青春をツマミに酒を飲む   作:黒色エンピツ

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十八話:ホシヒナサンド

 

 

 

 

「やっほー、元気にしてる?」

 

「ん?おお、ホシノか」

 

依頼がなく、のんびりしながらタバコを吸おうと口に咥えたタイミングでホシノがやってきた。

 

「最近よく来るな。みんなが寂しがるぞ」

 

「えー、来ちゃダメだった?」

 

流れるような動きでソファに座る俺の隣に座ると右腕を抱き寄せた。

……いつの間にこんなあざとい技を覚えたのやら。

ため息を吐いてタバコを箱に戻そうとする。

 

「あ、いいよいいよ。吸っちゃって」

 

「いや、それだとお前に臭いが付いちまうだろ」

 

「おじさんは別に気にしないよ」

 

「……んじゃ、お言葉に甘えて」

 

「あ、火つけてみたいな」

 

「ん」

 

オイルライターを渡して使い方を軽く教えて顔をホシノに寄せると少し緊張した様子でタバコに火をつけた。

そういう店に来たみたいな気分だ。

 

「ど、どうかな?」

 

ふー、とホシノから顔を逸らして煙を吐き出す。

 

「上手だったぞ」

 

「うへへ、なら良かった」

 

そう言うと身を寄せて胸元に鼻を押し当てて深呼吸をした。

 

「なんだよ。やっぱり臭うか?」

 

「ううん、そんな事ないよ〜。ラックさんの匂いって感じがするね」

 

顔を離してゆるりと笑うホシノに思わずクラッとする。

こいつ……マジで、マジで……

 

「俺じゃなかったら今すぐ襲いかかってたわ……」

 

極めて小さく呟く。

しかし、それをホシノの耳は拾っていたようでみるみるうちに顔が赤くなっていった。

 

「あ、ぅ……そ、そう、なんだ……」

 

「……」

 

どうしよ、この空気。

おーい、脳内エンシオ、助言求む。

 

『私は貴様のせいでエンヤとエンシアに蔑まれた目で見られた回数を覚えているぞ』

 

そして親指を下に向けた。

チッ、使えねぇな脳内エンシオ。

 

「あー、コーヒー飲むか?」

 

「……うん」

 

ホシノの手を外して立ち上がってキッチンへと向かう。……なぜか後ろからホシノがついてくるがそれはいいだろう。

豆をミルで挽いてペーパードリップで淹れる。

 

「意外と本格的なんだね」

 

「これくらいしないとアキラがうるさくてな」

 

瞬間、空気が冷え込んだように錯覚した。

 

「へぇ……アキラちゃんね。どこの誰なのかおじさん気になるな〜」

 

「助手みたいなもんだ」

 

「ふぅん」

 

ホシノから視線を感じるが無視する。

これあれだな。嫉妬か?

淹れたコーヒーをカップに注いでホシノに渡して自分の分のコップにも注ぐとミルクとスティックシュガーを持ってソファへと戻る。

俺はブラックでホシノはミルクとスティックシュガーを二本入れた。昔は俺もそのくらい入れてたなぁ。

ホシノがふーふーとコーヒーに息を吹きかけて啜る。その間もジトッとした視線は無くならない。

……ちょっとからかってやるか。

 

「そんなに気になるなら写真見てみるか?」

 

こくんと頷く。

スマホを取り出して前に二人で撮った写真──座った俺の足の間にアキラが座っているもの──をホシノに見せる。

 

「……」

 

つまらなそうな表情でその写真を見る。

は〜……可愛いもんだねぇ。

 

「どうした?」

 

「……いやぁ、なんでもないよ?可愛い子だね」

 

「だろ?喉元を撫でてやると可愛らしく唸るんだよ」

 

「へー」

 

思わず口元がにやけそうになるのを堪えようとする。

 

「……ねぇ、ラックさん」

 

「ん?なんだ?」

 

「もしかして、からかってた?」

 

「……ぷはっ!ははははっ!あー、バレたか。思ったよりも可愛い反応するもんだからついな」

 

そう言うとぶすっと唇を尖られた。

 

「悪い悪い。お詫びになんかしてやるからさ」

 

「例えば?」

 

「例えばって言われてもな。ホシノの行きたい所とか、したい事とか言ってみろよ」

 

「したい事……あ、じゃあ前のあれ見せて欲しいかな」

 

「あれ?」

 

「大きなヘイローと羽根」

 

「……ああ、そういう」

 

少し悩む。あれはアーツの最大稼働時に勝手に出るもんだからな。どうだろう。

 

「ま、やってみるか」

 

タバコを一旦灰皿に置き、最大稼働時と同じように頭を切り替える。ただしアーツを使わないように、なんておかしな状態になる。

 

「お、できた」

 

いつものヘイローの外側に大きなヘイローができ、羽根も大きくなる。更にはいつもは堕天使として黒くなっているのが金色に輝いていた。

 

「どうだ?上手くできてるか?」

 

「……うん。すごく綺麗だね」

 

ぼーっとした顔でホシノが俺の目を見る。

 

「ホシノ?」

 

「うん……」

 

妙だな。様子がおかしい。

 

「俺とハグしよう」

 

「うん……」

 

素直に抱き着いてくる。これは……

 

「言葉に強制力が付与されているのか?サヤ、そっちで何か観測できるか?」

 

『こちらからは特には何もありません。恐らく雰囲気、気配といったものの変化によるものだと考えられます。今のラック様は一時的に存在強度が上昇、それにより言葉に強制力が付与されたのではないでしょうか?』

 

「なーるほど?とりあえず理解はした。」

 

日常でこの状態になることがなかったから今までわからなかったが、こんな変化があるとはな。

 

「ふむ……ホシノ、キスしようか」

 

「?うん、わかった……」

 

ホシノの腕が首に回され顔が近付く。もう数cmといった所でヘイローを解除した。

 

「う……?」

 

急に元に戻ったホシノは目をパチパチさせ、見つめ合ったまま固まってしまった。

 

「このまま放置ってのも可哀想だし、サービス」

 

頬に触れる程度のキスをすると跳ね飛ぶように離れた。

 

「な、何してるのさ!?」

 

「俺なりのサービス?」

 

好かれてるって自覚があるから出来るサービスとも言える。

 

「日常であの状態は危険っぽいな。ホシノからはどう感じたよ?」

 

「そうだねぇ……なんていうか、全部任せちゃいたくなるような安心感?みたいなのがあったかな」

 

なんだその宗教家が人生の終わりに自分の信じる神様にでも会えたみたいな感想は……いや、神様(仮)だったけど。

 

「まあ、ならなけりゃ良いだけだしそこまで考えなくてもいいか」

 

ヘイローと羽根を消す。

 

ふぅ、と息を吐いて、肩から力を抜く。

するとドアがノックされた。

 

「空いてるぞー」

 

依頼か生徒か。……多分生徒だろうな。

ドアが開かれる。

 

「こんにちは、ラック」

 

「お、ヒナか」

 

「おー、風紀委員長ちゃんだ」

 

「小鳥遊ホシノ?どうしてここに?」

 

「おじさんは遊びに来ただけー」

 

そういうとぐでっと俺の膝の上に寝転んだ。

 

「…………そう」

 

ジッとヒナがホシノを見つめる。

 

「ところでどうしたんだ?いつもならまだ仕事中のはずだけど」

 

「その、この前のお礼をしたくて」

 

「それなら貰ったろ?」

 

ハグと金を貰ったから十分なんだけどな。

 

「でも……」

 

「俺がいいって言ってんだ。気にすんなよ。それでもまだお礼がしたいってんなら……」

 

ここで言葉を区切るとヒナが唾を飲み、ホシノは膝の上でうへうへしていた。

 

「寝室で寝るんだな」

 

「……え?」

 

「また無茶な仕事してんだろ。俺の目は誤魔化せんぞ」

 

うっすら目の下に隈が出来てるな。

 

「でも、これからまたゲヘナに戻ってやる事が……」

 

すぐにスマホでアコに電話をかける。

 

「アコー?」

 

『なんですか、こんな時間に。風紀委員はラックさんと比べて忙しいんですけど』

 

「ヒナをウチで休またいんけど仕事は大丈夫か?」

 

『何やってるんですか!早く寝かせてくださいよ!イオリ、チナツ、良いですね!』

 

「うるさっ」

 

『ではヒナ委員長の事はお願いしますね。くれぐれも変な事はしないようにしてくださいね!』

 

ぷつっと電話が一方的に切られた。

 

「変な事ってなんだよ……」

 

失礼なやつめ。

 

「つー訳でヒナは1回寝ろ」

 

「ほ、本当にいいのかしら?」

 

「なんだ、まだワガママ言うんだったら俺が添い寝して無理やり寝かせるぞ」

 

「それはして」

 

「え、あ、うん」

 

ヒナに手を掴まれて立ち上がらされる。膝から転げ落ちそうなホシノを脇に抱えて後をついて行く。

コートを脱ぎ捨て、ベッドに潜り込むヒナにホシノを渡す。

 

「おじさんの扱い酷くないかなぁ」

 

「……えい」

 

「うへ!?」

 

ころりとヒナが反対を向いてホシノがベッドから転げ落ちる。

 

「ほら、入って」

 

「いや、ホシノが……」

 

「入って」

 

「あ、はい」

 

ベッドに入ると、ヒナが抱きついてきて胸元に顔を押し当てて深呼吸をし始めた。これは重症だ。

 

「ちょっとー……風紀委員長ちゃーん……?今のは流石にないんじゃないかな〜?」

 

のっそりと立ち上がったホシノは笑顔だが眉尻をピクつかせていた。

 

「さっきまで膝枕してもらっていたじゃない」

 

「それはそれでしょ!もー……しょうがな──」

 

「それにラックも空崎なんだから私が優先よ」

 

ぴしりとホシノの顔が固まって、真顔になる。

 

「ふーん」

 

ベッドの外を周り、俺の後ろからベッドに入るとそのままピタリと密着する。

 

「あーあ、ラックさんがおじさんを選んでくれれば良かったのに」

 

ぽそりと耳元で囁かれる。

こそばゆくて少し頭をずらす。

 

「……はいはい、俺が悪かったよ」

 

ちなみに体は前後から隙間なくくっつかれているせいで動けなくなってしまった。

 

「すぅ……」

 

ヒナが完全に眠ってしまった。じゃあ俺も寝ようかな、なんて思っていたんだが……

 

「ふぅー」

 

ホシノが耳に息を吹きかけた事で肩を跳ねさせた。

 

「……おい」

 

「まあまあ、動いたら風紀委員長ちゃんが起きちゃうよ」

 

「む……」

 

「じゃ、こっちは勝手にやってるからさ」

 

ホシノの腕が俺の腹に回ってきて、腹筋をペタペタと触りだした。

 

「うわ、すごい硬いや」

 

するっとシャツの中に手が入ってきて、直で腹筋に触れる。

一頻り触って満足したかと思えば今度は上に登り首に腕を回して鼻先で髪を押し分けてうなじの臭いをすんすんと鼻を鳴らして嗅ぐ。

 

「おいこら好き勝手やりす──」

 

「ふぅ〜」

 

「……っのガキ」

 

「うへ、ラックさんの弱い所見つけちゃった」

 

くすぐったさに背筋を震わせる。

そろそろ怒鳴ってやろうかと思った矢先だった。

 

「小鳥遊ホシノ?」

 

胸元を見るとヒナが無表情でホシノを見ていた。

……瞬き、してないな。

 

「あ、あれ?風紀委員長ちゃん?寝てたんじゃ……」

 

「あなたのいたずらのせいで起きたわ」

 

「あ、あー、ごめんごめん。おじさんやり過ぎちゃったかも」

 

「それはもういいわ。それよりも何をしていたのかしら?」

 

「えっと〜……スキンシップ?」

 

「接触禁止よ」

 

ヒナが大きな羽根で俺を包み込む。

思ったよりも器用に動くんだな。

 

「それは卑怯じゃないの〜!?」

 

「卑怯じゃないわ」

 

やんややんやと騒ぎ立てるホシノにそれをスルーするヒナ。

 

「ヒナ、こっちはなんとかしとくから寝な」

 

「……うん」

 

軽く頭を撫でてやると一瞬でカクンと落ちた。

 

「まさか、俺にまだこんな力が……!」

 

「疲れてただけでしょ」

 

やれやれ、ホシノはわかってないなぁ。

ため息を吐きながら顔を横に振る。

 

「えい」

 

「ふぐぉっ……!?」

 

「わかんなくてもいいよ。じゃ、おじさんも寝るねぇ」

 

よいしょっと羽根を退けてまた背中にぴったり張り付くとそのまま寝息を立て始めた。

 

「嘘、俺このまま放置?」

 

しゃーなし、俺も寝るかと目を瞑る。

話は変わるが、人は五感の一つが閉じると他が鋭敏化する。そして俺はアーツが使えなくなった後特に五感、特に目、鼻、耳が効くようになった。

つまりどういう事かといえば、目を瞑った瞬間に香ってくるヒナの女の子特有の甘い香りに前後から感じる柔らかい感触、ついでに息遣い。

これじゃ眠る事なんて到底できない。

ロドスにいた頃であれば常に相手に困ることは無く日常茶飯事となっていて気にもならなかったが、今は相手もいなけりゃ頻繁に生徒が来るということもあってまるで発散ができていない。

これではいくら前後を挟んで引っ付く二人の体の発育があまり良くなくても勃つもん勃つのは必至だ。

今すぐにでも二人に突っ込ればどれ程天国であろうかという思いを押さえつけて眠りについた。

普段は夢なんぞ見ることはないが、珍しく見た夢は生徒達を侍らせてうっはうはな夢だった。

……俺、いつまで我慢できるんだろ。

 

 

 

 






メインストーリーやイベントはまだかって?
うるさいね!まだ書けてないからお茶濁しにこれでも読んどきな!って話です。

女性先生に決まりましたがどんな人?

  • スーツでキメたポニテ先生。凛々しい
  • ゆるっと女子大生みたいな先生。ポワポワ
  • その他。後で活動報告で枠作るのでそこに
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