問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>   作:白鷺 葵

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【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



17.決別-さよなら-

 

 次から次にオートマトンが襲い掛かってくる。アンドレイはそれらを必死に巻きながら、一般人である絹江、シロエ、マツカらを先導していた。

 

 オートマトンは何をトチ狂ったのか、一般人である3人に対して優先的に攻撃を仕掛けてくる。彼らを守りながら逃げるというのは至難の業だったが、それが軍人としてのアンドレイの職務であった。

 職務である以上に、絹江を守りたいと願うのはアンドレイ個人の想いだ。まあ、今はそんなことなどどうでもいい。この3人の安全を確保しつつ、施設内から脱出しなくてはならない。

 

 

(あの新型は、テロリストおよび反政府組織の人間“だけ”を鎮圧するものではなかったのか!?)

 

 

 護身用の銃を構えつつ、アンドレイは身を潜める。勿論、取材に来ていた一般人3人組を庇うことも忘れない。

 自分は市民を守る、誇り高い軍人なのだ。絹江の不安そうな眼差しを受け止め、安心させるために彼女に言い聞かせる。

 

 

「絹江さん、大丈夫です。必ず私が貴女たちを守ります」

 

「スミルノフ少尉……」

 

 

 絹江は安心したのだろう。ふっと表情を緩ませた。シロエとマツカは周囲の状況を確認している。

 一般人でありながら、周囲の危険を探るその眼差しは、軍人たちのものとよく似ているように思った。

 

 “会場にテロリストが潜伏しているため、鎮圧用のオートマトンが投入される”――話を聞く限り、嫌な予感は感じていた。『参加者に危険が及ぶのではないか』というアンドレイの申し立てを、上層部は軽くあしらったのである。『新型は、アロウズに異を唱える異分子だけを鎮圧するから問題ない』と。

 

 なんて暴論がまかり通ったのだ。アンドレイは思わず歯噛みする。アロウズの理念は、いったいどこへ行ってしまったのだろう。

 しかも『反乱分子“だけ”を鎮圧する』と言いながら、“ただの一般人に襲い掛かっている”という現実及び事実はどう説明するというのか。

 

 

「うわあああああ!」

 

 

 また1人、オートマトンによって、人が無残にも蜂の巣にされた。その人物はウエイターの格好をした青年であった。彼の虚ろな眼差しは絹江へ向けられている。倒れた拍子に投げ出された手は、彼女に助けを求めているかのようだった。

 

 

「――ッ!」

 

 

 人が殺される現場を間近で目撃したことはなかったのだろう。絹江が顔面蒼白になって口を抑えた。シロエとマツカも顔を真っ青にして、彼の姿を見つめていた。

 オートマトンは獲物を探してうろついていたが、別の方向にいる獲物を見つけたようだ。アンドレイたちを無視して廊下を突き進んだ。

 

 

「今だ! 走るぞ!」

 

「はい!」

 

 

 アンドレイの号令と共に、絹江たちが駆け出す。背後から銃撃音が響いた。視界の端で青が煌めく。

 振り返ることなく、4人は廊下を駆ける。奥の方に非常口が見えた。4人は躊躇うことなくそこへ駆け込み、ドアを蹴破る勢いで飛び出す。

 外には脱出できた人々が集まり、身を寄せあっていた。自分たちはどうにか助かったらしい。命拾いしたという訳か。

 

 絹江たちの無事を確認しようとし――アンドレイは気づいた。絹江たちはじっと会場を見つめている。彼女たちの眼差しは、救えなかった命を悼むような眼差しであった。悲しみの奥には、何かに対する強い怒りが滲んでいるように見える。

 

 自分の中に去来したこの疑問と予感を、何と呼ぼう。

 アンドレイは、3人に声をかけることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 つい先程、自分が何をしたのかを、ビリーは『正しく』理解した。

 あろうことか、親友に向かって発砲したのである。終いには、揉みあいの果てに親友を撃った。

 

 

「ああ、あああ、ああああああああああ……!」

 

 

 どうして自分は、何の躊躇いもなく親友を殺そうとしたのだろう。彼を恨んでいるなんてあり得ない。

 そりゃあ、親友のせいで徹夜デスマーチを敢行する羽目になったことは何度もあるし、怒りを抱える出来事がないわけではないが。

 流石に、親友を「殺してやろう」だなんて思ったことなどないし、ビリーにはそんな大それたことができるとは思ってもいなかった。

 

 自分がとんでもないことをやろうとしている。自分の意識外で、誰かに体を乗っ取られてしまったかのようだ。

 

 

(とんでも、ないこと)

 

 

 ビリーがその単語を反復したとき、ずきりと頭が痛む。ノイズまみれの光景の向こうで、誰かが首を締められていた。ぎりぎりと音が聞こえてきそうである。

 誰かは、見目麗しい茶髪の女性だった。苦しそうな呻き声が、徐々にか細くなっていく。手の主は相当女性を恨んでいたようで、更に力を込めていた。

 

 このまま首を圧迫され続ければ、女性はやがて呼吸を止めるであろう。物言わぬ死体となり、床に転がるのだ。女性を締める手の主は、そのことをよく知っていた。むしろ、知っているから首を締めているのだ。

 不鮮明なノイズが少しづつクリアになっていく。見覚えのある女性の姿が鮮明になってきた。彼女のことを、ビリーはよく知っている。淡い想いを抱き、焦がれ続けた高嶺の花――リーサ・クジョウだった。

 では、そのクジョウの首を締めて殺害しようとしている人物は誰なのか。ビリーが思案に耽る間にも、映像の中で聞こえるクジョウの呼吸が弱々しくなっていく。クジョウは己の死を悟ったのか、悲しそうに目を閉じた。

 

 

『……ごめんなさい、ビリー……』

 

 

 弱々しく紡がれた謝罪の言葉が何を意味しているのか、ビリーは『正しく』理解した。――理解してしまった。

 

 ビリーは、殺そうとしたのだ。リーサ・クジョウを。

 そんなことをしたいなんて、考えたことなんか、なかったのに。

 

 

(そうだ。僕は、あのときも同じように……!)

 

 

 意識ごと体を乗っ取られたのは、親友を撃ったときだけではない。高嶺の花を殺そうとしたときもだ。部屋が荒らされ、高嶺の花が姿を消した日のこと。その日、ビリーは彼女を手にかけようとしていた。

 ビリーの体中から嫌な汗がどっと噴き出す。頭の中は完全にパニックであった。今、自分に何が起きているのだ。自分じゃない何者かに体を奪われ、自分の望まぬまま動いている。この状態が異常であるということはわかっていた。

 助けを求めるように親友へ視線を向ける。彼は、叔父に介抱されていた。軍服には美しい青の布が巻かれている。しかし、端の方に無理矢理引きちぎられたような痕跡があった。誰かが親友を手当てしてくれたらしい。

 

 ビリーの脳裏に、ドレスの引き裾を引きちぎって応急処置を施していた人物の後ろ姿がよぎった。そういえば、親友を撃つ前に、自分はその女性を殺そうとしていた。恐ろしい事実を次から次へと理解し、ますますビリーは寒気を覚えた。

 

 

(ああ、僕は……僕は……!!)

 

 

「止血がきちんとなされているようだな。これなら……」

 

 

 叔父の声が、どこか遠くから響いてくるようだ。叔父の話を聞いた親友が、俯きながらふっと笑みを浮かべる。異様に儚い微笑みだった。

 

 

 

 

 

 

「貴様ぁッ!!」

 

 

 リボンズが端正な顔を歪ませ、留美(リューミン)を睨んだ。彼の激昂を目の当たりにした留美(リューミン)は高笑いする。

 

 

「だから言ったでしょう? 『そこまで言って、ただで済むと思わないことね』って!」

 

 

 楽しそうに笑う留美(リューミン)を、ティエリアも睨み返した。彼女の脳量子波が見せる光景の凄惨さに、ティエリアは怒りをあらわにしないではいられなかったのだ。

 オートマトンによって人が撃たれていく。いや、オートマトンはミュウ因子を有している者だけを狙い撃ちし、何の躊躇いもなく蜂の巣にしていった。

 同胞が殺されていく現場を目の当たりにしたのだ。ミュウであるリボンズが怒りをあらわにするのは頷ける。特にミュウは同胞意識が強い。

 

 それは、S.D.体制でミュウが“同胞同士以外、完全に孤立無援だった”という極限状態にあったことが原因なのだろう。だから“同胞が傷つく現場を目の当たりにすると平静でいられなくなる”し、“この状況に耐えられない”。

 映像の中で逃げ惑うミュウたちは、それでも同胞を見捨てることができなかった。中には“仲間を助けようとして自分諸共撃ち殺された”者も多い。生き残って逃げ延びた者は、助けられなかったことを悔い、己を責めていた。

 

 

「なんてことを……!」

 

「酷い、酷いよ……!」

 

 

 ティエリアの唸るような声も、リジェネの大泣きに近い悲鳴も、留美(リューミン)の心を動かすに足らないようだ。彼女は脇に控える紅龍(ホンロン)に目配せする。主の命を受けた使用人は、忠実に従った。

 彼の目がくすんだ金の光を放つ。それに呼応するかのように、起動音が響いた。轟音と共に、部屋の扉が吹き飛ばされる。青い光が爆ぜ、間髪入れずティエリアは何かに引っ張り込まれた。見上げれば、リボンズの眼前に青い光が舞っている。

 

 あれは自分たちを守るためのものだ。ティエリアはそれを理解した。次の瞬間、青い光の向こう側にいるオートマトンが攻撃を繰り出してきた。弾丸が青い光にめり込む。思念波による防御壁――ティエリアは、イデアのものを見て知っている。

 

 オートマトンは何発も銃弾を撃ち込んだ。リボンズが苦悶の声を漏らす。びし、と、何やら嫌な音が響いた。

 よく見れば、鉄壁の盾にひびが入り始めている。その光景を目の当たりにした留美(リューミン)が笑った。

 

 

「このオートマトン、ただのオートマトンではないの。対サイオン波用の武装が搭載されている、特別仕様」

 

 

 留美(リューミン)の言葉に同調するが如く、オートマトンは銃弾を撃ち込んでくる。その度に、サイオン波で編まれた盾にひびが入った。リボンズが苦悶の声を漏らす。

 

 

「S.D.体制下の技術……! しかも、当時の人類が対ミュウ用に生み出した兵装か!!」

 

 

 忌まわしいものを眼前に捉え、リボンズが苦々しい表情を浮かべる。そうこうしている間にも、思念波の壁は弾丸が次々と突き刺さってきた。蜘蛛の巣状に広がったひびが、どんどん大きくなってきている。

 こんな状況じゃなければ原理やその他諸々を聞きだしたい。だが、切迫した状態で悠長に話せるはずがなかった。ミュウやS.D.体制等のことはまだ理解しきれていないティエリアだが、非常にマズイ事態であるということは察していた。

 あの壁が破壊されれば、自分たちは容赦なく蜂の巣にされるだろう。窓から脱出を試みようとし――リジェネがティエリアの手を引き留めた。そうして首を振る。彼の顔は鬼気迫っていた。よく見れば、暗闇の中に赤い光がぎらついている。

 

 リジェネは思念波を使い、ティエリアに声をかけた。

 

 

<あの窓の下にはオートマトンがうじゃうじゃいる。ミュウである僕は当然だけど、下手したらキミも狙い撃ちされる可能性があるよ>

 

<文字通り、袋の鼠にされたという訳か……!>

 

 

 (ワン)留美(リューミン)らしい采配である。前門の黒幕どもとオートマトン、後門もオートマトン。悪趣味な布陣ではないか。 

 どこへ逃げても、会場中にオートマトンがはびこっているのは確実だろう。「害虫駆除の準備は完璧ですわ」と、留美(リューミン)は艶絶に微笑む。

 

 逃げようにも逃げ場がない。防御するにしても、リボンズのシールドもいずれはオートマトンの特別兵装――銃弾に撃ち抜かれる。留美(リューミン)の思念波で見せられた光景――無残に殺されたミュウ』たちの躯が頭をよぎった。

 

 

<こんの、ド外道がァァァァァァァッ!!>

 

 

 刹那、どこか遠くから、クーゴの声が響き渡った。

 間髪入れず、部屋の天井に派手な凸ができる。

 おそらく、上の階の床は思い切り凹んでいるであろう。

 

 部屋が吹き飛ぶことはなかったが、この場一帯を押しつぶすかのような圧力が発生し、爆ぜる。突如の事態に、留美(リューミン)紅龍(ホンロン)、オートマトンらが動きを止めた。その隙をついて、リボンズが手をかざす。

 ティエリアたちを守っていた防壁が掻き消え、次の瞬間、目が眩むような眩しさの青が爆ぜた。途端に、オートマトンたちが吹き飛ばされる。どのオートマトンも紫電が走り、自分たちに攻撃することはできない様子だった。

 

 

「走れ!」

 

 

 残骸と化したオートマトンを派手に蹴飛ばしながら、リボンズが先導するように部屋から飛び出した。リジェネとティエリアもそれに続く。リボンズが先陣を切り、ティエリアが中心、リジェネが殿役の順番で部屋を出た。

 

 ちらりと振り返れば、外壁をよじ登ってきたオートマトンが窓を割って部屋内へと侵入してきたところだった。照準は最後尾のリジェネを捉えている。だが、リジェネはそれを察していたようですぐに手をかざした。赤い光が舞いあがる。

 リジェネの足元に転がっていたオートマトンが浮き上がった。部屋に侵入してきたオートマトンの銃弾を、残骸を使って防御する。機械の装甲を穿つことはできなかったようで、オレンジ色の火花がばちばちと爆ぜた。

 

 

「それ、もう一丁!」

 

 

 リジェネの体が赤く発光する。浮かび上がったオートマトンの残骸が、勢いよくオートマトンの元へと突っ込んだ。残骸を避けられなかったオートマトンが動きを止める。間髪入れず、オートマトンの残骸が派手に爆発した。火柱が上がる。

 流石の革新者(イノベイター)でも、炎に飲まれるという事態は恐ろしいものらしい。留美(リューミン)が金切り声をあげ、紅龍(ホンロン)が焦ったように呻いた。狼狽する使用人を女主人が怒鳴りつける。その声を背にして、ティエリアたちは駆け出した。

 

 

 

*

 

 

 

 四方八方、オートマトンがうじゃうじゃいる。奴らはミュウ因子を有する者――特に、力が強い人物を優先的に狙ってくるのだ。

 当然、最強と謳われる荒ぶる青(タイプ・ブルー)と一緒に行動していれば、オートマトンの強襲に巻き込まれるのは当然と言えよう。

 そこまで説明したリボンズは、考え込むように顎へ手を当てた。いや、考え込んでいるのではない。言いたいことがあるが、言い出しにくいだけなのだ。

 

 ティエリアは、リボンズが何を言いたいのか察していた。おそらくはリジェネも、リボンズが何を考えているのか分かっている。

 

 

「……オートマトンの特性と、奴らを操っている人間の精神状態を考えれば、現状で一番、優先的に狙われているのは僕だ」

 

「囮役をするつもりなの? 危険だよ!」

 

 

 リジェネがリボンズの服の袖を引っ張った。彼の瞳は、兄を心配する弟の眼差しを向けていた。イノベイドたちには血縁関係なんて存在しないのに、本物の兄弟のように見える。

 先程対峙した(ワン)留美(リューミン)紅龍(ホンロン)兄妹――使用人と女主人とはえらい違いだ。あちらは完璧に主従関係が成立しているうえ、妹の方は兄を道具としか見ていない。

 

 

「けれど、このままじゃあ、全滅する可能性の方が遥かに高いんだ。僕が囮役を買って出た方が生還率が上がる」

 

「でも!」

 

「――リジェネ」

 

 

 聞き分けの悪い弟を諭すようにリボンズは優しい眼差しを向けた。リジェネは言葉を詰まらせた後、不満そうに俯く。しかし、彼はすぐに顔を上げると、意を決したようにして頷いた。

 

 

「わかった。絶対無事に帰ってきてね、絶対だよ」

 

「約束する」

 

 

 リジェネの言葉にそう返して、リボンズはひらひらと手を振った。そうして、間髪入れずに物陰から飛び出して、オートマトンの群れの前へと躍り出る。

 青い光が舞いあがった。まるで篝火のように揺らめくそれに、オートマトンたちは蛾の如く群がっていく。しかし、奴らはすぐに衝撃波で吹き飛ばされた。

 火花が散る。潰されるような激しい音が響き、一歩遅れて炸裂音が響いた。それでも尚、オートマトンの数は減らない。むしろ増えた。

 

 留美(リューミン)および紅龍(ホンロン)が操っているため、リボンズに狙いが集中する――そう睨んだのは間違いではなかったようだ。様々な方角からオートマトンが殺到し始める。リボンズとは目と鼻の先の距離しかないのに、どのオートマトンもリジェネおよびティエリアなんて眼中にない。

 

 逃げるとしたら、これ以上のチャンスはないだろう。リジェネが後ろ髪引かれるように振り返り、けれどもすぐに前を向く。

 ティエリアも彼と共に駆け出した。背後から炸裂する青い光は、あっという間に闇に飲まれて消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

(これで、この場に潜入していた工作員たちで生きている者たちは、全員か)

 

 

 アスルは思念波を展開しながら、生存者を確認する。このパーティ会場に潜入していた同胞の人数は25人程だったが、生き残ったのは10人程度のようだった。

 最後の生き残りだったルイス・クロスロードを、彼女の夫がいるであろう宇宙へ転移させたのは少しばかり前のことだ。今頃は、半泣きの夫と共に無事を確かめあっているだろう。

 身に纏っていた服は銃弾や攻撃でボロボロになっており、その幾つかからは、じわりと血が滲んでいる。オートマトンによる、執拗な攻撃のせいで負った傷だった。

 

 そうやって足を止めている間にも、アスルの思念波に引かれたオートマトンたちが武装を展開して迫ってくる。

 アスルも即座に思念波で応戦した。オートマトンの群れはあっという間に爆風に飲み込まれ、破裂していく。

 

 

「……ソルジャー・ブルー……」

 

「……イマイマシイ、ブルー・ワン……」

 

「……ミュウハ、マッサツ……」

 

 

 ノイズまみれの機械音から漏れたのは、無機質な声と懐かしい単語や言葉だった。アスルはそれらが何を意味しているのか《識っている》。

 

 ソルジャー・ブルー。世界で一番最初に生まれ落ちたミュウにして、原初の青(タイプ・ブルー:オリジン)。初代指導者(ソルジャー)として古のミュウたちを率いた男の名前である。

 彼は2代目の指導者(ソルジャー)であるジョミーを見出した後に長い眠りにつく。ナスカに人類の男が来訪し捕虜になったのと同時期に目覚め、ナスカ崩壊時には衛星破壊兵器メギドと相打ちになった。

 

 何の因果か、アスルはその男の記憶を有していた。この記憶とは“超兵機関で目覚め、B001と呼ばれていた”頃からの付き合いである。

 ベルフトゥーロ曰く、外見も完全に瓜二つと言うことらしい。元々アスルは金髪碧眼だったが、機関の実験台にされている間に色が変わったのだ。

 元の記憶は手術のせいですべて失ってしまっていたが、ミュウとして目覚めて以後、少しづつだが取り戻してきていた。閑話休題。

 

 

「やはり、S.D.体制の系譜を組んだ遺産か……。どうして、こんなものが……」

 

 

 焼けこげたメモリを拾い上げ、アスルは歯噛みする。それは自分自身の感情でもあるし、アスルの中で息づくソルジャー・ブルーの憤りでもあった。

 

 グランドマザーに関する系譜は、もう破壊されたはずだ。人類は――ヒトは機械の支配を否定し、破壊し、己の意志で生きていくことを選んだ。故に、グランドマザーの存在は完全に否定された。

 機械にとって、己の存在を否定されたり、己の存在意義が無くなるというのは、人間でいう所の死に等しい。そのため、すべてを否定されたグランドマザーは、「死なば諸共」と暴走したのだ。

 

 嘗ての青き星に砲門を向けた衛星破壊兵器。それを破壊するために手を取り合った人類とミュウの最終決戦。

 その場にアスル/ブルーはいなかった。だが、戦いの顛末はベルフトゥーロから《視せられた》ため把握している。

 ブルーの夢見た青き星(テラ)は幻想でしかなかったのがショックだったが、長い時間をかければ、あの星はきっと『還って』くるだろう。

 

 

(今の一撃で、僕に殺到していたオートマトンはすべて倒したな……)

 

 

 あとは自身の脱出だけ――そう思ったときだった。近くから、気配がする。刹那、少し離れた林の向こうで、青い光が爆ぜたのが見えた。

 

 あれは、アスルと同じ荒ぶる青(タイプ・ブルー)のものだ。色もそうだが、工作員たちの思念波なんて比べ物にならない強さを有している。

 アスルの脳裏に浮かんだのは、薄緑の髪に紫の瞳の青年である。彼は思念波を駆使し、大量のオートマトンを一手に引き受けていた。

 

 リボンズ・アルマーク。悪の組織の第1幹部だ。彼は黒幕と真正面から対峙していたはずではなかったのか。

 

 

<この命、そう簡単にはくれてやれないね。家族のためにも、無事に帰らなきゃならないんだ!>

 

 

 リボンズの脳裏に浮かんでいた人物の顔には、見覚えがある。悪の組織の第1幹部たちだ。その中でも一際鮮明に見えたのは――明るく笑うベルフトゥーロの姿だった。

 ベルフトゥーロは慈しむような眼差しでリボンズを見つめていた。彼女の口が動く。『貴方は私の、自慢の息子』――紡がれた言葉に、アスルは思わず目を見開いた。

 アスルの中で生きるブルーが叫ぶ。あの青年を――ベルフトゥーロの息子を死なせてはいけない。まったくもってその通りだ。アスルは苦笑する。

 

 どうやらまだ、戦う必要がありそうだ。彼の思念を辿り、戦場へと転移する。

 即座にアスルは思念波を展開し、リボンズに襲い掛かろうとするオートマトンを吹き飛ばした。

 

 まさかアスルがこの場に残っているとは思わなかったのだろう。リボンズは大きく目を見開いた。

 

 

「キミは……アスル・インディゴかい!? 何故――」

 

「逃げなかったか、だね?」

 

「っ!」

 

 

 アスルが先回りして言えば、リボンズは酷く驚いたように息を飲む。アスルは静かに笑った後、自分の中に存在する原初の青(ソルジャー・ブルー)の言葉を告げた。

 

 

「『逃げられるわけないじゃないか。キミが死んだら、“赤き星の子”が――ベルが悲しむ』」

 

「あ、貴方は……」

 

「『これ以上、彼女を悲しませたくはない』――僕の中にいるソルジャー・ブルーがそう言ったんだ」

 

「!!」

 

 

 世界で最初に現れた原初のミュウの名を出されたためか、リボンズが目を瞬かせる。アスルの言葉を『正しく』理解したリボンズは、どこか狼狽したような眼差しを向けた。

 “敬意を持って接しようとしたが、この場でどう反応すればいいのかわからない”――彼の眼差しはそう訴えている。アスルは苦笑して肩をすくめた。

 

 

「僕が誰の記憶を有していようが、僕はアスル・インディゴであることには変わりないよ。だから、畏まったり恭しくするのはなしにしてくれ」

 

「……わかった。但し、1つ約束してくれ」

 

 

 リボンズが真剣な面持ちでアスルを見下ろす。身長差で言えば、アスルの方が数センチほど低いためだ。閑話休題。

 

 約束という言葉をオウム返しにすれば、彼は表情を崩さぬまま頷いた。

 顔つきは険しい。何か重大なことかと思い、アスルは身構えた。

 

 

「キミも、無事に帰ること。キミがいなくなったら、マザーはとても悲しむから」

 

 

 彼の横顔は、どこまでも優しい。だが、敵を目にした途端、強気で不敵なものへと変貌した。血が繋がっていなくても、その面影はベルフトゥーロを思い起こさせる。

 

 

「アスル。こういうときにピッタリな言葉があるんだ」

 

「……その様子だと、途方もなく物騒な言葉なんだろうね」

 

「でも、この光景以上に相応しいのもないと思うよ」

 

「わかった。乗るよ」

 

 

 リボンズとアスルは軽口を叩き合った後、オートマトンの群れへと向き直った。自分の中にいるブルーは、やや興奮しているように思う。彼の記憶では、まともに軽口を叩き合ったことが皆無だったためであろう。

 幼少期の記憶は成人検査で消されていたし、指導者となってからは同胞を導くため、強くなければならなかった。それは、超兵機関で実験されていたときも変わらなかったし、現在でも隊のリーダーを務めているから大差ない。閑話休題。

 

 リボンズとアスルは視線を合わせて頷く。そうして、同時に思念波を展開させ、叫んだ。

 

 

「――くたばれ、ブリキ野郎!!」

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 資源衛星に囚われていた人質の解放任務が失敗し、『人質は全員死亡し、資源惑星が爆破される』という醜態を晒してから早数か月。再編されたばかりの地球連邦軍は多忙を極めていた。特に“嘗てH.I.A.W.Dに所属していた経歴のある部隊や人員”は、積極的に出撃要請が出る傾向がある。それは、資源衛星の爆破をみすみす許してしまったロンド・ベル隊も同じであった。

 今回の事件について、お偉いさん――特に、マッチポンプの首謀者であるフル・フロンタルは『地球連邦軍がテロリスト掃討のために、人質ごと資源惑星を爆破した』と発表している。その影響もあってか、ジオンやアロウズの残党と思しき部隊が活発に動き回っていた。恐らく、奴らの背後にいるのもフル・フロンタルなのだろう。腹芸は不得手であるが、何となくそんな気はした。

 

 

「先日から続くテロに関してだが、テロリストが大規模な部隊を集結しているという情報が入った。敵の動きから考えて、狙いは軌道エレベーターにあると思われる」

 

「軌道エレベーター……!?」

 

「おいおい、冗談だろ!? “大戦中に起こった大惨事”でも再現するつもりなのかよ!?」

 

 

 ロンド・ベル部隊の実質的な指揮官であるブライトは、真剣な面持ちで口を開いた。それを聞いたピエールとライトが驚愕の声を上げた。

 

 嘗てのH.I.A.W.Dが直面した“大戦中に起こった大惨事”は、軌道エレベーターで発生した事件――当時の地球連邦政府や連邦軍のやり方に反旗を翻した一派が旧AEU領の軌道エレベーターを占拠し、居合わせた一般市民を人質に取ったことから端を発したものだった。

 軌道エレベーターを占拠した面々や独立治安維持部隊アロウズの行動、及び暗躍が悪い方に嚙み合ってしまい、反旗派は低軌道ステーション下を爆破してしまう。結果、“オートパージしたピラーの外壁を地上に振らせる”と言う大惨事に発展した。

 一歩間違えれば地上の街や人々に甚大な被害が発生していただろう。だが、H.I.A.W.Dに所属・身を寄せていた団体を筆頭に、地球連邦軍やアロウズ、反政府組織らが組織の垣根を越えて協力し、ピラーの破壊に奔走した。結果、地上に大きな被害が発生することなく、事態の収束に繋がっている。

 

 クーゴはH.I.A.W.Dに所属していたMSパイロットとして、グラハム――ブシドーはアロウズに所属していたライセンサーとして、件の事件発生時に出撃していた。

 当時の時点でかなりギリギリの状況だったし、事態を収束できたことは奇跡だと思っている。更に言えば、軌道エレベーターが機能回復するまで4か月程の時間を必要としていたか。

 

 

「冗談ではなく、そのつもりなのだろう」

 

「そんなことになれば、どれだけの被害が出るか……」

 

 

 ブライトの推測――恐らく確証に近いレベルだ――を聞いたルイが表情を曇らせる。

 クーゴは腹芸が不得手な方だが、テロリストが件の事故の再現を試みようとする意図に悪意が絡んでいることは想像できる。

 

 

「単純な被害だけではない。今の連邦にアレを再建する余力などどこにもない」

 

「そうなったら、地球の生活はコロニーからの支援に頼らねば、立ち行かなくなるだろう」

 

「アロウズが跋扈して強権を有していた地球連邦でさえ、軌道エレベーターの再建にウンヶ月かかったんだ。今の地球連邦じゃあ、どれ程の時間と金が必要になるか……」

 

 

 トロワは淡々と連邦軍の実情を分析し、グラハムが“大戦中に起こった大惨事”が再現された場合の世界情勢をざっくりとシミュレートする。クーゴもそれに乗っかって、顎に手を当てた。

 

 軌道エレベーターが再建されるまでの間も、スペースノイドとアースノイドのバランスゲームは行われていた。お互いが優位に立とうと暗躍を繰り返し、その余波や煽りがH.I.A.W.Dにおっ被さるような事態に陥ったのも一度や二度ではない。薄氷を踏むような状況を乗り越え、現在の絶妙なパワーバランスに収まっている。

 今回のテロが成功してしまった場合、軌道エレベーターの再建に着手するまでの期間から再建完了までにかかる時間は未知数だ。辛うじて確定していることは『“大戦中に起こった大惨事”の後始末が終わり、軌道エレベーターが再建された期間よりも長くかかる』くらいだ。

 軌道エレベーターが再建されるまでの間、グラハムの言った通りの光景――地上の人々は宇宙にある各資源用コロニーからの支援や援助に頼らなければ生活できなくなる――が広がることだろう。恐らく、その間に、地球に住まう人々と宇宙に住まう人々の力関係は変質する。

 

 此度のテロを起こしたフル・フロンタルの所属はジオン系列。

 スペースノイドが優位に立つために行動するのは、何もおかしくない。

 

 

「軌道エレベーターの再建が遠ければ遠い程、世界は宇宙優位の方向に傾いていくだろう。フロンタルの奴はそれを狙ってる」

 

「成程な。今まで何とか保っていた、アースノイドとスペースノイドのバランスが崩れることになるってわけか」

 

 

 クーゴの分析を聞いたライトが眉間の皴を深くする。首を傾げたケーンに対し、彼はフロンタルのたくらみを簡潔に説明した。

 「此度のテロが成功すれば、地球は貧しくなり、宇宙は金持ちになる」――言葉にすれば非常に単純明快なことだ。

 だが、“金持ち側が貧乏側に対して傲慢な振る舞いを行い、それが原因で不和が広がっていく”なんて出来事は古今東西でよくある話。そこから戦争に発展することだって日常茶飯事である。

 

 

「また戦争が起きる可能性があるってことか!?」

 

「火種にはなるだろうな」

 

「そんな真似、許しちゃおけねえ」

 

 

 自分の見解をライトに肯定されたケーンが息巻く。

 それと入れ替わるようにして、グラハムが口を開いた。

 

 

「――成程。そのために、フロンタルは『()()()に白羽の矢を立てた』ということか」

 

 

 ――それは、俗にいう“独り言”というヤツだ。

 

 誰かに聞かせる意図はなく、自分自身の考えを零した程度でしかない。

 だが、グラハムの声は、普段よりもワントーン低かった。

 

 

「――()()は『戦争に繋がる火種を巻き、それを育てる』ことに関しては超一流だからな。適任だと言えよう」

 

 

 彼の脳裏に浮かぶのは、焼野原の中で嗤う1人の男。赤いパイロットスーツに身を包み、腰まで伸びた茶髪と無精髭が特徴的な人物――アリー・アル・サーシェス。先の資源惑星爆破の首謀者であるし、H.I.A.W.D時代のクーゴが何度も対峙した敵の1人だった。

 グラハムにとってのサーシェスは『刃金蒼海に与した者同士』という繋がりがあるが、仲は非常に険悪であった。『刹那に対する関係性』という点が理由である。グラハムにとっての刹那は“最愛の人”で、サーシェスにとっての刹那は“戦争のために使い潰した駒”。そんな2人が相容れるはずがない。

 思えば、グラハムは“モラリア戦役の時点でサーシェスの存在を本能的に察し、奴に対して思念波を使った妨害を行っていた”という実績の持ち主だ。後に、虚憶(きょおく)を介して一方的に相手の存在を把握し、国連軍対ソレスタルビーイング+αの戦いとゴタゴタが終わった後に直接顔を会わせるに至っている。

 

 “2人が直接顔を会わせ、蒼海の傀儡仲間(?)として同じ陣営に所属していた”頃、2人がどんな会話をしていたか――その詳細は不明だ。

 ただ、サーシェスの話題になると“《聲》に精神・物理的な威力が付与され、声がワントーン低くなる”あたり、規格外の怒りを募らせている様子だった。閑話休題。

 

 ブライトからの指令は『今回のテロの阻止』である。連日連夜のテロ活動は繰り広げられ、どの部隊も出ずっぱり。今動ける部隊は、グラハムがまとめ役を担っている面子――“太陽の勇者”隊、ドラグナー隊、ドルバック隊くらいだ。

 

 

「何、これだけいりゃあ充分だぜ!」

 

「ああ。資源衛星での借りを返すいい機会だ」

 

 

 ケーンとピエールが顔を見合わせて頷き合う。リベンジマッチということで、やる気満々のようだ。

 

 

「これまでの動きから考えて、今回の作戦が正念場となる可能性は大きい。厳しい作戦になるが健闘を祈る」

 

「了解!」

 

 

 それを見たブライトは、真剣な面持ちで分析結果と指揮官としての見解を述べ、健闘を祈ってくれた。

 まとめ役にして最高責任者のグラハムが敬礼したのに続き、面々もブライトへ敬礼したのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「チッ……! ブライト艦長が正念場と言うだけあって、これまでとは規模が違うな!」

 

 

 テロリストの群れを次々と撃墜しながら真人は表情を歪める。出撃前のブライトが言った通り、ここに集う機体やパイロットたちの経歴は様々だ。

 

 ジオン系の機体に搭乗している者、アロウズの系譜を継いだ機体に搭乗している者、所属不明の機体に搭乗している者――共通点は“戦争がしたい”という、たった1つの理由だった。黒幕たるフル・フロンタルはスペースノイド優勢の社会を作り出すこと形で火種を巻き、そこから双方の憎悪を引き出すことで戦争を起こそうとしている。

 奴が子飼いにしていた傭兵――特にアリー・アル・サーシェスにとっては、アースノイドとスペースノイドのパワーバランス等気にしていないだろう。フロンタルに雇われたからスペースノイドの地位向上を目論む連中たちに与しているだけに過ぎない。金の切れ目が縁の切れ目と言わんばかりに、用が終わればまた次の戦争を起こすために暗躍するはずだ。

 

 恐らく、この場で暴れるテロリストの本心も『それだけ』なのだろう。

 傭兵やテロリストが金を稼げるのは戦場だけであるし、戦いを好む者の居場所も戦場だけだ。

 奴らにとって“世界が平和になる”ということは、己の居場所とアイデンティティの喪失を意味する。

 

 

「でも、なんなんだよ、こいつら! ジオンの残党だけじゃなくアロウズまで混じってやがるぜ!」

 

「なんでもいいんだろ! 暴れられれば……!」

 

 

 何でもありと言わんばかりに入り乱れる敵勢力を目の当たりにしたタップに、ケーンが答える。彼らの機体も手早く敵兵を屠っていった。

 敵機を散々叩きのめしてきたグラハムの“勇者”が、クーゴの“勇者”が掲げたミハタテンサイを目印にするかのようにしてスタンドマニューバで戻って来る。

 

 旧ユニオンのトップガンとして空を駆けた彼でさえ、今回のテロリスト共は骨が折れるようだ。

 

 

「さながら死に場所を求めた兵士たちの墓場! 恐れるべきは数よりも彼らの執念……!」

 

「或いは、『自分が生きるための居場所』としての戦争を求めるバトルジャンキーなんだろうよ! どこぞの焼野原広しみたいにな!」

 

「まったくそういうのは勝手に決着をつけてほしいもんだぜ!」

 

 

<戦争だァ……! 戦争だぁぁぁッ! はは、あははははははははッ!!>

 

 

 タップに続いたクーゴがミハタテンサイで敵機を薙ぎ払ったとき、聞き覚えのある男の高笑いが《聴こえて》きた。次に《視えた》のは、戦乱によって広がる一面の焼け野原。

 資源惑星が爆破されたときも、奴が戦場に現れる直前に《視聴きした》《聲》と光景である。――ああ、なんてタイムリー。焼野原広しの話題を出したら、当人がここに潜んでいると来たか。

 

 クーゴが思念波を展開して奴の居場所を探そうとしたのと、焼野原広し、もといアリー・アル・サーシェスの嗤う《聲》が響いたのはほぼ同時。

 

 

<因果だねぇ。ここで来るのがアンタらとはよぉ……>

 

「――!!」

 

 

 奴の接近を察知したグラハムと、彼が乗る“勇者”が纏う空気が変わる。感情を反映するかのように、青い光がぶわりと舞い上がった。

 隊長機の変化に気づいた“太陽の勇者”隊、ドラグナー隊、ドルバック隊の面々も、彼に続いて視線を向ける。

 眼前に降臨したのは、いつぞやの“権天使”。駆っているのは、勿論、資源惑星の一件で結ばれた因縁の相手――アリー・アル・サーシェスだ。

 

 

「どうやらアンタらとは、それなりに縁があるみてえだな!」

 

<全くもってその通りらしいな、アリー・アル・サーシェスゥ!>

 

「ああああああああ! クッソうるせえええええええ!!」

 

 

 愉快そうに嗤っていたサーシェスであったが、間髪入れず怒髪天になったグラハムの《聲》がこの場一帯に響き渡った。

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

 オートマトンの群れを消し飛ばし、時には掻い潜りながら、どうにかして会場から脱出することに成功したらしい。自分たちの機体が隠されていたポイントが眼前に広がるのを感じて、クーゴは大きく息を吐いた。

 つい今しがた、リボンズから『パーティ会場から脱出完了』の連絡を貰ったばかりである。それを聞いたリジェネが安心したようにへたり込んだのが印象的であった。あとは愛機と一緒にこの場を去るだけである。

 変装していた衣装一式を脱ぎ捨てて、クーゴは旧ユニオン軍の制服を身に纏った。自分が『還りたい』と願う場所と同じ色をした制服は、クーゴがフラッグファイターとしてここに存在していることの証だった。

 

 クーゴははやぶさのコックピットに飛び乗る。次に、潜入時に着ていたドレス一式を脱ぎ捨てたティエリアが、リジェネと一緒にセラヴィーへ乗り込んだ。リジェネ同伴に関して、ティエリアは仕方がなさそうにしている様子だ。

 最後に、ドレス一式を抱えて刹那がダブルオーへ飛び乗った。殆ど『同じ商品のサイズ違いを改めて揃え直した』とはいえ、それらは嘗てグラハムが刹那へ贈った品物だ。チャペルトレーンが引きちぎれていたとしても捨てずに抱えてきたあたり、思うところがあるのだろう。

 

 

(俺が思っていた以上に、刹那はあいつのことを好いてるんだな)

 

 

 それはおそらく、グラハム/ブシドーにだって言えることだろう。グラハム/ブシドーが思っている以上に刹那は彼のことを想っているし、刹那が思っている以上にグラハム/ブシドーも彼女のことを想っている。

 

 互いを思いあう2人を、蒼海は滅茶苦茶にしようとしているのだ。“グラハム/ブシドーがクーゴの親友だった”なんて、くだらない理由のために。

 クーゴは歯噛みしながら操縦桿を動かした。はやぶさは空へと舞い上がる。間髪入れず、ダブルオーとセラヴィーもそれに続いて空を舞った。

 パーティ会場はどんどん遠くなっていく。これで一安心――そう思ったとき、突き刺さるような悪寒を感じた。明らかな殺意が迫ってくる。

 

 

「っ!?」

 

 

 レーダーがけたたましく鳴り響く。敵機が1つ、映し出された。

 毒々しい赤紫。鳥を思わせるようなそのMAは、見覚えがあった。

 

 PMCトラストのイナクトと戦っていたときに乱入し、クーゴのフラッグに襲い掛かってきた機体。そして、国連軍とソレスタルビーイングの決戦で、グラハムと刹那たちを強襲し、クーゴを撃墜した機体。――刃金蒼海が有するMAだ。

 次の瞬間、ずんぐりとしたフォルムの羽が不気味に発光する。光の群れは、まるで複数の目玉がぎょろぎょろと動いているように見えた。あれがやばいものだと察したのはクーゴだけではなかったようで、セラヴィーとダブルオーが散開した。

 一歩遅れてはやぶさも散開する。次の瞬間、MAの翼が火を噴いた。幾筋もの光が放たれる。それらは会場近辺の林に着弾し、その周辺を焦土へ変貌させた。砲撃の威力を目の当たりにして、クーゴは思わずごくりと息を飲んだ。

 

 ダブルオーとセラヴィーの視線は件のMAに釘付けだった。パイロットの心境を如実に表しているといえる。

 

 

「今のは、ほんの牽制よ」

 

 

 鳴り響く鈴を思わせるような笑い声と一緒に、全員の回線が開いた。声の主は刃金蒼海である。

 

 

「ねえさん……!」

 

「せっかくだから、もうちょっと派手にした方がいいかしらね?」

 

 

 クーゴの呼びかけにも動じることなく、蒼海は楽しそうに笑っていた。彼女の提案に従うように、林の下から2機の機影が飛びあがる。

 片や、告死(こくし)天使を思わせるような機体。片や、燃え盛る不死鳥を思わせるような機体。そのフォルムは、ガンダムを連想させた。

 

 

「――ハルファスガンダムに、フェニックスガンダムだと!?」

 

「しかもこの機体、発展型じゃないか!!」

 

 

 「ばかな」と、ティエリアが戦慄した。

 リジェネは顔を真っ青にする。

 「ご名答」と、別の女性が笑う声がした。

 

 声の主は(ワン)留美(リューミン)。嘗て、ソレスタルビーイングのエージェントだった女性だ。

 

 

「ヴェーダにあった『机上の空論』から再現した機体を、私たちが独自改良した機体(ガンダム)ですわ。私の告死天使(ガンダム)がハルファスベーゼ、紅龍(ホンロン)紅蓮の不死鳥(ガンダム)がマスターフェニックス・フオヤンというの。素晴らしいでしょう?」

 

 

 留美(リューミン)の言葉に共鳴するかのように、彼女の告死天使(ガンダム)――ハルファスベーゼが鎌を振りかざす。地獄の底を連想させるような青紫色の光が、鎌の刀身から吹き上がる。

 紅龍(ホンロン)紅蓮の不死鳥(ガンダム)――マスターフェニックス・フオヤンも、どこからともなく、バスターソードを思わせるような双剣を取り出した。赤白い焔が爆ぜる。

 

 

「そうして――私の機体は、バルバトロ」

 

 

 うっとりとした口調で、蒼海が留美(リューミン)の言葉を引き継いだ。次の瞬間、MA――バルバトロの四方八方からワイヤーが飛び出す。

 その照準が狙うのは、クーゴ/はやぶさではない。刹那/ダブルオーの方だった。ダブルオーは寸前で攻撃を回避するが、攻撃は終わらない。

 いつもなら真っ先にクーゴを狙うのに、どうしたことなのだろう。クーゴの疑問は、ダブルオーへ追撃を図る2機の光景によって遮られた。

 

 マスターフェニックス・フオヤンが構えたバスターソードの切っ先がダブルオーへ向けられる。次の瞬間、バスターソードから砲門が現れた。赤白い光が放たれる!

 ダブルオーはそれを難なく回避したが、待ってましたと言わんばかりにハルファスベーゼが鎌を構えてダブルオー目がけて突っ込む!

 

 

「ちぃ!」

 

 

 刹那は舌打ちしたものの、即座にGNソードをビームサーベルにして受け止めた。二刀流の構えである。ハルファスベーゼの鎌も、いつの間にか二刀流になっていた。刃がぶつかり合って派手に火花を散らしている。力関係は留美(リューミン)に軍配が上がっていた。

 

 ハルファスベーゼの鎌に弾き飛ばされたダブルオーを追撃するように、マスターフェニックス・フオヤンが飛び出す。巨大なバスターソードを振りかぶり、ダブルオー目がけて突っ込んできた。勿論、ハルファスベーゼも追撃しようとワイヤーを射出する。

 

 そうは問屋が下ろさない。次の瞬間、セラヴィーガンダムの砲門が火を噴いた。放たれた一撃はマスターフェニックス・フオヤンの足を止めるには充分な威力を誇っていたようで、マスターフェニックス・フオヤンは攻撃を中断して回避行動に移る。

 はやぶさはダブルオーの前に躍り出ると、アマツミソラを引き抜く。刀身の長さを15mから一気に50mに引き延ばした。刃が青い燐光を纏う。そのまま、はやぶさはワイヤー目がけて剣を振るった。バターを切るかのごとく綺麗に切断されたワイヤーがばらばらと落ちていった。

 

 

「まだだ!」

 

 

 ティエリア/セラヴィーが反撃とばかりに攻撃態勢へ移行しようとし――

 

 

「――ところがぎっちょん!」

 

 

 クーゴの脳裏に、焼野原が広がる。炎の中で醜悪に笑う男の顔を、クーゴはよく《識っていた》。刃がぶつかり合う音が響いた。

 見れば、突然の攻撃を咄嗟にビームサーベルで受け止めたセラヴィーがいた。どこかで見覚えのあるフォルムの、赤い機体。

 

 

「スローネシリーズの発展型!?」

 

 

 ティエリアが酷く動揺した声を上げた。

 

 

「まさか……!」

 

 

 刹那が酷く戦慄する。

 

 そこにいたのは、アリー・アル・サーシェス。争いをばら撒く傭兵だ。

 2人が敵意をむき出しにしたことを察した傭兵は、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて肯定した。

 

 

「さあ、始めようじゃないか! ガンダム同士の、とんでもない戦争ってヤツをよォ!!」

 

 

 サーシェスの宣言を皮切りに、赤いガンダムが自律兵器をこちらへ向けて飛ばしてきた。彼の言葉を聞くに、あの武装の名前はファングというらしい。4年前に起きたMSWAD基地での戦闘でも似たような兵器を搭載した偽ガンダムがいたか。

 四方八方に飛び回る自律兵器を回避すれば、間髪入れずマスターフェニックス・フオヤンとハルファスベーゼの砲撃に晒される。相変わらず2機はダブルオーをマークしており、刹那を執拗に狙って攻撃を繰り出していた。

 

 背後に佇むバルバトロは、クーゴ/はやぶさと刹那/ダブルオーの両方に対して砲撃を撃ってくる。四方八方に炸裂した後に一点へと集まるビームや、極太のレーザー砲を交互に撃ち放ってくるため、なかなか距離を詰められない。その間にも、赤いガンダムやマスターフェニックス・フオヤンとハルファスベーゼが接近戦および遠距離兵装で攻めてくるのだ。数の上でもその他諸々でも、敵の方が有利である。

 

 

(くそ、躱して撃ち落とすのだけで手一杯だ……!)

 

 

 アマツミソラやライフルを駆使して敵の攻撃を相殺しているが、状況は完全に防戦一方である。特に、赤いガンダムの連撃――近接攻撃とファングの合わせ技は早すぎて目が回りそうになるのだ。

 ミュウとしての能力を使って先読みを試みているものの、相手の攻撃が《読めた》としても完全に回避できるとは限らない。シールドを展開すれば、赤い雨あられに穿たれた。

 気のせいでなければ、展開したシールドに蜘蛛の巣状のヒビが走っている。しかも、赤い光弾がシールドに突き刺さる度、力/意識をそぎ落とされるような感覚に見舞われるのだ。

 

 

<クーゴ・ハガネ、気を付けてよ! 奴のファングには、S.D.体制下で開発された対ミュウ用の兵装も搭載されてる!>

 

「なんだって!?」

 

 

 リジェネの思念波を聞いて、クーゴは血の気が引くような気持ちになった。

 

 S.D.体制下の技術がどれ程惨たらしいものなのか、悪の組織およびスターダスト・トラベラーに居候することになったときに散々聞かされていた。人類とミュウの戦いでも投入され、多くの同胞を嬲り殺しにした忌々しい兵器。

 並大抵のサイオン波を無効化し、強力なサイオン波を有するミュウの場合はその力をじわじわとそぎ落とし、最終的には命を奪う。他にも“サイオン波の暴走を強制的に引き起こし、広範囲の敵味方を殲滅する爆薬にする”なんて武装も開発されていたらしい。

 

 次の瞬間、再びファングが展開する。四方八方に飛んだ牙が標的にしたのはセラヴィーだ。ファングの攻撃を回避しようとしたセラヴィーの眼前に、ハルファスベーゼの放ったワイヤーが纏わりつく。

 本来ならワイヤーの先に搭載された爪で機体を穿つのだろうが、ハルファスベーゼはそれをしない。ワイヤーによって動きを封じられたセラヴィーは、さながら蜘蛛の巣にかかった哀れな獲物のようだった。

 

 

「まずい!」

 

「ティエリア!」

 

「――させん!」

 

 

 助けに入ろうとしたはやぶさとダブルオーを阻んだのは、マスターフェニックス・フオヤンであった。巨大なバスターソードで、ダブルオーのGNソードとはやぶさのアマツミソラを纏めて受け止める。赤い火花が散った。

 そのコンマ数秒の差で、再びファングが展開する。牙が狙ったのは、身動きの取れなかったセラヴィーだ。ダブルオーとはやぶさの手が届くはずだった場所に、赤い光が容赦なく降り注ぐ!!

 

 

「うわあああああああああああっ!!」

 

 

 リジェネとティエリアの悲鳴が響き渡る。セラヴィーの姿は、爆風に飲み込まれて消えてしまった。間髪入れず、赤いガンダムはダブルオーに躍りかかった。

 

 

「く……!」

 

 

 ダブルオーはGNソードで受け止める。マスターフェニックス・フオヤンのバスターソードよりも2回り以上小さなバスターソードであったが、変則的な接近戦では充分使える代物だった。いつぞや目の当たりにしたモラリア戦役の再現だ。エクシアがイナクトに押されていたときの光景が頭をよぎる。

 援護へ向かおうとしたはやぶさへ、鎌を二刀流に構えたハルファスベーゼが突撃してきた。刃が派手にぶつかり合って火花を散らす。押し合いは互角であったが、そこへマスターフェニックス・フオヤンが飛び出してきた。代わりに、ハルファスベーゼが後ろへ後退する。流れるようなコンビネーションだ。

 関心する間もなく、今度はマスターフェニックス・フオヤンのバスターソードと力比べをする羽目になった。刃と刃が拮抗する。しかし次の瞬間、バスターソードが赤白い炎を纏った。光が爆ぜる。間髪入れず凄まじい力が発生し、はやぶさは吹き飛ばされそうになる。

 

 

「うおおおおおおおおおおおッ!」

 

 

 対抗措置として、クーゴもサイオン波を展開した。荒ぶる青(タイプ・ブルー)の力を使い、マスターフェニックス・フオヤンの推進力に真正面から挑みかかる。赤白い炎と青の光が派手にぶつかり合い、拮抗し、爆発する。

 機体を震撼するような衝撃に呻きながらも、クーゴは敵機を見据えた。はやぶさも、マスターフェニックス・フオヤンも、関節部から僅かに白煙が漂っている。先程の拮抗で互いにダメージを追ったらしい。相手はまだやる気のようだ。

 クーゴだって諦めるつもりはない。アマツミソラとヒテンを構えて(ワン)留美(リューミン)とその使用人紅龍(ホンロン)と対峙する。2人の後ろには蒼海だって控えていた。1人で3人纏めて相手するなんて、いつぞやのシミュレーター――女の敵を守る戦いより難易度が高すぎやしないか。

 

 相変わらずセラヴィーは行動不能だし、ダブルオーは赤いガンダムに押されている。

 どこからどう見ても、クーゴたちの方が圧倒的に不利だ。突破口が見当たらない。

 

 

<――――>

 

 

 りぃん、と、音がした。つられて視線を動かせば、ダブルオーと赤いガンダムの周辺に青い光が舞う。

 

 

<少女>

 

 

 か細い《聲》が《聴こえる》。

 4年前、クーゴの傍で聞こえた声と同じものだ。

 

 

<どうか、無事でいてくれ>

 

<グラハム……?>

 

<……愛している>

 

 

 刹那も《聲》を《聴き取った》ようで、声の主にも合点がいったようだ。目を丸くした彼女に対し、ブシドーが微笑みかけたのが《視えた》。

 呆気に取られる刹那の視線と、青い燐光とぼやけた輪郭のブシドーの視線が重なる。彼女に彼の姿が《視えて》いるのかは不明だが、《通じ合って》はいるのだろう。

 次の瞬間、眦を吊り上げたブシドーが向きを変え、赤いガンダム越しにパイロットであるサーシェスを睨みつけた。深緑の瞳に宿る炎は、憎悪じみた憤怒。

 

 

<――貴様のような悍ましい悪鬼外道が、彼女に触れるなッ!!>

 

「ぐあああああああ!? クッソうるせえぇぇッ!」

 

 

 音割れとハウリングを伴ったようなブシドーの《聲》が響き渡り、この場にいた機体は思わず動きを止めた。

 

 彼の《聲》をそうと認識できたのはクーゴと刹那だけらしい。蒼海たちはブシドーの《聲》を『得体の知れない叫び声』と認識したようで、不審そうに周囲を警戒していた。

 クーゴでさえブシドーの《聲》にはビリビリとした痺れを感じたのだ。爆心地と思しき場所で剣戟を続ける刹那とサーシェスは如何程の威力を感じているだろう?

 ……と思ったが、ブシドーの《聲》でダメージを喰らっているのはサーシェスだけのようだ、先程とは違って、赤いガンダムの動きが鈍くなったように見える。

 

 サーシェスも蒼海同様、グラハム/ブシドーの《聲》を『得体の知れない叫び声』と思っているようだ。

 蒼海たちとの唯一の違いは、『得体の知れない叫び声の主がブシドーではないか』とアタリを付けていることくらいか。

 

 

「アリー・アル・サーシェス。遊ぶのもそこらへんにして頂戴。貴方のために、どれだけのお金が消えたと思ってるのかしら」

 

 

 得体の知れない《聲》に翻弄されながらも、ダブルオー/刹那と剣戟を繰り広げていた赤いガンダム/サーシェスの様子を見ていた蒼海が苛立ち紛れに呟く。途端に、赤いガンダムがダブルオーとの剣載を中断するようにGNソードを切り払った。

 

 

「――嫌なこと思い出させるんじゃねえよ、雇い主さんよォ」

 

 

 サーシェスの顔が更に醜悪に歪んだ。

 苛立たしさを爆発させながら刹那へ斬りかかる!

 

 

「4年前、俺の半身が吹っ飛ばされたせいで受けた再生手術代で儲けがパーだ! 終いにゃそれを、あのオンナに盾に取られてこき使われて……!」

 

 

 赤いガンダムがバスターソードを振りかざす。

 

 

「そのツケ、テメエらの命で償えッ!!」

 

 

 そうして、その刃をダブルオーに振り下ろした。ダブルオーもやられっぱなしでいるつもりはないようで、再びGNソードやライフルで応戦する。

 間髪入れず、紫の砲撃が赤いガンダムに降り注いだ。セラヴィーが戦線に復帰したらしい。再び剣戟が始まったが、こちらがジリ貧であることには変わりなかった。

 このまま戦い続ければ、確実に、クーゴたちは黒幕たちの手によって落とされるだろう。その果てに待ち受けるのは、明確な死だ。背中に悪寒が走る。

 

 

「貴様だけは赦さない……! ロックオンの仇討ちをさせてもらう!」

 

 

 ティエリアとセラヴィーが飛び出す。彼の言うロックオンは悪の組織に居候しているニール・ディランディのことを指している。ソレスタルビーイングのクルーたちは刹那から『ニールが生きている可能性がある』という話を耳にしていたはずだ。

 それでも、ニールが大怪我を追って行方不明になった原因はサーシェスである。例えニールが生きていたとしても、ティエリアにとってサーシェスは“仲間を奪った張本人”という認識を持っているのだから、仇と言うのも間違っていないのだろう。

 

 刹那もティエリアの怒りに同調したらしい。ダブルオーはセラヴィーを援護するように銃撃を放った。セラヴィーもまた、赤いガンダムの至近距離からビームキャノンを撃ち放つ。

 

 だが、赤いガンダムはそれを躱して砲口を叩き切った。爆風が炸裂するが、煙の奥から腕が伸びる。ティエリアの執念を反映した機体は、ほんのわずかだが赤く発光していた。リジェネがサイオン波を駆使し、ティエリアの執念とセラヴィーの性能にブーストをかけたのだろう。

 セラヴィーの手はがっしりと赤いガンダムを抑えつけた。ぎぎぎ、と、取っ組み合いが始まる。これだけ至近距離なら、セラヴィー自慢の砲撃を浴びせれば消し飛ばせたであろう。しかし残念なことに、砲口は叩き切られてしまっている。

 このまま取っ組み合いを繰り広げても、近接戦闘に向かないセラヴィーの方が不利だ。次の瞬間、セラヴィーの膝関節付近から突然腕が生えた。その腕はビームサーベルを構え、躊躇うことなく赤いガンダムへと振り下ろす!

 

 

「隠し腕だと!?」

 

 

 サーシェスは驚いたように声を上げたが、調子近距離の攻撃を曲芸師のように避けて反撃に移った。

 

 

「残念だな。それならこっちだって持ってるぜェ!」

 

 

 赤いガンダムの脚から飛び出した腕は、セラヴィーの隠し腕を真っ二つに叩き切った。間髪入れず、セラヴィーの姿は爆風に消える。今度はダブルオーが赤いガンダムへ躍りかかる。バスターソードとGNソードが火花を散らす。

 身動きの取れなくなった赤いガンダムへ再びセラヴィーがビームサーベルで挑みかかるが、今度は別の脚から隠し腕が飛び出した。赤い光のビームサーベルが、紫の光のビームサーベルとぶつかり合った。文字通り、隙がない。

 

 

「貴方、他人の心配なんてしている暇がありまして?」

 

「っ!!」

 

 

 留美(リューミン)の声で、クーゴは我に返った。降り注ぐ砲撃を躱し、アマツミソラで攻撃をいなしていく。四方八方に飛んだワイヤーを避けたとき、はやぶさは足を引っ張られた。

 はやぶさの脚に爪が突き刺さっている。ワイヤーの先を辿れば、蒼海のバルバトロの放った攻撃だとわかった。次の瞬間、ワイヤーがムチのようにしなった。はやぶさはバルバトロによって、縁日の水風船のように弄ばれる。

 

 

(まずい!)

 

 

 このままでは、思い切り振り下ろされる。高度数百メートルから、地面に叩き付けられるのだ。その末路は――言わずもがな、である。

 背中を襲った悪寒は、己の末路に対する恐怖だけじゃない。もっと別な場所にあるものだ。少し前、自分はそれと対峙していたような気がする。

 

 クーゴの思考回路は、体を襲い始めた遠心力とGによって、強制的に中断させられた。代わりに湧き上がるのは、己が死へと向かっている事実と、それに対する恐怖のみ。

 

 

「この世界に、あんたなんか要らない」

 

 

 醜悪に微笑んだ蒼海の姿が《視えた》。

 彼女の表情が、歓喜に満ち溢れている。

 

 

「塵芥と成り果てなさい! 刃金(ハガネ)空護(クーゴ)ォォォォォォォッ!!」

 

 

 咆哮にも似た笑い声が、クーゴの頭の中にがんがんと響き渡った。

 

 死にたくない。

 でも、死ぬ以外に道がない。

 それでも、死にたくない。死んではいられない――!

 

 

「クーゴさん!」

 

「――っぉう!?」

 

 

 次の瞬間、何かが切断されるような音と聞き覚えのある声が響いた。はやぶさを振り回していた力から、投げ出されるような形で解放される。

 

 寸でのところで機体の態勢を整え持ちこたえると、翡翠色の粒子が見えた。顔を上げる。はやぶさと瓜二つの機体が、目の前に降臨していた。

 はやぶさとの違いを挙げるとしたら、機体が少々小柄で高速戦闘に特化したフォルムになっていることだろうか。あとは機体のカラーリングか。

 因みに、はやぶさの機体の色は鉄紺(てつこん)といい、黒みを帯びた紺色だ。目の前の機体の色は、非常に淡い青緑色である。確か、白緑(びゃくろく)と言ったか。

 

 声の主のことを、クーゴはよく知っている。

 戦うことを――人の命を奪うことを嫌う、優しい少年のものだった。

 

 

「……宙継、くん?」

 

「はい!」

 

 

 クーゴの問いかけに、少年――刃金(はがね) 宙継(そらつぐ)は躊躇うことなく頷き返した。通信の向こうに映し出された彼の表情は、年相応の笑みを浮かべている。4年前に見た泣き顔はどこにもなかった。

 バルバトロのアームを切り裂いたのは、はやぶさと瓜二つの機体が構えていた実体剣である。刀身の長さは脇差、あるいは短刀程の長さしかない。よく見れば、宙継の機体は青い光を纏っている。彼もまた、クーゴと同じ荒ぶる青(タイプ・ブルー)なのか。

 

 悪の組織に居候していた時点で、宙継の能力はまだ未知数扱いだったはずだ。クーゴがイデアと行動を共にするようになった後で、この能力を本格的に開花させたのだろう。

 間髪入れず、視界の端で爆発が起こった。サーシェスの機体に、花を模したレーザービット兵器と水晶を思わせるようなデザインの自律兵器――牙が次々と襲い掛かっていく。

 レーザービットと牙はサーシェスの機体だけではなく、留美(リューミン)紅龍(ホンロン)、蒼海の機体にも容赦なく攻撃を繰り出した。

 

 

「あれは……」

 

 

 見たことのある武装。あの武装を搭載した機体は、トリニティ兄妹のラグエルシリーズだ。花を模したレーザービットはネーナのフルール、牙を搭載したのはミハエルのフォルス。

 

 

「――月は、出ているな!」

 

 

 不意に響いたのは、ある兵器を使用するためのキーワードだ。そのキーワードを必要とする機体は、ヨハンのフィオリテである。

 その言葉から間髪入れず、フィオリテ最強武装のツインサテライトキャノンが火を噴いた。一騎当千を地で行く威力は流石と言えよう。

 

 ツインサテライトキャノンの砲撃はセラヴィーの砲撃以上に範囲が広い。何とか逃げ切った敵機たちだが、どの機体も脚や腕、および武装を失っていた。最強兵装によって欠損した個所からは、紫の火花が派手に散っている。

 新たに表れたスローネシリーズの発展型と味方識別に、刹那とティエリアが驚いた声を上げる。ラグエルたちはセラヴィーとダブルオーを、宙継の機体ははやぶさを庇うようにして戦場へと躍り出た。

 6対4。数の上で、どうにかこちらが上に回れた形となる。最も、戦いが激化することは変わらない。さてどうするかとクーゴが思案しかけたときだった。遥か上空から、鮮やかな翡翠色の光が降り注いだのだ。

 

 誰か/何かがサイオンバーストを展開しているのだろうが、レーダーには反応がない。その砲撃は、一方的にサーシェスの機体を追い詰めていく。まるでセラヴィーを援護しているかのようだった。ティエリアは困惑しつつも、その長距離狙撃に合わせることにしたらしい。連携を繰り広げていた。

 

 

「あの告死天使(ガンダム)を操ってたのはテメエだったんだな!? (ワン)留美(リューミン)!!」

 

「よくも我々を嵌めてくれたな……!」

 

「ソレスタルビーイングの理念に従いつつ、あたしたち個人の恨みとその他諸々! 倍にして返してやるんだから!!」

 

 

 ミハエル、ヨハン、ネーナが怒りをあらわにした。ラグエルたちがダブルオーと連携してマスターフェニックス・フオヤンやハルファスベーゼと鍔迫り合いを繰り広げる。

 間髪入れず、別方向から紫の光が雨あられのように降り注いだ。見上げれば、ケルディム、アリオス、パハリアが遠距離兵装の狙撃で面々を援護している。

 これで、自分たちの戦力は10対4。数の上でもこちらに軍配が傾く。己の不利を察したのだろう。4機はそれぞれ散開し、空の彼方へと消えていく。

 

 

「ティエリア、スメラギさんから帰投命令が出てる」

 

「止めるな! 奴がロックオンの仇なんだぞ!!」

 

「ダメだって! そんな満身創痍で追いかけたら死んじゃう!!」

 

「ええい邪魔だ、抱き付くなぁ! というか貴様、どこ触ってるんだ!?」

 

「えっ? ……そんな、分かってるクセにィ」

 

「やめろぉ!! 顔を赤らめるな気持ち悪い! それ以上触ったら、痴漢とわいせつ罪で訴える!!」

 

 

 セラヴィーは執念深くサーシェスの機体を追いかけようとしていた。激高するティエリアを、言葉的な意味でアレルヤが、物理的な意味でリジェネが引き止める。後者は何やら変な状況になりつつあるが、効果は抜群だったようだ。

 

 とりあえず、ティエリアを宥めすかした面々は、プトレマイオスへと戻ったのであった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 分かりすぎるというのは、かえって不便なものである。ロックオン(ニール)は大きく息を吐き、スナイパースコープから離れた。

 つい先程まで、ロックオン(ニール)の瞳はサーシェスの搭乗するガンダムと、そいつに挑みかかるティエリアのガンダムを鮮明に映し出していた。

 もう一度スコープを覗けば、きっと、サーシェスの機体を追いかけて狙撃することも、嘗ての仲間たちの様子を見ることもできるのだろう。

 

 だが。

 

 

「……ダメだ。気持ち悪ィ」

 

 

 口元を抑え、ロックオン(ニール)はコックピットに崩れ落ちる。能力の適正と自分の長所を無理矢理噛み合わせようと試行錯誤している弊害が出ているのだろう。元々、思念増幅師(タイプ・レッド)の力は狙撃型のガンダムにはあまり向いていないと聞く。

 むしろ、ファングやファンネル等の自律兵器を運用するのに適しているそうだ。狙撃系では苛烈なる爆撃手(タイプ・イエロー)の攻撃力増強が向いていると聞く。でも、仕方がないものは仕方がない。ロックオン(ニール)はのろのろと顔を上げた。

 

 コックピットのコンソールに帰投命令の表示が出ている。どうせもう今日は戦えそうにないのだ。素直に従うべきだろう。

 応用とは難しいものである。特に、思念波の扱いはミュウにとってデリケートな案件だ。無理を通せば、暴走させて死んでしまう可能性だってある。

 せっかく生きているのだから、また死ぬのはダメだろう。そんなことをしたら、今度こそ、古巣の面々を悲しませてしまう。そんなのは御免だった。

 

 

(速く使いこなせるようにならねぇと。合流がどんどん遠のいていっちまう)

 

 

 ロックオン(ニール)は頭を抱えてしまいそうになった。ベルフトゥーロやエミリーの方針上、『今のままのロックオン(ニール)では合流したとしても足手まといにしかならない』という。

 

 それもそうか。戦う度にグロッキーになってしまうのだから。戦闘中に気を失ったり、意識を朦朧とさせてしまったりしては、作戦行動の遂行に支障が出る。当然のことだった。

 シミュレーターでは別に平気だったのだが、実際に差異を調整しようとすると、影響は頓著に出てくるらしい。ミュウの繊細さには、有難迷惑しか感じなかった。

 

 大気圏の真下の下。嘗て、デュナメスは地上から大気圏までの距離から狙撃をしたことがある。4年前の武力介入の一件で、その力を示した。

 今、スラオシャがやったのはその逆で、高高度からの狙撃だった。大気圏上空から下にある対象物を狙い撃ちしたのだ。

 相手からはスラオシャを視界の端に捉えることはおろか、レーダーでキャッチすることも、距離的にほぼ不可能だろう。

 

 

『“目隠しと亀甲縛りがあれば、4年前通りに活動可能”なのよねぇ』

 

 

 真顔で分析するエイミーの真っ暗な眼差しを思い出し、ロックオン(ニール)は思わず()()()()()から目を覆った。実の妹には人一倍知ってほしくなかった現状であった。

 ロックオン(ニール)にはそんな性癖も趣味もない。だが、絵面的にまずいのだ。特に亀甲縛りの破壊力がヤバい。弟と恋人がこの有様を見たらどうなるか――考えるだけで恐ろしい。

 

 目隠しだけならまだマシだった。ミュウとして『目覚め』、思念波を使いこなせるようになってから、視界が塞がれていても周囲を察知するくらいは問題なく行える。

 

 だが、亀甲縛りが付与されたらもうダメだ。亀甲縛りだけでも大分キツい絵面なのに、目隠しとプラスにした姿を人に晒していいとは思えない。だからロックオン(ニール)は、どうにかして亀甲縛り無しで戦えるよう努力と研鑽を続けていた。

 その結果がこれ――『数時間の戦闘で疲労が蓄積し、体が不調を訴える』レベル――だ。情けないことに。コックピットの椅子に背中を預けるような形で、ロックオン(ニール)はずるずると崩れ落ちた。

 

 

「亀甲縛りナシでも普通に戦える状態にならなきゃなぁ……」

 

 

 果てしない目的に、ロックオン(ニール)の気が遠くなる。

 もう一度深々と息を吐きだした後、ロックオン(ニール)は操縦桿を動かした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「オートマトンの暴走?」

 

「あれは無茶苦茶だ。罪もない一般人および民間人を、見境なく殺していきました」

 

 

 首を傾げた上司に向かって、アンドレイは声を張り上げた。

 

 

「新型オートマトンは、反乱分子だけを鎮圧するものではなかったのですか!?」

 

 

 アンドレイの脳裏に、無残に殺された一般人の姿がよぎっては消えていく。ウエイター、アルフヘイム社の役員数名、警備員――そうして思い浮かんだのは、オートマトンから襲撃される絹江たちの姿だ。

 テロリスト鎮圧にオートマトンが投入されるのはよくあることだ。勿論、鎮圧に重点を置いたモードで起動させるのが普通である。しかし、あの会場で使用されたオートマトンは、最初からキルモードで動いていた。

 オートマトンをキルモードで投入するという作戦は、今まで何度も繰り返してきた。だが、あれはあくまでもカタロン殲滅時に行ったものである。一般人がひしめくパーティ会場に投入したことは一度もない。

 

 人が多くいる場所では、オートマトンの誤作動が心配される。

 今回の一件は、誤作動による暴走ではないのか。

 

 

「何を言っているんだ、スミルノフ少尉」

 

 

 アンドレイの訴えを聞いた上官は、どこか呆れた様子でアンドレイを見返した。息巻くアンドレイを諌めた彼は、机の上から書類を差し出した。

 その書類にはご丁寧に写真も添付されている。オートマトンによって蜂の巣にされた死体だ。業務上目にする機会が多いとはいえ、気持ちのいいものではない。

 

 

「オートマトンは正常だった。見たまえ」

 

 

 上司に促され、アンドレイは書類に目を通す。死体の写真の下に、写真の人物が所持していたと思しき遺留品のリストが並んでいた。勿論、写真付きである。

 オートマトンによって殺された人間たちとその遺留品を見比べ、アンドレイは目を丸くした。彼らはみな、共通のものを所持していたためであった。

 花と翼が描かれたエンブレム。ある被害者は手帳に、ある被害者はネクタイピンに、ある被害者はアクセサリーに、控えめながらもその紋章が刻まれている。

 

 このエンブレムは見覚えがあった。少し前に反政府団体の認定を受け、取り締まりが行われている謎の組織――スターダスト・トラベラーのロゴマークである。

 

 アンドレイの様子を察したのか、上司は厳かに頷いた。

 そうして、淡々と事実を告げる。

 

 

「こいつ等はみな、反政府団体に所属するテロリストだった。証拠も裏は取れている。そして、他の一般人には一切危害を加えていなかったぞ」

 

 

 茫然と書類を眺めていたアンドレイに、上官は「もういいか」と問うた。アンドレイは頷き、書類を戻す。「所用があるから」とだけ言い残し、上官は速足で去って行った。

 

 オートマトンが正常に動いていたと言うのなら。

 オートマトンに襲われた絹江たちは。絹江の正体は。

 

 

(そんな、まさか……)

 

 

 信じられない。信じたくない。アンドレイの頭の中で、絹江の表情が浮かんでは消えていく。

 『ジャーナリストたちが怪しい動きをしたら、適宜処理を』――上司から言い渡された言葉が脳裏をよぎった。

 軍人の職務を全うするために母を見殺しにした父親の後ろ姿がフラッシュバックし、アンドレイは首を振った。

 

 自分は、どうすればいいのか。

 

 アンドレイは歯噛みする。そうしてふと、思い至った。

 父は、どんな気持ちでその決断を下したのだろうか、と。

 

 

 

 クーゴ・ハガネ、只今、明日を探して迷走中。




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