問題だらけで草ァ!! -Under the Flag-<2nd Season>   作:白鷺 葵

47 / 47
【諸注意】
 1.この作品は『大丈夫だ、問題しかないから』シリーズのリメイク版です。
 2.『ガンダム00』を原作に、アニメ版『地球へ...』、及び『スーパーロボット大戦』や『Gジェネレーション』シリーズ等の要素とクロスオーバーしています。
 3.主人公含め、オリキャラが多数登場します。
 4.キャラ改変や原作崩壊、原作死亡キャラの生存要素があります。
 5.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 6.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 7.刹那が先天性TSしており、グラハムとくっつきます(重要)
 8.基本はギャグとラブコメ色強めですが、時々シリアスになります。
 9.読了後に如何なる負の感情を抱かれても、書き手にはどうすることもできません。

 10.『◆◆◇』が「虚憶⇒現実」、『◇◇◆』が「現実⇒虚憶」、『◆◆◆』が「虚憶⇒虚憶」、『◇◇◇』が「現実⇒現実」、『◆』が「特殊な意味合いが含まれている」場面転換、及び視点切り替えになります。
 11.『*』は「短時間経過での場面転換・視点はそのまま」、『**』及び『***』が「長時間経過での場面転換・視点はそのまま」を意味しています。
 12.良くも悪くも飯テロ要素があります。注意してください。

 13.この小説は2023年の10月時点で明らかになっている情報をベースにして執筆しているため、後の公式作品で発表・開示された情報とは矛盾が発生する可能性があります。

上記が大丈夫の方は、本編をお楽しみください。


33.わるいのだれだ

 

「さあ、始めようじゃねぇか! とんでもねえ戦争をよォ!」

 

 

 サーシェスが駆るアルケーと初代ロックオンの駆るスラオシャが、宇宙(そら)で激突する。

 

 戦争をばらまくサーシェスは、ここでもまた争いを引き起こそうとしていた。カイルスのメンバーたちもそうだが、奴に両親を殺されたロックオンが、家族の仇であるサーシェスを野放しにするはずもない。

 カイルスの仲間たちが雑魚敵と戦いを繰り広げる中、サーシェス/“権天使”との一騎打ちはロックオン/スラオシャに任された。ぶつかり合いは――あまり認めたくないことであるが――サーシェスの方がやや優勢であった。

 

 

「ははっ、どうしたァ!? 俺を倒して仇を取るんじゃなかったのか? にいちゃんよォ!」

 

「相変わらず腹立たしい下種野郎だ……! 今度こそ地獄に返品してやるぜ!!」

 

 

 スラオシャのスナイパーライフルが唸る。しかし、アルケーは難なくそれを躱すと、スラオシャとの距離を一気に詰めた。

 射撃特化型であるスラオシャであるが、一応、近接武装が存在した。そのうちの1つがスナイパーライフルの銃身で、用途は鈍器・初見殺しと不意打ち用である。

 アルケーのビームサーベルと鍔迫り合いを繰り広げるスラオシャであるが、彼の獲物はあくまでも銃。接近戦はあまり好きではなさそうだった。

 

 対して、サーシェスは本職の傭兵だ。体術からナイフ捌きや銃の扱い方、MSの操縦技術までなんでもござれ。ほぼ全ての武器を獲物として扱えるサーシェスにしてみれば、『ロックオンに白兵戦を仕掛ける』というのは文字通りの最適解であった。

 

 鈍器として振るわれたスナイパーライフルとビームサーベルがぶつかり合う。ロックオンの舌打ちとサーシェスの笑い声は、両機体の拮抗状態を表しているように思えた。

 競り負けたのは、ロックオン/スラオシャ。弾き飛ばされたスラオシャに、アルケーがサーベルを振りかざす!

 

 

「ロックオン!」

 

 

 彼と懇意にしていたオペレーターの悲鳴が響く。近場で雑魚と戦っていたミシェルやムウがロックオンを援護しようとするが、間に合わない。

 万事休すかと思っていた刹那、四方八方からレーザーが降り注いだ! 不意打ちを本能で察知したのか、サーシェス/アルケーが飛び退った。

 

 ビームの雨あられが大地を抉る。もうもうと広がった煙が晴れて、スラオシャを救い出した機体が降臨した。

 

 

「テメェの戦争は終わりだ、アリー・アル・サーシェス!」

 

 

 白と緑を基調とした機体。その面影は、どことなくスラオシャと似通っている。しかし、細部のデザインや武装にははっきりとした違いがあった。

 本来、ロックオンには嘗ての愛機・デュナメスの後継機が与えられるはずだったのだが、紆余曲折の果てに専用の改造を施された機体に搭乗することになっている。

 

 今、この場に降り立ったのは、何もなければロックオンが搭乗する予定だったデュナメスの正当な後継機だ。そうして、この場に響き渡った声は、彼の声と瓜二つである。以前、ロックオンは『双子の弟がいる』と漏らしていた。――そこから導かれる答えは。

 

 

「お前……まさか、ライルか!?」

 

 

 ロックオンの素っ頓狂な声が響いた。兄から名を呼ばれたライルはニヒルに微笑み返す。

 

 

「フ、久しぶりだな。兄さん」

 

 

 乱入者の存在に気づいた雑魚敵が、ライルを屠らんと迫る。しかし、奴らの剣は、ライルの機体に傷をつけることは叶わなかった。雑魚敵とライルの機体の間に割り込んだ機影によって真っ二つにされたためである。

 夜明けの空を思わせるような淡いペールブルーの機体が、ライルの機体に寄り添うように降り立った。ペールブルーの機体は、悪の組織第1幹部関係者が搭乗する機体とデザインがよく似ている。おそらく、同系統のラインで生み出された機体なのだろう。

 ライルと一緒に乱入した人物の正体はすぐにわかった。イデアが懐かしそうにパイロットに声をかけたためである。彼女はイデアやクーゴが身を置いていた悪の組織/スターダスト・トラベラーの構成員で通信士を担当しているアニューというらしい。

 

 誰に促されたわけでもなく。

 アニューはいい笑顔で自己紹介を始めた。

 

 

「初めまして、ライルのお義兄さん! 私、アニュー・リターナーと言います。ライルとは結婚を前提にしたお付き合いをさせていただいてます」

 

 

 爆弾が落ちた。ロックオンがあんぐりと口を開ける。

 

 

「元々は悪の組織に所属していた事務員兼通信士ですが、現在はソレスタルビーイングへ出向しています。イデアと同じミュウであり、ティエリアさんやリボンズさんと同じイノベイドで、起動してから9年と3ヶ月になります」

 

 

 更に核弾頭が落ちた。ロックオンのこめかみがひくついた。

 

 

「あっ、体の年齢は20代前半なので大丈夫ですよ! 夜のアレコレだってちゃんとできますし、実際もう既にやりつくしてますし! ライルったら、本当に激しいんですよ。しかも言葉責めが大好きで……」

 

「アニュー! 今そういう話はいいから!!」

 

 

 アニューが頬を染め、ライルがツッコミを入れる。世界が焦土と化したのを目の当たりにしたかのような表情を浮かべ、ロックオンがパイロット席に背中を打ち付けた。

 彼の口元は戦慄いている。この場が戦場でなければ、激高してライルへと殴りかかっていきそうだ。辛うじて、ロックオンはそれを押さえつけている。

 

 

「ハハハ、同じ面が2つだと!? 面白れぇじゃねえか!」

 

 

 修羅場一歩手前の双子のやり取りを見たサーシェスは新しいおもちゃを見つけたかのようにはしゃいでいた。兄弟と弟の婚約者をまとめて始末することにしたらしい。

 戦闘態勢を整えたサーシェス/アルケーを目にして、ライルとアニューの機体は臨戦態勢を整える。ロックオン/スラオシャだけが茫然としていた。

 しかし、それも一瞬。すぐにロックオン/スラオシャはスナイパーライフルを構えて戦闘態勢を取った。カメラアイがギラリと輝く。物々しい雰囲気だ。

 

 

「何故お前がここにいるのかとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳児に手を出したのかこのロリコン野郎とか、お前の性生活や性癖がそんなんだったのかとか……訊きたいことは沢山ある」

 

「あんたは今まで何してたんだとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳差の女の子に手を出すつもりでいるのかこのロリコン野郎とか、場合によっては警察への通報も辞さないとか……俺も、兄さんに言いたいことが沢山ある」

 

 

 ロックオンとライルがしかめっ面をした。

 しかし、ライルの切り替え早い。

 

 

「だが、詳細は後だ。まずはあの糞野郎を……!」

 

「ああ。そうさせてもらう」

 

 

 ライルの言葉に従い、ロックオンはサーシェスを睨みつける。

 

 

「「ロックオン・ストラトス」」

 

 

 ニール・ディランディとライル・ディランディ。

 双子の声が、綺麗に重なり合う。

 

 

「狙い撃つぜ!」

「乱れ撃つぜぇ!」

 

 

 ディランディ兄弟(2人のロックオン・ストラトス)による、奇跡の競演が始まった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 H.I.A.W.Dに所属する機動兵器部隊とぶつかり合うのは、グランドマザー『テラ』に属する刃金(ハガネ)蒼海(アオミ)陣営と目的や正体が未だ不明なオルブロ陣営。ただ、グランドマザー『テラ』とオルブロは“お互いに対して不干渉”という態度でいるため、実質的には蒼海(アオミ)とオルブロ陣営の合同部隊と言っても過言ではない。

 グランドマザー『テラ』は、センチュリオシリーズのMDや思考プログラムによって多方面――アロウズの軍人やイノベイドたちを洗脳し、特に後者を特攻兵器のパイロットとして使い潰す物量戦に出ていた。件の特攻兵器は純正太陽炉、及び悪の組織製MS疑似太陽炉に搭載された疑似太陽炉搭載機のみ使えるトランザムシステムを搭載し、H.I.A.W.Dの機動兵器に対して体当たりを繰り出している。

 オルブロは相変わらず、未知なる技術が存分に搭載された謎の機動兵器を駆って好き放題暴れまわっている。クーゴが奴らと対峙したのは国連軍時代であるが、あれから技術革新による新機体への乗り換えや新戦力の追加によって大所帯になったH.I.A.W.Dでさえ、奴等への明確な有効手段を有していない。突破口があるとするなら、アサヒたちが搭乗する機体――ヴァンアインくらいだろうか。

 

 だが、対オルブロの要になりそうなヴァンアインは、早い段階で戦場(ここ)から強制的に離脱させられている。

 原因は非常にシンプル。戦線に飛び出したヴァンアインを待ち構え、奇襲してきた奴がいたためだ。

 

 

『――あの島以来だな』

 

 

 ヴァンアインの真横から襲い掛かって来たのは、オルブロの幹部・コヨートルが駆る専用機・ショロトル。半人半馬(ケンタウルス)型の形状が特徴的な黒い機動兵器は、挨拶じみた言葉と共にヴァンアインに突撃する。

 

 コヨートル/ショロトルの得意分野は“猛スピードで敵艦に突撃後、そのまま敵艦に張り付いて集中攻撃を叩き込む”対艦戦闘。大きさは小型~中型程度のMAとも引けを取らないが、速度と破壊力はH.I.A.W.Dの機動兵器すら手玉に取れるレベルだ。

 何も知らない機動兵器乗りは悲惨である。大方、戦闘スタイルの誤認――機体の大きさ故、機動性を低く見積もる――と機体性能の差で一方的に蹂躙されるだろう。情報を把握しているH.I.A.W.Dに属する機動兵器乗りでさえ、正面対決での苦戦は必須なのだから、当然の話なのだが。

 ならば、H.I.A.W.Dがオルブロ幹部――今回のケースではコヨートル/ショロトル――から奇襲を受けた場合はどうなるか。『正面からやり合うことでも難儀する奴が、意図していないタイミングでいきなり飛び出せばどうなるか』等、答えは明白だろう。

 

 

『横からだと……!? ――うぐッ!?』

 

『きゃっ!?』

 

 

 ショロトル/コヨートルの不意打ちは見事に決まり、ヴァンアイン/アサヒとホノカは易々と拘束されてしまう。

 身動きの取れないヴァンアインは、そのままコヨートルの推進力に押されるような形で味方との距離を離されてしまった。

 

 この戦場で1番の金星を挙げたはずのコヨートルは、何故か呆れ果てたような調子で――そもそもコイツは常に冷淡で感情に起伏を感じない性格らしいのだが――ため息をつく。

 

 

『こうも簡単に捕らえられるとは、お前の無警戒さには絶望する。……最も、警戒した所で結果は変わらないが』

 

『クソッ、離せ!』

 

『それはできない相談だ。お前たちには一緒に来てもらうぞ』

 

 

 次の瞬間にはもう、ショロトル/コヨートルとヴァンアイン・アルヴァ/アサヒとホノカの姿は見えなくなってしまっていた。

 H.I.A.W.Dにとって幸先悪い展開である。何せ、対オルブロ戦の要となる存在が戦線離脱してしまった。文字通り『出鼻を挫かれた』と言えよう。

 何名かがヴァンアイン・アルヴァ/アサヒとホノカを追いかけようと試みたが、グランドマザー『テラ』陣営の妨害――数の暴力によって阻まれてしまった。

 

 飛び出してきたMDたちの群れに紛れて、奇妙な形態の機動兵器が展開している。機体の形状はどちらかと言えば戦闘機に近しいフォルムで、視認する限り攻撃手段――主に武器の類を一切有していない。

 だが、グランドマザー『テラ』とその申し子たる刃金(ハガネ)蒼海(アオミ)。“戦場のど真ん中に非戦闘機を展開させる”などと言う非効率的な真似をするとは思えなかった。

 

 

『さあ行きなさい、■■! 私たちの“革新”を受け入れられない落伍者たちを抹殺するのよ!』

 

 

『――トランザム』

 

『――トランザム』

 

 

 ハルファスベーゼ/留美(リューミン)の号令に従い、機動兵器の群れが飛び出した。パイロットの機械的な声が響いたのと、機動兵器がトランザムを発動させて突っ込んできたのはほぼ同時。奴らは何の迷いも躊躇いもなく、ダブルオー/刹那に向かって体当たりを仕掛ける。刹那は防御姿勢を取ったが、文字通りの“体当たり”を喰らったことで身動きが取れなくなっていた。

 攻撃手段が“体当たり”なのだから、件の機動兵器は木っ端微塵に爆発四散。最初に攻撃を仕掛けたパイロットはともかく、それに続いたパイロット/機体の動きに迷いや躊躇いらしき感情(モノ)は無い。ミュウ含んだ“人の心の《聲》を聞き取れる”類の能力者でも、パイロットの感情の揺らぎは一切関知できなかった。

 そうこうしている間に、機動兵器の群れはH.I.A.W.Dに向かって突撃してくる。トランザムの推進力を『いち早くターゲットへ接近するため』及び『直撃時の衝撃や威力を上昇させるため』という単純な目的に費やした一撃は、単純明快ながらも爆発的な威力を発揮していた。しかも、それが複数一気に突っ込んでくるのだから厄介なことこの上ない。

 

 

『成程。俗にいう“人間爆弾”というヤツか……!』

 

『頭おかしいんじゃないの!? このクソアマ!!』

 

 

 機動兵器のコンセプトをその身で体感したクーゴと蒼海(あおみ)が奴らに非難を向けた横で、ノブレスが小さく舌打ちする。

 幾ら機動兵器の群れを打ち堕とそうとしても、奴らの波状攻撃が止まらない。武装のクールタイムやリロード等の隙に殺到されるのが厄介だった。

 

 

『武器は己の身そのもの。故に、他の機動兵器が有するような武装は必要ない。――故に、これ程までの数を用意できた。コストカットの極みですね』

 

『おにーさんの言う通り、機体の量産は圧倒的に容易だ。じゃが、機体の操縦とトランザムのタイミング調整は人力任せ。それ故に、あの機体は()()()()()()()()()()()

 

 

 ノブレスの言葉を引き継いだエイフマンの表情が曇る。この戦線にひしめく機動兵器の数は、10や20で収まる程ではない。

 

 

『あれ程までの機体数を展開しているのなら、乗り手(パイロット)の用意も必要じゃ。MSの操縦に適性のある人間を短期間に集めるのは容易ではない。――()()()()()な』

 

『普通じゃない手段で、容易に機体のパイロットを集める手段……!?』

 

『そんなの、思考プログラムじゃないの? グランドマザー『テラ』の十八番じゃないか』

 

 

 発言者であるエイフマンは、既に一定の見当をつけているような物言いをしていた。突っ込んできた敵機を迎撃していたヒリングとリヴァイヴが首を傾げる。

 H.I.A.W.Dの面々も同じ見解――機動兵器のパイロットに仕立て上げられたのは、『思考プログラムが施された人間』である――を持っている者が多い。

 実際、グランドマザー『テラ』陣営はS.D.体制の技術である思考プログラムを駆使して暗躍している。差し向けられたパイロットの中にも、その被害者は多くいた。

 

 それを肯定した上で、リボンズが口を開く。齎された情報から類推し、それを言葉として出力することで己の思考回路を整理しているかのように。

 

 

『H.I.A.W.Dが交戦した思考プログラムの被害者、その多くが軍人やテロリスト――MSの操縦に長けた人物たちだ。大なり小なり戦力になる人間を、あんな馬鹿みたいな機体に乗せて使い潰すなんて真似、全くもって合理的じゃない。上澄みの実力者は特に、()()()()()()()んだから――』

 

 

 次の瞬間、リボンズが鋭く息を飲んだ。()()()()()という言葉に、何かしら覚えがあったためだろう。

 リボンズの顔色が目まぐるしく変わっているのは、“己もまた当事者の1人である”という確証からか。

 

 

『まさか、この機体のパイロットは、全て――』

 

『――この機体の操縦能力に特化させた量産型イノベイドだ』

 

 

 リボンズの言葉を引き継いだのは紅龍(ホンロン)だ。彼は相変わらず平坦な口調を崩さぬまま、淡々と事実を告げる。

 

 “パイロット適性を持つ人間に思考プログラムを施す”或いは“思考プログラムを施した人間の才能をパイロット向けに調節する”より、“量産体制や手段を確立しているイノベイドを生産し戦闘用に調節する”のが容易であることは、ソレスタルビーイング結成に関わった面々であれば予想がついただろう。ベルフトゥーロから又聞きした話では、『ガンダムマイスターを全員イノベイドにして、いずれは人類統一のために滅んで貰う』という計画も存在していた程だ。

 クーゴ――否、H.I.A.W.Dに所属している団体の1つであるソレスタルビーイングや悪の組織のクルーにもイノベイドがいる。前者はティエリアとアニュー、後者はリボンズを筆頭とした第1幹部とその配下たち。彼や彼女は自らの意志で戦うことを選び、この戦場を飛び回っていた。故に、クーゴ――否、H.I.A.W.Dの面々は知っている。『イノベイドにだって意志や心があり、生きているのだ』と。同時に、彼や彼女たちの憂い――『イノベイドが“革新者(イノベイター)下位互換(スペア)”として酷使され、使い潰されてしまう』のを危惧していたことも。

 グランドマザー『テラ』の行動理念は『合理的であるか否か』。一定条件――兵士としての適性や規格、及び肉体的な要素をクリアしている――を満たした不特定多数の人間に思考プログラムを施すより、最初から“軍人としての規格を突破できる程度の肉体に調整されている”状態で量産が可能で、“特攻兵器を操縦し、適切なタイミングでトランザムの指示出しを行うだけの技術を彫り込む”のが容易なイノベイドを■■のパイロットにするのは、何もおかしい話ではない。充分あり得る範囲であった。

 

 

『貴様ァッ!! 命を、命を何だと思っている!?』

 

『うわ、怒った!』

 

『煩いな。これでも喰らえ! ■■ミサイル!』

 

 

『ふざけるな! なんで、どうして、お前はそんなことが出来る!?』

 

『イノベイドは“革新者(イノベイター)に尽くすために生み出された人造生命体”。自らの存在理由を果たすことこそ本望ではなくて?』

 

『違うわ! イオリア・シュヘンベルクがイノベイドを作った本当の理由は――』

 

『行きなさい、■■! 革新者(イノベイター)に盾突く出来損ないを排除するのよ! 革新者(わたしたち)のために!!』

 

 

 自身の境遇がイノベイドである者、或いはイノベイドと深い関りを持つ者たちが激高するが、刃金(ハガネ)青海(アオミ)たちにとっては取るに足らないモノでしかない。奴らは何の感慨や感傷も、迷いや躊躇いもなく、特攻兵器を差し向けた。

 特に刃金(ハガネ)3兄弟――海月、厚陽、星輝や留美(リューミン)が顕著である。3兄弟は■■及びそのパイロットのことを玩具として、留美(リューミン)は■■及びそのパイロットのことを下僕として扱い、容赦なく使い潰していた。

 

 “やられる前にやる”という方針で攻撃を阻止していたが、数の暴力ではどうしても押し負けてしまう。

 太陽炉や疑似太陽炉搭載型はGNフィールドで防ぐものの、特攻兵器の波状攻撃は止まらなかった。

 このままでは、ソレスタルビーイングの航行艦、或いはグランドマザー『テラ』の本体に近づけない。

 

 

「グランドマザー『テラ』と蒼海(アオミ)おねえさまは、特にあなた達を脅威と認識している。このまま足止めさせて貰うわ」

 

「く……!」

 

「っの……!」

 

「――トランザム」

 

 

 留美(リューミン)の号令に従い、新たな特攻兵器が殺到する。奴らはH.I.A.W.D全体を標的としているが、その中でも重点的に狙われていたのが刹那/ダブルオーとクーゴ/はやぶさだった。

 

 前者を危惧する理由は『自分と同じ革新者(イノベイター)だから』、後者は『グランドマザー『テラ』の最高傑作だから』、突き詰めれば『グランドマザー『テラ』にとって都合の悪い存在』となる。

 元々、刃金(ハガネ)蒼海(アオミ)陣営のMSはスペックが高かった。時代の変化やオルブロとつるんだことによる技術革新を経て、その性能はより向上している。更にはオルブロも戦線に加わっていた。

 人間であれば、調子に乗っていたとしてもおかしくはない。そこが攻め入る隙に繋がっただろう。だが、相手は冷酷無比なスーパーコンピューター。優位性の確保が最優先事項になるのは当然か。

 

 

「クーゴさん……ッ!」

 

<刹那……!>

 

「■■■■■……!」

 

 

 イデア/パハリア、ブシドー/マスラオの後継機、宙継/ちょうげんぼうがこちらを援護しようと近づくが、彼女や彼らも特攻兵器に狙われている。

 3人/3機はトランザムを発動して突っ込んでくる機体の群れをやり過ごすため、GNフィールドを展開した。絶えず降り注ぐ攻撃に対応するので手一杯だ。

 

 

「このままじゃ、みんなが……!」

 

「分かっている……! だが、母艦と本体へと侵入するチャンスを逃すわけにはいかない!」

 

 

 キラの悲痛な叫びに対し、ゼロは苦虫を噛み潰したような声を漏らした。戦術指揮官の観点としても、長らく共に宣戦を駆け抜けてきたH.I.A.W.Dの仲間としても、現状を放置することはよろしくなかった。だが、そちらに気を向けて、母艦や本体に潜入するチャンスを逃すのは本末転倒だ。

 彼はグランドマザー『テラ』とやり合えそうな戦術指揮官の1人ではあるが、冷酷無比な機械ではない。良くも悪くも人間臭い人物だった。故に、刹那やクーゴを見捨てるという方針に舵を切れないでいる。合理性だけでは生きていけない人間の(さが)

 常に仮面で顔を隠し、年齢含んだ経歴なども一切不明。クーゴやH.I.A.W.Dの人々が把握していることは、『扇に認められて黒の騎士団のトップになった』程度だ。国連軍として彼らと敵対していた時期は何度も煮え湯を飲まされたし、共闘するときは彼の奇策によって窮地を脱したことだって経験済み。

 

 ただ、H.I.A.W.Dの僚友として共に過ごすうちに――否、H.I.A.W.Dの僚友という立場に立ったからこそ、色々分かったこともある。

 

 平時は冷静で頼りになる人物だが、琴線に触れた相手に対してはそれとなく贔屓する傾向があること。取り乱すと落ち着くまでまともに役に立たないこと。身内のことになると我が身を顧みない程の激情を宿していること。

 そうして――クーゴたちのことを『H.I.A.W.Dの僚友』と認め、大なり小なり『身内』として大事に思っている。故に、ゼロは()()()()()()()()のだ。頭脳をフル回転させ、作戦成功とクーゴたちの生存という結果を手に入れるために。

 

 

(でも、どの道、どんな手段を選ぼうが、“これを突破できない限り先に進めない”)

 

 

 相変わらず、特攻兵器はトランザムを駆使した体当たり攻撃を繰り出してくる。時にはMDと連携し、時には革新者(イノベイター)たちの反撃措置で、時にはMDや革新者(イノベイター)の盾として。

 

 人権なんて言葉は一切存在しない。流石は“S.D.体制という旧時代の遺物を下地にした支配体制の構築”を掲げる連中だ。ミュウは害獣なので処分、イノベイドは道具なので使い潰す、人間はコンピューターの都合によって役割を与えられて使い潰される。

 この世界に残るのは“グランドマザー『テラ』とその代行者にとって都合のいい人間”だけ。それ以外の生存権は認められない。『歪んでいる』と言わずして何と言うのか。こんな世界が成り立ってしまえば最後、H.I.A.W.Dの僚友やその身内の安全は一切保証されないだろう。

 

 どこかの宇宙で起きた出来事――人類の指導者とミュウの指導者が、己の命と引き換えに“ヒトがヒトとして生きられる世界とその未来”を勝ち取った――が、この宇宙(せかい)で起きた戦いに繋がった。

 この世界の旧人類と旧新人類はグランドマザー『テラ』の雛型だったスーパーコンピューターと相打ちになったが、後者が再起動してしまったことで、彼らが望んだ世界と未来は風前の灯火になりつつある。

 H.I.A.W.Dはこれまでの戦いを経て、様々な人の想いを背負っている。彼や彼女たちの生きる世界を守るために戦い、未来を勝ち取って来た。ここで負けると言うことは、それら全てが潰えてしまうと同義。

 

 

(何でもいい。どこでもいい。突破口は――)

 

<――アンブレイカム・フルクラム。折れない意志!>

<ガンダムスラオシャ、狙い撃つぜ!>

 

 

 どこかでコインの落ちる音がした。()()()()()()()()()()誰かの《聲》に視線を向けた直後、四方八方から光が降り注ぐ! それは、太陽炉/疑似太陽炉搭載型MSに殺到していた特攻兵器を的確に撃ち抜き、追撃しようとしていた留美(リューミン)や海月たちを牽制した。

 攻撃の延長線上に現れたのは、深緑と黄緑を基調にした狙撃型のガンダム。ソレスタルビーイング製の機体と非常に似通った風貌だが、所々悪の組織の手癖らしき武装(モノ)が展開されている。特に、ライフルの口径に戻っていくチャクラムのようなもの――クーゴの虚憶(きょおく)が正しければ、あれはSPIGOTと称される武装だった――は、虚憶(きょおく)由来の武装(モノ)だったはず。

 

 間髪入れず、白い戦艦が戦線に乱入。見知らぬ疑似太陽炉搭載型の機体が次々と戦場に躍り出た。一歩遅れてレーダーが更新され、表示されたのは味方識別。そうして、間髪入れず、H.I.A.W.Dへ向けた通信が開いた。

 

 

<――ここは俺たちに任せてくれ!>

 

「ロックオン!? ――――!!?」

 

「兄さん!? 何故兄さんが――う、うわあああああああああ!!?」

 

 

 “何故、この戦場に初代ロックオン(ニール)がいるのか”――ゼロと2代目ロックオン(ライル)の疑問は、映し出された顔出し通信によって秒で吹っ飛んだ。

 否、この場で初代ロックオン(ニール)の顔出し通信を見ていた全員が同じような心理状態――俗にいう阿鼻叫喚――に陥っている。勿論、クーゴもその1人だった。

 

 

「そ、その恰好は、一体……!?」

 

「めっ、目隠しギャグボール亀甲縛りですって!? 変態、変態よぉぉぉぉ!?」

 

「――貴様、お嬢様になんて物を……!」

 

 

 ゼロと留美(リューミン)が引きつったような声を上げた。恐れ慄く妹/主を庇うようにして、兄/使用人の紅龍(ホンロン)初代ロックオン(ニール)を威嚇する。

 さもありなん。通信越しに映し出されたのは“ヘルメット越しに目隠しとギャグボールを装着し、パイロットスーツの上に縄を亀甲縛りしている”初代ロックオン(ニール)という絵面だ。

 クリスティナ――或いはハッキングを生業としている面々――が悲鳴を上げながら年少組の通信にハッキングを施す光景が《視えた》。彼女たちの努力はギリギリ間に合ったらしい。

 

 

「無理矢理戦線復帰を早めた結果がこれよ」

 

「エイミー!?」

 

 

 そんな混沌地帯に解説をぶち込んだのは、乱入した戦艦の戦術指揮官・エイミーだ。2代目ロックオン(ライル)からすれば更なる混乱だろうが、妹は取り乱す兄など歯牙にもかけない。

 

 

「ミュウとしての能力を開花させたのはいいものの、繊細かつ鋭敏化した自分の力を暴発させ続けた。その後の訓練で日常生活は問題なく送れるようになったものの、MSパイロットはおろか、狙撃手としての復帰もままならない。だからといって、大人しく療養することも、ソレスタルビーイング及びH.I.A.W.Dの仲間たちを黙って見ていることもできず、“再び戦場で戦えるようにする”ための手段を模索した結果がこの有様」

 

「ここまでしなければダメだったのか!?」

 

「ええ、最善は尽くしたわ。それでコレなの。ニール兄さんの性癖が元からイカレてた訳でもないし、戦線離脱している間にイカレたって訳でもないから安心して頂戴」

 

「要らない! そんな補足絶対今要らないヤツ! ロックオン泣くからやめてあげて!!」

 

 

 兄の尊厳を容赦なくぶちまける有様に、カレンは思わずエイミーを制止した。彼女が差す“ロックオン”は、一体どちらのことを指しているのか。

 「ここまでしなければ戦線復帰できなかったのか」と問いかけたゼロは未だに動揺したままだ。仮面の下では、一体どんな表情をしているのだろう。

 

 

「なんで……どうして……」

 

 

 エイミーの補足をどこまで噛み砕けたのか――そんな不安に駆られてしまう程、2代目ロックオン(ライル)の声はか細かった――、2代目ロックオン(ライル)は恐る恐る兄に問いかける。初代ロックオン(ニール)は躊躇うことなく宣言した。

 

 

<俺だってソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ! ゆっくり休んでいられるか!!>

 

「せめて縄とギャグボール外して戦えるようになるまで休んでくれよ!!」

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

『俺、ちょっと準備があるから』

 

 

 出撃前、パイロットスーツに着替えていたクーゴと宙継に対し、初代ロックオン(ニール)はそう言って送り出していた。そのときの彼の格好は“ヘルメットを被れば準備完了”だったと思う。

 今思い返せば“多少表情が引きつっていた”ような印象があったし、声色も“若干上ずっていた”と言うか、“詳しい説明を避けようとしていた”ようにも思えた。

 てっきりクーゴは『初代ロックオン(ニール)の出撃が遅れたのは作戦の関係上だ』と思っていたけれど、『他にも事情があった』という可能性を考慮していなかったのだ。

 

 

「うそだ……兄さんが、兄さんが、こんな変態だったなんて……!」

 

「待てライル、誤解だ。話を、話を聞いてくれ。一端冷静になろう」

 

「ロ、ロックオン……。わ、私、頑張る。頑張るから……!!」

 

「落ち着いてくれフェルト。鞭と蠟燭は要らない。だから今すぐそれを片付けてくれ。な?」

 

 

 そうして広がるのは、阿鼻叫喚の地獄絵図。

 

 初代ロックオン(ニール)の準備は、“パイロットスーツの上から目隠し亀甲縛りをする”という奇特なものだった。日本でもアブノーマル側に分類される性癖であるが、規制の厳しい海外では容赦なく『変態』側に属する――何ならご近所さんやお巡りさんから敵視されかねない――性癖にカテゴライズされるし、その性癖持ちも変態扱いされかねないモノであった。

 それに、ストラトス(ディランディ)兄弟妹(きょうだい)の出身地はスコットランドだし、そもそもプトレマイオスのクルーの大半が海外文化圏の出身者たち。イアンとリンダの年の差婚に異議申し立てや『犯罪ですよ』等のコメントをする面々だ。その基準からロックオン(ニール)の格好を目の当たりにすれば、疑念の目で睨みつけられるのは当然と言えよう。

 

 

「無理矢理戦線復帰を早めた結果がこれよ」

 

「エイミー!?」

 

 

 そんな混沌地帯に解説をぶち込んだのは、京都行きの際にお世話になったホワイトベースの艦長・エイミーだ。

 2代目ロックオン(ライル)からすれば更なる混乱だろうが、妹は取り乱す兄など歯牙にもかけない。

 

 

「ミュウとしての能力を開花させたのはいいものの、繊細かつ鋭敏化した自分の力を暴発させ続けた。その後の訓練で日常生活は問題なく送れるようになったものの、MSパイロットはおろか、狙撃手としての復帰もままならない。だからといって、大人しく療養することも、仲間たちを黙って見ていることもできず、“再び戦場で戦えるようにする”ための手段を模索した結果がこの有様」

 

「ここまでしなければダメだったの!?」

 

「ええ、最善は尽くしたわ。それでコレなの。ニール兄さんの性癖が元からイカレてた訳でもないし、戦線離脱している間にイカレたって訳でもないから安心して頂戴」

 

「要らない! そんな補足絶対今要らないッス! ロックオン泣くからやめてあげて!!」

 

「フェルトはとっくに泣いてるのよ!!」

 

 

 初代ロックオン(ニール)の尊厳を容赦なくぶちまける有様に、リヒテンダールは思わずエイミーを制止した。彼が差す“ロックオン”は、一体どちらのことを指しているのか。

 ついでにもっと言えば、クリスティナはフェルトを庇うような所作をしながら初代ロックオン(ニール)を威嚇している。フェルトは涙目になりながら鞭と蝋燭を構えていた。

 いつぞやの虚憶(きょおく)ではカレンとゼロが狼狽していたように思うが、2人もこんな気持ちで戦友の性癖疑惑を眺めていたのだろうか――等と思いを馳せずにはいられない。

 

 

「なんで……どうして……」

 

 

 エイミーの補足をどこまで噛み砕けたのか――そんな不安に駆られてしまう程、2代目ロックオン(ライル)の声はか細かった――、2代目ロックオン(ライル)は恐る恐る兄に問いかける。初代ロックオン(ニール)は躊躇うことなく宣言した。

 

 

「俺だってソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ! ゆっくり休んでいられるか!!」

 

「せめて亀甲縛りは外して戦えるようになるまで休んでくれよ!!」

 

 

 ごもっともである。

 

 実際、そのおかげでロックオン(ニール)ソレスタルビーイング(古巣)の仲間たちから変態の疑惑を持たれているのだ。弟である2代目ロックオン(ライル)、恋人であったフェルトに至っては“身内/伴侶の性癖がアブノーマルだった”という衝撃を叩き込まれており、未だ混乱の最中である。

 余りの光景(さんじょう)に目を覆ったスメラギ、どう擁護すればいいのか分からず狼狽するラッセ、何だか楽しそうなリンダ、逆光のせいで顔全体が影に覆われて眼鏡がぎらぎらしているイアン、「業が深い」とドン引きしているリヴァイヴ・ヒリング・ブリング・デヴァイン、状況が状況なだけに仲間(初代ロックオン)の帰還を素直に喜べないガンダムマイスター達――。

 

 多分、何事も無ければ、積もる話は沢山あったのだと思う。何せ、ソレスタルビーイングから見た初代ロックオン(ニール)は“国連軍の最終決戦が始まった直後、機体だけ残して事実上のMIAになっていた”人物だ。ソレスタルビーイングが活動を再開するまでの4年間はずっとスターダスト・トラベラーで療養兼ミュウの力を研鑽しており、妹のエイミーの指示で古巣との連絡を()()()絶っていたのだから。

 ひょんなことから『初代ロックオン(ニール)が生きているかもしれない』という予感を抱いていたガンダムマイスタープラスαからしてみれば、実に4年ぶりの再会。『今までどこで何をしていたのか』、『無事だったならどうしてこちらに連絡をよこさなかったのか』等、質問責めになっていたはずだ。今すぐ尋問が始まってもおかしくなかっただろう。

 その前に、先の戦い――アニューが思考プログラムによって、支給された支援機で大暴れした――の後始末を片付ける方が優先だった。何せ、アニューの支援機は爆発四散、アニュー本人は気絶中。プトレマイオスの面々も、思考プログラムによって操られたアニューの暴走によって負傷者が出ていたのだ。そちらの治療や艦内の損傷個所等の確認だってあった。

 

 

<マイスター側の損傷は機体共々軽微だけど、クルー側の被害が大きくてね。暫くの間は治療に専念せざるを得ないと思う>

 

<身体的な怪我は医療カプセルを使えば()()()()()()()で復帰可能だけど、心理的な面はどうなるか……>

 

<それは僕たちにも言えることなんだけどね。メンタル面に関しては、医者の不養生と言ったところか>

 

 

 思念波であちらの状況を伝えてきたのは、プトレマイオスに常駐しているスターダスト・トレイマーの医師ユウイと、その妻にして看護師のカリナだった。2人の表情は暗く沈んでいる。

 この夫婦がプトレマイオスに常駐し始めてから1年も経過していないが、プトレマイオスのクルーたちと共に死線を潜り抜けてきた。それに、同胞であるリヴァイヴたちも艦に同行している。

 更には思考プログラムによって仲間、或いは同胞同士が殺し合いを演じる羽目になったのだ。自分たちが言及したことに対し、苦笑してしまいたくなるのも当然だろう。

 

 ミュウは種族柄、ストレスに弱い。人の心や感情を敏感に察知できる弊害で、自分や他者の負の感情をダイレクトに察知してしまい、精神面に大きな影響を受けることもあった。

 

 実際、精神面に強い負荷を受けたミュウが自身のサイオン波を暴走させた末に命を落とした例が存在している。その人物の名前が『カリナ』――現在プトレマイオスに常駐している看護師と同名だったのは、作為的なモノを感じてしまいそうだ。

 件の『カリナ』は夫を事故で亡くし、更には人間側の軍人によって息子を失ってしまったと誤認――息子側は“肉体を無理矢理成長させるため、自らの意志で仮死状態になっていた”だけ――したことで力を暴走させ、ミュウの母艦の一部を破壊し、最期は亡き夫にプロポーズされたときの記憶を《視》ながら力尽きている。

 

 

<特に、アニューさんの精神状態があまり良くないんだ。『思考プログラムに乗っ取られた自分が何をするか分からない』と怯えてる>

 

<ソレスタルビーイングの規則的にも、思考プログラムが施されている彼女をそのまま放置するわけにはいかないでしょう。確実に、何らかの誓約を課されることになるわね>

 

<例えば?>

 

<過去にあった実例だと、『首に自爆機能付きのチョーカーを装着する』例があるわ>

 

 

 イデアの問いに、カリナが沈痛な面持ちで返答するのが《視えた》。

 

 

<実際、『ソレスタルビーイングに対して敵対行動を取った者が爆殺処分された』記録もあるの>

 

<うわあ。二代目が怒りそうね>

 

<そりゃあもう、盛大に>

 

 

<――なんでだよ!? アニューは思考プログラムに操られてただけだろ!? それがどうして『ソレスタルビーイング(俺たち)への敵対行動』扱いされて、爆弾まで付けられなきゃいけないんだよ!?>

 

 

 思念波越しに送られてきたのは、カリナが言った『自爆機能付きのチョーカーによる爆殺処分を受けた者たちの記録』と、ソレスタルビーイング側からのペナルティに対して怒りをあらわにするロックオン(ライル)の姿だ。彼の怒りを真正面から喰らった面々も、何とも言い難そうに俯いている。

 今は思考プログラムの影響下に無いとはいえど、プトレマイオスのクルーたちに対して損害を与えたのは事実。しかも、今が落ち着いていたとしても、アニューが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。また何らかの拍子に思考プログラムが再起動し、再びアニューが敵に回る危険性が残っている。

 何の対策が無い状況で()()()()なのだ。また何かの拍子に、アニューが思考プログラムの支配下に置かれてしまった場合、此度の再演になりかねない。今後また同じ状況に陥った場合に備えて『何かしらの対策を練らなければ』と考えるのは当然と言えよう。

 

 沈痛そうな面持ちで俯く者たちが並ぶ中、ソーマが思いついたように口を開いた。

 <自分にはマリー・パーファシーの記憶がある>と付け加えて。

 

 

<嘗てのマリー・パーファシーは文字通りの『寝たきり状態』で、脳量子波がなければ会話や周囲の様子を探ることすらままならなかった。人革連から調整を受けなければ、彼女は一生あのままだっただろう>

 

 

 ソーマが思いを馳せるのは、彼女の心の中で閉じこもってしまったマリー・パーファシー。1つの体に同居する2人の人格は、紆余曲折の末に互いの記憶や思考を共有する間柄になっていた。

 

 

<話は変わるが、マリーの記憶では、ミュウの中には『自分の意識を思念体として肉体から切り離す』ことが可能な者がいるらしい。それを応用すれば、アニューを『寝たきり状態(嘗てのマリーと同じ)』にすることができるのでは?>

 

<アニューを昔のマリーと同じ状態にする? なんで……>

 

 

 首を傾げた二代目ロックオン(ライル)に対し、ソーマは淡々と自身の見解を述べる。

 顎に手を当てて思案しながら言葉を紡ぐソーマは、至極真面目であった。

 

 

<マリーの記憶では、彼女自身や軍部はあの状態を『生きているのか死んでいるのか分からない』と評した。意識があっても、肉体を動かすために必要な全機能が失われていたからな。……派遣の誰でもいい、S.D.体制の記録で『思考プログラムが施された人間』に関する情報はないか? 特に『肉体面や知能面に問題がある人間』について>

 

<ないな。そもそも、肉体面や知能面に問題があると分かった時点で、そういう人間は間引かれる仕組みだ>

 

<人類の代表者を育英する場合でも、肉体や知能に問題がある人間と関わらせることはなかった。なら、一般人(コモン)や一般的な軍人や政治官僚(エリート)としての修士を修めた者たちも然りだろう>

 

 

 ソーマの問いに答えたのはブリングとデヴァインだった。

 

 S.D.体制下では『()()()()()五感が機能せず、体も満足に動かせない状態の人間が、思考プログラムの対象者に選ばれた』という記録は一切ない。寧ろ、そういう落伍者が生まれ落ちないよう、グランドマザーや各種テラズ・ナンバーたちが管理していた。時にはそういう個体の間引きも行われていただろう。

 一般人としての立場用に育英や調整を受けた者たちの場合、何事も無ければ、死因は老衰や体の各種機能が衰えたことによる機能不全だろう。軍人や官僚だって、何事も無ければ同じような死を迎えたに違いない。そうなるようプログラムされたグランドマザーによって管理されているのだから。

 彼や彼女たちの話を聞いていたリヴァイヴとヒリングが顔を見合わせる姿が《視えた》。2人は何か思うところがあったのか、思念波を使って遠くにいる誰かへ連絡を取る。彼らの思念波の先に会ったのは、チーム・トリニティの旗本艦であるカテドラル。

 

 

<ねえノブレス>

 

<何ですか?>

 

<フェニックスに検索して貰ってほしいの。思考プログラムの被害者の健康面、特に身体や精神の障害の有無についてのデータ>

 

<分かりました。フェニックス>

 

<ああ、任せろ!>

 

 

 ノブレスとフェニックスは二つ返事で頷き、リヴァイヴやヒリングらにデータを送った。イノベイド勢4人が1つの端末画面を覗き見る。なんだか箱寿司みたいにぎゅうぎゅうしていた。

 暫しデータと睨めっこしてた4人は納得したように頷く。曰く、<思考プログラムが施された人間たちは、総じて『肉体面・知能面に異常が無い』者たちばかりだった>という。

 欠損や麻痺、或いは精神疾患等が由来で『体を自由に動かせない』人間は、思考プログラムを施す対象者として選ばれていない。寝たきり状態も、勿論『対象外』にカテゴライズされる。

 

 クーゴの傍でウィンドウを複数展開していた蒼海もまた、同じようなデータを引っ張り出していたところだった。

 彼女はテラズ・ナンバー1の権能を行使し、思考プログラムに関する情報をクーゴに預けた後、彼女はそっと口元に指をあてて首を振った。

 

 

「あおちゃん」

 

<無理。怖い>

 

「あおちゃん」

 

<『坊主憎けりゃ袈裟まで』じゃん>

 

「あおちゃん」

 

<あたしが何か言うより、くーちゃんが手渡した方が後腐れないもん。だからお願い>

 

 

 拗ねるように頬を膨らませ、居心地悪そうに俯く蒼海。何かしら負い目があるとき、彼女がいつもそうしていた。14歳、或いはそこに至る以前の記憶が呼び覚まされたような心地になった。

 

 現時点――プトレマイオス側の後始末が完全に終わっていない現状では、蒼海に関する話は一切していない。向こうのクルー含めた全員が『プトレマイオスの状況が落ち着き次第、向こうと顔を突き合わせてブリーフィングを行う』という意見で一致しているためだ。そこへ蒼海を投入したら、事態は余計に混乱するだろう。

 ただでさえ、プトレマイオス側は“初代ロックオン(ニール)生存”、“思考プログラムを施されていたアニューの今後”で思考回路が大渋滞している。そちらが解決していない状態で、クーゴ側の事情を明かすのは余計に混乱というか、精神的な均衡を欠くことに繋がってしまうだろう。蒼海の懸念も分かるような気がした。

 とりあえず、クーゴは蒼海から齎された情報をリヴァイヴたちに投げる。「ちょっとした情報筋から貰った」と付け加えて提供したそれは、『思考プログラムは“脳・神経・筋肉のいずれかに僅かでも異常がある人間”はプログラムの対象外』であり『思考プログラムを施された人間が後天的に()()なった場合、一時的に休眠措置が取られる』ことの証拠であった。

 

 つまり、嘗てのマリー同様『自分の意志では肉体を動かすことができない』状態になれば、アニューに施された思考プログラムは事実上無効化できるのだ。何せ、マザーコンピュータ側からすれば『規格外』なので。

 処分しようにも、四肢を自由に動かせない上に寝たきり状態の人間が自殺を図ることは非常に難しい。生命維持装置に繋がれ、思考プログラムとは無縁の見張りがすぐ傍にいるなら余計にそうだ。

 件の情報はすぐさまプトレマイオスのクルーに伝達された。“アニューが暴走して仲間を傷つけてしまうことも、暴走したアニューを仲間たちが手にかける心配が当面なくなる”ことに、安堵の《聲》が広がる。

 

 

<問題があるとするなら、“思考プログラムを解除する手段を発見、或いは確立するまで、アニューにはずっと『マリーと同じ状態』でいてもらう”必要がある点だが……>

 

 

 ソーマの物言いは非常に冷淡ではあるが、声にはプトレマイオスの人々を案じる気持ちが滲み出ている。人革連時代からアロウズに所属していた頃の彼女はソレスタルビーイングを倒すべき敵と認識していた。

 だが、眠りから覚醒したマリーと記憶を共有し、表にいたマリーがプトレマイオスの面々と交流を重ねていくうちに、ソーマ自身もソレスタルビーイングの面々を“大切な仲間”と認識し、気遣うようになった。

 

 ソーマは伺うようにして脳量子波を展開。アニューの思念とコンタクトを取る。その言葉と感情を《聴いた》アニューは即答した。

 

 

<――構わない。みんなを傷つけずに済むのなら、ライルの傍にいられるなら、私はそれが一番いいもの>

 

 

『ま、待って! 嫌! 止まって、止まってよ……! 私、ライルの――みんなの傍に居たいの……!!』

 

『もうどうしようもないなら、せめて、最期だけは、ライルが見えるところに居たいの……! 好きな人の近くに居たいの!!』

 

 

 いつかどこかで《視た》虚憶(きょおく)で、アニューが悲鳴を上げていたときの光景がよぎる。蒼海(アオミ)によって施された思考プログラムにより、ZEXISに危害を加え、どこかへ飛び去ろうとするガッデス。アニューの意志や叫びなど完全に踏み躙られていた、地獄のような一幕だ。

 確かあの時も、初代ロックオン(ニール)/スラオシャの狙撃によってアニュー/ガッデスは無力化され、2代目ロックオン(ライル)がコックピットを引き抜いてアニュー救出に成功したんだったか。恋人たちの願いは、長らく行方知れずだった長男によって叶えられたわけだ。

 

 向こうではひと段落ついた空気が漂い始めたが、次はホワイトベース側の問題がある。

 

 

「……なんて説明すりゃあいいんだろうなァ」

 

 

 「絶対あいつら怒るだろ」――初代ロックオン(ニール)は力なく笑って天を仰ぐ。丁度そのタイミングで、向こうが彼についての話題を切り出した。

 ガンダムマイスターたちやプトレマイオスのクルーにとって、初代(ニール)は既に死んだものと思っており、後に生存情報を掴んでも、信じ切れていない状態であった。

 4年間何をしていたのか、何故一切連絡をしなかったのかを根掘り葉掘りされることになるだろう。恐らくは、ベルフトゥーロの命で隠蔽に加担していたクーゴたちも含んで。

 

 

「……俺たちも一緒に怒られとこう」

 

「そうですねぇ。実際、隠蔽の片棒担いだようなものだし」

 

<あれ? もしかして僕らも怒られる系?>

 

<寧ろ出向組全員が共犯みたいなもんでしょ>

 

<<あ>>

 

 

<――ユウイ・アスカ、カリナ・アスカ! まずは貴方たちからだ!!>

 

 

 クーゴたちと同じ穴の狢――スターダスト・トラベラー所属にしているミュウであるリヴァイヴとヒリングが顔を見合わせれば、ブリングとデヴァインも同じようにして間抜けな声を漏らす。

 それは医務室にいたユウイとカリナ夫妻も同じだったらしく、うつうつとした表情は即座に苦笑へと切り替わっていた。程なくして、医務室が蹴破られるような勢いで開く。

 真っ先に飛び込んできたのはティエリア・アーデ。幼子のように声を荒げた青年は、文字通り『まくしたてる』ような勢いで夫妻を問い詰めにかかった。

 

 沙慈とルイス夫妻には聞きに行かなかったのは、多分、尋問の難易度が医者と看護師夫妻とイノベイドたちより別ベクトルで高いためだろう。情報を引き出すより先に、惚気話か石破ラブラブ天驚拳でノックアウトされるのが目に見えていた。閑話休題。

 

 彼に続いて、続々とクルーたちが雪崩れ込んで来る。イノベイドたちは諸事情――アニューが思考プログラムで操られていた際に怪我を負った――から雁首揃えて医務室にいたため、夫妻同様逃げ切れずに詰問対象にされていた。

 一足先に医務室から出て行ったはずの怪我人だったラッセとリヒテンダールも、悪い顔をしながらとんぼ返りをキメている。面々はホワイトベース隊とのブリーフィングが始まるまでに、搾れるだけ情報を搾り取るつもりでいるのだろう。特に2代目ロックオン(ライル)が率先して情報を引き出しにかかる。

 

 

<アニューに酷いことしたお前を襲撃しようとしたら、初代の妨害にあって……>

 

<毎回毎回お前の身代わりになったから、肉体面の復帰がどんどん遅れて……>

 

<肉体面が健康にならないと、サイオン波の訓練ができないような状況だったらしいね>

 

<過敏症じみた感じになってたもんね。あの期間が無かったらもっとマシになってたかも>

 

<十中八九2代目ロックオン(おまえ)の身代わりになったせいじゃねーか!!!>

 

<ごめんなさい!!!>

 

 

 だが、それは4人の発言によって方向転換。2代目(ライル)初代(ニール)の復帰に横槍を入れまくった原因としてカテゴライズされるに至った。

 弟が全員から攻められるという構図は、初代ロックオン(ニール)の心の柔い所を刺激しているのだろう。慌てて思念波で制止しようとして――

 

 

ライル(ロックオン)、貴方、トレミーに来る前からアニューに最低なことしてたのね。私だけじゃ飽き足らず、ロックオン(ニール)のことまで巻き込んで……>

 

 

 呆れたような《聲》がした。その主は、フェルト・グレイス。

 

 それを皮切りに《視えた》のは、いつぞやの出来事。2代目(ライル)が――何を思ったのかはフェルトの思念から察しとることは不可能だったが――突如、強引にフェルトの唇を奪った光景だ。クーゴは乱心したアニューと悲痛な表情を浮かべたフェルトから話だけは聞いていたが、実際その光景を目の当たりにしたのは――思念波とは言え――今回が初めてである。

 次の瞬間、クーゴのすぐ傍にいたロックオン(ニール)が動きを止める。苦笑していた兄貴分の顔から表情がごっそりと抜け落ち、剣呑な雰囲気を漂わせ始めた。プトレマイオスの医務室にいた夫妻やイノベイドたちがゴミを見るような目をしつつドン引きする。比較的早い段階で正気に戻ったユウイが、思わずと言った調子で零した。

 

 

<フェルトさん。い、今、ホワイトベースの面々と思念波で繋がってて……>

 

<貴女の思念が、初代(ロックオン)くんに……>

 

<えっ>

 

 

 夫妻から指摘を受けたフェルトは一瞬目を大きく見開いた後、顔面蒼白になって狼狽し始める。

 『双子の弟にファーストキスを奪われた』なんて話、初代(ニール)には知られたくなかったに違いない。

 寧ろ、自分の側から話すつもりだってなかっただろう。咄嗟にフェルトは口を開き、弁明しようと試みる。

 

 

<あ、あの……ロックオン(ニール)。私、私……やだ、どうしよう……!? ご、ごめんなさッ、ごめ、ごめんなさい……! わ、私が無防備だったから、あんな……!>

 

 

 はらはらと涙まで零したフェルトの姿を目の当たりにしたせいか、今の初代ロックオン(ニール)の表情を伺うことは叶わない。

 どこから差し込んで来たのか、逆光のようなナニカのせいで、初代ロックオン(ニール)の体全体が深い影を纏ったように見える。

 

 この光景は、思念波経由でプトレマイオス側にも伝わったのだろう。みんなぎょっとした顔をした後、フェルト以上に血の気が引いた2代目ロックオン(ライル)に視線を向けた。文字通りの集中砲火。

 

 

<あ、あの……兄さん。俺――>

 

<――ライル>

 

 

 上ずった声を上げて弁明を試みる2代目(ライル)とは違い、地の底から響くような低音で弟の名を呼ぶ初代(あに)ロックオン(ニール)。たまらず2代目(ライル)は身を縮こませて閉口する。

 

 

<詳しく説明してくれないか? 今、俺は、冷静さを欠こうとしている>

 

 

 口ではそう語る初代ロックオン(ニール)だけれど、彼の有様は何もかもが『それどころではない』状態だ。冷静さを欠くという段階はもう既に過ぎ去っており、諸悪の根源(ライル)をぶちのめす算段を立てているようにしか見えない。

 思念波越しに怒気をぶつけられた2代目ロックオン(ライル)は――多分、無理矢理フェルトの唇を奪ったことをアニューに暴露された際に発生した紆余曲折――から、当時の自分の行動について、大なり小なり罪悪感やうしろめたさを感じていたようだ。

 しかし、それはそれ、これはこれ。怒髪天で自分を見つめる初代ロックオン(ニール)に対して、どうにか弁明しようと試みていた。所謂『悪あがき』である。勿論『効果はいまひとつ』、否、『効果が無い』としか言いようはなかったのだけれど。

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 連邦を蛇蝎の如く嫌っているジオンにも、『ジオンと連邦が戦争を続けたら禄でもない末路(こと)になる』と察している派閥は存在している。特に今は、外宇宙生命体の脅威が間近に迫っていた。

 

 クーゴ・ハガネが所属する和平工作部隊・オルトロス隊の直属上司であるキシリア・ザビもまた、『外宇宙からの脅威が迫ってんのに人類同士で潰し合いとかやってられない(意訳)』と思っている人物だ。彼女が率いる派閥はジオン国内だけでなく、『旧連邦の腐敗体勢を許せない』と思った連邦のエースらが合流している。

 このままジオンと連邦が泥沼の争いを続けていては、地球も人類もダメになってしまう――そんなこと、ジオンの軍人たちは内心理解していた。だが、表立って和平路線を打ち出すには、積み重ねられてきた怨嗟を無視できなかった。(ふる)い時代を生きてきた人間ほどに、怨嗟という名の重力に囚われてしまいがちであった。

 ジオンのお偉いさんは、和平路線を打ち出して活発に動き回るキシリア派の動きを黙認している。クーゴたちオルトロス隊の面々が自由に動き回れたのは、キシリアのネームバリューや求心力以外にも、ザビ家の偉い人たちが彼女を静観、或いはバックアップに回ってくれたからだと言えよう。

 

 

(――それでも、ジオンは一枚岩になりきれない)

 

 

 踊り狂う議会を見つめながら、クーゴはひっそりため息をついた。

 自分たちの眼前では、キシリア派の連中がやんややんやとヤジを飛ばしあっている。

 

 

「話が進まないな……。これでは無駄に時間を浪費するだけではないか」

 

 

 シャアが苛立たし気にぼやくが、幸か不幸か、踊り狂うのが忙しいお偉いさん方には聞き取れなかったようだ。故に、シャアを咎めようとする者は誰もいない。

 

 

「仕方ないだろう。ジオンにはジオンの事情があるし、あそこで語らっている上官たちは“旧連邦の体制で煮え湯を飲まされた者も多い”と聞く。私個人としては、彼らの気持ちは分からなくもない」

 

「我々と秘密裏に繋がっている連邦のコネクトに対しても、連邦との癒着疑惑を捨てきれないのだろう。……最も、一番の理由は別の所にあるようだが」

 

 

 赤い彗星のぼやきを引き継ぐようにして、ブシドーとゼクスが肩を竦める。クーゴも頷いた。

 

 

「今まで連邦にしてやられてきた分、今回の件ではジオンが主導権を握りたい。それが無理ならせめて、(ふる)い軍人を納得させられる正当な理由が欲しい。……難しい話だ」

 

 

 議会の中でも活発に発言している壮年の軍人たちは特に、旧連邦との戦争やイザコザで戦場を駆けた――若しくは煮え湯を飲まされ続けた生き残りたちである。今回の和平交渉は、今までの溜飲を少しでも下げるチャンスだと考えているのだろう。妥協はできない。

 その怨嗟が続く限り、キシリア派の和平路線は進まない。せっかく正統ジオンとして独立し、新たな風を吹かせようと奔走しているというのにだ。怨嗟と腐敗が斜め上の方向に絡みついたが故の停滞である。クーゴは外部からやって来た人間故に、旧い軍人たちのプライドは理解できそうになかった。

 

 正直に言う。話し合いを眺めているのはもう飽きた。かといって、自分の立場は迂闊な発言など許されないワケで。

 

 過去の因縁や蟠りが事態を停滞させている。過去はもう変えることは出来ないし、戦いで失われた命が戻ってくることは無い。変えられるのは未来だけ。

 あそこで議論する軍人たちは、良くも悪くも“過去の犠牲を悼むというところで歩みを止めてしまった”人々だ。

 過去負った傷の痛みを覚えているからこそ、踏み出すことに臆病になっている。そんな彼らを一方的に責めるというのは、何か違う気がした。

 

 

「みんなが納得する方法、かぁ……」

 

 

 クーゴが考え込んだ、丁度そのとき。

 

 

『行くぞ! ガンダムファイトォォ……レディー……!』

 

『えっと……勝敗はMSの――って! ちょ、ちょっと!? 待ってくださいー!!』

 

『ってことは、僕が立会人!? 待って! 規格揃えないと勝敗決められないんですけど!?』

 

 

 ――今一瞬、何か《視えた》ような気がする。

 

 片方では世界規模での流行、もう片方が少女の通っている学校内でのトップを決める仕組みとして『決闘』が執り行われていた。

 双方共に厳格な規格を有しており、『自分の勝敗結果を厳粛に受け止める』という決まりがあったか。

 最も、ガンダムファイトで決着がつくのなら、眼前の議会は踊り狂って停滞するばかりではないのだろうが。

 

 

「ガンダムファイトで白黒つけられるんだったら、話は早いんだけどな」

 

「ガンダムファイト?」

 

 

 クーゴの呟きを拾ったブシドーやゼクス、シャアが首を傾げてクーゴの方を向く。

 クーゴもまた、彼らに向き直って説明を始めた。

 

 

「今では試合や娯楽として頻繁に開催されてるけど、元々は“国の威信を賭けた決闘”としての色合いが強かったって話を聞いたことあるんだ」

 

「“国の威信を賭けた決闘”か。興味深いな」

 

「しかも、一度試合が行われて決着がついたのであれば、“例え一国家であろうとも、異議申し立てを行うことなく粛々と結果を受け入れていた”らしい」

 

「なんと!? “国の威信を賭けた決闘”となれば、そう簡単に敗北を受け入れられるはずがないだろうに……」

 

「場外戦や妨害は頻繁に行われていたみたいだけどな。俺は詳しいことは知らないけど、コネクト・フォースには当代のキングオブハートが在籍してたはずだ」

 

「成程。ならば、立会人は確保できるな」

 

「だとしても、どうだろう。ジオンがガンダムファイト終了後の通例通り、『決着がついたのであれば、例え一国家であろうとも、異議申し立てを行うことなく粛々と結果を受け入れる』ことができるか否かって点があるしなぁ……」

 

 

 オルトロス部隊の有力者4人が顔を見合わせ語らいを始めてから暫くして、ふと違和感を覚え前を向く。踊り狂っていた議会はいつの間にか静かになっており、先程まで議論を戦わせていた軍人たちがこちらを凝視していた。派閥のトップたるキシリア・ザビも、目を大きくかっ開いてクーゴを凝視している。

 誰もがみんな真剣な面持ちである。何度瞬きを繰り返してみたが、夢でも幻でもない、現実の光景だ。彼や彼女らの目も本気である。ついうっかり「嘘でしょ?」と素で零してしまったが、お偉いさんたちはまったく気にしていなかった。本気の目のまま、弾かれたように動き出す。

 

 

「今すぐ、ガンダムファイトに関する情報や見解をジオンの有識者に問い合わせろ!」

 

「内容次第では、徹底抗戦派の連中を納得させられるかもしれない!」

 

「その際のプレゼンは私に任せてくれないか?」

 

「ならば、ジオンの代表は我々オルトロス隊に任せて頂きたい! どうしても決着を付けたい相手がコネクトにいるのです!」

 

 

 踊り狂っていた議会が圧倒的な力でまとまっていく。誰も彼もがその案を称賛し、あれよあれよと話が進んでいった。そのどさくさに紛れるような形でブシドーが『ガンダムファイトの代表になりたい』と主張する。他の仮面たちもそれに続き、上官が満面の笑みを浮かべて親指を立てた。

 その間にジオン側の有識者がやって来たようで、ガンダムファイトの成り立ちから現在に至るまでの歩み、過去に“国の威信を賭けた決闘”として行われたガンダムファイトに関する背景及び参加国・優勝国の事情やその後などが語られる。絵面は完全にギャグなのに、誰も彼もが真面目な顔をしていた。

 

 程なくして、評決がとられることとなった。鳴りやむことのない、割れんばかりの勢いで響き渡る拍手。

 

 反対派は1票。問答無用で多数決の原理(数の暴力)が執行される。この部屋いっぱいに響く歓声に、自分だけが取り残されてしまったような気分になった。

 いや、実際、クーゴは完璧に置いてけぼり状態である。反対に1票投じたのは他でもないクーゴだからだ。本当にどうしてこうなってしまったのか。

 満面の笑みを浮かべる親友・“武士道”を皮切りに、オルトロス隊の僚友たちがクーゴの肩に手を置いた。「言いだしっぺの法則発動」と、奴らの眼差しが叫んでいる。

 

 

「誰か。嘘だと言ってくれ」

 

 

 クーゴは茫然自失のまま、そう呟くので精いっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 アニュー・リターナーを無事に確保できたのは数刻前の話である。目隠しギャグボール亀甲縛りの初代ロックオン(ニール)の姿をモニター越しに目の当たりにした面々が悲鳴を上げ、実際にその有様と対面してじりじりと距離を取って後退していたのも数刻前の話である。

 目隠しギャグボール亀甲縛りが初代ロックオン(ニール)の性癖ではないこと、ガンダムマイスターとして戦い続けるために背負うことになった代償だと言う話を聞いた面々が、色々なものを飲み込んで、彼の帰還を祝ったのも数刻前の話である。

 プトレマイオスのブリーフィングルームに集まったのが初代ロックオン(ニール)とフェルト、2代目ロックオン(ライル)とアニュー以外であることを見てすべてを察した面々が話を進めようとしていたのは、今から丁度半刻前の話だった。

 

 

『ライル』

 

『詳しく説明してくれないか? 今、俺は、冷静さを欠こうとしている』

 

 

 ドスの効いた初代ロックオン(ニール)の思念波が艦内全体に響き渡り、いつぞやの問題――2代目ロックオン(ライル)の浮気疑惑――を彷彿とさせるような光景が《視えた》。

 当時の2代目ロックオン(ライル)は俗にいう『むしゃくしゃしてやった』が似合うような心情で、嘗て兄と交際しており実質未亡人状態だったフェルトの唇を強引に奪ったらしい。

 

 プトレマイオスや協力者であるディヴァイン・ドゥアーズの仲間たちを巻き込むような形で大騒動に発展したが、アニューにぶん殴られた2代目ロックオン(ライル)が必死に土下座して事なきを得ている。

 その分、関係者たちからは件の件で白い目で見られていたようだが、数多の戦いを乗り越えていくうちに『笑って流せる(???)過去』くらいには落ち着いたらしい。少なくとも、クーゴはそう認識していた。

 だがしかし。件の地雷は、戦線復帰した初代(ニール)の帰還をトリガーにして起爆してしまった。先程まで漂っていた和やかな空気は吹き飛んでいる。

 

 

<お前、本当に今まで何やってたんだよ!? 何故お前がここにいるのかとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳児に手を出したのかこのロリコン野郎とか、お前の性生活や性癖がそんなんだったのかとか……訊きたいことは沢山ある!>

 

<それをいうならこっちだって! あんたは今まで何してたんだとか、いつの間に彼女ができたのかとか、9歳差の女の子に手を出すつもりでいるのかこのロリコン野郎とか、場合によっては警察への通報も辞さないとか……俺も、兄さんに言いたいことが沢山ある!!>

 

 

 ――最初は、初代(ニール)2代目(ライル)を詰問していたはずだった。

 

 しかし現在、彼らの会話は段々とおかしな方向へと転がりつつある。まるで子どもみたいな兄弟喧嘩だ。

 艦内にいた面々の困惑が広がっていくのが嫌が応にも《理解(わか)って》しまう。

 

 

「ろりこん? せいへき?」

 

「宙継、聞くな。意味も考えなくていい」

 

<小隊長くん。彼らは我々にはまだ早い会話をしているらしいからな。終わるまで別なところにいようか>

 

 

 飛び出してくる言葉の数々は、どこからどう聞いても実年齢が片手で数える程度しかない宙継に聞かせてはいけないものばかりだ。クーゴはそっとストラトス(ディランディ)兄弟の思念波を遮ってやる。そこへ、ハーメスが端末のホロ越しに声をかけ、宙継を促してくれた。

 他の仲間たちも齢1桁の宙継の情操教育を気にしてくれていたので、モニカや宙が率先して宙継の離脱に手を貸してくれる。爆心地からいたいけな子どもが去ったことを見送ったクーゴは、再び兄弟喧嘩の行く末を見守っていた。長い間顔を合わせていなかったのもあってか、ストラトス(ディランディ)兄弟の喧嘩はヒートアップしていく。

 ……さもありなん。ソレスタルビーイングの仲間たちにとっては国連軍との最終決戦以来の再会であるのと同じように、兄弟の再会はそれ以上の年月が経過している。特に、置いて行かれた方の2代目(ライル)は恨み言の一つや二つを言いたくなったこともあるだろう。

 

 ――とはいえ、それが段々おかしな方向に転がっていくのを見ていることしかできないのは、大分しんどいけど。

 

 

<どうする?>

 

<どうしよっか……>

 

 

 あまりにもあんまりな光景に、何名かがちらちらアイコンタクトを取り合っている。何も言えないのは、赤裸々に飛び交う思念波が色んな意味で強すぎるためだろう。

 クーゴが見た限り、先程からスザクと刹那、クリスとリヒテンダール、ユウイとカリナ、スメラギとラッセあたりが繰り返していた。

 

 ――そんなとき、不意に、虚憶(きょおく)が《視えた》。

 

 

『行くぞ! ガンダムファイトォォ……レディー……!』

 

『えっと……勝敗はMSの――って! ちょ、ちょっと!? 待ってくださいー!!』

 

『ってことは、僕が立会人!? 待って! 規格揃えないと勝敗決められないんですけど!?』

 

 

 片方では世界規模での流行、もう片方が少女の通っている学校内でのトップを決める仕組みとして『決闘』が執り行われていた。

 双方共に厳格な規格を有しており、『自分の勝敗結果を厳粛に受け止める』という決まりがあったか。

 最も、ガンダムファイトで決着がつくのなら、兄弟喧嘩は踊り狂って停滞するばかりではないのだろうが。

 

 

「ガンダムファイトで白黒つけられるんだったら、話は早いんだけどな」

 

「ガンダムファイト? 何ですそれ?」

 

 

 クーゴの呟きを拾ったスザクの問いに、クーゴは頷き返す。

 

 

虚憶(きょおく)の話になるんだけど、地球を舞台(リング)に機動兵器で競い合う武闘大会のことだよ。本来はコロニー間同士の戦争の代替みたいな感じで始まった結果、スポーツ大会兼コロニーごとのパワーバランスを決めるための政治的な力関係を決める場になった感じかな」

 

「……話を聞く限り、その方法も“自分たちが納得する結果を得るまでやり直そうとする”泥仕合になるのでは?」

 

「ならないよ。何せ、一度試合が行われて決着がついたのであれば、“例え一国家であろうとも、異議申し立てを行うことなく粛々と結果を受け入れていた”らしいから」

 

 

 実際に該当する虚憶(きょおく)――『仮面の下の決意/OE』を思念波越しに共有してみた結果、スザクは頭に大量の疑問符を浮かべて硬直していた。眉間の皴が凄いことになっている。

 勿論、この虚憶(きょおく)を初めて《視た》ときのクーゴだって、『なあにこれぇ』や『どうしてこうなった』としか言えない有様だった。もっと言えば、今だって意味が分からないでいる。

 

 自分で言うのも何だが、非常に荒唐無稽な話だ。本気に取られるわけもない――クーゴはそう思っていた。思っていたのだ。

 

 不意に、ブリーフィングルームが異様な沈黙に包まれていることに気づいた。見れば、誰もがみんなクーゴを見つめている。

 ロックオン(ディランディ)兄弟もまた。思念波越しからクーゴを《視て》いた。誰もがみんな真剣な面持ちである。

 何度瞬きを繰り返してみたが、夢でも幻でもない、現実の光景だ。彼や彼女らの目も本気である。

 

 

「嘘でしょ?」

 

 

 ついうっかり素で零してしまったが、仲間たちはまったく気にしていなかった。

 そして、ロックオン(ディランディ)兄弟が声を揃えて言う。

 

 

<<――その手があったか!!>>

 

 

 

◆◆◇

 

 

 

「――ガンダムファイトで白黒つけられるんだったら、話は早いんだけどな」

 

「ガンダムファイト?」

 

「この世界でいう『MSファイト』みたいな形式でさ。あれもガンダムファイト同様、『決着がついたのであれば、例え一国家であろうとも、異議申し立てを行うことなく粛々と結果を受け入れる』ルールだし」

 

 

 未だ醜い争いを繰り広げる兄弟の姿を見て、クーゴはぽろりと零す。

 

 とはいえ。自分で言うのも何だが、非常に荒唐無稽な話だ。実際、それを思いつくに至った虚憶(きょおく)――『仮面の下の決意/OE』や『殴り合い宇宙(そら)』の光景だって非常に突飛すぎる。

 どうして一兵卒の零した言葉が本気に取られた挙句、ジオン議会の承認を経て、ジオンVSコネクト・フォースでガンダムファイトをする羽目になったのか。これが本当に分からない。

 

 しかし、ここは西暦23世紀。本気に取られるわけもない――クーゴはそう思っていた。思っていたのだ。

 

 不意に、ブリーフィングルームが異様な沈黙に包まれていることに気づいた。見れば、誰もがみんなクーゴを見つめている。

 ロックオン(ディランディ)兄弟もまた。思念波越しからクーゴを《視て》いた。誰もがみんな真剣な面持ちである。

 何度瞬きを繰り返してみたが、夢でも幻でもない、現実の光景だ。彼や彼女らの目も本気である。

 

 

「嘘でしょ?」

 

 

 ついうっかり素で零してしまったが、仲間たちはまったく気にしていなかった。

 そして、ロックオン(ディランディ)兄弟が声を揃えて言う。

 

 

<<――その手があったか!!>>





感想はこちら
1stシーズン編はこちら
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。