ありふれた異世界剣豪は世界最強 作:NOUMINのライバルTUBAME
あとちょっとしたアンケートを取りたいと思っているので、ご協力いただければ幸いです。
◆
襲撃があった事すら無かったかのように、平然とした顔で朝起きた。
ヤミ一家は、全滅したというふうに工作したため、依頼主とやらは随分慌てているだろう。ああ残念だ、あの狸親父の悔しがる顔が見れないなんて。
「朝からご機嫌だね佐々木君は」
「なに、夢見が良かっただけさ」
してやられてるばっかだったからな。笑ってやるくらいはしても罰は当たらんだろう。
ヤミ一家には王国の諜報を任せることにした。彼らも暗殺者、闇に紛れて間諜行動はお手の物だと言っていたな。……忍者かな……?まぁ似たようなもんだわな(自己解決)
「しかし、今日からオルクス大迷宮攻略か……」
「"攻略"って銘打ってはいるが、その内容は実戦訓練みたいなモンだからな。そう気負うもんじゃないぜ」
「だとしても、前の世界ではファンタジーでしか無かった迷宮とかダンジョンなんかを目の前にすると……緊張してこないか……?」
「それには同感だ」
南雲、遠藤、俺でメルドさんを待つ間、ゆっくりとストレッチをしながら駄弁る。
今回は志望したメンバーにプラスでメルドさんと、その部下の人たちも着いていくから大所帯となっている。
言うほど長く滞在するつもりは無いが、非常時の備えは重要だからな、遅いのも仕方ない。
メルドさんを待つ間、俺は手に持っていた
これは南雲が倒れながらも作ってくれた傑作だ。俺が口頭と下手な絵で描いただけの設計図を元に錬成された、俺専用の"物干し竿"だ。当の本人は、「まだまだ完成とは程遠いけどね……でも、佐々木君だけ木刀というのも格好つかないでしょ?それに……その……僕の友達だから、傷ついて欲しくなくて……」となんとも友達冥利に尽きることを言ってくれた。前世じゃ病院生活だったからか、友情というやつに慣れてなくてな……涙がこぼれそうだったぜ。
──長い刀身に、白銀に輝くその美しさは日本刀の魅力だろう。
おっといかんいかん。いつになく感傷に浸ってしまっているな。
メルドさんも来たことだし、そろそろオルクス大迷宮かな。
頑張るぞ〜〜!!
◇
──オルクス大迷宮、その二十階層。そこはトータスにおいて、冒険者の格付けを決める分水嶺となる場所にまで順調に進んでいた。
一心からすれば、この世界の基準を知るにいい機会であったし、他の生徒達も訓練の成果か道中の様々なモンスターやトラップに対応していた。
特に、光輝、龍太郎、雫の活躍は目覚しい。
三人とも、腕には覚えがある上この世界に来てから獲得した"天職"により更に動きが洗練されている。
基本的に彼らはパーティを組んで行動していた。
例を挙げるならば──先程の三人が前衛を担い、香織に加え、メガネっ娘の中村恵里、ロリ元気っ子の谷口鈴が魔法の詠唱、魔法の発動の準備を整える。訓練通りの堅実な立ち回りであった。
一方で一心とハジメは二人でツーマンセルを組んでいた。
……別にパーティを組む関係上二人はハブになったとかそういう理由では無く──
「佐々木君!そっちに三匹!」
「あいよ!」
ラットマンという、外側はネズミだが二足歩行な上に上半身がムキムキのアンバランスなモンスターと対峙していた。
ハジメが、他のパーティの討ち漏らしを見つけ一心が、"縮地"を用いてラットマンの背後から神速の居合で一閃。短めの残心の後に納刀し、ハジメの隣へと戻る。
「流石」
「それほどでも──っと、この辺はあらかた狩り尽くしたか」
主に二人は遊撃を担当し、圧倒的な力を持つ一心と自分の天職を活かし、敵モンスターの足止めで一心のサポートに徹するハジメのコンビネーションにより、他のパーティよりも討伐数を稼いでおり、それを見ていた付き添いの兵士たちは感心したように二人を見ていた。
魔石の回収を済ませると、一行はさらに奥へと進む。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合入れろ!」
メルド団長の言葉を聞いた二人は「あと少しか」「お腹減ったね……」という雑談をしながらもトラップなどの警戒をしつつ歩む。
「──やっぱり新章からはあのキャラが……」と前の世界で二人してハマっていた漫画の話をしていた二人だったが、ハジメが何故か心ここに在らずというか、どこかの誰かを見ているような視線になり、気になった一心はその先を見て──悪い笑みを浮かべた。
一心は白崎の気持ちには何となく察しが着いており、またハジメも少なからず気持ちはあるような素振りも見ているので二人の甘酸っぱい恋を見守る姿勢でいる。
だからこそ、醜い嫉妬の感情を送る檜山に対して絶対零度の視線でやっかみを防いでいた。
「モテる男は辛いねぇ南雲くんや」
「い、佐々木くん何を言ってるだ?!」
「慌てすぎ。なまってるみたいじゃねえか。……で、昨日の夜はどこまで行ったんだ……?」
「どこまでって……」
「照れるなよ、ハグまでか?……はっ──!もしかして……キス?」
「フン!」
「うぼぁっ!」
ハジメの肩を組みウザ絡みをしていると、しつこすぎたのか鳩尾部分を思いっきり強打し、一心はお腹を抑えた。「やるな……!」と不敵な笑みで脂汗を浮かばせているとハジメは「佐々木君の自業自得だからね!」と頬を膨らませて怒っていた。
「……いいなあ佐々木君……あんなに南雲くんと近くで……」
微笑ましいものを見るように、しかしどこか羨ましくも思いながら白崎香織は想い人への思慕を募らせる。
その様子は可憐で、美しく、白百合のような儚さがあった。
◇
──美しき花があるのならば、それを独占したいと思ってしまう者もいる。
「(南雲……ハジメェ……!!お前は……!!お前はぁ!!)」
充血しているのか、血走った目で唇を血が滲むほどかみ締めているのは──檜山であった。
その目は己にではなく、常に見下しキモイだけのオタクである南雲ハジメしか見ていない。
嫉妬、怒り、切望。
人間の醜い負の部分、その全てをハジメにぶつける。
既に覚悟は決まっている。あの日、あの時、あの忌々しい武士紛いのクラスメイトに完膚無きまでに叩き潰されてから、計画を練り続けた。
そうだ、あの男、佐々木一心も気に食わない。
背が高く、顔も良くて、性格も良い。それに加えて剣道の大会で全国優勝連覇をするほどに強く、オマケに美人な幼馴染までいる。
そこまでなら"まだ"良かった。天之河もそれに当てはまる。精々出来た人間がいるなとしか思わなかっただろう。
だが、一心は己が見下していたキモオタ──ハジメと親しげにしていて、そしてあろう事かハジメを庇うようなことをいつもしていた。
虐めようと、
その度に、自分の惨めさを見せつけられ血反吐を吐くほど苦しんだ。
なぜ、なぜ、俺ではなく、そんな出来損ないのクソオタクの肩を持つ。そいつは虐めてもいいやつで、弱者で俺は強者のはずなのに。天職もこの世界じゃありふれたゴミ。それなのに、お前は、お前は
結局のところ、彼の自業自得であり醜い嫉妬と劣等感が肥大化し続けた結果が今の檜山な訳であるが──本人は気付かない。過剰なまでの「自分は悪くない」という
多感で、未熟で、無謀な事であるのには変わりない。
しかし、檜山の中で燻る感情はもう抑えられるものではなかった。
導火線に火は灯り、その時は刻一刻と近付いていた。
◇
『──ふむ。悪くない、悪くないなこれは……』
『道化として踊って貰う分には申し分無いが……何分力が無いな。まぁ良い……私が少し手を加えれば、イレギュラー諸共……フフ……ハハハハハハハ!!!!』
◇
悪寒がした気がする──と後ろを見回す一心。特に何も無さそうではあったが、嫌な予感がしていた。
「(罠は今のところ見つからない。同行してきた兵士達もこれといった目的は無さそうだ。が、何だ?嫌な予感がする……)」
ダンジョン攻略は順調そのものだった。特にモンスターに怪我させられる事無く、生徒たちはその力を示し、また各々ができる事を尽くしていた。
途中、ロックマウントという石に擬態していた石の肉体を持つゴリラのようなモンスターに遭遇したが、生徒たちに攻撃が向く前にハジメがロックマウントの足元を崩し、一心が一瞬で四肢を切り落とし達磨にしてしまった。その手際の良さと決着の早さから生徒達やメルド団長らの兵士たちは武器を取る暇すら無かった。
その事を褒められ、ハジメは「これしか出来ないから……」と謙遜し、一心は「ハジメあってこその活躍だった」と平然と言っていた。
それに焦りを覚える者も何人か居たが。
しかし──概ね、順調であったと言えるだろう。
転移トラップという、ダンジョンで最も危険なトラップに引っかかってしまうまでは。
◆
クソッ!クソッ!クソッ!!
状況も何もかも理解しているしどうしてこうなったかも分かるが敢えて言いたい!
「──どうしてこうなった!!!?」
あの石のゴリラみたいな奴を斬った後、小休止となった時、グランツ鉱石という青く光る宝石の原石を見つけ、その価値が相当な物であるとメルドさんに教えて貰った。その時は俺もハジメも「はえーすっごい」以上の感想を抱かなかったのだが……
「だったら俺らで回収しようぜ!」
……と、言って檜山は崩れかけていた壁を器用によじ登りグランツ鉱石を取ろうとし──メルド団長の静止の声を無視して──俺も向かおうとしたが、間に合わなかった。ただ、檜山が触れるのが早いか、メルドさんの部下があのグランツ鉱石が罠だと看破するのが先だったかは覚えてないが、あっという間に俺たち全員は光に包まれ転移してしまったのだ。
少し上空から落とされたようだったが問題無く着地した俺は状況を確認した。
転移した場所は巨大な石造りの橋で横幅は数十メートルと少し広め、しかし緑石も手すりも無いためもし端の方で足を滑らせてしまったらひとたまりもないと容易に想像がつく。俺たちはどうやらその端のちょうど中間あたりに転移したようだった。橋の両端にはそれぞれ奥へ続く階段と上に続く階段があった。
これらの情報を数秒で理解すると上へと続く階段の方へ指を指して
「すぐに立て!!あの階段の方へ退避だ!!」
ワンテンポ遅れてメルドさんも立ち上がり、剣を抜き放ちながら「一心の言う通りだ!早く!」と険しい表情で支援しようと声を上げた。ようやく状況を呑み込みわたわたと指示に従い逃げ出そうとする生徒達。
的確に、しかし迅速に。緊急時に焦るのは愚の骨頂だ。冷静に対処しようとしたその時だった。
なんと魔法陣が浮かび上がると同時に階段側の方で大量の魔物が出現したのだった。
俺は舌打ちをしながらもとっとと切り抜けようと刀を抜こうとした瞬間、俺の背後──つまりさらに下へと繋がっていた通路側にも魔法陣が浮かび上がり、巨大な影が
「ツイてねぇな!」と零しながらも身を翻し、通路側へと向き直る。そこには
「──まさか……ベヒモス……なのか……」
やけに耳に響く、メルド団長の唖然とした声を背中に受けながら、迫る危機に向けて刀を抜きはなった。
そして、冒頭の言へと戻る。
──後方には夥しい数のトラオムソルジャー……まぁスケルトンみたいな魔物。本来は三十七層で出てくるヤツで今までのように楽勝とは言えない。それに数も相当数いる。危険だ。
──んで、俺の目の前にはベヒモスとかいうトリケラトプスみたいな赤黒の瞳をした魔物。俺の敵では無いだろうが三匹もいやがる上に、確実に負担がかかっているであろうこの石橋の事と後ろの生徒やメルドさんらの部下に気を使いながら戦わなくてはならない訳で。
「クソ面倒だ……」
思わず悪態をつくが出てきちまったモンは仕方がねぇ。自分がやれることを全力でやるしかない。
「アラン!生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイル!全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ!光輝、お前達は早く階段へ向かえ!」
「待って下さい、メルドさん!俺達もやります!あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう!俺達も……」
「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ!ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け!私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!」
「んじゃあ俺も前線に出よう」
「一心がだと!?危険だ!お前も階段へ!」
「だからと言ってこのクラスをメルドさんだけでは無茶がある!それに、俺の実力は知ってるだろ!?」
メルド団長の鬼気迫る表情に押されるも、俺との会話を聞き、「佐々木が出るならやっぱり俺も──」と言って食い下がろうとする光輝。
どうにか撤退させようと、再びメルドさんが天之河を説得しようとしたその時。三匹のベヒモスが同時に動き出し、突進してきたのだ。
このままじゃ生徒たちは轢き殺される。──で、あれば
「──秘剣・燕返し」
まずは一匹。その首、貰い受けようか。
※投稿期間について。
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5000文字くらいだ更新が遅い
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2000〜3000文字程度だが更新が早い