ありふれた異世界剣豪は世界最強 作:NOUMINのライバルTUBAME
「──八重樫家の娘とお見合いィ?」
「そうじゃ。主ももう10の歳になったからの頃合じゃろ」
一心が名実共に佐々木家の当主となった日からさらに五年の経った今──一心は佐々木家の老人たちに呼ばれると、いきなりお見合いの話を持ちかけられていた。
佐々木家の老人たちは『岩流』にはそこそこ興味があるがそれよりも金や家の存続を優先させる保守思考の集団であり、特に金のためならどんなことも厭わないがめつい集団である。
「普通に嫌なんだけど?」
「何を言うか!八重樫と言えば
「いや知らねーよ」
欠伸をしながら詰まらなさそうに老人達の言葉を流す一心にさらに激昂した老人たちは口々に責め立てるが、興味なさげに一心は耳をかいていた。
──『八重樫……八重樫か……うーーん……』
「(師匠、なにか知ってるんですか?)」
──『知ってはいるし、悪くはないと思うのじゃがこの家の者のやる手はよく分かる。どうせなんか圧力を掛けてお見合いを持ちかけたんじゃろうて……』
「(あぁ……やるでしょうね。ウチは)」
──『それに儂が生きておった頃、八重樫の家に訪れたら「貴様がかの有名な佐々木小次郎か?」って聞いてくるや否や殺しかかってきてからちと……苦手でな……』
「(えぇ……)」
バーサーカーかなにかなのか八重樫家は……と師匠から聞いた話だけでもう嫌になってきた一心は早々に断ろうと口を開いた瞬間。
「もう八重樫の家の者は来てるんじゃぞ!!!」
「えっ今日お見合いなのかよ!!?」
その衝撃の一言で、滅多に驚かなくなった一心でさえ驚きで固まってしまった。
■■
「ろくでもない……本当にろくでもないよこの家……」
報連相!!と老人たちにブチ切れてから、一心は自室に戻ると儀礼用の着物を引っ張り出してから着替え始めた。
お見合いを受けるつもりも無いし、婚約する予定も無い。ただ来てくれた以上、最低限の礼儀として件の八重樫家の前に挨拶くらいは──と思っていた。
「……うっそだろこの着物半年前におろしたばかりだぞ……?」
自分の体の成長の早さに戦慄しながら、何とか着物を体に収めると使用人の「そろそろでございます」──という言葉に応えて、客間へと向かった。
■■
八重樫虎一は激怒していた。──がそれを心の中で押し殺しこれから来る可愛い可愛い娘の許嫁になるであろうクソガキ……もとい佐々木家当主たる佐々木一心を待っていた。ろくでもない奴だったらぶっ飛ばそうと決意しながら。
八重樫鷲三は憤怒していた。ブチ切れていた。手元に刀があれば振り回して暴れるんじゃないかってくらいブチ切れていた。──が、虎一同様押し殺していた。
最初は、お見合いの話が来た時点で持っていた茶碗を握力のみで割っていたほどだった。だが、その相手があの佐々木家であると聞けば流石に冷静にならざるを得なかった。
八重樫家の『八重樫流』は佐々木家の『岩流』の大部分を参考にしている。超人用の流派が岩流ならば凡人や一般に広く使えるように落とし込めたのが八重樫流と言った方がわかりやすいか。つまるところ八重樫家にとって佐々木家は本流の血筋であり──なんなら家系図を辿れば佐々木家の者の名があるためか遠い親戚にあたるのだ。
八重樫流も古武術としては名門ではあるものの岩流には劣るためか断るに断れなかったのである。
とはいえ──目に入れても痛くないほど可愛い孫娘を佐々木家なんぞにくれてやりたくないという爺心と、あまりいい話を聞かない佐々木家から守るためにも、鷲三と虎一はある覚悟を決めていた。
関わりを断つという──明確な決別をする覚悟を。
「──そろそろですかな」
鷲三の前に座っていた老人の一言で体に力が篭もる。
虎一と鷲三に挟まれるように座った雫もまた──不安げに瞳を揺らす。その様子を見た二人は安心させるように微笑んでから、意識をこれから入ってくるであろう佐々木家当主、歴代最もその座に近い者として謳われる──佐々木一心へと。
「一心様、ご到着です」
障子が開かれ、一心が部屋へと入る。
その瞬間。明確にその場の空気が一瞬にして変わった。
たった一人の少年が入っただけでその場は鉄火場と錯覚するほどに、少年を視界に入れた瞬間に喉元に刀を添えられたかと恐怖するほどに。
「──おまたせいたしました。私が佐々木家現当主である佐々木一心と申します。今日はよろしくお願いいたします」
紺色の長髪を揺らして、黒真珠のように美しい瞳を宿したまま──しかしその目は、見えない刀を突き立てているように感じさせた。
恐ろしき美貌と、纏う雰囲気がこの世のモノとは思えない──などという感想を鷲三は抱いた。死神、というのはかくなるものか──と。
「……これはご丁寧に。私は八重樫家当主、八重樫鷲三と次期当主たる息子、八重樫虎一です。──そしてこの娘が」
「し、雫です!」
緊張しながらも答えた孫娘に顔を綻ばせたくなるが、眼前の存在を思い出し礼をする様に促すと虎一も鷲三も同様に深く礼をした。
「では早速お見合いの方を──「待て」──はっ?」
老人は意気揚々と話を進めようとしたその時。一心は静かにそれを止めた。
「このお見合い自体が急すぎた。お前たちは色々知っているのだろうが俺はこの人達を全く知らん。相手がどういう人間なのかも知らないのにお見合いなど出来るわけないだろう?──30分だ。それまでお前は席を外してろ」
老人は何か言いたげにしていたが、相手は現当主。何も言うことが出来ずに「……30分だけですぞ」と返事をしてから部屋を去った。そして今度は別方向の襖へと向かって
「盗み聞きしようとしているお前たちもだ。とっとと立ち去れ。──別に、この前みたく組手してやってもいいんだぞ?」
と言い放つと、ドタドタという足音がしたかと思えば遠ざかっていく気配がした。その音に驚きながらも鷲三は相手方──一心がしっかりと話をする用意をしていると感じ取り、姿勢を新たに向き直った。
「──それで話というの「はーーつっかれたー!」──はい?」
先程までの気迫はどこへやら。目の前の佐々木家当主にふさわしい剣呑とした雰囲気はすっかり解れ、目の前の男ではなく、少年という言葉が似合う年相応の顔へと戻った一心に拍子抜けしたような、声が鷲三からこぼれる。それは雫の父親の虎一も同じようで、目を大きく見開いて今までのギャップに度肝を抜かれていた。
「茶菓子なにこれ?落雁?はぁ?古くせーー!えぇっと…雫ちゃん?だっけ?君みたいな女の子はこんなもんじゃなくて──ほらGOD〇VAのチョコの方が良いでしょ」
軽い調子で、どこから取り出したか分からないが可愛らしくラッピングされたブランド物のチョコの箱を雫の前に差し出すと、緊張していた様子の雫も「わぁ…!」と目を輝かせて受け取った。
「んで?えぇ…と鷲三さんに一虎さん?」
「は、はい」
「……なんでしょう?」
「ごめんけど、この話ナシで!!」
「「え、ええ…?」」
八重樫陣営にとってその言葉は何より嬉しいのだが、いまいち意図が分からず、喜びよりも先に困惑が勝った。
「ま、そんな声も出すよね。とは言っても俺からしてもいきなりな話でさ──」
聞けば、一心自体もこのお見合いを今日知ったと言うでは無いか。佐々木家側からすればよく知っていても、当の一心が何も知らないようじゃ意味が無い。そもそも見ず知らずの家族とその日一日だけ会わされてハイ婚約は納得出来ない──と、一心は語った。
「──ま、とはいえ折角来てくれたし何も挨拶無しで帰すのもそれはそれでどうなの?ってことで来た次第だよ。迷惑掛けたね。その分の補填は後日しっかりするつもりだから、はいコレ俺の個人連絡先ね」
そう言って、一心は鷲三に携帯番号の書かれたメモを渡すと雫と一緒にチョコを頬張った。
「美味しい?」
「……うん。美味しい……」
「そりゃ良かった。落雁も美味いけどさ、やっぱ食べ飽きるのよね」
実感の籠った言葉に、鷲三は「あぁ、あまり外に出して貰ってないんだな」と察し同情した。そして同時に、何故ここまでしてくれるのかとふと疑問に思い、こう聞いてみた。
「何故、一心さんはそこまでしてくださるのですか?」
その問いに、一心は「敬語じゃなくても良いよ年上だし──」と言ってから神妙な顔つきで答えた。
「──ぶっちゃけさ。この家はクソなわけ。男尊女卑は当たり前だし、岩流を極める〜だとか最強になる〜だとかくっっっそくだらないことで内輪揉めばっかしてるのよ。そんな家に、他所様からの大事な娘さんを迎えたくない。迎えさせたくなかったんだ」
──もちろん、他にも色々理由はあるけどね。と付け加えたが、鷲三と虎一はその意外な答えに驚きから開いた口が閉じれなかった。
それまでの佐々木家の当主と言えば宗真のような傍若無人で傲慢かつ横暴な人間しかいなかったのにも関わらず、目の前の存在──一心はあまりにも特異すぎたのだ。
「……それ……は………」
誰よりも自分たち、八重樫家の事を思っての一言で流血沙汰すら覚悟していた一虎は逆に一心に対して申し訳なくすら思っていた。
「──この家を変えたい。この家に巣食う因習と文化を断ち切りたい。それまでは結婚もしないし、そういう相手も作るつもりは無い──でも、それ以前に俺には人望も何も無い。だからこそ今は行動あるのみしかない。言葉じゃ人は動かない。だからこそ俺は魅せ続けなくちゃあ行けないんだ」
──だから、ごめんなさい。
服を整え、姿勢を正し見事な所作で八重樫家の鷲三、虎一、雫に対して深く、深く謝罪をした。
「(ああそうか──君は──)」
虎一は思う。彼ならば、きっと成し遂げられる。そしてまた──彼になら娘を託せる、と。
「顔を上げてくれ──君の言い分はわかった。八重樫家も今回事に関して思うことがなかった訳では無いし、そういう話になるならば、納得だ。むしろ諸手を上げてその意見を歓迎したいくらいだ。──だが、君はどうするんだ?」
「……家の者の事か?それは問題無い。俺が当主なんだある程度のわがままは効くと思うが」
「その話じゃない。佐々木家を変えるという話だ。行動で示そうというのは分かった。だが、そうだとしてもやはり後ろ盾は必要だろう」
「それは……まぁ……」
「佐々木家も一枚岩じゃない。君の言った行動というやつで従うのはせいぜい門下の弟子たち程度だろう。佐々木家の中枢はそれだけじゃあ変わらない」
「…………話が読めてきたな。つまりなんだ八重樫家はお見合いの話は受けないがこの俺、佐々木一心の後ろ盾にはなろうって話か」
「──察しが良いようでなにより。現実的な妥協点だろう。とはいえ、個人の後ろ盾を名乗ると些か疑われるだろうしな、あくまで佐々木家を支援するという形になるけどね」
一虎、一心の会話に入り込む様に鷲三もその意図を察し最終的にそう結論付けると、朗らかに笑った。
「──いやぁ、君が先代のような人間だったらどうしてたか分からなかったよ!」
「全くだ」
「は、はは……」
僅かな殺気を感じとった一心は、苦笑いを浮かべて僅かな愛想笑いを浮かべるだけに留めたのであった。
──かくして、八重樫家と一心個人との密談を終え、その後のお見合い話も一心が上手く誘導することによって何とか無かった事にすることが出来たのであった。
「それでは──
「嗚呼、
「えぇ」
三人の仲で、必要な言葉はそれだけであった。
一心は八重樫家を信用して、八重樫家は一心を信用して、いつの日か佐々木家がまともになった後で
■■
………八重樫家、めっちゃマトモじゃね?
──『めっちゃマトモじゃったな……』
いや師匠の言葉聞いてめちゃくちゃ警戒しながら行ってみて、いざ蓋を開けてみればただのいい父さんと爺ちゃんだったじゃないですか!!!
──『だってだって昔はやばかったんじゃもん!!忍者みたいだったんじゃもん!!』
昔ってどんだけ昔だよ!!今はもう忍者とかいなくなってるに決まってるだろ!!!確かにあの二人は堅気な雰囲気なかったけど!!あれはちゃんと武道をやってるからこそああなってただけだろ!!
──『ぐぬぬぅ……!!』
全く。師匠基準で時代とか諸々語らないでくださいね!色々と勝手が変わってるんですよ現代は!!
■■
後に、一心は死んだような目をしながら語る──「師匠の言う通り何も変わってなかった」と。
その隣に大きく頷く八重樫の娘もいたとかいなかったとか。
■■
お見合いが終わった帰り道──八重樫鷲三と八重樫虎一はゆっくりと歩いていた。
虎一の背中には緊張で疲れてしまったたのか、八重樫家のアイドルとも言っていい娘、雫が気持ちよさげにおぶられ寝ていた。
「──虎一、」
「分かってます。彼は……なんというか凄い子でしたね」
「だな……」
背中で無邪気に可愛らしく寝ている娘と同い年とは思えないほど、意思がしっかりしていてかつ、当主としての自覚や精神は既に大人のそれであった。
不気味さと、その美しい顔から──どこかこの世のものでは無いミステリアスな雰囲気と体の作りから動き方で強者だと分かるその様子から既にカリスマ性まであり──
「危険、ですね。彼は」
「あぁ、全く本当に」
そうは言ったものの、二人の顔には笑顔が浮かんでおり、思うことは一つのようであった。
「彼になら──」
八重樫家が仕えるに値するとも。
■■
またまた後に一心は
「なんだよ佐々木家お抱え諜報部って!!?別に俺は総理大臣とかになりたい訳じゃねぇんだぞ!!?あ、待ってやめてライバルになりそうな政治家の弱みのリストアップとかホントやめてください!!っ……嗚呼っ…胃が……胃が……」
その様子を見て、とある世界で魔王と呼ばれた男は同情の目を向けた。
──似たような存在を、彼もまた抱えているためなのか、胃痛フレンズとしてとても仲良くしていた。
八重樫家の脳を焼いちゃう系オリ主はお好き?
佐々木家について補足。
何となく分かってるとは思いますが佐々木家のモデルは禪院家です。
とはいえあそこまで人の業を煮詰めたような描写はできないので五分の一禪院家くらいで解釈してください
ところで、いまのままでヒロインが全く喋らなかった二次小説があるってまじ?二次創作の風上にもおけねぇなぁ!?
あとな……お気に入りもな……感想もな……嬉しいけどな……高評価くれたらな……作者がにちゃついて喜ぶのでな……できるだけ沢山欲しいなって………