ありふれた異世界剣豪は世界最強   作:NOUMINのライバルTUBAME

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原作描写しなきゃ行けないところ多くてこれじゃ二次とは言い難いよ〜泣


第五話

 

  ◇

 

 

 早く来すぎたので、一心は『岩流』の指南書を取り出すと、一ページ、そのまた一ページと読み耽った。

 既に擦り切れて、ボロボロになるまで読んでいたが再度読み込む事によってきちんと頭に叩き込むためである。

 

 反復と、復習。

 

 師匠たる佐々木小次郎から口が酸っぱくなるほど言われた言葉であった。

 

 

 その様子は、さながら絵本の一ページのようであった。

 

 180cmの長身に、スラリと長い足。制服越しにも分かる鍛え上げられた体。

 紺色の長い髪の毛は、朝の陽光に照らされてきらきらと艶やかに輝きを放っていた。

 顔立ちは端正かつ、繊細。しかし、その双眸からは知性と同じく強い意志を感じさせた。

 

 徐々に、教室が騒がしく感じてきたなと思い少し本から顔を上げるとチラホラとクラスメイト達が教室に入っているのが分かった。

 

「ああ、もうこんな時間か」

「──はぁ、こんな時間か、じゃないわよ」

「アハハ……凄い集中力だったね!一心君」

「ちょっと、せっかく雫と香織が話しかけて来てたのに無視だなんて失礼じゃないか?」

「まぁ、一心はこういうやつだからなー!」

 

 つい時間を忘れて読みすぎたと思い呟くと、どこからともなく、八重樫雫、白崎香織、天乃河光輝、坂上龍太郎の四人が口々に話しかける。

 

「無視はしてないぞ、返事をしなかっただけだ」

「結局無視してるって事じゃない……!!」

 

 「(四人はクラスカーストの上位に位置してる所謂『陽キャ』と言うやつだと南雲が言ってたなー雫、白崎はまだしも天乃河と坂上は苦手なタイプなのはちょっと分かるかもしれない)」

 

「悪い悪い。からかっただけだ」

「……はぁ……アンタって奴は……」

 

 呆れ気味に呟く雫と、特に悪いとも思っていない一心。このクラスではよく見る光景であった。

 

「──幼なじみだとしても、最低限の礼儀は必要だろう!だいたい君は雫との──「いいのよ光輝。別になんとも思ってないから」……雫がそういうなら……まぁ……」

 

 思い込みが激しいタイプで、過度なイジりだと思ってしまったのか咎めようとしていた光輝ピシャリと止める雫。「光輝の保護者も大変だな」なんて、心の中で呟いてから読書を再開しようとすると──「ちょっといいかな?」と、雫と二分する程の美少女、香織が割り込むように話しかけてきた。

 

「そのー……南雲くんの事なんだけど……」

「まぁ、白崎はそっち目的だろうな。んー月曜だし、遅くまで夜更かししてゲームでもしてるんじゃないか?」

「じゃ、じゃあ少し遅く来るって事?」

「そーなるな」

 

 少し長めの髪の毛を手元でクルクル弄りながら聞いてくる香織、その様子は正に恋する乙女という奴で。

 その恋する相手というのは先の会話で分かるだろう。

 

「(人の色恋には口出さない。馬には蹴られたくねぇしな)」

 

「あぁ、そういえばお父さんから一心にって」

「ん?ああ、例のアレか」

「大変ね……順調?」

「まぁ……だいぶマシにはなったかな。とはいえまだまだクソだけど」

 

 雫と一心はお見合いのあったあの日以来も交流を続けており、佐々木家の薄暗い事もある程度は理解していたため彼の目標には協力的であった。

 

「うひゃ〜あそこで固まってる人達見ると顔面偏差値高〜」

「ウチの高校の"お姉様"と"お兄様"が並ぶとなんだか迫力が……」

 

「なーに言ってんだか。なぁ?」

「……全くね。変な評判が立っちゃて嫌になるわ……」

 

 はぁ……と、ため息をつくと呆れたように肩を竦める二人。

 少しの世間話のあと四人は学校の準備があると、各々の机へと戻って行った。

 

 すると──

 

「お、噂をすればって奴かー?」

 

 教室に一心の友人、南雲ハジメが寝ぼけ眼を擦りながら入ってきた。

 

「おーい、南雲。おはよう」

「ああ、佐々木君。おはよう」

「俺もいるぜー!」

「おう遠藤。相変わらず影が薄いやつめ」

「おいコラそれ禁句だぞ!」

 

 寝癖を直さず来たのがわかるくらいにハジメの頭はところどころ髪の毛が跳ねていた。

 

「ゲームか?」

「うん、辞められなくてね」

「わかる。つーか新シナリオ見た?」

「見た。相変わらず神だったね……」

「良かったよな……」

 

 一心からすれば数少ないオタク友達にして、同性の友人二人。会話に花が咲くのも必然と言えるだろう。

 とはいえ、オタクの会話というのは「良かったよな……」と「良い……」の語彙しか無いためか、傍から見ればそこまで盛り上がって見えないのだが、当人達はただ、共有するだけで充分だった。席が三人とも近いというのもあり、話が盛り上がり始めたその時だった。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

「(はァ……また来たよ……)」

 

 うんざりした表情で、楽しい会話をぶった切ってくれた元凶達を睨む。

 彼らの名を檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治の四人組で、一心は心の中で小悪党組と呼んで蔑んでいた。

 

 一心は別にオタクと言われても構わないし、キモオタと思われても、むしろ自覚してるのでだから何?というスタンスであるのだが一緒に友人達も蔑まれているとあまり心地のいいものでは無い。

 

「──はぁ、なあおい檜山。南雲は俺と話してんだわ」

 

 ──静かにしてくれ、な?

 

 首元に真剣を当てられたような錯覚を覚える檜山。先程までの威勢は消え失せ、ただ、ガタガタ震えてしまう。それもそのはず、時代が幕末や戦国時代ならまだしも、現代のそれもただの男子高校生にその威圧はあまりにも酷であった。そのため、檜山達は首がもげそうになるほど首を振るとその場を逃げるように去っていった。

 

「……すこし、怖かったけどありがとう。佐々木君」

「どうって事ねぇよ。ったく、アイツらも学ばねぇーなー……」

「やっぱ佐々木だけ産まれてくる時代間違えてねぇ……?」

「む、失礼な。俺ぁ生まれも育ちも現代っ子だい!」

「それ、変に昔の人をやろうとして変になってるよ」

「はははっ、ちと無理があったか」

 

 笑いがこぼれ、南雲も学校の教科書類を机にしまい終えて、さあ色々話すぞ──と本腰を入れたところに、一人の少女がやってきた。

 

「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

 ハジメがああまで嫌われている──いや妬まれている原因が来た。学校の中でも数少ないハジメに話し掛けてくれる少女で、男女問わず絶大な人気を誇るとてつもない美少女、白崎香織その人であった。

 腰まで届く長く艶やかな黒髪に、少し垂れ気味の大きな瞳は優しげで、スっとしている鼻に薄い桜色の唇が完璧なバランスで並んでいる。

 また、非常に面倒見の良い性格と責任感の強さからよく頼られていて、それを嫌な顔ひとつせず真摯に受け止めるものだから、大人顔負けの懐の広さが彼女にはあった。

 

 だが、そんな香織が毎日ずっと話し掛けてくるのが居眠りの多い不良生徒──だと思われている──を気にかけていると思われ、周りの生徒たちはあまり良い顔をしない。

 これで、ハジメの授業態度が良くなった、あるいはイケメンであれば香織が構ってるのも許容出来たかもしれないが、ハジメ本人が評するように顔は極々平凡。また、"趣味の合間に人生"を座右の銘にしてる辺り、態度改善も望めないだろう。

 

 そんなハジメを同じく平凡な男子生徒は我慢できないのだ。そして、女子生徒は香織が気にかけているのにも関わらず態度改善が見受けられない事に不快を感じて、ハジメに向ける視線は冷たい。

 

「(ま、妬むのも仕方ないのかもしれねぇけどさ。別に悪いやつじゃねぇし、なんだかこんな事で友達がいじめに近いことをされてるのはあまり嬉しい事じゃねぇな……)」

 

 一心はそんなハジメを何とか庇ってやりたかったが、授業態度が悪いのは事実なので何も言えずにいた。

 せめて出来るのは一緒に勉強して、成績を少しでも良くしてやることくらいだ。

 

「(俺が居るし別になにか危険があるって事も無いだろうし、問題ねぇだろ)」

 

 今はギリギリ爆発してないだけ、これから不満が溜まっていきいつかは──

 この先来るであろう問題に、ため息が我慢できない一心であった。

 

 

 ◆

 

 

 午前の授業が終わり、待ちに待った昼食時。俺は作って貰った弁当を取り出すと手を合わせ「いただきます」と言ってから食事を始めた。

 ふと、南雲の方を見てみると授業が終わったのを察知したのかゴソゴソと十秒チャージで有名なゼリーを取り出し口につけていた。

 ……もっとマシなもん食えよな……。なんてオカンみたいな事を思いつつ、箸を動かす。うん、美味い。美味いんだけど……愛が重いっつーか……カロリーが重いっつーか……なんか俺のだけ豪華すぎるんだよな……

 デザートにはGO〇IVAあるし……

 そんなに好かれることしたかなぁ?つっても俺がやれたのは環境改善と自分の身を守れる程度に鍛えたくらいだしさ。そもそも俺って仕えさせてる側の人間だから嫌われてると思ってたんだが……。

 

「……むぐっ、あぁ……また白崎が話し掛けに行ってんのか、青春だねぇ……」

 

 ──南雲に向けられた視線の険しさを除けば、だけど。

 

 ……あ、天之河だ。また変なこと言ってんのか。ああいや場違いな事か。

 なんというか、あいつは自分が正しいと思う典型的な自己中心男で好きになれねぇんだよな。悪い奴じゃないばっかりに、残念だ。俺は友達100人は欲しいのに。良し、食い終わったしデザート食ったら少し素振りに武道場寄るか…………

 

「……ん?」

 

 嫌な予感がする。こう、うなじの辺りがチリッて来る感じの()()()()()()()()()ような感覚。誰に?いやその前にどうやって?……わからん。全くわからん。

 

 その時だった。

 

 俺の足元に幾何学模様──俗に言う魔法陣というやつが浮かびあがっていたのだ。

 

「全員、教室から出ろ!!」

 

 そう叫んだ瞬間、その判断が遅すぎたと悟った。

 一気に白い光が教室を満たし、愛子ちゃん先生が「皆!教室から出て!」という言葉を最後に俺は──

 

 

 ◇

 

 

「──は?」

 

 一心は、思わずそんな言葉が口から漏れた。彼は魔法陣が出た瞬間、自身の想定から並外れた攻撃を受けるだろうと瞬時に判断し、すぐさま戦闘態勢を取った。

 ──が、それは無駄な行為であった。

 何故ならば先程までいた教室からは程遠い場所に()()しただけなのだから。

 

 目を見開いた真正面には、横数十メートルはあろうかという壁画で長い金髪を揺らす中性的な人物がうっすらと微笑む絵があった。

 背景には草原や湖、山々が描かれておりそれを包み混むようにその人物が腕を広げていた。一心は純粋に綺麗な絵だと思うと同時に底知れない気持ち悪さを感じスっと目を逸らした。

 すると、逸らした視線の先にハジメを見つけ見知った顔に少しホッとする。そのまた別方向をみると雫も不安げにキョロキョロと辺りを見回していた。

 

「……南雲が貸してくれたラノベにこんなんがあったな」

 

 少し、冷静になって観察してみれば、一心達が大理石で出来た台座のような場所に立っていたという事に気付く。そして──

 

「(さっきからずっと俺たちを取り囲むような視線。あまり良い雰囲気を感じない……目的が分からん)」

 

 白地に金の刺繍がなされた法衣を身に纏い、少なくとも三十人以上が一心達が乗っている台座の前にいた。まるで、祈りを捧げるかのように。

 

 そしてそのうちの一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチはありそうな烏帽子のような帽子を被った七十代くらいの老人が進み出てきた。

 

「(──年齢よりも若く見えるタイプだ。あの手合いはウチの老人共に似ている。何かある)」

 

 少しだけ、監視の目を強めながらせめて誰かは守れる位置にいようとクラスメイト達の前に立ち塞がるように進みでる。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 一心の懸念とは裏腹に、イシュタルと名乗り微笑む老人は、好々爺然としていた。

 

 

 ◇

 

 

 現在、一心達は場所を移り十メートルはありそうなテーブルの前にまで通され、恐らく晩餐会などをするところなのだろうと分かる場所だった。

 一心の隣にはハジメと遠藤が挟むように座っていて、二人は不安げに瞳を揺らしていた。

 

「俺さっき昼飯食ったばっかでそんなに腹減ってないんだけどな」

「さ、佐々木君って結構……いやかなり図太いよね……こんな状況になっても気になるのがお腹の膨れ具合のことだったりさ……」

「いや、実の所結構混乱してる。なんつーか、アレだよ。変な状況すぎて逆にどうでも良いことの方が気になっちゃう的なやつ」

「ああ……経験あるわソレ。要はテストの時にトイレに行きたくなるアレだろ?」

「そうそう」

 

 変に落ち着いてる一心がいたおかげか、二人は少し落ち着いてきたようで、いつものように談笑を始めた。

 

「(ここまでは天之河の……いわゆるカリスマ?ってやつで何とか問題なく来れたが……あの思い込みの激しい性格のあいつにこれからの交渉は任せられんな。まぁかと言って愛子ちゃん先生に任すのもなぁ……唯一の大人だけど愛子ちゃん先生だしなぁ……)」

 

 一心は二人と会話を続けながらも思考を加速させる。

 

「(まずは刀だ。元の世界で使ってたヤツがあれば最高だが……まぁロングソードでも何とか対応出来るだろうし、最悪鍛冶屋に作り方を教えて作ってもらうというのも視野に入れとかねぇとな。刀さえあればクラスメイト全員を守りながらここから逃がすこともできる)」

 

 席に通され、全員が着席すると全男子が理想とするような美少女、美女メイドが入ってきて飲み物を給仕するがそれにも目もくれずにさらに思考を重ねる。

 

 ……その姿に何故か胸を撫で下ろしていた八重樫の娘がいたとかいなかったとか。

 

「(ともかく、あのイシュタルと名乗った爺さんの話を聞こう。あんな登場の仕方しておいて疑わないやつとかいねぇだろ。こんな場所に拉致しといて好々爺だぁ?冗談。黒幕かそれに近い奴に決まってんだろうが)」

 

 自分の経験則から来る予測を立てて、感情の読めない笑みを浮かべるイシュタルを注意深く観察する。

 

 全員に飲み物が行き渡ったことを確認すると、イシュタルは話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 そこから語られたのは、一心からすれば酷く勝手で、またファンタジーなものであった。

 

 この世界はトータスと呼ばれていて、この世界には大きく分けて三つの種族に別れていた。

 

 人間族、魔人族、亜人族である。

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海でひっそりと生きているらしくその中でも魔人族と人間族は100年戦争を続けているとの事。

 魔人族は人間族に数では劣るものの個人の力は強く、その力の差には人間族に抵抗してきたようで、戦力は拮抗し大規模な戦争は起きてないものの、確かな異変が起こり始めていた。

 

 それが──魔人族による魔物の使役だ。

 

 魔物とは──野生の動物が魔力を取り入れ変質した異形のことと言われ、正確な生態は分かっていないがそれぞれ強力な固有魔法を使うことで有害にして、強力な害獣。

 

 それら本能で生きる()()に近い性質をもつ魔物は最大で二体しか使役が出来ないはずが、その常識が覆され、唯一勝っていた数さえ負けそうになっている──

 

「(大体読めた。つまりなんだ?このトータスって世界の人間は魔族と戦争してたが魔物とかいう一匹で熊クラスの動物が魔族によって沢山使役されて、数も質も負け始めててやべーって話か?ならなんで俺らを呼んだ?──いや、そもそも()()?)」

 

 そんな一心の疑問に答えるように、イシュタルと呼ばれた老人はこう締めくくった。

 

「あなた方を召喚したのは"エヒト様"です。我々人間族が崇める守護神。聖教教会の唯一神にして、この世界を作られた至上の神。恐らく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方は上位にあり、例外無く大きな力を持っています。召喚が実行される前にエヒト様から神託があったのですよ。あなた方という"救い"を送ると。あなた方には是非その力を発揮し──」

 

 一心はその辺りまで聞くとうんざりしたような顔で飲み物を飲んで、ため息を吐いた。

 

「(長ぇ。本当に長ぇ)」

 

 彼に浮かんでいる顔は退屈。イシュタルの裏にいる存在が何をさせたいのか、一応は理解したがどうにも喉に刺さった魚の小骨のような気持ち悪さが取れない。

 イシュタルは恍惚とした表情を浮かべ、"神の意志"とやらに疑いがなさそうだと見て取れる。

 

 そして、一心はその様子を見て更に疑いを深め──手を挙げて質問することにした。

 

「あー、少し質問良いか?」

「どうぞ、えーっと……」

「一心だ。佐々木一心と言う」

「一心殿。それで質問というのは?」

「イシュタルさん、アンタが言いたいのは人間族は魔人族の新技術によって今まで拮抗状態を保っていた戦争がひっくり返りつつあって、負けそうだって話か?」

「要約すると、そうなりますね」

「そんでもって、俺達にはそのエヒト様とやらの加護があって、この世界でも上位クラスだと」

「ええ、そうですよ」

「そんならその加護とやらはいらねぇ。エヒト様に頼んで元の世界に返してくれないか?」

 

「(まぁ、こいつの答えはただ一つ。"NO"だろうな)」

 

 呼んだのであればそのまた逆も出来るはずだろう?と考え、聞いてみたが──

 

「いいえ、それはできません」

 

 一心の予想通り、出来なかった。

 はぁ、と肩を竦めて椅子に座り直そうとすると入れ替わるように愛子先生が勢いよく立ち上がり「ふ、不可能ってどういう事ですか!?呼べたなら返せるはずでしょう!?」と叫んだ。

 

「先程言ったようにあなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の

ご意思次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

 愛子先生が脱力して座り込むと同時に、周りの生徒達が口々に騒ぎ始めた。

 

「ふざけんなよ!誰が行くか戦争なんて!!」「嫌だ……なんでもいいから帰してよ!!」「な、なんで……なんで……なんで……」

 

 いきなり転移させたかと思えば、戦争しろだと言われるとこのパニックも仕方のないことだろう。

 かく言うハジメも平気ではなかったが、オタクであるが故かこういう状況は創作物で読んでいて案外平気なのと、隣の一心がいっそ恐ろしいくらい静かでまだ何かあるんじゃないかと思っていたからである。

 

「(気に食わない。本当に気に食わないなあのイシュタルとかいうジジイ絶対になにか企んでるだろ。……正直ここで色々問い詰めたいが、情報が無い。ここはある程度奴の意図にのりつつこちらの要求を通すのが一番落ち着きがいいだろう)」

 

 そうして、思考を切り上げ立ち上がろうとしたその時。光輝がテーブルをバンッと叩き立ち上がった。

 

 全員の視線が彼に集まる。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても仕方が無いんだ」

 

「──ん?」

 

「俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん?どうですか?」

 

 イシュタルは考える素振りをすると──

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にしますまい」と頷いた。

 

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 と、堂々と宣言した。傍から見ればカリスマ性を発揮してるように見えるだろうが、この状況はどう見ても、()()()()()()()()()()()

 

 一心は頭を抱えた。コイツはバカなのか?と。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな……俺もやるぜ?」

 

 一心はさらに頭を抱えた。バカが増えたと。

 

「龍太郎……」

 

 既が先陣を切って立てば、それに続くものも出るわけで。

 

「今のところ、それしかないわよね……気に食わないけど……私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

 一心はもはや絶句していた。お前たちもそっち側かよ……と。

 

 しかし、カリスマ性というのは時に厄介なものへと変わるもので、「あの天之河が言うなら」と、続々と賛同していた。だが、一心は理解している。それは細い綱渡りであり、微かすぎる希望の光であることを。

 

 ガンッ!!

 

 先程の光輝よりもさらに強く、机を叩くとゆっくりと一心は立ち上がってから言い放つ。

 

「──待てよ」

 

 怒りの籠った一心の言葉が、大広間に静かに、しかし確かに響いた。

 

 




指摘してくれた感想を間違って削除してしまったのでこの場でお詫びと、説明を。

まず、八尺の木刀というのはそのまんまだと約230cmとなるが、実際に佐々木小次郎が使っていた「物干し竿」は三尺つまり90cmで、意味合いが違うのではないか(意訳)

えー、これは私の描写忘れです。この"八尺"というワード。実はこれは木刀の名前で、実際は三尺(90cm)となっています。
拙作の設定では、若き佐々木小次郎が振るった木刀がまるで八尺あるかのように伸びていた──ということからそう名付けられたというのがあったのですが、完全に忘れてました。

あと、感想を消してしまい申し訳ありませんでしたぁ!!!

評価下げないで!!!なんでもするから!!!高評価くれたら気持ち悪い顔で笑顔になるけど!!!
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