては大分アレだけどな!>なんて笑いながら、フェニックスがハッキングを開始する。

 リヒカイト邸のセキュリティが停止したのは、それからすぐのことであった。

 

 

「うわっ」

 

 

 足を踏み入れて早々、ノブレスは反射的に顔をしかめた。部屋中に、可愛らしい人形がずらりと並んでいる。どれもこれも、フリフリのドレスを着た少女ばかりだ。

 家主の性癖にお出迎えされてもしんどいだけである。渋い顔になりながらも、ノブレスはフェニックスのアシストやリジェネの情報を参照にして家探しを行う。

 指定された場所に鎮座していた人形の入った棚を押せば、棚はゆっくりスライドする。隠し部屋の入口が開いたのを確認し、ノブレスは足を踏み入れた。

 

 端末の明かりを光源にして資料をざっと確認する。出てきたのは――イノベイドの遺伝子情報の解析と、チーム・トリニティの3人を生み出し調整するために行った人体実験の一切合切だ。

 大量のデータや情報が書かれた書類や情報端末の中身を見比べる。内容も内容で、ろくな研究を行っていない。命を何だと思っているのか。ベルフトゥーロが見たら怒髪天モノ間違いなしである。

 

 ノブレスは――或いは嘗てのテオドアも――生物学には詳しくない。それでも、クレーエが必死になって、イノベイドの遺伝子や生態を解読しようとしていることは理解できた。やたらとテロメアの修復だの、不老だのという単語が踊っている。

 こんな奴が、テオドアやベルフトゥーロのようなミュウの存在を知ったらどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。もれなく人体実験、及び、クレーエが人為的且つ後天的にミュウへと目覚めるために協力()()()()()だろう。真面目に御免こうむる。

 

 

「この研究資料は、残しておかない方がいいですよね」

 

<当人が悪用する可能性もあるし、ここを家探ししに来た人間が持って帰って悪用する可能性もあるな>

 

 

 ひとしきり情報を確認し、ノブレスとフェニックスは顔を見合わせて頷き合う。クレーエ本人か、或いはこの資料を手にした第3者かは分からないが、この資料による二次災害は防がねばなるまい。力を行使すれば紫電が爆ぜる。記録媒体から火花が散り、それが紙媒体に燃え移った。紙が灰に、記憶媒体が使用にかになったのを確認し、爆ぜた炎を鎮火させる。

 あとはPC類や、残りの紙媒体及び情報媒体の資料を潰して回る。古城と呼ばれる程の豪邸だ、資料室も複数に分かれて保存されている。「無駄に広い家に住みやがって」とノブレスは心の中で悪態をついた。フェニックスが苦笑する気配を感じたのは気のせいではない。

 

 城の内部の探索をどうにか終えて、ノブレスは離れの方へと足を踏み入れる。

 

 

<離れ自体が巨大な資料館になっているようだな>

 

「ここに研究資料を保存しているとするなら、纏めて焼き払う必要が出てきますね」

 

 

 フェニックスの言葉を聞いて、思わずげんなりしてしまったのは致し方なかろう。先程から家探しをしているが、出てくるのはイノベイドの遺伝子情報やトリニティ兄妹を生み出して調整するアレコレばかりだ。イノベイドの行方不明に関する情報はなかなか見つからない。

 『第3者からのハッキングを受けている』という枕詞が付くものの、ソレスタルビーイングの頭脳たるヴェーダや、S.D.体制崩壊後の技術を惜しみなくつぎ込んで作られた英知の結晶たるアプロディアが“優先度低”と称した相手だ。覚悟はしていたとはいえ、しんどいものはしんどいワケで――

 

 

「――助けて!」

 

 

 不意に、少年の声がした。厳密には、能量子波。ノブレスは弾かれたように振り返り、その思念を辿る。

 しかし、彼の能量子波と思念はぷつんと途切れてしまった。残ったのは、異様な沈黙。

 思念が辿れなければ、目的の場所へと転移することもできない。ノブレスは歯噛みする。

 

 思念を張り巡らせようと試みたところへ、更なる横槍が入った。

 割り込むようにして響いた《聲》は、母艦・カテドラルの伝令使にして戦術指揮官の卵――ブラウ。

 

 

<――コマンダー・アムへ伝令だよ! アンタが今いるリヒカイト邸に向かって、見ず知らずの機体が接近中!>

 

<はぁ!?>

 

<アタシたちが関わったせいか、もしくは別件かは知らないが、このタイミングの良さ……証拠隠滅や口封じの色合いが強いね!>

 

<暢気に証拠を集める時間は無いってことですね……! トリニティのみんなは出撃できますか!?>

 

<やる気満々だ!>

 

<お願いします! 最悪、この家諸共証拠が吹っ飛んでも、当人が無事なら、思念波で尋問すれば何とかなりますから!!>

 

 

 ブラウの返事を聞くより先に、ノブレスは探し人――クレーエ・リヒカイトの思念を辿る。奴は別件でリヒカイト邸に踏み込んできた人間たちと何やら揉めているらしい。

 

 アレハンドロの死後、クレーエは細々と不老の研究を続けてきた。だが、スポンサーであるアレハンドロの死去とと遺伝子提供者であるリボンズの離反によって、彼の研究は暗礁に乗り上げる。そこで、クレーエは“ヴェーダに造られた存在”――イノベイドを拉致監禁し、研究を続けようと企んだ。

 そうして先日、運よく“重体になったイノベイド”が病院に運ばれてきた。それをチャンスだと思ったクレーエは、この街で同時多発的に騒ぎを引き起こし、怪我人を増やすことで病院をパンクさせた。怪我人の処置で大騒ぎになっている隙を突く形で、件のイノベイドを拉致することに成功したのだ。

 計画的な犯行であることは事実だが、彼がイノベイドの拉致監禁に成功したのはこの1件のみ。頻繁に発生している“イノベイドの行方不明事件”の犯人ではないが、奴が模倣犯、或いは奴を模倣犯にしている輩がいてもおかしくはなさそうだった。

 

 

<ヴェーダが造りだした偽りの生命よ。医師であった私は、以前ある方の依頼でお前たちの仲間をコピーしようとした。生み出された3人には戦闘能力を付加した。……だが、それよりも私は――不老が欲しかった!!>

 

「――うるせーんだよ、この少女人形マニアが!」

 

 

 クレーエはここに踏み込んできた人物――拉致監禁されたイノベイドを探して足を踏み入れた、訳アリのイノベイドたちに銃を突きつける。

 そのタイミングでノブレスが《飛んだ》コンマ数秒の間に、クレーエは訳アリイノベイドの片割れ――リボンズと同じ塩基配列を持つ青年によって、あっさりと組み伏せられた。

 

 

「戦闘用イノベイド!? なんでこんなところに!?」

 

「ボ、ボクは……」

 

「その声、その姿……! まさか、テオドア・ユスト・ライヒヴァインか!? 馬鹿な、お前は――」

 

<ノブレス! トリニティ兄妹が交戦始めたぞ! 戦線は拮抗してるが、ここの安全は保障できねぇ!>

 

「トリニティだと!? ワシが生み出した者たちか!?」

 

「ああそうだった! 能天気にやってる時間無いんだった!!」

 

 

 フェニックスの一喝によって、ノブレスは正気を取り戻した。

 

 謎の機体がリヒカイト邸に進軍しているのだ。戦闘用イノベイドがクレーエの元に乗り込んだ理由を追及している暇はない。早く脱出しなければ、この屋敷諸共吹き飛ばされてお陀仏である。説明がてら思念波の光景――謎の機体と交戦するトリニティ兄妹/ラグエルたちの映像を見せれば、イノベイドの青年たちは即座に部屋の奥へと向かった。

 何事かと視線を向ければ、フリルとリボンで彩られた可愛らしい洋服を身に纏った子ども型のイノベイド。先程聞こえてきた能量子波の声からして、あそこにいるのは少年だろう。彼は豪奢な椅子に座っていた。クレーエの思考を読み取れば、あのイノベイドの格好と豪奢な椅子は“奴の性癖を満たすための格好”と“件のイノベイドの生命維持装置”も兼ねているらしい。

 

 何処までも身勝手なクレーエに対してドン引きしている間に、黒髪のイノベイドが椅子ごと少年イノベイドを運び出す準備を進めていた。

 他者由来の性癖とはいえ、“若者が少女の格好をした少年を豪奢な椅子ごと運び出そうとしている”絵面は非常にアレだ。

 勿論、絵面に突っ込む時間は無い。早く逃げなければ命が無いのだ。だが、黒髪のイノベイドは振り返り、クレーエに告げる。

 

 

「ブリュンは返してもらう」

 

「私を殺さぬのか? お前たちが去っても、また別のイノベイドを捕らえることになるぞ?」

 

「私も貴方も医者だ。私は人の心を理解し、人と接する。――それが医者だと信じる」

 

 

 黒髪のイノベイドが言い放った言葉を聞いて、クレーエは息を飲んだ。理想を追いかける若者の姿に、動かされたものがあるのだろう。

 「甘いな」と笑った彼の表情は、不老にこだわっていた醜悪な笑みとは違っていた。「自分でもそう思う」と黒髪のイノベイドは微笑む。

 

 

「それじゃ、1か所に集まってください! ――《飛びます》よ!」

 

 

 話が終わったのを確認し、ノブレスは力を行使した。地下室から屋敷を臨む野原へと《飛ぶ》。転がるようにして転移した自分たちの眼前で、ラグエルとMSが鍔迫り合いを繰り広げていた。

 

 リヒカイト邸目掛けて迫るMSたちだが、ネーナ/フルーレが展開した花型のビットによって足止めさせられる。そこをミハエル/フォルスのバスターソードによって叩き切られた。2機の連携によって行動範囲が制限されていくMSは、最終的にヨハン/フィオリテのバスターライフルの射線に押し込まれたことで、纏めて撃墜されていった。

 ノブレスの小脇に抱えられたクレーエは大きく目を見開き、ラグエルたちの戦いを――或いは、成長したトリニティ兄妹たちの姿を凝視していた。眼前に広がる光景を目に焼き付けようとしているかのように。鋭く息を飲んだ音が響く。そんなクレーエに対し、ノブレスは誇らしげに告げた。

 

 

「凄いでしょう? 僕の自慢の教え子たちです! 僕なんかじゃもったいないくらい、素敵な子なんですよ!」

 

「……そうか。ワシが生み出したあの子たちは、元気にやっているのだな」

 

 

 クレーエが静かに目を伏せたのと、ラグエルの包囲網を抜けたMSがリヒカイト邸に武器を向けたのはほぼ同時。GN粒子の鮮やかな紫色の光が炸裂し、館を跡形もなく吹っ飛ばした。

 あと少し照準がずれていたら、ノブレスたちが今いる場所――イノベイドたちが乗って来た乗用車も、奴らの射程圏内/攻撃範囲に含まれていただろう。

 勿論、脱出が遅れていたらなんて考えたくない。嫌な汗が背中を流れ落ちていく。謎のMSはリヒカイト邸が吹き飛んだのを確認すると、トリニティ兄妹/ラグエルたちを完全無視して飛び去って行った。

 

 友軍が撃ち落とされても気にしないあたり、奴らの目的は果たしたのであろう。最も、情報源になりそうなクレーエは確保できたので、実質的にはこちらの勝ちと言えそうなのだが。

 危機が去ったことに安堵し、ノブレスはクレーエを地面に下ろしてやる。少年型のイノベイドごと椅子を担いでいた黒髪黒目のイノベイドも、彼を地面に下ろす。

 

 あとは、クレーエからどれ程の情報を引き出せるか――

 

 

「――え?」

 

 

 困惑の声を上げたのは、誰だったのだろう。

 

 緑の髪と紫の瞳が特徴的なイノベイドの青年か、黒髪黒目で職業が医者であるイノベイドの青年か、目の前で起こった出来事を受け止め切れなかったノブレスか――或いは、“自分の手で喉を掻き切った”という、自身の行動が理解できなかったクレーエか。

 崩れ落ちた老人の元に、いの一番で駆け付けたのは医者のイノベイドだった。彼は必死になって処置を施すが、何処からどう見ても手遅れである。戦闘用イノベイドの青年は医学の知識に明るくないなりに、自身のできること――クレーエへの呼びかけを行う。

 

 

「しっかり、しっかりしてください!」

 

「死んでは駄目だ! 死んでは――!」

 

 

 鳴り損なった笛の音みたいな呼吸音を響かせながら、クレーエはノブレスを見た。口が動くが言葉にならない。けれど、ノブレスはハッキリ、彼の《聲》を――彼が伝えようとした情報(モノ)の断片を《理解する》。

 嗤う女2人に傅く男1人。傅く男が身に纏っていた中華風の衣装に描かれたのは、(ワン)商会の企業ロゴ。着物を着た東洋人女性が、クレーエの瞳を覗き込んで――それを最後に、彼の《聲》は二度と《聴こえなくなった》。

 クレーエに呼びかけていた学生のイノベイドが悲嘆の声を漏らして額を抑え、職業が医者であるイノベイドが沈痛そうな面持ちのままクレーエの瞼を閉じてやる。ノブレスは、その光景を見ていることだけしかできなかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「連邦保安局を独立治安維持部隊の直轄組織にすることが議会で決定した」

 

 

 ウィンドウ越しから聞こえる男の声は、どことなく嬉しそうなものだった。

 

 

「4千万人規模の軍隊……その創設を可能にしたのは、ひとえにマザーコンピュータやそれが構成するネットワークの力があってこそ」

 

「お役に立てて光栄ですわ」

 

 

 褒められて悪い気はしない。蒼海はくすりと微笑み、会釈した。

 音声同士の会話だとしても、己の仕草や心理状態は反映されるものであると蒼海は思っている。

 

 男との会話回線のほかに、ウィンドウには沢山の情報が提示されていた。反乱分子であるカタロンや神出鬼没のスターダスト・トラベラー、ついこの間から封じ込めにかかっている悪の組織。

 カタロンの情報はつぶさに手にできるのだが、残りの2つはなかなか情報が入ってこない。辛うじて分かるのは、“双方の間に何かしらの繋がりがある”程度だ。

 ただ、悪の組織を構成する面々の特性からして、スターダスト・トラベラーとの間にある“何らかの繋がり”にも予測がつくのであるが。閑話休題。

 

 

(悪の組織やスターダスト・トラベラーのセキュリティも中々ね。このマザーコンピュータでも尻尾を掴めずにいるのだから)

 

 

 この2つの組織は、自分が有する力と同等のものを有していると言えるだろう。蒼海は舌打ちしたかったのを堪える。

 

 

「連邦政府は、どんな些細な抵抗にも屈してはなりません。人類の繁栄と、未来のためにも」

 

「貴女方の協力に期待する」

 

「勿論ですわ」

 

 

 その言葉を最後に、男との通信は終わった。相変わらず、ウィンドウに提示される情報に動きは見られない。蒼海は深々と息を吐き、部屋を出た。

 大広間に出ると、シミュレーター訓練を終えた留美(リューミン)紅龍(ホンロン)が休憩しているところだった。留美(リューミン)はフルーツの盛り合わせに舌鼓を打っている。

 

 彼女は蒼海の存在に気づくと、ぱっと表情を輝かせた。

 

 

「連邦の動きはどうなっていますの?」

 

「連邦保安局が、独立治安維持部隊の直轄組織になったみたい。これでアロウズの行動範囲が広まり、軍事力の強化にも繋がるわ」

 

 

 蒼海は留美(リューミン)と向かい側のソファに腰かけ、フルーツへと手を伸ばした。

 ブランドで保障された果実の甘みは、やはりブランドに恥じぬ味である。今後とも贔屓にするとしよう。

 留美(リューミン)も、どこかうっとりとした様子で頷いた。カットされたパイナップルを齧りながら、彼女は妖艶に微笑む。

 

 

「アザディスタンの王女様(プリンセス)や悪の組織の代表取締役を拘束したのは、ソレスタルビーイングや悪の組織を炙り出すためのものね」

 

「ええ。どちらも確実にここへ来るでしょう。特にソレスタルビーイングはね」

 

「あそこの施設には、ガンダムマイスターだったアレルヤ・ハプティズムも拘束されている。活動再開にあたって、戦力は増強したいですもの」

 

 

 留美(リューミン)はそう言って、端末を指示した。ソレスタルビーイングに送った情報である。

 画面には、アレルヤが拘束されている施設の場所が映し出されていた。

 

 蒼海は白桃を齧る。甘い果実をじっくり堪能した後、言葉を続ける。

 

 

「そして悪の組織の連中は、同族意識が強い。1人でも仲間が拘束されれば、奴らはどんなに危険な状態になろうとも救出へ赴くわ。奴らはそういう生き物よ」

 

「そうなのですか?」

 

 

 はっきりと言いきった蒼海に、留美(リューミン)は目を丸くした。蒼海は確証を持って頷く。

 

 

「ならば、悪の組織は今頃てんやわんやしているでしょう。指導者を失ってしまったのだから、烏合の衆になるのも時間の問題です。あまり気にしなくとも……」

 

紅龍(ホンロン)、黙ってなさい」

 

 

 言葉を発した紅龍(ホンロン)に、留美(リューミン)はぴしゃりと言い放った。彼女の黒い目には、紅龍(ホンロン)への嫌悪感が惜しみなく注がれている。

 無能な兄への怒り。突き刺さる眼差しに耐えきれなくなったのか、紅龍(ホンロン)は目を伏せ、2つ返事の後に視線を逸らした。留美(リューミン)は彼に指示を出す。

 

 

「もういいわ。貴方は人質の監視をしていて頂戴。暫く出番はないもの」

 

 

 蒼海は次の獲物に手を伸ばしながら、ちらりと視線を向けた。

 

 元国連の代表であるエルガン・ローディックは、背中を壁に預けるような形で体を投げ出していた。彼はぐったりとしたまま身じろぎ一つしない。最初に行ったマザーコンピュータの尋問によって、彼はあそこまで衰弱してしまった。

 本来ならばもっと徹底的に、深層心理の奥底まで探ってやりたかった。だが、殺してしまっては意味はない。エルガンもまた、スターダスト・トラベラーと交渉するために必要な人質なのだ。生きていてもらわなくては困る。

 計画上仕方がないとはいえ、完全な支配権に置けないというのは厄介なものだ。エルガンと似たようなことを行って、どうにか動きを制限しているブシドーのことを思い出す。生来の気質故か、或いは当人の我の強さ故か、生かさず殺さずの塩梅は非常に難しい。

 

 普通の人間にやったら、その人物は即刻廃人と化しているであろう。

 その観点から見ても、ブシドーの精神力は計り知れない。

 

 ……最も、それは、この世界の異例事態(イレギュラー)――『刹那・F・セイエイとグラハム・エーカーが恋人同士である』という部分に起因しているのだろうが。

 

 

(まあ、うまく使わなくちゃね)

 

 

 蒼海はくすりと微笑みながら、端末に視線を向けた。『知識』では、ここを抜けた後々に行われる戦いで、ブシドー/アヘッド・サキガケが刹那/ダブルオーと交戦する。現時点を含む『その時点』では、ダブルオーのトランザムは未完成状態だ。

 できれば、ここでダブルオーを潰しておきたい。だが、『知識』におけるブシドーはガンダムとの真剣勝負に拘っているため、刹那に追撃することなく、ダブルオーを“敢えて”逃がしている。手駒にしたブシドーも、過程が違えど似たような思考回路を持っていた。

 この場でダブルオーを潰すということは、同時に、ブシドーも一緒に潰れてしまう可能性がある。貴重な手駒を失うのは避けたいが、刹那がいなくなった後の彼がまともに使えるかと問われれば、恐らく否であろう。

 

 ――なら、視野に入れていても問題なさそうだ。

 

 海月たちにその旨を連絡する。彼らは即座に是の返事を返した。

 これで、あとはいい報告を待つだけである。蒼海はより一層笑みを深くした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 天気は晴天。アロウズの軍事基地の周囲は、異様な沈黙を保っている。戦力の大部分が、この基地から収容施設の方へと出払ったためであろう。

 クーゴたちの目標地点でもあるその収容施設には、ソレスタルビーイングのガンダムマイスター――アレルヤ・ハプティズムが収容されている。

 アロウズのお偉いさんたちは“ソレスタルビーイングが仲間を救いにやって来る”と踏んで、この采配にしたに違いない。

 

 ――そして、確実に、天使たちの息の根を止めるつもりだ。

 

 

「アニエスたちから連絡があった。救出準備は完全に整ったそうよ」

 

 

 ブリーフィングルームから、艦長であり戦術指揮官でもあるエイミーの声がした。今回、彼女たちの部隊は救出作戦の陽動および収容役だという。その収容施設には、悪の組織総帥であるベルフトゥーロを始めとした技術者たちが収容されているためだ。

 “ミュウの持つサイオン波のテレポートを駆使し、収容されている技術者たちを各部隊の戦艦へと転移させる”のだという。アニエスたちの部隊は、戦艦に搭載されているワープドライヴのような役目を果たすために、先に施設内へと足を踏み入れているそうだ。

 

 クーゴは彼らの指揮下にはない。クーゴは“イデアが嘗ての同僚を助けようとしているのに同行しているにすぎない”からだ。

 そしてイデアも、己の目的――自分が背負う役目を果たすために動いている。だから、イデアもエイミーの指揮下には入ってない。

 イデアはじっと端末と睨めっこを続けている。彼女の横顔はどこまでも真剣で、とてもじゃないが話しかけられるような空気ではなかった。

 

 さて、どうしたものか。クーゴがそんなことを考えていたとき、イデアが端末を閉じて立ち上がった。そのタイミングを待っていたかのようにブリーフィングルームの扉が開く。

 

 

「2人とも。射出準備はできたよ」

 

 

 声をかけてきたのは、ケイ・ニムロッドだ。ホワイトベースのクルーで、メカニックを担当している。彼女の後ろに、通信士であるルナもついてきた。

 彼女たちに礼を言い、クーゴとイデアは格納庫へと転移する。整備が行き届いた愛機は、光を反射して煌めいていた。心なしか、カメラアイ近辺の反射が強い気がする。

 

 まるで、相方の存在が近くにあると示しているかのようだ。

 はやぶさの眼差しに応えるように頷き、クーゴはコックピットに飛び乗る。

 イデアも真剣な様子しで、コックピットに乗り込む姿が見えた。

 

 ハッチが開く。眼前には、澄み切った青空と乾いた大地が広がった。遠くの地平線の果てに、海が見える。

 

 

「ソレスタルビーイングが作戦を開始したようです」

 

 

 ルナはそう言って、クーゴたちに情報を提示した。目標地点である収容施設の映像が、ウィンドウに映し出される。

 大気圏を突っ切るような形で突入してきたソレスタルビーイングの母艦。アロウズがその情報を得たとき、間髪入れず施設が爆発した。

 プトレマイオスは降り注ぐ砲撃の雨を縫うように切り抜ける。宇宙船にはあるまじき速度だ。よく見ると、艦は緑の粒子に包まれている。

 

 砲撃の雨あられに対しても、プトレマイオスは減速しようとしない。目標、およに着陸地点をしっかり見据えているためだ。船は変形し、そのまま海へと突っ込んだ。ド派手な水しぶきが上がり、施設周辺に海水が流れ込む。

 これで、地上に配備されていたMS部隊は一時的に行動不能状態に陥る。水中では、粒子ビームの効力は半減される。アロウズの部隊がプトレマイオスに攻撃を仕掛けるとしたら、手段はミサイルくらいにしかならないだろう。GNフィールドの前では意味がなさそうだが。

 

 

「さっすがスメラギさん!」

 

 

 映像を見ていたイデアが我がことのように喜んだ。その姿を見ていると、やはり「イデアもソレスタルビーイングへ戻るべきではないのか」と言いたくなる。彼女の『還りたい』場所は、やはり、ソレスタルビーイングのようだった。

 

 攻撃がプトレマイオスに集中する中、2機のガンダムが施設へ飛来した。1機はコロニー・プラウドで見かけた機体で、もう1機はエクシアの面影を宿す新型だ。後者のパイロットは刹那だろう。クーゴには確信があった。

 「今から行けば、ソレスタルビーイングの作戦行動に間に合います」とルナは告げた。それに促されるように、クーゴとイデアは前を見据えた。ここまで連れてきてもらった礼を告げれば、ルナは力強く微笑み頷く。

 

 

「では、お2人とも。ご武運を――」

 

「あ、ルナちゃん。ここにいたの」

 

 

 オペレーターとしての役目を果たしていたルナを呼び止めたのは、エイミーだった。通信欄に映り込んだ彼女の笑顔は、明らかに何か企んでいるような顔である。

 嫌な予感を感じ取ったルナが、ブリキの人形を思わせるようにして首を動かした。彼女のこめかみからは大量の汗が流れ落ちる。対して、エイミーは益々笑みを深くした。

 それを最後に、ルナからの通信が途切れた。間髪入れず、彼女の思念が艦内全体に響き渡る。思念と言うよりは、もはや金切り声や絶叫という類のものだった。

 

 もしかしたら、この前ノブレスが開発に関わった新型機に搭乗させられ、出撃させられることが決まったのかもしれない。その真偽を知る術は、クーゴは持ち合わせていなかった。思考を切り替える。

 

 一足先にイデア/パハリアが飛び出す。クーゴ/はやぶさもそれに続いて、カタパルトから飛び出した。

 ESP-Psyonドライヴの力で転移すれば、目的地の基地が眼下に広がる。アロウズのジンクスたちが忙しなく飛び交い、ガンダムの迎撃に当たっていた。

 

 

「……何か、庇ってるのか?」

 

 

 シールドと砲撃を展開し、梃子でも動こうとしない機体があった。コロニー・プラウドで見かけた重装備型の機体である。ジンクスたちはその機体に攻撃をしようとしたが、別方向からの狙撃によって阻まれていた。

 シミュレーターで見かけたロックオンのガンダム――スラオシャとよく似た機体だ。おそらく、この機体はスラオシャの元になったとされるガンダムデュナメスの“正統な後継機”なのだろう。何もなければ、ロックオンが乗っていたであろう機体か。

 増援のジンクスたちが飛来する。攻撃はますます激しくなった。それを見たイデア/パハリアが、重装備型の元へと真っ直ぐ飛んでいく。一方的な攻撃に圧され気味だった機体の眼前に降り立つと、サイオン波を発生させた。

 

 重装備の機体に攻撃を仕掛けようとしていたジンクスたちが吹き飛ばされる。いくつかの機体が、何かに押し潰されるかのように爆発四散した。

 

 

<イデア!?>

 

<どうしてここに!?>

 

<まさか、私たちを助けるため……!?>

 

 

 どこからか、ざわめく声が《聴こえた》。水の中にいるプトレマイオスの母艦か、重装備型のガンダムか、クーゴには判別がつかない。

 水しぶきからどうにか立ち直ったティエレンたちが、新手として舞い降りたイデア/パハリアに攻撃を仕掛けた。

 

 その攻撃などものともせず、パハリアは自立型兵器とフレキシブルアームズを同時に展開した。放たれたビームの雨あられが敵機の動きを制限し、足止めされた機体を五芒星型のブレードが叩き切っていく。天女が舞うと言うのは、きっとこのような動きのことを言うのだろう。

 

 ガンダムに殺到する攻撃部隊は、さながら“砂糖に群がる蟻”のようだ。クーゴは操縦桿を動かし、その中へ突っ込む。大気を切り裂くような勢いに、幾つかのジンクスやティエレンが距離を取った。

 クーゴのはやぶさを新手と認識したジンクスが向かってきた。ビームランスから攻撃が繰り出される。飛行形態のはやぶさはひらりとそれを躱していった。アクロバティックな飛行を繰り返し、回避に専念する。

 

 

(ユニオン時代、あいつの無茶ぶりに応えてきたことを思い出すなぁ)

 

 

 場違いだというのに、クーゴの口元には乾いた笑みが浮かんでいた。当時の苦労がフラッシュバックしたのだろう。「これではいかん」と、クーゴは小さく首を振る。

 

 そのとき、視界の端に映ったジンクスが、パハリアへ攻撃を仕掛けようとしていた。

 クーゴは即座にはやぶさを旋回させ、飛行形態を解いた。ライフルを撃ち放つ。鮮やかな光がジンクスを撃ち抜いた。

 間髪入れず、今度はパハリアが自律兵器を飛ばす。はやぶさの背後に迫る機体が爆発した。

 

 

「ありがとう、恩に着る」

 

「お互い様です」

 

 

 イデアがにっこり微笑んだのが《視えた》。クーゴも頷き返す。

 ふと視線を向ければ、重装備のガンダムの丁度真後ろに、穴が開いていた。

 

 視界の端に映ったのは、刹那が搭乗していた機体――ガンダムエクシアの面影を宿す新型機。

 

 

(まさか、刹那はあそこに?)

 

 

 その真偽を確かめる間もなく、新手のジンクスやティエレンたちがこちらに迫ってきた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 どこもかしこも、銃撃音が響き渡る。アロウズの連中と、カタロンの部隊が戦っているのだろう。

 

 

<グラン・マ。みんなは無事に、転移が終わったみたいです>

 

 

 アニエスからの思念波が届き、ベルフトゥーロは笑みを浮かべた。

 『首尾は上々』とはこういうときに使う言葉である。

 

 

<オーケイ、アニエス。キミたちも早く転移しなさい>

 

<え!?>

 

 

 アニエスが素っ頓狂な声を上げた。

 

 

<じゃあ、グラン・マは!?>

 

<大丈夫大丈夫。アテはあるから>

 

<……了解>

 

 

 ベルフトゥーロも一緒に脱出する者だとばかり思っていたようで、ジンが驚いた声を上げる。それに対して、ベルフトゥーロは満面の笑みで宣言した。足元には気絶した看守や兵士たちが転がっている。奴らはぴくりとも動かない。

 普段は車椅子を利用しているベルフトゥーロであるが、この収容所にはそんなものなど置いていなかった。尋問されるときくらいしか持ってきてくれなかったな――なんて思いながら、ベルフトゥーロは背伸びした。

 地面を蹴るように立ち上がる。こうして立ち上がるのは久々だが、まあ、今回は致し方ない。非常事態だ。ベルフトゥーロは背筋をぴんと伸ばし、一歩踏み出す。そうして、ほぅ、と息を吐いた。

 

 ちょっと、しんどいかもしれない。

 

 深層心理チェックの影響が出てしまったのだろうか。荒ぶる青(タイプ・ブルー)の力や、元から高い能力を有していたということもあって、特に苦労もなく耐え抜けたのに。

 もしかして、最近やたらと『尋問』という名の深層心理チェックが行われていたのは、ソレスタルビーイングがここに突入してくると察知していたからなのだろうか。

 

 

(私が逃げ出すと踏んでたんだろうなぁ。ミュウの力を使えないようにしといて、身動きできないようにしようとした。……でなきゃ、兵士が来るはずないわけだし)

 

 

 まだまだ現役だと思っていたが、年は取りたくないものである。因みに、今年で500歳代。しかも後半だ。

 エルガンと年齢は変わらないのに、どうしてか、ベルフトゥーロは日常生活に車椅子を利用する羽目になってしまっている。

 

 

「やっぱ、車椅子回収していこう」

 

 

 ベルフトゥーロは深々と息を吐いた。

 

 この差は一体何なんだろう。不公平だ。なんで外見年齢が上のエルガンは普通に歩けるのだ。エルガンはベルフトゥーロよりも3つ、年が下だというだけなのに。

 牢屋から出て、トイレへ足を踏み入れる。服は捕虜用の簡素な囚人服で、可愛くもなければ格好良くもない。髪はぼさぼさだし、肌もガサガサであった。

 まるで、徹夜帰りのリーマンみたいな風貌である。これを目にしたら、大抵の人間が「こいつ平社員だろ。しかもダメな方の」と太鼓判を押しそうだ。

 

 ベルフトゥーロはサイオン波を発生させた。青い光が舞う。瞬間、どこからともなく車椅子が独りでに転移してきた。そのまま、車椅子に腰かける。

 車椅子を漕ぎだせば、その度に体が小さく揺れた。収容所の床は殆ど舗装されていないようだ。車椅子利用者のことは考えていないらしい。

 

 

「うぉう! 揺れるなぁ……」

 

 

 ソレスタルビーイングの襲撃で、攻撃が仕掛けられているのだ。多少揺れるのはいた仕方がない。振動をどうにかやり過ごしながら、車椅子を漕いだ。

 マリナ・イスマイールが捕まっている独房の場所は、閉じ込められているときに思念を追いかけていて把握している。彼女も脱出させてあげたい。

 

 そんなことを考えていたためか、曲がり角から誰かが飛び出してきたのに気付かなかった。サイオン波を使ったのは、ほぼ反射の行動であった。ばちん、と、派手な音が鳴る。銃弾の薬莢が床に転がった。

 青いパイロットスーツに身を包んだ女性――ソレスタルビーイングの刹那・F・セイエイと、彼女に連れられてきたマリナ・イスマイールだ。どうやら、マリナは刹那に助け出されたらしい。それはそれでほっとする。

 ベルフトゥーロの姿を目にした刹那が銃を構えて怪訝な顔をし、見知った姿であるマリナは表情を緩ませた。ベルフトゥーロはマリナに会釈しつつ、刹那に向き直る。イデアが見つけた、イオリアの遺志を受け継ぐ“希望”。

 

 

「ねえ」

 

 

 ベルフトゥーロは刹那を呼び止めた。マリナを助けてこの場から脱出しようとしていた刹那は、更に眉間の皺を深くする。ベルフトゥーロを連れていく予定がなかったためだ。

 

 

「私も連れて行って」

 

「っ」

 

「――私を連れて行けば、イデアが『必ず』戻って来るわよ」

 

「!!」

 

 

 刹那の手を引いて、耳打ちする。驚きに満ちた赤銅の瞳が、ベルフトゥーロを映し出した。

 瞳の中の女は、どこまでも妖艶で自身に満ち溢れた、見るからに不敵な微笑みを浮かべている。

 「必ず仲間が戻って来る」という言葉は、ソレスタルビーイングにとって魅力的な条件だ。

 

 暫しの思案の後、刹那は小さく頷いた。そうして、何かまずいものを目の前にしたように渋い顔をする。

 ――ああ、ガンダムのコックピットは車椅子には対応していなかった。そりゃあまずいか。

 

 

「大丈夫。車椅子無くてもなんとかなるから。乗り込むときに乗り捨てるし」

 

「………………わかった」

 

 

 刹那はようやく、渋々ながらも納得してくれたようだ。マリナをリードしつつ、車椅子のベルフトゥーロを気にしてくれているらしい。

 

 

「『刹那は、無表情でぶっきらぼうだけど、心根はとっても優しい子なんですよ』」

 

「……は?」

 

「イデアが言ってた通りだった」

 

 

 囁くようにして刹那に告げれば、彼女は大きく目を見開いた。何か言いたげにこちらを見返したが、ベルフトゥーロは素知らぬ顔をして視線を逸らす。勿論、わざとだ。

 変な沈黙とぴりぴりした空気の中、3人は施設内を駆けていた。目的地は、刹那のガンダムが突っ込んできた場所である。エクシアの後継機、ダブルオー。イオリアの理論――ツインドライヴ搭載機だ。

 想像するだけで、メカニックだった頃の血がたぎって来る。場違いな高揚感を感じつつ、ベルフトゥーロは人知れずにサイオン能力を発動させた。

 

 連絡相手は、ソレスタルビーイングに加勢しているイデアとクーゴだ。

 特にイデアは、ベルフトゥーロの意図を測りかねるであろう。

 

 

(本当に、『還りたい』場所に、『還れる』ように)

 

 

 イデアの想いを辿るように、ベルフトゥーロは物思いに耽る。

 

 

(……吹っ切れば強いのに、難儀だなぁ。マリアネラは)

 

 

 母親/親友に似て、頑固で思い込みが激しいきらいがあるから。

 

 

(そう思わない? ――ねえ、イニス)

 

 

 ベルフトゥーロの問いに答えてくれるべき人の声は、聞こえなかった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「<プトレマイオスに随伴しろ>、ねぇ」

 

 

 つい先程届いた思念波に、クーゴはひっそり首を傾げる。ベルフトゥーロは何をしたいのか分からない。

 

 前を見れば、ガンダムたちがジンクスの群れを屠っている光景が広がっていた。もう、クーゴやイデアの援護は必要ないだろう。特にイデアは、本当ならば「この場から離脱していたかった」はずである。

 パハリアはどことなく落ち着きがなさそうに見えた。パイロットであるイデアの思考が反映されてしまっているかのようだ。ジンクスを屠りながら、しきりにガンダムたちの動きを気にしていた。

 

 オレンジ色の可変型ガンダムが、鬱積した想いを吐き出すようにしてジンクスたちを倒していく。刹那が乗っているであろうガンダムも、ジンクスたちをばったばったと倒していった。重装備型のガンダムも、敵を倒しながら距離を取る。

 離れたところで狙撃をしていたガンダムは別の方向を気にしていた。その方向に視線を向ければ、輸送船へ向かって捕虜たちが走っているのが伺える。悪の組織の面々はサイオン波によるテレポートで脱出したわけだから、あそこにいるはずがない。

 ならば、あの輸送船団と捕虜はカタロンの連中だ。ソレスタルビーイングの理念上、暴力に訴えるカタロンのやり方に同調したり、彼らと結託するようなことをするとは思えない。――では、何故、狙撃型ガンダムはカタロンの面々を気にしているのか。

 

 

<あのパイロット、カタロンの構成員よ。しかも、相当な腕を持ってる>

 

「え」

 

<多分、ソレスタルビーイングの何人かはそれを把握したうえで、マイスターとして引っ張ったんだと思うわ。だって彼、MSファイトの一般企業部門で優勝してる>

 

 

 ベルフトゥーロの思念波が流れ込んできた。間髪入れず、ウィンドウに新聞記事が表示される。大きな優勝トロフィーを持つ青年の顔は、ロックオンと瓜二つである。

 彼は双子の弟がいたと言っていた。しかも、新聞記事の時期からして、ソレスタルビーイングの構成員として行動していた頃のものだから、この青年はロックオンではない。

 

 じゃあ、この青年がライル・ディランディ――ロックオンの双子の弟で、エイミーの兄なのか。

 

 

<ときに若造>

 

<なんでしょう?>

 

<ニール・ディランディやエイミー・ディランディに関すること、ソレスタルビーイングのクルーには喋んないでね>

 

 

 そう言ったベルフトゥーロの声は、どこまでも真剣だった。しかし、彼女の顔は茶目っ気のある笑みを浮かべている。青い瞳は悪戯っぽく細められた。

 この4年間、クーゴは彼女と話をしてきた。その経験則が、「彼女はロクなことを考えていない」と告げている。クーゴは思わず眉間に皺を寄せたが、ベルフトゥーロは何も言わなかった。

 ベルフトゥーロを問い詰めるのをやめたのと同じタイミングで、ガンダムたちが明後日の方向へと飛び立っていく。まずは青い機体が、次に紫の機体が、その次に橙色の機体が、虹の彼方へと飛び退る。

 

 そこから一歩遅れて、カタロンの輸送船が動き出したのを見届けた緑色の機体が最後尾についた。ソレスタルビーイングは撤退することを選んだらしい。

 クーゴ/はやぶさはイデア/パハリアの方へと視線を向けた。顔を見合わせ、頷く。2機のカメラアイが陽光を反射し煌めいた。

 

 

「全速力で振り切るぞ、はやぶさ」

 

 

 空中で可変し、飛行形態となったはやぶさが空へと飛び立つ。それに続いてパハリアが飛んだ。

 

 ジンクスたちは追ってこない。追いすがろうとした機体もいくつかあったが、動きを止めた。ややあって、彼らは施設の方へと戻っていく。

 この場を取り纏めていた指揮官は、ソレスタルビーイングを追うことよりも施設の安全を取ったらしい。模範的な軍人の判断だ。

 

 

「アロウズの指揮官の中には、武功を上げようとして無茶苦茶なことをする人もいると聞きます。……今回の作戦担当者には感謝しないと」

 

 

 どこか安堵したようなイデアの声には実感がこもっているように思う。そういえば『カタロンに対する治安維持行為にも、指揮官の良心や良識および常識がしっかり反映されている』とベルフトゥーロが言っていたことを思い出した。

 指揮官、という言葉に浮かんだのは、部隊を率いていたグラハムの背中だった。彼の性格や要求には幾度となく振り回されたが、指揮は常に良心的で的確だった。……ただ、“彼が成してしまうことが周囲にとって想定外なことが多い”のが玉に傷だったが。

 今、グラハム――ミスター・ブシドーは、ライセンサーという特殊な地位についているという。表向きは、“指揮官や任務に束縛されることなく、自由に動き回る遊撃役”だそうだ。戦果を見るに、彼は一騎当千型のワンマンアーミーとなっているらしい。

 

 アプロディアが入手したデータを見るに、“問題行動が多い”“自由にしすぎだ”“ライセンサーの地位を剥奪すべき”という評価がちらほら見られたのが、ちょっとばかし気がかりである。閑話休題。

 

 ガンダムたちは次々と海の中へ身を沈めた。ド派手な水しぶきが上がる。そういえば、タリビア紛争のとき、ガンダムエクシアが海中に潜ることで戦線から離脱していたか。

 ESP-Psyonドライヴとサイオン波を使えば、はやぶさも海中に潜ることは可能だ。シミュレーターでは何度も繰り返したが、実践するのは今回が初めてである。

 

 

「大丈夫ですよ。何かあったら、私もお手伝いしますから」

 

 

 イデアがふわりと微笑み返した。彼女の笑顔を見ていると、不思議と大丈夫な気がする。

 

 

「ありがとう。キミがいるなら大丈夫だな」

 

 

 クーゴもイデアへ笑い返し、操縦桿を握り締めた。集中する。身体とはやぶさが青い光に包まれ、粒子の色が黄色から翡翠色に変わった。そのまま、はやぶさは着水。のちに潜水へと移行した。ドライヴの出力も安定しているし、問題は無い。

 ふと見れば、パハリアも潜水を終えていた。はやぶさと並ぶようにして、天女は水中を泳いでいる。イデアも無事で何よりだ。通信を開けば、嬉しそうに笑うイデアの顔が映し出される。釣られてクーゴも微笑んだ。

 

 

<2人とも>

 

<はい>

<なんですか?>

 

<プトレマイオスへの着艦許可もぎ取るまで、随伴し続けて。――なるべく早く済ませたいし>

 

 

 何やら不穏な響きを宿した思念が流れてきた。ベルフトゥーロが悪い笑みを浮かべている姿が《視えた》ような気がする。刹那、背中に凄まじい悪寒が駆け抜けた。

 嫌な予感がする。確実に、ベルフトゥーロは何かをする気だ。悪意に満ちた行動をするつもりだ。ソレスタルビーイングのクルーに、研ぎ澄ました牙を立てようとしている。

 

 

<グラン・マ! みんなに変なことはしないで!! お願いですから――っ>

 

 

 血相変えてイデアが叫ぶが、ベルフトゥーロは答えない。

 

 刹那、頭の中に直接映像が流れ込んできた。プトレマイオス内のどこかの部屋、だろうか。簡素なつくりの部屋の椅子に、ベルフトゥーロは拘束されている。

 彼女の前には、刹那やプトレマイオスのクルーと思しき男性が数名、怪訝な顔をして立っていた。彼らの表情は、捕虜に尋問するそれである。剣呑な眼差しが突き刺さる。

 

 

<――答えてくれ。あんたとイデアは、どんな関係なんだ?>

 

 

 刹那の問いかけに、ベルフトゥーロは鼻で笑った。その態度に腹を立てたのは、紫色の髪で眼鏡をした青年である。

 

 

<答えろ。貴様は彼女の何なんだ!?>

 

 

 彼は強い調子でベルフトゥーロを問い詰める。暴力や薬物に訴えようとしないだけ良心的なのかもしれなかった。

 他の男性たちも口々に彼女に問いかけるが、ベルフトゥーロは不敵な笑みを崩さない。

 

 

<ふふ、ふ、ふふふっ。――はは、あっはははははははははは!!>

 

 

 終いには、盛大に大爆笑し始めた。ベルフトゥーロに尋問していた面々が凍り付く。異様な対応に、どう反応すればいいのかわからなくなったためだ。

 

 

<キミたち、自分たちが『尋問する側』だと思ってるようだね>

 

 

 ベルフトゥーロはひいひい笑いながら、そう言った。何を言っているんだ、と言いたげな眼差しが、四方八方から突き刺さる。

 しかし、クーゴは《理解し(わかっ)て》いた。研ぎ澄まされた牙が、鈍い光を放っていることを。狩られることを知らぬ獲物たちは無防備にしていた。

 

 ――そして、牙は突き立てられる。

 

 次の瞬間、尋問していた面々が崩れ落ちるように膝をついた。刹那や男性たちは呻きながら『何か』に対して抵抗するが、圧力に耐え切れず床に倒れこんでしまう。体を起こすことすらできないらしい。

 ベルフトゥーロの体が青く発光している。彼女のサイオン波によって発生した超重力が、刹那たちを床に縫い付けているのだ。骨が軋むような音が耳を掠める。ベルフトゥーロの青い瞳がぎらついた。

 そこにいるのは獣である。嘗て、人類軍の戦艦を屠った“ナスカの子”。生身での戦闘は久しいと笑っていたベルフトゥーロの姿からは似ても似つかない。クーゴが息を飲むのと、ベルフトゥーロが鋭い笑みを浮かべたのは、同時だった。

 

 

<――『尋問される』のは、テメェらの方だ>

 

 

 

 

 

 

 

 クーゴ・ハガネ、只今、明日を探して迷走中。




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