青春をツマミに酒を飲む   作:黒色エンピツ

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九話:ここが俺の城だ!!

 

 

 

 

「ありがとねぇ、ラックちゃん」

 

「仕事なんだから気にしないでくれよ。おばちゃん」

 

アビドスの件から数日が経った。

今日はトリニティ自治区で水道管の修理の依頼がきて、ペッローのおばちゃんの所に来ていた。

うんうん、ちょっとずつだが何でも屋の噂が広まってきているようだ。

にしても水道管の修理ってそういう業者がやるもんじゃねぇのか?まあ、出来て金も貰えるしなんでも良いか。

 

「疲れたでしょ、これ飲んで頑張ってね」

 

「こんなもん朝飯前だって、まあ、貰えるもんは貰うけどさ」

 

おばちゃんから報酬を受け取ると手を振って別れ、貰った缶コーヒーを一口飲む。

……ううむ、美味いコーヒーを知っているだけに香料がキツ過ぎてあんま好きにはなれねぇな。

さてさて、今の時刻は14時か。少し遅れたが昼飯でも行こうか。

そう思っていると、向こうから俺に向かって女の子が歩いてきた。

確かティーパーティーの制服だったっけ。

 

「ラック様、お忙しい中失礼します」

 

「おう、どうした?」

 

「ナギサ様が呼ばれておりますので同行して頂けますか?」

 

ナギサが?珍しいな、普段はモモトークなのに。

 

「わかった。じゃあ向かうか。所でここに来たのはお嬢ちゃん一人か?」

 

「え?はい、そうです」

 

「じゃあ乗ってけよ」

 

「え?え?」

 

ヘルメットを被せてあげてバイクの後ろに乗せる。

 

「よーく掴まっとけよ。ほら、もっと抱き着くみたいにだ」

 

「は、はい!」

 

ふぅむ……中々の大きさ……。

 

「んじゃ、行くぞ」

 

一声かけてバイクを発進させた。

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「は、はひ……」

 

バイクから降りるとティーパーティーの子がふらふらとバイクから降りる。

慌てて支えてやる。

もしかして、バイクは初めてだったか?

手を繋ぐと目的地に向かう。ナギサはどうせいつもの場所だろ。

 

「うわ、あれ見て」

 

「ラック様と手を繋いでいるわよ」

 

「いいなぁ……」

 

周りにいた子達がヒソヒソ話をする。

もしかして俺が何か良からぬ事をしたとか思われてねぇよな……?

すれ違ったり通り道にいた子達からジロジロと見られながら歩いてティーパーティーのテラスへと向かう。

扉の前にいた護衛の子に手を上げて挨拶をすると扉を開けてくれた。

 

「来たぞ」

 

「ラックさん、急に呼んだにも関わらず来てくださりありがとうございます。……何があったのですか?」

 

「ああ、なんかバイクの後ろに乗せてやったらこうなった。慣れなかったんだろ」

 

ナギサが周りの護衛に目を向けると護衛の子が近寄って、案内してくれた子を預けると外へと連れていった。

そのままナギサの近くの椅子に座ると、ナギサが紅茶を入れてくれて、ケーキも出してくれる。

うん、良い香りだ。

……ちょこっと酒入れちゃお。

酒を入れた瞬間にナギサから圧を感じた。……ごめんって。

 

「コホン……早速ですが本題に入りましょう」

 

「わざわざ人使って呼んだんだ。それなりの用事なんだろうな?」

 

「まずはこちらを」

 

そう言って封筒を差し出してくる。

受け取って中身を取り出すと通帳とキャッシュカードが入っていた。

ご丁寧に名前には『桐藤 ラック』と書いてある。

 

「あー、これは?」

 

「ゲヘナの風紀委員長から貰ったと聞いたので、トリニティの銀行でも使えるようにご用意いたしました。これからは報酬の受け渡しもこちらで行おうと考えています」

 

「……」

 

「あの、そんなに嫌そうな顔をしなくてもよくありませんか?」

 

「だって……なぁ?」

 

政治的な牽制だろ。

 

「ま、貰えるもんは貰っとくか。ありがとな」

 

しかし……連邦生徒会にはどっちの名義で提出しようか。

 

「あ、そうだ。これのお礼って事で俺がお茶会の菓子でも作ろうか?」

 

「作れるのですか……?あ、いえ、その……イメージになかったので」

 

「言いたい事はわかる。でもまあ安心しろって、最高に美味いアップルパイ食わせてやっから。ちょっと時間が掛かるけど、大丈夫か?」

 

「えぇ、今日の予定はもうありませんから、構いませんよ。良ければ私も傍で見ていてもよろしいですか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

立ち上がってナギサへと手を差し出すとナギサが俺の手を見たまま固まった。

 

「ナギサ?」

 

「あっ、も、申し訳ありません。少し驚いてしまって」

 

慌ててナギサが俺の手を取って立ち上がる。

 

「意外だったか?俺がこんな事するなんて」

 

「今日はラックさんの意外な一面を多く見ますね」

 

「これでもガキの頃から女性のエスコートには慣れてるからな」

 

「子供の頃からですか?」

 

「ああ、ちょっと潜入やってた頃もあったからな。おっと、今はそんな事やってねぇから安心してくれよ」

 

「わかってますよ。活動中にどんな事があったかはお聞きしてもよろしいですか?」

 

「もちろん。つってもつまらねぇ話が大半だから面白い話だけ抜粋させてもらうがな。そうだな……まずは俺が14歳頃にとある金持ちの娘さんの弟にさせられた時の話でもするか」

 

「どうしたらそんな事に……?」

 

「毎日拾われるまで娘さんの通学路でぼろ雑巾みたいな姿で物乞いして同情心を煽った。後は俺がガキの頃からイケメンだったからだな」

 

いやぁ、困った困ったと髪をかきあげるとジトッとした視線を受ける。

それからなんやかんやと話しているとナギサがお菓子作りに使っている部屋に到着した。

 

「ほー、でっけ」

 

「ここにあるものでしたらお好きに使ってください」

 

「じゃあついでに誰かにおつかい頼んでも良いか?りんごを大量に使いたいんだ。他の子達にもおすそ分けしたいし。後は生地を作る時間が無いから冷凍のパイシートもくれると助かる」

 

「それでしたら既に手配済みです」

 

ナギサが指をパチンと鳴らすとティーパーティーの子達が必要そうな材料の入ったカートを押して入ってきた。

 

「こりゃあ、作りがいがありそうだ」

 

「お手伝いは必要ですか?」

 

「頼めるか」

 

「はい」

 

それから調理を始めると他の護衛の子達も率先して手伝ってくれたお陰でスムーズに進んだ。

いや、スムーズに進み過ぎた。思った以上の量が出来上がってしまい、正実やシスターフッド、一般生徒に配っても余ってしまい、トラックを借りて丸1日かけてゲヘナやアビドスへと配達してようやく無くなった。

ちなみに味は大絶賛でナギサやフウカやヒナからレシピを聞かれたため教えてあげた。

 

 

 

 

アップルパイ事件からまた数日が過ぎて、今度はホシノから連絡を受けてアビドスへとやってきた。今日はホシノしかいないらしく、ホシノの昼寝部屋へと向かう。

 

「やっほー、ラックさん」

 

「おうおう、今日はどうしたよ?」

 

「いやー、実はその……えっと……」

 

どんどんと歯切れが悪くなっていく。何か良くない事でも起こったのか?

 

「その……これ」

 

そう言って差し出されたのは通帳とキャッシュカードだった。そして当然のように名義は『小鳥遊 ラック』だった。

……またかぁ。

 

「あの、さ、他の自治区みたいにお金は払えないけど、強盗とか少ないから貯蓄を分けたりとかどうかな……なんちゃって」

 

一理あるな。まあ、名義が複数ある事には慣れてるし良いか。

そう思っているとホシノがこっちに手を伸ばしていた。

 

「……やっぱり迷惑だったよね?おじさんの方で処分しておくから──」

 

「おいおい、貰ったんだから返さねぇぞ」

 

手を上に上げて手を避ける。

 

「別に迷惑なんかじゃねぇって。ありがとな」

 

反対の手をホシノの頭に乗せる。

 

「……うへ」

 

「だがまあ、貰いっぱなしっては性に合わねぇな。……よし、デート行くか」

 

ホシノをそのまま横抱きで抱き上げる。

 

「……うへぁ!?」

 

前から思ってたけど『うへ』のレパートリーが多いな。

ホシノのうへコレクションとかコンプリートしたらなんか貰えたりしねぇかな。

なんてくだらない事を考えながらアビドス市街へと繰り出した。

当然、ホシノを知っている人なんかは遠巻きに微笑ましいものを見る目で見てくるし、途中でノノミに出会った時も目が合ったにも関わらずスススッと笑顔でその場から離れていった。

しかし、人間慣れるもので途中からはもうどうにでもなれといった感じで自分からあそこに行ってみたいなどと言うようになった。

 

「今日は楽しかったか?」

 

「うん、お陰で楽しかったよ。でもね……お姫様抱っこはもうこりごりだよ〜〜」

 

 

 

 

「それで、こうなったと?」

 

「……えへ?」

 

更に更に数日経って、今は先生と一緒に連邦生徒会で戸籍を作っていた。

その時に口座ならあるぜ!と言って3つとも見せて経緯を話すと連邦生徒会長代理のリンちゃんが頭を抱えた。

先生はその隣で『スパイっぽい……かっこいい!』というボケボケをかましていた。

それを見ながら酒を呷ると、リンちゃんから取り上げられた。

 

「ああっ!?俺の酒!?」

 

「真面目にしてください、ね?」

 

「はい!」

 

しっかりとペンを握り直す。

 

「本来であれば合ってはいけないけどですが……それは一旦置いておきましょう。まずは戸籍に記載する氏名を決めます」

 

「俺もそうしてくれると、助かるが……」

 

三人の中から選ぶってなるんだよな。

誰を選んでも少なからず角が立ちそうだが、まずは選ばれなかった二人がどういうかで考えてみよう。

まずはヒナからだな。

 

『そう……構わないわ。私達はあくまで仕事の関係だものね。えぇ……全然、気にしてないわよ』

 

なぜかシナシナになったヒナを幻視してしまった。

心苦しいな……次はナギサか。

 

『はい?そうですか。名前くらいお好きに決めれば良いと思いますよ』

 

ふむ、ヒナ程密接な関係がないからケロッとしてそうだな。

最後はホシノか。

 

『まあ、やっぱり有名な名前の方が色々便利だもんね〜。もしかして、おじさんに悪いとか思ってるの?大丈夫大丈夫。名前くらいで気にしないよ。……ちょっぴり期待しちゃっただけだからさ』

 

んんんんんん!!!!

ど、どれにしよう……。ヒナかホシノか。いや、俺の想像が足らないだけでもしかしたらナギサも気にしてしまうかもしれない。

しかし待てよ?これもただの俺の想像でしかない。誰も気にしないんじゃないか?

ちょっとモモトークで聞いてみるか。

三人にそれぞれの名前は出さずに三人の中から誰を選んだら良いかと送ってみるとホシノから返事が返ってきた。

 

『おじさんは気にしないから好きなの選びなよ〜。でも、私を選んでくれたら好感度が上がるかもよ?』

 

ほほう、好感度。上がったらどうなるかがとても楽しみだ。

ヒナとナギサからの返事がまだない。仕事で忙しそうだもんな。

するとナギサから返事が返ってきた。

 

『お好きなのをどうぞ。桐藤を選ぶのでしたら少し良いことがありますよ』

 

良いことか!なるほど、そりゃあ良いな。

個人的には金持ちの知ってるような隠れ家的な美味いもんでも食わせてくれりゃあ最高だ。

おっと、今度はヒナからだ。

 

『選んでくれたら、とても嬉しいわ』

 

ヒナらしい簡潔な一文。

しかし、ヒナが喜んでくれるのなら選ぶのもまた良いだろう。

目を瞑って一先ず考えてみる。

誰かを選べば誰かが悲しむ……悲しむよな?そうじゃなかったらただの勘違いになって俺が悲しい。

 

「ラックさん?」

 

目を開くとリンが俺の顔を覗き込んでいた。

あ、そうだ。

 

「じゃあ、七神は?」

 

我ながらナイスアイデアと思った。

三人の中から選ばなけりゃいいじゃん。

 

「私が却下しまーす」

 

「え」

 

唐突に先生が手を上げて俺の提案とぶった斬る。

 

「先生としては生徒の気持ちを汲んであげてくれると嬉しいな」

 

なんて事を目をキラキラさせながら言う。

ハッハッハッ!なんてこった!

 

「てめぇが見ていて楽しいからだろうが」

 

「い、いてゃいよぉ〜」

 

頬を引っ張るとぽこぽこと叩いてくる。

 

「はぁ、私からも却下させてもらいます。」

 

「え!?」

 

「出会ってすぐの大人に自分の名前を使わせるわけないでしょう」

 

それは確かに……。

 

「じゃあどうすっかな」

 

んー、考えんのもめんどくさくなってきた。

 

「じゃ、空崎で。一番最初にくれたのヒナだし」

 

「わかりました」

 

長かったな。

 

「書類はそれで最後だろ?」

 

「そうですね。お疲れ様でした」

 

「これからは一緒に頑張ろうね」

 

「何言ってんだ?」

 

「え!?シャーレと業務提携するって契約でしょ!?」

 

「いや、流石にずっと一緒に出来ねぇよ。こっちだって仕事あるし」

 

「そ、そんな……」

 

「そんなに大変なのか?」

 

「だって〜、いっつも書類がたくさんあるんだよ」

 

こーんなに!と言いながら手を大きく開く。

ほんとかよと思いながらリンに目を向けると頷く。

 

「事実です」

 

「マジかよ」

 

「当番の生徒達が手伝ってくれてるけど、大変なんだよ〜」

 

「……週二回くらいなら良いぞ。今んとこ忙しくないから定休日とか考えてねぇし」

 

「ほんとにっ!?」

 

先生が机に身を乗り上げて俺の手を掴む。

 

「本当だって、このっ、手ェ放せ!?」

 

普段貧弱なくせにどこにこんな力があんだよ!?

なんとか手を振りほどいて窓から身を投げる。

 

「リンちゃーん!後よろしくー!」

 

「ハァ……誰がリンちゃんですか」

 

 

 

 

そしてなんやかんやあって事務所を借りる事が出来た。シャーレから少し離れており、ゲヘナにそれなりに近い場所にある建物。何故かやたらと安かった為に即決した。

うんうん、内装はまだ何も無いが、やはりテンションが上がる。ここが俺の城だ!!

そうしていると外から発砲音が聞こえてきた。

 

「おいおい!アタシ達のテリトリーにまた誰かが入ってるぞ!」

 

「滞在費を払って貰わねぇとなぁ!」

 

「あー、なるほど。こういう事ね」

 

刀とハンドガンだけを持って外に出る。

 

「悪ィ子はいねぇが〜〜!!!」

 

その日以降、俺の事務所の前では銃声が聞こえなくなった。

 

 

 

 

 






やっぱこういう日常回書いてる時が一番楽しい

女性先生に決まりましたがどんな人?

  • スーツでキメたポニテ先生。凛々しい
  • ゆるっと女子大生みたいな先生。ポワポワ
  • その他。後で活動報告で枠作るのでそこに
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