青春をツマミに酒を飲む   作:黒色エンピツ

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十二話:アキラみたいな美人になら騙されたって良いだろう

 

 

 

 

「『慈愛の怪盗』?」

 

「えぇ、七囚人の一人で私の主が所有している絵を狙っているのです。こちらが予告状になります」

 

急に事務所にやってきたロボットから依頼があると言われた。何やら警備をしてほしいらしい。

渡された予告状を見るが……なぞなぞか?よくわかんねぇ。いつ来るんだ?

すぐに依頼人に返す。

 

「それで、ただのなんでも屋にその慈愛の怪盗ってのをどうにかしろって事ですかい?いくらなんでも、評価し過ぎでは?」

 

「ははは、ご冗談を。ゲヘナとトリニティ中心ですがあなたが生徒相手に一方的な戦闘を繰り広げているのは知っていますよ」

 

別に隠してもないから知られているのは当然か。

 

「しかし、私が慈愛の怪盗と対等に戦い、更には撃退もしくは捕縛などは難しいと思いますが?」

 

「ご謙遜を。ゲヘナの風紀委員長代理を務められたあなただからこそですよ。お願いできませんかな?」

 

「しかしですね……」

 

「料金はこれでどうでしょうか?」

 

提示された金額はかなりのものだった。

 

「あー……金ではないと言いますか」

 

「それでは更にこれで」

 

更に上乗せされる。……しゃーなし、やるか。

 

「……ハァ、わかりました。やってみましょう」

 

「そうですか!いやぁ、良かった良かった。それでは当日こちらの会場でお会いしましょう!」

 

そして会場の場所と見取り図を渡される。

 

「は?会場?」

 

「それでは!」

 

言いたいことを言って足早に男が出ていった。

 

「……やられた」

 

めんどそうな依頼だなぁ……。

 

 

 

 

数日後、スーツを着て会場へと来ていた。見取り図や各種情報はサヤに読み込ませたから問題ないはずだが……

 

「自分のコレクションした作品の展覧会ねぇ」

 

こういうのって怪盗が来るんだから中止すりゃいいのに。金持ちの考える事はわかんねぇな。

作品を見ながら周囲を見渡すと警備がそこかしこに配備されていた。

……そういえばここに来たはいいが集合場所とか知らねぇな。

そう思っていると、向こうから警備を二人連れて先日のロボットがやってきた。

 

「いやぁ、すみません。どこに集まるかを伝え忘れておりました」

 

「あー、いや、気にしないでください」

 

「それではこちらへどうぞ」

 

ロボットに案内された先にはでかくてゴツくていかついロボットがいた。

……カイザーとの違いがつかねぇ。

 

「ようやく来たか」

 

「どーも、空崎 ラックです」

 

「申し訳ありません。私が集合場所を伝え忘れたばかりに」

 

「フン、そうか。まあいい、本題に入ろう。貴様には慈愛の怪盗の捕縛を任せる。」

 

「依頼内容は警備のはずでは?」

 

「警備のついでに捕まえればいいだろう。何、捕縛は無理でも俺の絵が盗まれなければいい」

 

「それだったらまあ。それで俺の警備場所は?」

 

「予告状に書いてあった物の近くだ。だが、慈愛の怪盗を目撃した連絡があればすぐに向かうように」

 

「わかりました。なんとかやってみますよ」

 

「期待しているぞ。それともし捕縛出来たなら追加報酬として依頼料を倍額払おう」

 

「そりゃあ太っ腹で。それでは」

 

一礼して部屋から出る。

さて、どうしたもんかな。慈愛の怪盗を捕まえりゃ倍額ってのはどうにも嘘くさい。七囚人ってのがどれだけやばいやつらだっつっても子供だろうに。

 

「……気乗りしねぇな」

 

『ではのんびり美術鑑賞でもしますか?』

 

「一応仕事だから張るだけ張っとく」

 

何も起きませんように。

 

 

 

 

のんびり過ごして数時間。

見るもんも無くなっちまったし、外はもうすっかり日が落ちてしまった。

 

「ほんとに来るのかねぇ」

 

『ラック様。怪盗と言うのは夜闇に潜んで盗みを働くものですよ』

 

「……お前なんか見てきた?」

 

『怪盗の出てくる作品を百程。とても面白かったです』

 

「そりゃよかった」

 

鞘を軽く撫でる。

しかし、サヤの言う通り怪盗は昼よりも夜に動くイメージは確かにある。そっちのが映えるというのもあるが。

まあ、予告状を読み解けば良いんだろうがめんどくさいからパス。

 

「ちなみにサヤは予告状の内容はわかったのか?」

 

『もちろんです。説明しましょうか?』

 

「……いや、サプライズがあった方がいい」

 

長くなりそうだし。

タバコを吸って時間を潰したい所だが、館内は当然禁煙だ。

 

「……少しくらいなら立って寝てても──」

 

その瞬間館内の明かりが消えた。

すぐにアーツを発動して美術品の近くを探る。

 

「見つけた」

 

恐らく慈愛の怪盗だと思われる人物は絵を持って窓から脱出しようとしているようだった。

近くの窓から外へと飛び出てアーツで跳び上がり先回りをする。

 

「よぉ、お嬢さん。俺とお喋りでもしない?」

 

「おや、先回りされてしまうとは。こんばんは、不思議ななんでも屋さん」

 

「俺の事知ってんのか」

 

「はい、貴方の存在は先生よりも不自然ですから」

 

それもそうか。シャーレの先生として呼ばれた先生と違って、俺はなんもなくて急に現れたからな。

 

「このまま楽しくお喋りってのもいいが……仕事なんでな」

 

アーツを発動して捕まえようとすると、身軽に跳躍して躱されてしまった。

 

「よく避けれたな。見えてなかったと思うが?」

 

「なんとなく、ですね」

 

直感で避けやがったか。

だったら直接捕まえるか。一刀一銃を構えると困り顔を浮かべた。

 

「美術品が傷付くのであまり貴方とは戦いたくないのですが……逃げるのも難しそうですね」

 

「だったら捕まってくれるか?」

 

「……ここには私達しかいませんから、丁度いいですね」

 

「あん?」

 

「私と怪盗になりませんか?」

 

「……は!?」

 

「こちらの絵画、実は盗品なのですが」

 

「待て待て待て、情報が多過ぎる。こっちから質問するぞ」

 

「えぇ、構いません」

 

「……その絵は俺の依頼主が盗んだものなのか?」

 

「実際には盗品を違法取引で入手したものですね」

 

「それで、お前は俺に泥棒の片棒を担げって?」

 

「そうですね」

 

「……ハァ、ロクな依頼じゃないとは思っていたが、まさか盗品の警備をさせられるとはな」

 

武器を納めて一旦考える。

 

「あの、私の話をそんなにあっさり信じるのですか?」

 

「まあ、今は時間がまだあるからな。考えるくらいならタダだ」

 

サングラスの弦を軽く叩く。

 

『他の警備がこちらに来るまで時間がかかると予想されます』

 

サヤが俺だけに聞こえるように伝えてくる。

 

「正直な所、俺についても良いと思ってる。が、後々面倒な事になりそうだから踏み出せないのもある」

 

「というと?」

 

「あそこにいるのは悪党でも金持ち連中だ。対して俺はそこら辺に転がってるなんでも屋。裏の顔がどうであれ、その気になれば俺の仕事が無くなっちまう」

 

まあ、それならそれでヒナとかから依頼を貰えばいいんだが。

 

「……決めた。このまま逃げる手伝いをしてやるよ」

 

「まさか本当に上手くいくとは……」

 

「ただ、このまま逃がしてやりたい所ではあるがそれじゃあ雇われた側としては立つ瀬がない」

 

慈愛の怪盗の近くへと歩く。

 

「俺をボッコボコにしろ」

 

「……はい?」

 

「俺を殴れっつってんの。後、掠めるくらいに銃弾を当てろ」

 

「その、貴方にはヘイローが無いので危険では?」

 

「良いんだって、ほら、早くやれ。あ、絵はそこに置いとけよ。傷付くの嫌なんだろ」

 

「本当にいいんですね?」

 

「俺のこの鍛えられた筋肉を見ろ」

 

むん、と力瘤を作る。

 

「それでは遠慮なく」

 

「ああ、こ──」

 

ズドパンッ!と音を響かせながら慈愛の怪盗の蹴りが横っ腹に入り、近くの壁にぶち当てられる。

 

「こっ……あ……て、手加減とか、どう?」

 

「真に見せるには本気でやるべきでしょう?」

 

鳩尾に拳が突き刺さり、地面へと蹲る。

こんっの……絶対、絶対絶対仕返ししてやる……!

そのまま体のあちこちに銃弾を掠められる。

やれとは言ったものの普通に痛ぇよ!

そのまま殴る蹴るに銃撃で文字通りボロ雑巾になるまでボコされた。

そのまま意識が朦朧としていると慈愛の怪盗が耳に顔を寄せてきた。

 

「それでは最後に、私の本名は清澄 アキラです。誰にも言ってはいけませんよ」

 

そのまま意識が落ちた。

 

 

 

 

「……ってぇ」

 

「起きたか」

 

目が覚めてすぐに声がした方を向くと依頼主がいた。

 

「ああ……どうも。依頼に失敗して申し訳ありません」

 

「そうだな……俺のコレクションが持ち去られたのは許せん。が、貴様が激戦を繰り広げたであろうことは俺と理解している。治療費はこちらで持とう」

 

「そりゃあありがたい事で」

 

「だが、失敗は失敗だ。金は減額させてもらう」

 

「ですよねー」

 

ま、されるだろうとは思ってた。

 

「医者の話では数日入院だそうだ。金はまた部下に持って来させる」

 

「お気づかいどうも」

 

「ではな」

 

そう言ってロボットが出ていく。

 

「サヤ」

 

『既に調べて起きました。結果として、先程のロボットは紛れもなく悪い大人と言えます』

 

サングラスを掛けると、裏取引や密輸の情報、他にもゴロゴロ犯罪の証拠となる情報が出てきた。

外してサイドテーブルに置くとため息を吐く。

失敗したなんでも屋に態々自分から会いに来て、諸々の説明をしてくれたやつが悪い奴だとはあまり思いたくはないが、事実はそうらしい。

 

「それで?そこに隠れてる猫ちゃんはどうかしたのか?」

 

ガタッ、と窓が軽く揺れ、のそりと慈愛の怪盗──いや、アキラが顔を覗かせた。

 

「今は部屋の近くに誰もいないから、入ってきな」

 

アキラがカチャカチャと窓を弄ると掛かっていた鍵が開き、するりと中へ入ってきて、片手に持っていた果物の入った籠をサイドテーブルへと置いた。

 

「こんにちは、不思議ななんでも屋さん」

 

「ラックだ。一応ここでは空崎 ラックで通している」

 

「通している、という事は本名は?」

 

「ただのラックだよ」

 

「では、ラックさんと。怪我の方はどうですか?」

 

「まだ痛むな。ちょっとそこのポーチから緑色の液体を取ってくれ」

 

「これ、ですか?随分と……その、蓋をしていても変な臭いが……」

 

アキラから手渡されたそれを覚悟を決めて一気に飲み干す。

 

「うっ……ぷ……」

 

「ら、ラックさん何を……!?」

 

慌てて傍に来ようとするアキラを手で制す。

 

「まっっっっっっずい……!!」

 

おぇっと口を開く。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、うん、これ一応うちの薬剤師が作ってくれた薬でな。効果はテキメンなんだが……ただ死ぬほどマズイ。後、治る為に体が頑張っているんだろうが全身からやばい音が出る。」

 

ビキキ、ミチチ、バキバキ、と様々な音が全身から聞こえ始める。

アキラが心配そうに音が鳴った部分に触れるとペキョッ、と音が鳴り、アキラの耳と尻尾が逆立つ。

 

「大丈夫大丈夫。なんともないから」

 

「それなら良いのですが……」

 

「ああ、それとこれ渡しとく。俺のモモトークともう一つの端末の連絡先。もし秘密の連絡がしたいならもう一つの方を使ってくれ」

 

「お気遣いありがとうございます。……最後に一つ聞きたいのですが」

 

「ああ、なんでも聞け」

 

「どうしてあの時私の言った言葉を信じてくれたのですか?普通ならば依頼を遂行するでしょう。なぜですか?」

 

「なぜって、そうだなぁ……」

 

先生なら、きっと自分の生徒だからって言うんだろうな。なら俺だったら?

 

「アキラみたいな美人になら騙されたって良いだろう」

 

うん、やっぱ俺にはこれが一番しっくりくる。むさいおっさんロボットよか可愛い女の子の方が万倍も良いだろう。当然、騙されてたってんなら後でお礼しに行くが。

 

「……へ?」

 

「どうだ。満足したか?」

 

改めて顔をアキラに向けると背中を向けていた。

 

「……満足しました。随分と長居していたのでそろそろ帰ろうと思います」

 

「そうか。気を付けて帰れよ」

 

「はい、それではまたお会いしましょう」

 

そう言うとアキラは窓の外へと、消えていった。

 

「……サヤ」

 

『見事な逃走術です。誰にも見られていません』

 

「そうか」

 

なら、もう我慢しなくてもいいな。

 

「いっっっでぇぇ!!!」

 

そう、さっきの薬は急速に体を治癒する代わりにとんでもない痛みがやってくる。

 

「あだだだだだだ!?」

 

今すぐナースコールでも押したい所だが、さっきの薬の事を聞かれたくない。

だ、誰かッ!ヘルプゥ!

 

「はい!助けに来ましたよ!」

 

「セリ、ナ……?」

 

以前に俺を押さえつけて無理矢理尿を採りにきたナース、セリナがいた。

待て、お前どっから来た……?気配とか感じなかったぞ。しかもちゃんと来た瞬間には気配があったし……。

 

「すごい怪我ですね。でも、ちゃんと処置が施されてますね」

 

うんうんと包帯の巻いてある箇所を見る。

 

「しかしこの大きな音は……?」

 

そしてセリナの目に薬の入っていた小瓶が入った。

 

「これは……何の薬ですか?」

 

「…………俺の知り合いが作った回復剤」

 

「ここの病院で処方されたものではありませんね?」

 

「はい……」

 

ぷくっ、と頬が膨らんだ。

 

「何か言うことはありますか?」

 

「ごめんなさい……」

 

素直に頭を下げる。……許されたか?

 

「もう、今日だけですよ?」

 

「はい……」

 

「ここにいてもやることはありませんけど……そうだ、汗かいてますよね?拭きませんか?」

 

「え?ああ、そうだな。タオルくれるか?」

 

「私が拭きますね?」

 

「え」

 

「いいですね?」

 

「ははは、背中は兎も角前は自分で拭けるっての」

 

「いいですね」

 

「はい……」

 

セリナに全身……いや、上半身だけだが拭かれた上にご飯や着替えも手伝ってもらった。

……これからは怪我しないようにしよう。

 

 

 

 

後日、退院して事務所に帰ってみると部屋レイアウトが一部変わっていて、見覚えのないインテリアや高そうな絵画が飾ってあった。

いや、まあ、置いていくのは好きにしていいが……自分の事務所なのに歩くのが怖いな。

幸い壺だったり壊れやすい物がないのが救いか。

それからというもの、俺が外出していたり、寝て起きると部屋に物が増えている事が多くなった。

引き出しを開けると女性物の衣類も入っていたからあいつ偶に寝泊まりしてるな……。

まあ、飯も置いてある事があるし、いいか。

そう結論付けた。

 

 

 

 

 







書きたい話がたくさんあって困っちゃう。
他の作品も書きたいけど、この作品が一番内容が思い付くからこれにばっかかかりきりになってる現状です。
最近ゼンゼロにハマってます。

女性先生に決まりましたがどんな人?

  • スーツでキメたポニテ先生。凛々しい
  • ゆるっと女子大生みたいな先生。ポワポワ
  • その他。後で活動報告で枠作るのでそこに
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