問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>   作:白鷺 葵

3 / 46
【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。



ネタバレだらけで草ァ!!
??:空の護り手たち


 

「あっ、第1幹部! ブライティクスに関する大河ドラマ、撮影全部終わったらしいです!」

 

「本当!? よかったぁ! 『キャストとスタッフのいがみ合いで撮影延期になった』って聞いたときは、本当(ホント)にどうなるかと思ったんだ!」

 

 

 構成員(しゃいん)からの報告を聞いた第1幹部――リジェネ・レジェッタは、安堵と喜びから大きく息を吐いた。悪の組織もスポンサーとして、資金援助や各スタッフの斡旋等で駆け回ったのだ。上手くいってくれなかったら非常に困る。重要案件が無事に片付いたので、口元が緩んでしまったのは当然だろう。

 

 他にも、映画やドラマに舞台の映像化やその原作小説の売り出しに関する事業展開は幾らでもある。新たな総帥(そうすい)として就任してから頑張っている長男の姿を思い浮かべつつ、リジェネも端末を操作しながら案件の確認を行う。

 つい最近に“新解釈を加えて再構成した”と銘打った――実際は、“程々にプロパガンダを施しつつ、なるべく史実に寄せた”――新説『ソレスタルビーイング』が長編ドラマとして放映されることになった。こちらの方にも、悪の組織――特に総帥(しゃちょう)も映画監修に関わっている。

 特に、作品の主役となる刹那・F・セイエイ、彼女が愛した男であるグラハム・エーカー、2人の相棒をやっていたクーゴ・ハガネやイデア・クピディターズ役のキャスティングには非常に煩い。彼女や彼と瓜二つの役者を見つけ出しては、役者のキャリアガン無視で主役に抜擢し、かなり厳しめの演技指導を行うという悪癖があった。

 

 “『ソレスタルビーイング』の主役に抜擢された俳優たちは、この映画をきっかけに大成する”というジンクスがなかったら、一体どんなことになっていたことやら。

 『今回も4人にそっくりな役者を引っ張って来た』と自慢げに語っていた凝り性の長男を思い出し、リジェネは思わず笑みを浮かべた。

 

 

「第1幹部、ガンダム記念館の記念式典に関する案件の進捗です」

 

「ありがとう! 後でテオと総帥(しゃちょう)にも回しておくね」

 

 

 構成員(しゃいん)から受け取った資料を、記念式典で歌う予定となっている歌手――テオ・マイヤーと、記念式典のスポンサーとしてあちこち駆け回っている総帥(しゃちょう)へ転送する。

 程なくして、彼らから返信がきた。どちらもメッセージも『資料の確認完了、進捗具合の把握、こちらの準備も万端』とあった。……どちらも激務なので、正直ちょっとばかし心配だったりする。

 

 

(……みんなが旅立って、結構な年月が過ぎたな)

 

 

 忙しい日常の中、リジェネはふと立ち止まって空を見上げる。蒼穹の片隅に咲く花は、今日も綺麗だ。

 

 刹那たちが旅に出たのは、1年戦争の記念館が出来たばかりの頃だった。今では計画中だったガンダム記念館建設も既に終わっており、AGE-1を始めとしたガンダムが展示されている。勿論、ソレスタルビーイング製のガンダムはレプリカだ。歴史的な価値だけではなく、“唯一現存するMSを見に行ける”観光施設という側面もあり、人で賑わっている。

 現在ではMSは存在せず、全てワークローダーと呼ばれる非武装人型機動ロボットが闊歩していた。機体の殆どが“ELSを始めとする外宇宙生命体と共同で動かす”ことを前提に設計開発されており、外宇宙航行時のサポーターとして活躍している。MSとしてのガンダムは残らなかったが、その系譜はワークローダーへと引き継がれていた。

 

 ブライティクスも、当時前線で戦っていた大人たちの多くがパイロットや指揮官から退役していたり、重鎮として今も現役で頑張っていたり、寿命で亡くなっていたりする。

 あの頃子どもだった面々――地球防衛組やキオたち――も大人を通り越して初老となり、そろそろ後進育成に取り組もうとしていた。

 外見変化が緩やかなリジェネたちとは違って、周りはあっという間に成長し、老衰し、次世代に後を託していく。

 

 リジェネたちにもそういう文化が無いわけではないが、新人類としての特性上、人間よりも圧倒的な“周回遅れ”になりがちであった。

 

 

『あれから50年近く経過したのに、まだ仕事に慣れてないのか?』

 

『もうちょっと落ち着いて仕事してるイメージがあったから、未だにあの調子なのは驚いたよ』

 

 

(『元・第1幹部がグラン・マから指導者(ソルジャー)総帥(しゃちょう)の地位を継いで、僕が第1幹部に配属された』ことは、体感時間的に()()()()のことなんだけどなぁ……)

 

 

 つい先日顔を合わせた仁とキオからかけられた言葉を思い出し、リジェネは内心苦笑した。イベント関連の仕事でてんやわんやしている姿を見た2人は、懐かしそうにこちらを見つめていたっけ。

 

 

『……僕たちって、宙継くんと同年代だったよね?』

 

『外見年齢が若いままの人たち見てると、なんかバグるよな』

 

 

 尚、その隣で悠宇とディーンが割と真面目な顔をして悩んでいたか。特に前者は、久しぶりにマノンやゴーグ等と再会して話をしていたらしく、色々思うところがあったらしい。

 他にも、クレセント銀河や高度文明連合からの使者が地球を訪れたこともあったか。ブライティクスが結んだ縁は、後の外宇宙探索や異種族との対話に活かされていた。

 

 勿論、ブライティクスの戦いが終わった後も、地球は何度も危機を迎えた。その度に、仲間たちは立ち上がった。

 

 ブラック企業を体現したような政治体系の惑星及び異星人(外見は人間と瓜二つ)から「奴隷になって、社畜の如く365日戦い続けろ」と命令されたこともあるし、神にも等しき生物による身勝手極まりない暴挙によって地球人が拉致されていたなんてこともあったし、いつぞや自分たちが打ち倒した“時代遅れのシステム”を凶悪にしたような存在の暗躍に地球全土が巻き込まれたりもしたか。

 仲間の多くが故郷たる惑星へ帰還したり、ショウたちのように機体を破壊や封印していたり、刹那たちのように外宇宙探索へ旅立って不在だったりして、ブライティクス全盛期と比較すれば戦力不足もいいところである。それでも何とかやってこれたのは、平和を目指して武力を手放し、故郷へ帰り、外宇宙探索へと飛び立った仲間たちの想いを無駄にしたくないと思ったから。

 

 

(あれから色々あったけど、僕らは元気でやっているよ)

 

 

 リジェネは()()()()()人々に思いを馳せる。脳裏に思い浮かべたのは、新緑のマントを翻す女性――敬愛する『母』の背中だった。

 彼女は“楽園”とよく似た白鯨に飛び乗って、どこか遠い場所へと飛び立ってしまった。()()()()()人々たちが乗る白い船は、今頃どこを飛んでいるのか。

 ……答えなんて、『1つ』しかないと《理解し(わかっ)ている》。彼女が乗った白鯨の行き先が何を意味しているかなんて、とっくの昔に気づいている。それでも――。

 

 

(いつか、貴女が僕たちを迎えに来てくれたら。……貴女にたくさん、話したいことがあるんだ)

 

 

 “白鯨が迎えに来る”ことが何を意味しているのか、リジェネたちは知っている。『迎えを望むのはいけないものだ』ということも、知っている。

 同時に、知っているのだ。それが『いつか、誰にでも、分け隔てなく、等しく訪れる()()()なのだ』ということも。

 

 

「地球連邦のキース・アニアン大統領が、火星のゼラ・ギンス大統領や木星連合の大統領と会談を行い――」

 

「外宇宙探査から帰還した“楽園”の艦長ジョミー・マーキス・シンさんが、『新たな銀河系と異種族とのコンタクトに成功した』と――」

 

「民間企業の外宇宙探索部隊に所属している刃金宙継さんが、長年のパートナーである“金属生命体の特殊個体”と婚約を発表――」

 

 

 リジェネが物思いに耽っている間にも、世界は絶えず動き続けている。新たな世代が台頭し、世界を次のステージへと推し進めていくのだ。

 

 まだまだ当分、白鯨はリジェネたちを迎えに来ることは無いだろう。勿論、リジェネたちにだってやるべきことは沢山ある。地球と他の惑星に住まう命たちを繋げ、相互理解と平和を築くために。次世代を担う人々に心構えを教えるために。そうして――白鯨が迎えに来るよりも早く、この地球に帰って来る旅人を迎えるために。

 新人類の勘が叫んでいるのだ。“外宇宙へ旅立っていったソレスタルビーイング号が、もうすぐ地球に帰って来る”と。特に総帥(しゃちょう)の力は正確な日時を察知していたようで、正式な発表(こたえあわせ)が行われる瞬間を今か今かと待ち構えている。ブライダル雑誌の準備をしていたので、旅立った面々の誰かが()()()()()()になっているのだろう。

 ブライティクス時代の僚友たちの結婚式――その一部は、悪の組織が経営しているブライダル事業・部門が担当していたことを思い出す。式を挙げた当事者たちからすれば遠い昔に思うだろうが、リジェネたちにとってはつい最近の出来事であった。瞼を閉じれば、僚友たちの結婚式の光景がありありと思い浮かぶ。

 

 

(……一番ヤバかったの、アキトとユリカの新婚旅行だったなぁ。“2人が新婚旅行中にテロに合う”虚憶(きょおく)を《視て》対策立てたのが上手くいったっけ)

 

 

 地球に残留することを選んだソレスタルビーイングのセカンドチームと、軍を辞した後は紆余曲折の末に悪の組織へ就職したジラート――否、レイナ・スプリガンらを巻き込んで、アキトとユリカ夫婦を襲撃しようとしたテロリストをぶちのめしたのは今でも覚えている。

 奴らの目的――ユリカを生体CPU擬きにするのと、アキトを人体実験の被検体として使い潰そうと画策していた――を総帥の思念波経由で把握したレイナ・スプリガンの大暴れによって、テロリストどもは壊滅。テンカワ夫妻は何の問題もなく新婚旅行を満喫することが出来た。

 

 尚、テンカワ夫婦は、“ソレスタルビーイングの地球残留組とレイナによる共同戦線によって、自分たちを狙ったテロリストどもが一網打尽にされた”ことを把握していたらしい。

 料理修行中の夫の元に遊びに行った際、夫婦から感謝されたことは今でも覚えている。照れ臭いのを誤魔化すようにアキトの作った料理をダメ出ししていたレイナが、顔を赤らめていた姿も。

 リジェネたちにとってはつい最近の光景だけでど、アキトたちにとっては遠い昔の話だろう。“アキトが独立して自分の店を持ち、レイナがそちらを贔屓店に変えた”のは、今から数十年前だったから。

 

 

「生まれる命があれば、去り行く命がある。先を行く人々は、生まれ落ちたばかりの命を――“未知なる可能性(もの)”を秘める存在の未来を照らす役目を担う」

 

 

 ブライティクスの由来は“未知なるものを照らす光”。未知なるものの中には、勿論『未来』も含まれている。

 戦乱を駆け抜け、平和のために戦い抜いた彼らの軌跡は、今もこうして、人々の未来を照らし出しているのだ。

 

 

「“僕らの頑張りが、未来を照らす”……。その輝きを胸に抱いて、ヒトは未来を切り開いていくんだ。――そういうこと、だよね?」

 

<――――>

 

 

 リジェネの呟きに応えるように、懐かしい女性(ヒト)の《聲》が響く。何を言っているかは《聴き取れなかった》けれど、それに込められた想いを《理解する》ことはできた。

 残響でしかないのかもしれない。リジェネの脳が、彼女と過ごした日々をエミュレートしただけの産物でしかないのかもしれない。だとしても、それを忘れることはできなかった。

 だって、きっと、同じ気持ちで前を向いている長兄の姿を、リジェネはずっと見てきたから。母と同じ瞳の色の外套を翻して、先頭に立つ彼の背中を知っているから。

 

 紡がれてきた命を、託されてきた命を、これからも続いていく営みを照らすための光として、自分たちは歩き続けるのだ。

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

 意識が現実に戻ったとき、真っ先に感じたのは“嫌な予感”だった。虚憶(きょおく)の中で、テンカワ夫婦の新婚旅行に関する光景(ヴィジョン)を見たときと同じ予感。

 “テロリストの襲撃を受けた結果、妻は生体CPU擬きにされ、夫は人体実験で味覚を失い復讐鬼と化す”姿を目の当たりにしたときに感じた悪意と同じもの。

 

 リジェネが悪意に身を震わせたのと、別件で動いていた面々からの思念波が届いたのはほぼ同時。

 

 

<第1幹部! テロリストが潜んでいる場所分かりました!>

 

<第1幹部がいる教会のすぐ近くです! しかも、教会方面に向かって移動中!>

 

<奴らの目的地は教会の延長線上にありますが、“教会に新人類容認派の要人が多く集まっている”ことも把握しているようです!>

 

<お“ピー(規制音)”ッ!!>

 

 

 英語圏の暴言に日本語の尊敬語を付けようとも、それが乱闘必須の暴言であることは何も変わらない。今回リジェネが担当している仕事――地球連邦軍所属の軍人、ビリー・カタギリとミーナ・カーマイン夫婦の結婚式の司会進行――の雰囲気に飲まれた結果の産物であった。

 ここ最近、変な動きをしているテロリストの存在は把握していた。超兵やイノベイドの技術を悪用したり、新人類としての覚醒を迎えた人々やハイブリット型の新人類を拉致監禁して言うことをきかせたり、とにかく活発に動き回っていることも把握していた。

 奴らが連邦軍の方針を嫌っており、軍人が多く集まる記念式典を狙ってテロを起こしていることも掴んでいたし、“そろそろ動き出しそうだ”という情報も掴んでいた。唯一掴めなかったのが、奴らの潜んでいた場所。

 

 ――まさか、こんなときに、こんな場所にいるとは思わなかった。ついでに言えば、こちら方面に進路を取っているというのも。

 

 

(立て直しに奔走している真っ最中に、僅かな心のゆるみを狙ってくるか……。よりにもよって、こんなハレの日に! 罰当たりが過ぎるっての!!)

 

 

 憤慨するリジェネであるが、軍部の怠慢だとは言えないし、こちら側の怠慢だとも言われたくない。双方共に立て直しを図っていた真っ最中なのは事実だからだ。

 

 飛び交う思念波から情報を拾い上げて整理する。次の瞬間、リジェネの脳裏に流れ込んできたのは、『彼らの結婚式で余興を披露したい』と主張していたソレスタルビーイングの新人と、彼に巻き込まれた悪の組織の派遣社員だった。

 悪の組織やセカンドチームは別件の方で奮闘中。宇宙にいるファーストチームは距離的に間に合わない。テロリストを直接叩けそうな人員は、結婚式の余興をするためこちらに向かっている2人しかいないのだ。

 

 リジェネが彼らに思念波による救援要請をしようとしたが、2人がテロリストたちの思念を掴む方が早かった。

 余興のことで談笑していた彼らの表情が強張り、真顔になり、仕事人の顔へと変貌した。

 自分たちの格好が礼服であることも忘れて、2人は()()()()()()()。風を切る音が《聴こえた》。

 

 

<我が盟友(とも)の門出に無粋な真似を……! 私はそういう輩が、大の嫌いときている!>

 

<同感だ。俺たちが言うのもなんだけど、こんなサプライズは()らないよな>

 

 

 反応は正反対だが、抱いている感情は同じだ。

 2人は本来の進路を逸れて、テロリストたちが迫って来るであろう方角へ()()()()()

 

 

「あれ?」

 

「どうしたの? ビリー」

 

「あそこを飛んでいるの、フラッグじゃないかな?」

 

 

 同僚たちと談笑していた新郎が何かに気づき、空を見上げる。それにつられるようにして、新郎の関係者――その多くが軍所属のパイロットたち――が空を見上げた。

 

 一部の軍人が、遠くを飛ぶフラッグの所属を照会する。それが“所属不明”であることが明らかになったのはすぐ後だ。地上の動きなど露知らず、2機のフラッグは空を飛ぶ。

 次の瞬間、向こう側から徒党を組んで飛んできた旧式の機体――ティエレン、フラッグ、イナクトらの前に躍り出た。2機のフラッグで構成された部隊と、旧式の機体で徒党を組んだ部隊が戦闘を始める。

 

 参加者の多くが不穏な気配を察知したようだ。不安そうな《聲》がひっきりなしに《聴こえてくる》。新郎新婦含んだ招待客を避難させなければならないが、新郎新婦とその関係者――特に軍属――はフラッグの動きに釘付けだ。

 

 

「あの機体の動きは……」

 

「スタンドマニューバ、だよな?」

 

「うわ、エグッ!!」

 

「乗ってるの、旧式のフラッグだろ? あんな動きができるなんて……」

 

「日本語に“無双”って言葉があるらしいけど、こういうのを言うんだろうな」

 

 

 一部の軍人――パイロットたちは、スタンドマニューバを繰り返して旧式の機体を屠っていく“所属不明のフラッグ”にドン引きしている。彼らは()()()()()()()()()、パイロットたちの技量を思い知ってしまったのだろう。それ故の困惑であり、それ故の感想であった。

 対して、別の軍人――フラッグの動きが何を意味しているかを、断片的にでも()()()()()()者たち――は、食い入るように機体の動きを見つめていた。彼らの瞳に込められたのは確証と信頼だ。故に、花婿を筆頭とした彼の関係者は、避難する素振りを見せることなく空を見上げる。

 信頼という意味では、リジェネも同じだ。サプライズを行う予定だった2名の腕前は、ソレスタルビーイングが世界を相手に戦ったときから把握している。特に、対アロウズや金属生命体との対話での活躍は――リジェネたちの特性も相まって――ついこの間のことのように覚えていた。

 

 尚、旧式相手にワンマンショーをやっているフラッグたちには特殊な改造が施されている。諸事情で“愛機に搭乗できないときに使う”機体で、旧式相手ならほぼ負けなしであった。

 スペック的には『太陽炉を搭載した機体相手だとジリ貧になる』ものの、2人の戦闘技量なら『追い縋って一矢報いる』くらいのことはやってのけそうだった。――実際にそうだったけど。

 

 

「ふ、ふふ……っ。――はは、あはははは!」

 

 

 所属不明のフラッグが手際よく敵部隊を沈黙させたのと見届けて、新郎は思わず笑う。それにつられて、一部の軍人たちも笑みを零した。

 

 純粋に称賛の笑みを浮かべる者、苦笑する者、呆れた調子で笑う者、懐かしさに浸るようにして笑う者――反応は人それぞれであるが、泣き笑いの表情を浮かべていたのは新郎であった。

 彼は真っすぐに2機のフラッグを見つめる。安全確認と確保を終えたフラッグが振り返り、その拍子に彼らの視線が合った。新郎は眼鏡を取って目元を拭い、天を仰ぐ。

 

 フラッグはビリーに見つめられていることに気づくと、優雅に空を駆けていく。サプライズ関係に関する時間は既にオーバーし、実質『遅刻してきた』ような状態だけれど、リジェネは敢えてそれを容認した。一歩間違っていたら結婚式は中止になっていたし、幸せな門出が地獄の始まりになっていたかもしれないので。

 一番の理由は、新郎であるビリーとその友人たち――特に、旧オーバーフラッグス部隊やソルブレイヴズ隊の面々が喜んでいるのが大きい。意図せぬ形になったものの、サプライズは大成功だったと言えよう。実質、航空ショーがテロリスト鎮圧ショーになり、元の航空ショーに戻っただけである。

 

 

(ウケがいいな)

 

 

 拍手喝采の見物客を横目に、リジェネは改めて司会進行の段取りを立て直す。

 一番の余興がこのサプライズだったこともあって、どうにかリカバリーできそうだ。

 

 変幻自在、天衣無縫に飛び回っていたフラッグたちが、教会の近辺に着地する。コックピットから飛び出してきたのは、礼服姿に身を包んだ2人の男性。

 片や、金髪碧眼に白い肌。顔に大きな傷跡や、髪や顔に金属生命体と共生している形跡があっても、端正な顔立ちを保つ男性。彼が身に纏っているのは、少々よれて崩れたタキシード。

 片や、黒髪黒目の黄色人。首元から背中にかけて金属生命体と共生している形跡があり、一目見れば年若い少年と見間違うような顔をした男性。彼が身に纏っているのは、少々はだけて崩れた羽織袴。

 

 

「すまない、遅れた! ――我が友よ、結婚おめでとう!」

 

「申し訳ありません。ちょっとトラブルが発生してしまって……」

 

 

 満面の笑みを浮かべて祝辞を述べる金髪碧眼の男性に対し、司会進行役たるリジェネや参加者たちに頭を下げる黒髪黒目の東洋人男性。それを見た新郎は、静かに目を細めた。

 

 

「……本当に、キミたちは予測不能なコンビだなぁ」

 

 

 

 オーバーフラッグス/ソルブレイヴズ隊元・副隊長の明日が何処にあるのか――その始まりは、今から4+n年前まで遡る。




感想はこちら
1stシーズン編はこちら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。