「へっくしゅ!いっくしゅ!ぶぇっくしゅん!」
『熱ですね。今日明日は安静にしましょう』
「あー……そうだな」
アコのお世話をした翌日。俺は風邪を引いた。まあ裸にタオルケットなんて格好で寝りゃあそうなるな。
『サイトに体調不良により臨時休業と記載しておきます』
「頼む……」
参ったな。薬はまだテラから持ってきたのがあるが風邪の時に良さそうな飯とか水がねぇ。
「久し振りに熱出したな」
元々体はかなり丈夫な方なんだが、環境の変化もあるのかな。
ピコン、とアビドスにある部屋の一室で通知が鳴る。
「ん〜?」
その音に反応したホシノがぼやけた頭でちらりと内容を確認する。
「ふ〜ん」
確認すると一言そう漏らしてもぞもぞと動き出した。
ホシノだけではなく他の場所でも通知音が鳴り、動き出す生徒が何人かいたのだった。
それは風紀委員会でも起こった。
「あ、アコ。ラックが体調不良らしいわよ」
「もしかして……」
「看病に行ってあげたら?」
「……すみません。なるべく早く帰ってきます」
「えぇ」
アコが部屋を出るとヒナがポツリと呟く。
「……私も行きたかったなぁ」
でも我慢しなきゃと堪えると同時に今度ラックに会いに行こうと決めていた。
「あ〜……腹減ったぁ……」
でも動けないんだよなぁ……。
普段ならない分、なった時が重い。
「誰かが持ってきてくれたら、なんて」
「お粥は食べられますか?」
「ああ、お粥とかあっさりしたのがいいなぁ」
「ふーふー、はい、どうぞ。あーんしてください」
「あー」
口に入れられたお粥を食べる。程よく塩味が効いていて米の優しい甘味を感じる……?
「セリナ!?」
「はい、セリナです。まずはお粥食べましょう?」
「え、あ、うん」
笑顔を浮かべたセリナにお粥を食べさせてもらう。
「熱は測りましたか?」
「いや、まだだけど……どうやって入っ──」
「では先に熱を測りましょうか」
「ああ、うん。だからさ、どう──」
「スポーツドリングもどうぞ。水分補給は大事ですから」
「ありがとう。あの──」
「熱さまシートを貼るので額を出してくださいね」
「あ、はい」
前髪を上げるとセリナがシートを貼ってくれる。
ひやりとして一瞬体が強ばるがすぐに心地良さに脱力した。
「お薬もどうぞ」
「うん……」
薬を水で飲み込む。
「うげ、やっぱ苦いな……」
「はい、よく飲めました。それではおやすみしましょうね?」
セリナに両肩を掴まれてベッドに優しく寝かされるとそのまま頭を撫でられた。
その優しい手つきに段々と瞼が落ちていき、そのまま眠ってしまった。
……なんでいたの?
人の声がする。
誰だろう。声が頭に響いて頭痛がする。目を開くが視界が霞む。
髪の色は……青、かな。
「モスティマか……?」
返事は返って来ない。まあいい、熱で見た幻覚だろうが夢だろうが久し振りに話せるならなんだって良かった。
事務所前でばったりと鉢合わせた面々はとりあえず持ってきたものを冷蔵庫に入れようという事になり、暇になったアコとホシノの二人がラックの寝るベッドの横へと立っていた。
「昨日あんな事しておいてよくも呑気に……!」
「まあまあ、落ち着きなよ。昨日何があったのかは後で聞くとして病人なんだからさ」
「それはっ……そうですね。すみません」
珍しい組み合わせて話しているとラックの目が開いた。
「モスティマか……?」
「いぇ──」
違います、とアコが言おうとする前にホシノがアコの口に手を当てて止めた。
何をするのかと抗議の目を向けるとホシノは笑って自分の唇に人差し指を当てて静かにするようにジェスチャーしていた。
ラックが勝手に色々話すのを聞いてやろうと考えているようだ。
「もう一人は……フィアメッタか?」
フィアメッタという名前に首を傾げるがあっちでの知り合いだろうと思う。
「あの子達は、元気にしているか。急に俺がいなくなって泣いていないか。いつも俺を見かけると後ろをついて来ていた寂しがり屋ばかりだからな。」
あの子達というのは写真で見せてくれた子供の事だろうか。やはりこの人は子供が好きなのだと二人は思った。
「龍門はどうだ?アンセルとバイソンには色々と教えたが上手くやってるか。いや、やってるだろうなが少し心配だな」
特にアンセルは俺の影響を受け過ぎた所があるしな、とラックが呟く。
「お前にも悪い事をしたなぁ。俺にもう少し勇気があれば今頃指輪を着けてやれたってのにな」
ラックが鼻で笑う。
「まあ、過ぎた事か。次にロドスに帰った時にでも頑張るさ。いつ帰れるかはわかんねぇけど。こっちは勝手にやっととくからさ、そっちも元気でいてくれよ」
「ん、ホシノ先輩、ラックさんは起きた?」
寝室のドアが開いてシロコがひょこっと顔を出した。
「……ホシノ?」
ラックが目を擦り、もう一度見るとイタズラがバレた子供のような顔をしたアコと朗らかに笑って手を振るホシノだった。
自分が悪いのだが余計な事をべらべらと喋った事に思わずため息が漏れる。
「そんなにため息吐くと幸せが逃げちゃうよ?」
「誰のせいだと……いや、俺のせいでもあるけど」
「ラックさん、喉渇いてない??」
「ん、ああ、ありがとう」
隣に座ったカヨコからコップを受け取ろうとすると避けられる。
「……うん?」
「私が飲ませてあげるね」
「いや、いいから」
「私が飲ませてあげるね」
「……へいへい」
今日は自分で何かするのは諦めた方がいいなと思って少し上を向くとコップが口に当てられてゆっくりと傾けられ、数口飲んで手を挙げて止めた。
「熱さまシートが剥がれちゃってますから貼りますね」
「ん」
そう言ったマリーに向けて前髪を上げて目を瞑ってマリーの方を向く。
しかし、少し待っても貼られずに片目を開く。
「マリー?」
「……あ、すみません!すぐに貼りますね!」
「んー」
ひやりと額に熱さまシートが貼られる。
「ふぅ……なぁ、ヒフミは何してんの?」
「はい?お見舞いでペロロ様グッズを置くことで早く治してもらおうかと思いまして!」
「あ、うん。そっかぁ……」
続々と寝室に増えていくペロログッズに困惑してしまう。
アキラに変に見られないかが心配だな……。
「ラックさん、汗拭くの手伝うね」
困惑しているとシロコがタオル片手に言った。
「いや、それくらいは自分で出来るって」
「私もやりますね」
「アコまで……」
「まあまあ諦めなよ〜」
「いーや、それくらいは自分でっ!?」
ホシノが俺の手を掴んで上に上げられて拘束された。
「ぐっ……ぎぎぎっ……!」
「「「…………」」」
「あの、ラックさん?何をしているんですか?」
「……っはぁ……ふぅ……何って、振りほどこうとしてんだよ……」
「ん……でも動いてないよ」
「お前らの身体と同じに思うなよ。俺はひ弱なんだ」
「……そっち、持たせて」
「いいよ〜」
カヨコが左手を掴んで、ホシノが左手を放すとぐいっと引っ張られてカヨコの方に倒れ込んだ。
「……本当に弱いんだ」
「だから、そう言って──」
そこで場の空気が変わった事に気付く。
全員……ヒフミは未だペロログッズを並べているが、マリーも含めた残りの目がどこか色めいていた。
「……どうした?」
「ううん、なんでもないよ。汗拭こっか」
カヨコに服を首元まで捲り上げられた。
すると、ホシノとヒフミを覗いた全員から生唾を飲む音がした。
「全く……俺の体は安いもんじゃないんだぞ。ほら、拭くんならとっととやってくれ」
「ん……」
「わ、わかりました」
「う、うぅ……これはやはり、不埒な気が……」
もうどうにでもなれと無抵抗で奉仕される。
シロコはどこか興奮気味に腹筋を拭いてきて、アコは体の至る所をジロジロと見つつ拭いてくる。
肉食系な二人に対してマリーは何やら申し訳なさそうにしながら背中を拭いていた。
「ふぅ……バッチリですね……!」
仕事をやりきった職人のような顔でヒフミが額を手で拭い、そのままペロロの撮影を始めた。お見舞いに来たんだよな……?まあ、楽しそうだから放っといてやろう。
「もう十分だ。散った散った」
粗方拭いてもらって、そう言うとアコとマリーは素直に離れたがシロコだけは中々離れない。
「ホシノ」
「は〜い、シロコちゃん、離れようね〜」
「ん〜……」
名残惜しそうに手を伸ばしてバタつかせるシロコの頭に手を乗せるとぴたりと動きが止まる。
「悪いけどなんか食べるもんあるか?腹減っちまった」
すると全員が持ってきた荷物や冷蔵庫の中から色々と取り出した。
「おじさん達はおにぎりとゼリーだよ」
「私はたまご粥です。レンジで温めればすぐに食べられますよ」
「私はサンドイッチです。手軽に食べられると思って作りました」
「私は果物を買ってきたよ。ラックさんには手作りの方が良かったかな?」
「いや、果物もかなり嬉しいぞ」
「そっか、なら良かった」
ただ、この中だとたまご粥かサンドイッチを先に食べるべきか?
そう思っているとドスン!と音がし、見ればヒフミが大きな弁当箱を取り出していた。
「私はお弁当を持ってきました!」
「ワァ……」
パカリと開けば中はペロロのキャラ弁が詰まっていた。見た目は可愛らしい……?いや、キャラ弁というカテゴリだけ見るなら可愛らしいな。ただ、その量は可愛くないが。
「……悪いけどその弁当はお前らで食ってくれ、今は流石に食えそうにない」
「そうですか……残念です……」
では、と箸を持って食べようとした所でヒフミの手軽止まる。
「うぅ……お弁当とはいえペロロ様を崩すのは……あの、少し食べてもらっても」
「ん、わかった」
「じゃあ貰っちゃおうかな」
カヨコを除いた子達が弁当を摘み、楽しそうにお喋りを始めた。
「カヨコは行かなくて良いのか?」
「私はラックさんのお世話の後でいいよ」
そういうとマリーの持ってきたサンドイッチを口元に寄せてくる。
「はいはい」
ため息を吐いて口に入れる。
ん、美味い。
「あ、そういえばラックさんって子供好きだよね?」
ホシノが唐突に聞いてくる。
「まあ、そうだな」
「子供とかいたの?」
「子供っつーと、俺の子供って事か?」
「ホシノ先輩、ラックさんは結婚してないけど」
「ほら、節操ないでしょ?だからいてもおかしくないかな〜、なんて」
「まさか、いくらラックさんでもないと思いますけど」
全員の注目が俺に向く。
「一応遺伝子的な繋がりがある双子の娘ならいるぞ」
「「「え!?」」」
「そ、そうなんですか!?」
「流石にそれは予想してなかったかな……」
「それなのに一人旅していたんですか……」
「あはは……その、写真とかありますか?」
「誰との子か聞いてもいいのかな?」
「ん!ん!」
「あー、うるせぇ。俺だって数年前まで知らなかったんだよ。つーか、セックスして生まれた子じゃねぇし。後、写真はこれな」
端末で俺を幼くしてそのまま女にした双子の写真を見せる。
片方は髪を腰まで伸ばしており、もう片方は肩ほどの長さだ。
「俺が神様扱いされてた宗教があったんだがな」
「ラックさんって神様だったんですか!?」
「えぇい、扱いだっつってんだろ。後で話してやるから待ってろ。こほん、それでだな。そこの教祖が軍に保管されていた俺の冷凍精子を使って作られたのがこの双子だ」
「ならどうして女の子なんですか?ラックさんをそのまま作るなら男性の方が良かったと思いますし、双子なのも違和感がありますが……」
「神の子であるこいつらを孕ませてなんとかかんとかだとよ。双子だからってのは片方が孕んだ時にもう片方が外部からの抑止力になる為だとよ」
「うへぇ……自分勝手だね〜」
「勝手に孕まされる予定の女体化した俺を作られたんじゃ溜まったもんじゃねぇ。まあ、あのチビ共もそんな事知らされずにただ俺の子供だって事と耳障りの良い事ばかり囁かれていたからな。終わった後は俺が迎え入れた、というかロドスが迎え入れたのが正しいか」
流石俺の遺伝子を使っただけあって可愛いもんだろうと写真を撫でる。
「あの、どうして神様扱いされていたんですか?」
「んー?俺のアーツが強力過ぎるのとサンクタなのにヘイローと羽が消えた事で神が人になったとかどうとかっつってたかな。とりあえず、あらゆる意味で特別らしいぞ」
本来アーツは出力する道具がないと使えないが俺は必要としないしな。
カヨコが剥いてくれたリンゴを食べさせてくれる。
うん、瑞々しくて美味い。
昼飯を終えてからあまり長居は良くないという事で少し話をして解散となった。
「今日は助かった。みんな、ありがとな」
「ん、ならもっと褒めるべき」
「ま、おじさん達もお世話になったからね〜」
「私も昨日……その、色々してもらいましたし……」
「気にしないで、またね」
「私は何もしてない気がしますけどね……」
「またシスターフッドに遊びに来てくださいね」
頭を押し付けてきたシロコを撫でてみんなを見送る。
スマホを取ってモモトークに来ていたメッセージを返す。先生やヒナ、ナギサからも来ていた。
手早く返信を終えると端末の写真を見ていく。
スクロールしていくとモスティマの写真で手を止める。
今俺はテラにいないが気付いているのだろうか。もしかしたらサヤの反応が消えた事でマゼランが気付いているかもしれないな。
「ねぇ、やっぱり帰りたい?」
急な声に驚きながら顔を上げるとカヨコがいた。
「帰ったんじゃないのかよ」
「一人くらいは残って看病した方が良いかなって」
「そりゃあ助かる。んで、帰りたいかどうかだったか?まあ、帰りたいって気持ちはある。モスティマに伝えたい事だってあるしな」
「……やっぱり」
ぽつりとカヨコが呟き、そちらを見ようとすると肩を掴んで押し倒された。
「ってぇな……」
「私達は置いていくんだ」
「置いていくっつったって、俺は元々あっちの人間だ。ここにいるのがおかしな話だろ」
「それでも、短い間でもこんなに色んな子を引っ掛けておいてそれを言うんだ」
カヨコの目に危険な色が宿る。
不味いな。最悪身篭ってでも俺を繋ぎ止めかねん。いくらなんでもそれは良くない。
「はぁ……そうだな。それに関しちゃ俺の悪い所だ。上手いやり方を考えてみるからあんま顔を近付けるな。俺の熱が移るぞ」
その言葉に正気に戻ったカヨコが赤面して目を泳がせる。
「私は別に、移っても……」
覚悟を決めてギュッと目を瞑り顔を寄せてくる。
触れる、そのほんの少し手前でカヨコが後ろに引っ張られた。
「っ何が……」
「私のお宝に何をするつもりですか?」
買い物袋を持ったアキラが笑顔で立っていた。
笑顔とは言ったものの、その雰囲気は凍てついており如何にも『私、怒ってます』と言った感じだった。
「お、おー、アキラ。おかえり」
「ただいま戻りました。随分献身的なお見舞いが来ていたようですね」
俺に微笑むとジロリとカヨコに目を向けた。
「あなたは……?」
「失礼、私はラックさんの助手を務めております。アキラ、と呼んで頂ければ。お名前をお尋ねしてもよろしいですか?」
「……カヨコ」
「それでは、カヨコさんは今ラックさんに何をしようとしていたのですか?」
「それは……」
「アキラ、そんな怒らないでやってくれ」
そう言えば少し不満げに眉を顰めたアキラが俺の方を向く。
「ですが……」
「原因は俺だ。それにあのくらいの事怒る程でもねぇよ」
「……そう言うのであれば。では、買ってきた物を収めてきますね」
「ああ。……カヨコ」
「……何?」
カヨコに向けて腕を広げる。
「おいで」
「いや、でも、その……」
「いいから、ほら」
笑ってみせると躊躇いがちに抱き着いてくる。
……結構力入れるじゃんか。
「ごめんな。俺の考えが甘かったかもしれない」
「うん……」
「なるべく悲しませないようにするからさ。許してくれるか」
「……わかった」
「いっつ……!?」
ガリッと首筋を鋭い痛みが襲う。
「久し振りにされたな……」
「他の人にもされた事あるんだ」
「あっ」
ギロリと本人曰く怖い目で睨み付けられる。
いや、こっち視点からだと可愛さしか感じないがそれはそれとして圧が凄い。
「……人生経験豊富だからな」
「女性と体を重ねた経験じゃなくて?」
怖いよ、瞬きくらいはしろよ。
ふと視線を感じて扉の方を見るとアキラがこっちを見ていた。
「随分と仲良くなられたようですね」
「ははは……」
「病人は休むべきではありませんか?」
「仰る通りで……んじゃ、カヨコ。俺は休むから」
「添い寝しようか?」
「………………遠慮しておく」
そういうと二人して部屋から出ていった。
……やっぱりお願いするんだったなぁ。いやでも熱移す訳にもいかないもんなぁ。
早く治そう。そう決めて眠った。
看病……看病?のお陰で翌日には熱は下がっていた。
メインの方を書かずに日常編ばっかり書いてやがるぜ……
あ、娘云々は本来はアークナイツ側の話で異格ストーリーとして出す予定でしたがアンケートが日常寄りだったんで一旦こっちで出すだけって形にしました。
女性先生に決まりましたがどんな人?
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スーツでキメたポニテ先生。凛々しい
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ゆるっと女子大生みたいな先生。ポワポワ
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その他。後で活動報告で枠作るのでそこに