青春をツマミに酒を飲む   作:黒色エンピツ

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三話:チート系主人公、なお過剰使用すると死にかけるものとする

 

 

 

 

「おー、なんというか気品があるな」

 

『ですが、少々物々しい雰囲気ですね』

 

「そうだな、今にもドンパチ始めそうだ。サヤ、原因は?」

 

『恐らくですが、連邦生徒会長の失踪かと思われます。その影響でサンクトゥムタワーの機能が停止、キヴォトス全体が混乱状態に陥っており、それに乗じて不良や団体が動いていると推測されます』

 

確か、キヴォトスで一番偉い役職だっけか。

一度会ってみたかったがいないならしゃーねぇか。

 

「とりあえず、まずはティーパーティーの面々に会えるかどうかなんだが」

 

そう言った瞬間に目の前の店が崩壊し、戦車や不良が飛び出して暴れだした。

 

「あー……斬るか」

 

 

 

 

あれから出てくる全てを斬り伏せてようやくトリニティ総合学園の正面に着いた。

 

「ゲヘナもそうだったけどでっけぇ〜」

 

ゲヘナの時はこっそり入ったが、今回はお嬢様学校みたいだし、ちゃんとした手続きをしねぇとな。

 

「誰かいませんかー?」

 

……返事がない。

 

「お邪魔しまーす」

 

返事が無いって事は入っても良いって事だよな!

とりあえずティーパーティーに会ってみるか。多分アポが無いと会えないだろうから数日かかりかな。

 

「あ、あの、すみません」

 

「ん?」

 

他の子と違う目隠れ黒セーラーの少女に声を掛けられて立ち止まる。

 

「今入って来ましたけど、入構許可証は持ってますか?」

 

「あー、ごめん。そこに人がいなかったから事務にでも行こうとしたんだ」

 

「あ、そうなんですね。……色んな物を持っていますけど、何か御用なんですか?」

 

「ちょっと仕事でな。これは仕事道具。ティーパーティーに会いに来たんだ」

 

顔を上げて俺の顔と武器を交互に見る。あ、目ェ見えた。どんどんとあわわわと口が波立ち、青ざめる。

 

「ま、まさかティーパーティーを狙って!?」

 

「え?いや……」

 

徐に無線を取り出して会話を始める。少しして終わると、どこからともなくこの子と似た少女達が大量にやってきた。……銃を手に持って。

 

「待て待て待て待て!?」

 

頭に狙いを定めたのを見て首を傾げると、パンと銃弾が頬を掠め、血が垂れて撃った少女達の一人が不思議そうに首を傾げる。

 

「いや、俺ヘイロー無いから。頭に当たったら死んじゃうから」

 

少女達がはっとなって銃をしまい、今度は両手を前に構えてにじり寄る。

 

「……さらばだッ!」

 

背を向けて走り出した。

 

「待てーっ!」

 

「追いかけろー!」

 

「わーっ!」

 

可愛らしい声と共にばたばたとした足音が追いかけて来る。

ちらりと後ろを見る。うーん……ほっこりする。

 

「ずっと追いかけっこするのも楽しいけど、やる事があるからなぁ」

 

『ラック様、曲がり角に注意です?』

 

「え?」

 

「きゃっ!?」

 

曲がり角で誰かにぶつかる。その瞬間にアーツを発動させ、浮かべて横抱きにした。

 

「大丈夫か?」

 

シスター服の……フェリーンか?オレンジの髪の少女だった。

 

「あ、あれ?」

 

「悪いな、怪我とか無かったか?」

 

「あ、ありがとうございます。……その、どうして追われているんですか?」

 

状況を把握した少女が困惑気味に言った。

 

「いや、俺にもさっぱりでな……最初は入構許可証の話だったんだけど、急に追いかけられてなぁ」

 

「シスターが人質に取られた!」

 

「なんか人質らしいぞ」

 

「そうなんですか……」

 

「……あ、俺はラックだ。よろしく」

 

「あ、伊落マリーです。良ければどんな勘違いがあったのか聞かせていただけますか?私が説明出来るかもしれません」

 

「マジで?そりゃあ助かる」

 

さっきの話をマリーにすると悩ましげな顔をした。

 

「ティーパーティーはトリニティの要ですから、その装備を仕事道具でティーパーティーに会いに行くと言われると命を狙っているように聞こえたのかもしれません……」

 

「ああ〜」

 

「これなら説得もすぐに終わると思います!」

 

「おお、頼もしい……」

 

よし、早速とばかりに振り返る。

 

「皆さん、落ち着いてください」

 

そう言うと黒セーラーちゃん達が立ち止まる。それからマリーが一生懸命かつ丁寧に説明をすると最初に会った子が出てきた。

 

「すみません、早とちりでした……」

 

「いや、俺の説明不足だったから仕方ねぇって、改めて入構許可証貰いたいんだけど良いか?」

 

「は、はい!任せてください!」

 

ふんす、と気合いを入れて先を歩き出す。それについて行くが……わちゃわちゃとさっきまで追いかけてきていた子達が周りにいた。

 

「大人だー」

 

「キヴォトスじゃあんまり見ない見た目だね」

 

「ねー」

 

「身長高ーい」

 

「あの、そろそろ下ろしてもらえると嬉しいです……」

 

「ん、ああ、悪い」

 

下を向けばマリーが顔を赤らめていた。抱き上げたままだったな、すっかり忘れてた。

折角やる気を出して案内してくれているし立ち止まるのもなんだと思い、手を離してアーツで優しく下ろす。

 

「ヘイローが?」

 

「羽?」

 

「綺麗……」

 

「まあちょっと俺は特殊でなぅあ……!?」

 

急に羽を掴まれて膝から崩れ落ちる。

 

「へ?あ、ご、ごめんなさい……」

 

「す、すみません!」

 

後ろにいた子が興味本位で触ったらしい。

急だったから過剰に反応してしまった。軽く息を整えてヘイローを消して立ち上がる。

 

「いや……ヘイローと羽は敏感だからなるべく触らないでくれると助かる」

 

「ヘイローに触れるんですか?」

 

「そりゃあ触れるだろ、お前らのだってそうじゃないのか?」

 

「私達のは触れませんよ」

 

ほら、と黒セーラーちゃんが互いのヘイローを触ろうとするが手がすり抜けていた。

 

「後は寝ている時や気絶していると消えますね」

 

「面白いな。それで寝たフリかどうかがわかるのか」

 

違いが結構あるんだな。

話しながら歩いていると黒セーラーだが、他の子より背の高くて髪が長い女の子が向かいから来た。

 

「あれっ、みんなしてどうしたっすか?今はパトロールを強化中っすよね?」

 

「イチカ先輩!この人を事務室に連れて行く所なんです!」

 

「見学の方っすか?」

 

それ子に黒セーラーちゃんが説明するとふむふむと納得していた。

 

「そういうことっすか。でもこの人数はちょっと多過ぎるっすね〜。今はツルギ先輩もハスミ先輩もいないっすから私が連れて行くっすよ。みんなは持ち場に戻るっすよ〜」

 

「「「はい!」」」

 

元気よく返事をするとサッと散っていった。しっかり統率出来てんだな……。

 

「それでは私も戻ります」

 

「ああ、巻き込んで悪かったな」

 

「いえ、また会いましょう」

 

行儀良く一礼してマリーも歩いていく。しまった、連絡先でも聞いておくべきだったか?

 

「それじゃ行くっすか。あ、私は仲正イチカって言うっす」

 

「ラックだ。よろしくな」

 

まずは挨拶して握手を交わす。

 

「でもティーパーティーの方々っすよね。少なくとも今日明日に会うのは厳しいと思うっすよ?」

 

「上の立場だからなぁ。でも、例えばだ。今の混乱に乗じて暴れている連中を抑え込めるとしたらどうだ?話す価値くらいはありそうだろ?」

 

「本当に言ってるんっすか?トリニティは広いっすし、数だって相当数いるっすよ?」

 

「まあまあ、やってみりゃわかる。論より証拠っつうだろ?」

 

「それはそうっすけど、現実的ではないっすね」

 

『ラック様、ゲヘナ学園からの記念すべき初依頼です』

 

「……おい、まさか」

 

『予想通り、ゲヘナ学区における混乱の対処への助力です』

 

「マジか」

 

思わず天を仰ぐ。どちらか片方ならなんとかなったってのに。

 

「どこかに協力者がいるんすか?」

 

『違います。サポートAIのサヤです。以後お見知りおきを』

 

「ご丁寧にどうもっす。それでどうするんすか?」

 

「受ける。まだ実績を一つも挙げてねぇからな。」

 

「それならトリニティはまた別の日っすか?」

 

「いや、そっちも受ける」

 

『ラック様、しかし……』

 

「事態の収束が早い方が評価だって高いだろ」

 

『それはそうですが、それでは余りにも範囲が広すぎます』

 

「やるったらやるんだよ。そっちのが今後にとっても良い」

 

これが元の世界なら仲間に頼って一日持ち堪えてもらえただろうが、今は孤立無援だ。ヒナにあれだけ先行投資という形で支援してもらったんだ。ここでやらなきゃならねぇ。

 

「サヤ、今のうちにゲヘナとトリニティの監視システムに侵入それと地形のマップデータも手に入れろ。被害が多い順に優先度を設定、次点で人数が多い所にもマークしろ」

 

「ちょっと待つっす。それは見逃せないっすよ」

 

イチカが銃を手に持つ。

 

「悪ぃけど、ここは見逃してもらう。これが一番効率が良い」

 

対して俺は手ぶらでイチカに向き合う

配達はこの世界では不向きだろう。かと言って他に俺が出来る事と言えば戦う事くらいなもんで、更に丁度戦力が欲しい状況。これに乗るしかない。

 

「……」

 

「なぁ、頼むよ」

 

「……は〜、私は何も知らないっすからね」

 

「それでいい。ありがとう」

 

「良いっすよ。それじゃ、ティーパーティーにいる知り合いに電話してみるっす」

 

「ティーパーティーに?顔が広いな」

 

「ああ、護衛の子っすよ。流石に本人達の連絡先は知らないっす」

 

へぇ、護衛もいるのか。龍門にいた時の俺よりもVIP対応じゃね?

 

「そっすそっす、まあ話だけでも聞いて欲しいって感じっすね。え?はい、ちょっと待ってくださいっす……ラックさん、スピーカーにするんで話してほしいっす」

 

イチカがスマホをスピーカーにして向けてきた。

 

『━━━━ご機嫌よう、ティーパーティーの桐藤ナギサです』

 

まさかの大ボス登場かよ。

 

「強いヒモ、ラックだ」

 

『……こほん、こちらは貴方の事を何一つ知りません。なので単刀直入に聞きます。トリニティの混乱を抑え込むのにどれだけの時間がかかりますか?』

 

「五分……いや、四分だ」

 

さっき少し使っちまったのが痛い。

 

『信じ難いですね。仮にそれだけの力があるのならば貴方もこの混乱に乗じてしまえば良いのでは?』

 

「それじゃあダメだ。確かに金は欲しいが、俺が欲しいのは信用だ。」

 

どれだけこっちにいるかもわからねぇんだ。権力者とは良い関係を築きたい。

 

『信用ですか、確かに今の状況を改善していただければこちらとしても少しは信用出来ますね』

 

「そういうこったな。まあ後は対面で話そうぜ?当然だけど、武装はそっちに預けるからよ」

 

『……わかりました。それではイチカさん、ラックさんをこちらに連れてきてください。』

 

「了解っす」

 

プツッ、と通話が切れる。

 

「あんな事言っちゃって良かったんすか?そもそも四分で終わられせるなんて……ゲヘナの依頼もあるんすよ?」

 

「トリニティだけなら十分だ。ただ、ゲヘナはここからだと距離が遠すぎるんだよなぁ」

 

アーツが届くとは思うが精度が低くなるだろう。その為のサヤだ。

 

『マッピングが終わりました』

 

「わかった」

 

「準備は良いっすね?じゃあ行くっすよ」

 

 

 

 

「武器を預かりますわ」

 

豪奢な扉の前に護衛の子達がいて、その横に荷物を置く用の台があった。

 

「わかった」

 

サヤはサングラスにも接続されているからと、刀と大剣、バックパック、スナイパーとハンドガンにマガジン、コートのポケットの暗器に爆弾、内側に刺していたナイフ複数本とこれまた爆弾、足の側面に着けていたナイフ、靴の踵に刺していた隠しナイフ、口の中に入れていた煙玉などの仕込みを取り除いて台に載せた。

 

「……もう無いですか?」

 

「ああ、これで全部だ」

 

「歩く武器庫っすね〜」

 

「お前もそれを言うか」

 

「手錠を」

 

「ああ」

 

後ろ手に手錠をかけられる。……これなら数秒もかかんねぇな。隠してた針金で外せる。武器じゃねぇから外さなくてもいいよな?

 

「それではこちらに」

 

「ああ、イチカも入っても良いか?」

 

「構いません」

 

護衛ちゃんに開けてもらって中に入ると、ティーパーティーに相応しい様相というか……でっけぇ机にティーセットとあの……お菓子とか乗せてるタワーみたいなやつに椅子が三つあるが二人しか座っていない。

灰……銀……クリーム?わかんねぇ、なんかそんな感じの髪の色したザ・お嬢様って感じの子とピンク髪のお姫様みたいな子がいた。

 

「セイアさんは体が体調不良でして、欠席しています。そちらの席へどうぞ」

 

「んじゃ失礼して」

 

少し離れた所にちょこんと置いてある椅子に座るとイチカが左後ろに立ち、その後ろから離れて囲うように護衛ちゃん達が立った。

 

「改めて、ティーパーティー所属、桐藤ナギサです。あちらは同じくティーパーティー所属、聖園ミカ」

 

「よろしくねー!」

 

「ラックだ、こっちこそよろしく」

 

ミカから手を振られて思わず振り返そうとしたが手錠をされていたからウインクで返した。

 

「まずは紅茶でも、と思いましたがそれでは飲めませんね」

 

「仕事がしたくて来たんだ。とっとと済ませようぜ」

 

「え〜、まずはアイスブレイクしようよー」

 

「雑談はまた後でな?」

 

「ふーん、まあいいよ」

 

少しつまらなそうな顔をしたが、後でだ。

 

「まずは話を聞いてくれてありがとう。早速話に入るけど、俺がそっちに出来ることは事態の早急な収束、報酬はそっちからのある一定の信用と金だ」

 

「先程聞いたものと同じですね」

 

「ああ、こっちに来たばかりだからな。金も無けりゃコネもない。だから君達みたいな権力者と仲良くしたいんだよ」

 

「理由は分かりました。しかし、どうやって四分で事態を収束させるのですか?」

 

「その為にはちょっと俺の事を知ってもらう必要がある。俺のサポートAIの作った資料を送りたいんだが、送っても良い端末はあるか?」

 

「では、こちらを」

 

「じゃあ私はこれに送ってね」

 

「サヤ」

 

『畏まりました』

 

二人の手元の端末に情報が送られる。

 

「テラ……?」

 

「俺は別世界から来たんだ」

 

正面の二人は落ち着いた様子だが、後ろにいるイチカや護衛ちゃんは同様していた。

 

「異世界人って事だね!へ〜、サンクタって言う種族はヘイローがあるんだ。……あれ?ラックさんの種族は?」

 

「サンクタだぞ。ただ俺が特殊なだけだ」

 

「ヘイロー見てみたいなー?」

 

「後でじっくり見る時間が出来るからそれで我慢してくれ」

 

「細かく読み込むのは後にさせていただきます。それで、どうやって四分で収束させるのですか?」

 

「俺のアーツを使う。サヤ」

 

『はい』

 

サヤが二人の端末を操作してアーツについての項目を表示させる。

 

「アーツ……えぇと、テラにいる方々の神秘のようなものですね。ラックさんのはどのようなアーツなのですか?」

 

「空気を操れる。酸素や窒素、空気中の水分とか気温なんかもだな。実質的な射程距離は無限だ、俺の脳みその限度はあるけどな。それと今の俺はアーツは五分しか使えない。さっき少し使ったから残りは四分と少しだ」

 

「出来るのですね?」

 

「結果をその目で見てな」

 

ナギサが深く考え始めた。まだ悩んでいるんだろう。それに対してミカは楽しそうに資料を読んでいた。

 

「テラじゃ銃を使えるのって基本的にはサンクタだけなんだよね?他の人は本当に剣とか弓矢で戦えてたの?」

 

「むしろそっちの方がやっかいだ。銃弾を避けるやつだっているし、固くて銃弾の通らないやつだっていたんだよ。剣や弓矢なんかはアーツと掛け合わせたりして火力を上げていたり、ただアーツで攻撃したりするからな。一応戦闘記録もあるから見てみるか?サヤ、良い感じのやつ頼むぞ」

 

「良いの?じゃあ見てみようかな」

 

『転送します』

 

ミカが動画を開くと、ドクターの声から始まった。サヤには人が死なない記録を頼んだから大丈夫だと思う。

 

 

 

 

「……わかりました。やり方はそちらにお任せします。」

 

「意外とあっさり許可をくれるんだな」

 

「現状をどうにかしたいのは私達も同じです。早急に解決するならばそれが一番ですから。それに、建物の被害よりも貴方に報酬を支払う方が間違いなく安く済みますから」

 

「そりゃそうだ。わかった。すぐに始めるけど良いな?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「んじゃ、どっかちょっと広い所を借りたいんだけど良いか?場所はどこでも良いんだけど」

 

「そうですね……では正門の前辺りはどうでしょう?少々目立ってしまうかもしれませんが、よろしいですか?」

 

「俺みたいな良い男ってのはなぁ、結局どっかで目立っちまうから気にする必要なんてねぇよ」

 

ふっ、とキメ顔で言うと胡散臭いものを見る顔で見られた。

 

「そんじゃ、とっとと行くか」

 

「ああ、待ってください。今手錠を」

 

針金で手錠を外して護衛ちゃんに渡す。

 

「武器じゃないだろ?」

 

「貴方という人は……」

 

「凄いね!私にも出来るかな?」

 

「今度教えてやるよ。」

 

装備を整えて正門に向かう。

正門の前では警戒して黒セーラーちゃんやシスターちゃんなどの色々な服装の少女達が集まっていた。お、マリーだ。なんか誤解されてそうな人の横にいて、手を振ると振り返してくれた。

 

「ここでいいか……で、見てくのか?」

 

「ええ、一応現場監督として」

 

「なるほど。そのお茶会セットは必要なのか?」

 

後ろを向くと、さっきと似たようなテーブルと椅子、ティーセットが並べてあり、ナギサとミカが優雅に座ってこちらを眺めていた。

 

「もちろんです」

 

得意げな顔でナギサが言う。それなら良いけどさ……。

 

「じゃ、ついでにサヤとか預かっといてくれ」

 

ナギサの近くに荷物を置き、コートを脱ぐと、バックパックから小さな装置を取り出す。

 

「その背中の文字、百鬼夜行の文字に似ていますね。何と書いてあるのですか?」

 

「これか?働きたくない、って書いてあるんだ。俺のお気に入りだぞ」

 

「……そうですか。」

 

話はこれで終わりと切り上げて、少し門の方に近付く。周りの少女達がなんだなんだと遠目で見てくるのが少しこそばゆい。

いつもと違いサングラスは頭に乗せたままで装置を軽く投げると、少し転がって立体映像が展開された。さっきまでサヤにデータを取って作ってもらったトリニティからゲヘナまでの地図だ。赤い点が点在しており、そこに敵がいる事を表している。

 

「サヤ、始めるぞ」

 

『カウントスタート』

 

ヘイローと羽を出して、アーツを俺を中心に発動して一気に範囲を広げる。軽く両手を広げて構え、完璧にアーツでも補足できたら片手を振り下ろして空気の弾丸を降らせる。……正直やってる本人ににしか何やってるかがわからねぇや。

 

「あの、サヤさん。あれは……?」

 

『余りにも範囲が広すぎるため、体の動きも加える事で遠距離や複数ターゲットへのアーツを安定して使えるようにしています。集中していますので決して近寄らないようにしてください』

 

「面白いねー、指揮者みたい」

 

手を動かし、アーツを使い続けるとマップ上の赤い点がどんどんと減っていく。

 

「すごいっすね〜……私の方に急に敵が無力化されたって連絡がすごいくるっす」

 

『ラック様、付近に戦車の編隊が来ています』

 

「…………わかった」

 

鼻の奥が熱くなり、鼻血が垂れてくるが手が離せない。

 

「戦車が来た!」

 

「一旦物陰に隠れて━━━━」

 

右手を手前に引いてトリニティ側の生徒を後ろに引き寄せてアーツでキャッチし、左手を振り下ろして圧縮空気をぶち当てる。戦車の動きが止まったを見て右手を後ろに引き、槍を投げるような姿勢で右手に空気を集め、先端を高速回転させてぶん投げると戦車がひしゃげて吹き飛んだ。

 

『残り二分、トリニティ学区の敵勢力、残り二十五パーセント』

 

ゲヘナまで間に合うか……?

 

「チッ、めんどくせぇ」

 

さっきよりもアーツを拡大させてトリニティ学区とゲヘナ学区に広げる。

 

『ラック様、それは体に負担が……』

 

「効率的だ」

 

対象を一斉に補足していく。誰かが近寄ってくる気配がするが、サヤが止めてくれているのか一定の距離を保っている。

 

『残り三十秒』

 

視界が赤くなる、多分血涙が出てんだろ。

 

『二十秒』

 

もう少しで補足が終わる。

 

『十五秒』

 

あ、と……少し……

 

『カウントダウン開始、十、九、八、七』

 

来た……!

 

「落ちろ」

 

右手を振り下ろした。

 

 

 

 

「ふんふん、了解っす。学区内はほとんど制圧出来たみたいっす」

 

「わかりました。……まさか、本当にやりきるとは」

 

ナギサが驚きを隠さずにラックを見ると、自分の目の前に大きな氷の器を作って水をいっぱいに張り、頭から器に突っ込んだ。

 

「……はい?」

 

周囲の人達が困惑して見つめる中、ゴポゴポと泡が水面に浮かび、少しづつ泡の量が減っていって最後に大きな泡が浮かぶとラックがピクリとも動かなくなった。

 

「ら、ラックさん!?大丈夫ですか!?」

 

近くで無事を祈っていたマリーと付き添いで隣にいたサクラコが大慌てでラックの傍に寄って助け出し、それに少し遅れて救護騎士団が走り寄った。

 

『皆さん、冷たいタオルの準備をお願いします。アーツの過剰使用で脳みそが沸騰する寸前です』

 

「担架を!急いで病室へ運ぶわよ!」

 

「氷水を用意して!」

 

「私も行こっと」

 

ぐったりとしたラックが手際良く担架に乗せられて連れて行かれた。それにミカが着いて行く。

 

『報酬の件、よろしくお願いします』

 

「……あ、わかりました」

 

困惑していたナギサがサヤの声でようやく再起動できた。

 

 

 

 

「……ここ、どこだ?」

 

ぼんやりとした頭で考える。白い部屋……病室か?

 

『おはようございます。二十時間程眠っていましたよ』

 

「ああ……サヤか」

 

そうだった。無茶やってぶっ倒れたんだっけ……。

 

「あれからどうなった?」

 

『ゲヘナとトリニティを制圧した後に突如先生と呼ばれる人物が現れ、サンクトゥムタワーを再起動した事でキヴォトス全体の混乱が収まりました』

 

「……もしかして、俺のやった事ってあんま意味なかった?」

 

『私の予想する被害と比べると軽微に抑えられているので無意味ではなかったと思います』

 

「そうか、なら良かった」

 

ほっと息をつくと尿意がやってきた。トイレに行こうとベッドから降りると激しい立ち眩みに襲われ、思わずベッドに手を着く。

ガラリと病室の扉が開くと随分と個性的な……制服?ナース服?の少女が入ってきた。

 

「起きましたか?まだ体が本調子ではないでしょうから寝ていてください」

 

「悪い、トイレに行こうとしてたんだ。どこにあるか教えてくれないか?……ついでに肩を貸してくれると助かる」

 

「大丈夫ですよ。こちらにどうぞ」

 

少女が尿瓶を取り出した瞬間かつてススーロに尿瓶を使われかけた記憶が蘇る。

 

「ま、待て!大丈夫だ!多少ふらついてはいるがトイレに連れて行ってさえくれれば自分で出来る!」

 

「事前にサヤさんから男性のあの……あれをデータで見せていただきました」

 

「お、おま、お前ぇぇぇええ……!」

 

『スリープモードに入ります』

 

恨み節を吐いていると少女に腕を掴まれた。

 

「私におまかせください」

 

にこりと微笑む。あら可愛いと思ったが、とんでもない力で俺をベッドに押さえつけようとする力に必死で抗う。こっちは今出せる全力だってのに涼し気な顔してんじゃねぇよ!お前多分ナースだろ!?

 

「くっ!この……キヴォトス人めェェェェ!!」

 

 

 

 





今作のラックの簡単設定

三十三歳くらい。
龍門での立場はほとんどアンセルとバイソンに譲っている。
装備は特に変わりは無いが、エクシアからムカし使っていたスナイパーを、他の面々からもドローンだったり色々な物を渡されている。ちなみに大剣はビックリドッキリメカと化しており、自分でも機能を把握しきれていない。
キヴォトスに来る前の悩みは飯の当たり外れが大きい事。
ちなみにはアーツは今回が過剰使用し過ぎただけで、普通に使って五分経ってから自分で消すとデメリットは無かった。

女性先生に決まりましたがどんな人?

  • スーツでキメたポニテ先生。凛々しい
  • ゆるっと女子大生みたいな先生。ポワポワ
  • その他。後で活動報告で枠作るのでそこに
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