ありふれた異世界剣豪は世界最強   作:NOUMINのライバルTUBAME

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に、日刊三位……?(震え声)


第六話

 

「──待てよ」

 

 怒りの籠った一心の言葉が、大広間に静かに、しかし確かに響いた。

 

「佐々木君……?」

 

 ハジメは意外そうに、しかし驚きながら一心を見る。

 ハジメから見た一心は、性格、頭、顔の三拍子が揃ったイケメンで自分のようなオタクにも気さくに話しかけてくる、漫画やアニメでしか見たことの無い『真の陽キャ』だと思っていて、一人の人間として尊敬すらしていた。──そんな彼が、学校でも見たことない位に怒っていた。

 

「全員、この意味分かって天之河について行くって言ってんのか?」

「……?当たり前だろ?このトータスの世界の人達は危機に瀕していて、それを守るために戦うんだろ?」

「はぁ〜〜〜……ハッキリ言おう。お前ら全員思考停止の馬鹿だよ」

 

「なっ……!?なんてこと言うんだ!!佐々木!!」

 

 光輝が目を見開いて一心のその物言いに怒る。

 

「この世界の人達は魔人族に虐げられていて、困っているんだ!!だから僕達はその魔人族と戦ってこの世界を助けるんだぞ!!?それを……それを思考停止の馬鹿だなんて言うなよ!」

 

「いいや、馬鹿だよ。大馬鹿だ」

 

 今なお、何かを言いたそうにしている光輝。

 一心はその様子を手で制してから「まぁ聞け」とだけ言うとクラスメイト達を見回してから、話し出す。

 

「いま、お前らに聞きたい。()()をする覚悟があるのかどうかを」

「戦争、意味は分かるよな? 国家レベルでの争い。トータスじゃあ人間族と魔人族で別れた戦争らしいが……まぁどうだっていい。ここで重要なのは──()()()()()()()()()()()ってところだ」

 

「命を……奪う……」と雫がハッと気付いたかのように呟く。

 

「そう、命をだ。言っとくがFPSのようなゲーム感覚で出来るもんじゃないぜ?」

 

 さっきまで盛り上がっていた熱が一気に下がっていくのが見て取れる。

 戦争をする。その意味合いを改めていま聞かされると冷静になってくる。

 

「そんなことはさせない!みんなに命を奪わさせるなんて酷いことは僕が許さない!!」

 

「お前が許さなくても戦争という状態がそれをさせるんだよ天之河」

 

 場違いに怒る光輝と、うんざりしたように返す一心。

 自分の方が正しい、いや()()()()()()()()。そんな思惑が一心を見る目から感じさせてきていて、思わず「お前まじか……」とボヤく。薄々感じてはいたがこの思い込みの激しさと、正義感の高さの危うさに憂鬱になりつつ、一心は言葉を続ける。

 

「──そもそも、だ。俺達にこの世界を救う義務はあるのか? 大体、この世界の創造神エヒト様とやらが無責任にも呼び出して戦争しろだなんて、勝手、理不尽極まれりじゃねぇか。お前らはそれで良いのか?」

 

「……一心殿。その言い方は──」と、ここまで静観を決め込んでいたイシュタルが少し咎めるように口を挟む。

 

「あぁ。いや決してアンタ達の信仰を否定したくて言ったんじゃない。ただ、何も知らない俺たち側から見ればそう見えるって話だ。侮辱したかった訳じゃない」

 

 もしそうだったとしたら謝るよ──と、言うとイシュタルは少し考え込む素振りをしてから「それならば……聞かなかったことにしておきましょう」と器量のある大人を演じてニコリと笑いながら返事をした。

 

「(目は笑ってなくて、奥底には侮蔑が見える。はっ、化けの皮がハズレかけてんぞー)そいつは助かる。──んで」

 

 イシュタルからまたクラスメイト達へと向き直り、少し強い口調で皆に問うた。

 

「戦争、そういう状態に世界(トータス)がなっちまってる以上殺し合いは避けられねぇ。聞くところによれば100年続いてるって言うじゃねぇか。そうなれば、両陣営の怨恨もまた深いものとなるだろうな。それらに晒されながらお前たちは魔人族と戦い、命を奪うことができるのか?」

 

 返事は返って来ない。さすがの光輝も思うことがあったのか、悔しげに顔を歪めていた。

 

「そ、そうですよ皆さん!!佐々木君の言う通りです!いきなりこんなところに呼び出されて、戦争だなんてええ!先生は許しません、許しませんよー!!」

 

 一心の言葉に賛同しながら愛子先生も声を上げる。その姿に少しほっこりとしながらも、未だ答えを出せずにいるクラスメイト達にこんな提案をした。

 

「──だが、ここでなんらかのアクションを起こさない限り、元の世界にも帰れない……そうでしょう?イシュタルさん」

「……そうですな。あなた方を呼んだのはエヒト様。さすればあなた方を帰すことができる可能性があるのもエヒト様となりますな」

「ってことらしい。結局、どう足掻いても戦わなくちゃなんないのが現実だ」

 

 追撃するかのようにのしかかる事実から、更にクラスメイト達は絶望する。

 

「そんな……」

「……でも……戦うしか方法が……」

「うっ……」

 

 ようやく落ち着いてくれたか、と一息ついた一心。

 下手にカリスマを持つ光輝が的外れなことを行ったとしても、『あの天之河光輝なら』という特に根拠にならない根拠から従う人間が多い。その危険性を彼は正しく理解していたためあえて強い言葉で全員を咎めた。

 沈痛なまでの沈黙が広がる。一心はそこから少し強く、大きな声で皆に問うた。

 

 

「だが、ここで何もしなければ元の世界へ帰る方法が分からないのも事実だ。だから、俺はここでお前たちに問おう」

 

 

「──戦争をするという、覚悟を」

 

 

 ◆

 

 

 ……誰も、何も言えない。無理も無い。さっきまではただの高校生だったんだ。

 いきなり転移させて今日からお前たちは()()だなんて言われても困惑するだけだし、なにより嫌だろう。

 

 んでもってめっっっちゃ危険だ。

 

 だってなんの覚悟もないまま、戦争をするんだぜ?

 ヤバいでしょ。バカでしょ。綺麗事で飾っても、いくら美化しても、戦争は戦争だ。そのどす黒さは小手先だけの誤魔化しは効かない。

 人間が産み出すことの出来るいわば人工の地獄。それが戦争だ。

 

 ──だというのに…………

 

「佐々木!!それは極論だ!!人を殺さなくたって戦争は出来る!!」

 

 こンの……

 

「第一みんなを不安がらせるな!!お前になんの権利があってそんなことが言えるんだ!!」

 

 大馬鹿野郎はぁぁぁ!!!!!!

 

 なあああにを言ってるんだよクソが!!!!

 

 現状をまるで理解していない。価値観がまだガキのままだ。正直、危険すぎる。仮にコイツの言う通り皆で戦いに挑んだとしても──どこかしらでコケる。正義とは名ばかりの飲酒運転しか出来ないこのバカに戦争ができる筈もない。

 

 俺の見通しが悪すぎた。ここまで何も理解出来ないとは思わなかった。

 

 もう良い。俺が全部やる。だから──

 

 

「テメェは黙ってろ天之河」

 

 

 もう喋るな

 

 

 ◇

 

 

「テメェは黙ってろ天之河」

 

 ドスの効いた一心の低い声に思わず近くにいた南雲が「ヒュっ」と喉を鳴らす。ソレは威圧と言うには余りにも強すぎるもので、今から相手を叩き切るのでは無いかと思わせる()()であった。

 

 光輝は、ただ軽い気持ちでいつもの調子で咎めようとしていただけだった。──いや、咎めると言うには少し語弊がある。()()()()()、これに尽きるだろう。

 しかし、ソレは本物の"覚悟"と"意思"を持った者には効かない。むしろ神経を逆撫でするような、龍の逆鱗を触れるような行動でしかない。

 光輝は何も喋れなくなり、ただその場で腰が抜けたように座り込むしかなかった。

 そして、それは他のクラスメイト達も例外では無かった。ある者は恐怖からガクガクと足を震わせ、またある者は涙目になっていた。

 

「……イシュタルさん」

「は、はい!」

「三つ、お願いがある」

「な、なんでしょう」

 

 殺気はイシュタルにも伝わってきていて、余裕のある笑みはもはや消え去り、青い顔のまま返事をする。

 

「一つ、衣食住の確保だ。まさかそっちが召喚だけしておいてあとは100G渡すから冒険しろだなんて言うなよ?」

「え、ええ、そこは大丈夫です。ハイリヒ王国という国で既にその体制は整えています」

 

「じゃあ二つ目、仮にもアンタらはただのガキに戦争をさせようとしてんだ。力は必要だ。んでもってこの世界の知識も。それらを学べる場所を用意してくれ」

「……分かっています。騎士団に協力を要請しているので、彼らが訓練してくれるかと」

 

「なら三つ目、この戦争への参加は志願制にしろ。戦えない者、戦いたくない者だっているだろう。そういった者への配慮だ」

 

『!!!』

 

「それは……」

 

 初めて渋い顔を見せるイシュタルと驚きの顔を浮かべるクラスメイト達。

 

「志願をしたい者は愛子先生へ相談させる」

「さっ、賛成です!!皆さんが全員戦える訳じゃないんですからね!」

 

 その言葉に勢い良く手を挙げたのは一心の豹変ぶりに小動物のように震えていた愛子先生であった。

 

「…………しかし、それでは我々にメリットが……」

 

 渋面を作り、一心の提案を受けずにいるイシュタル。

 

「信用出来ない、か。──ならこれでどうだ?」

 

 一心の右腕がブレる。ひゅん!という風切り音が鳴った。

 

 隣にあった長机をまるでバターでも切るかのようにスッパリと、手刀で切って見せた。

 

「(この世界に来てから調子が良い。よく分からんが──デモンストレーションに使わせてもらう)」

 

「──俺が志願する」

 

 口をあんぐりと開けたまま固まるイシュタルに、ただ一言そう宣言した。

 イシュタルはチラリと真っ二つに切れた長机を見る。その断面はまるで剣で切られたかのように滑らかで、佐々木一心という人間の実力を如実に表していた。

 

「え、ええ!一心殿が参戦してくださるのであれば、100人どころか1000人力ですとも!」

 

 ここまで長く生きていたが故に分かる──()()()()()()()()()()()()()という直感。イシュタルは言外から「お前もこうすることが出来るんだぞ──」という無言の圧力に、ただ媚びを売ることしか出来なかった。

 

「なら良い。俺から言えることはこれだけだ」

 

 そのまま一心はイシュタルからクラスメイトへ体を向ける。

 

「──皆、ここは日本じゃない。いつまでも平和ボケしたようなこと言ってるようじゃ死ぬのはお前らだ。しっかり肝に銘じておけよ」

 

 そう締めくくると一心はクラスメイト達を一瞥する。

 そこには、未だ現実を受け入れない者。一心の言葉に自分が何をしていたのか気付かされ青い顔をしている者。何となく一心に言われる前から気付いていたのか険しい顔をする者。しかし、彼の言い放った言葉は確かに全員に重く響いていた。

 

「精々悩め、苦しめ。考えに考えた末に()()()()と判断しても俺は責めん。そして他の奴らにも責めさせることもまた、俺がさせねぇ。だから考えろ、思考停止するな。分かったな?」

 

 ──ただ一つ、言えることはこれだけだ。

 

 そう言うと、一心は座った。

 

「(目標は達成した。あとはこいつら次第だな)」

 

 結局、人が出来ることには限界がある。全員が全員素直に従ってくれるとは一心も考えていない。

 

「……はぁ」

 

 思わずため息が漏れる。全員、生きて元の世界に帰りたい。だけど、きっとそれは難しいだろう。

 力に目を曇らせるかもしれない。もしくは名誉か、もしくは女か、もしくは──と考えるだけで無数に綻びの原因は予想出来る。……佐々木家という反面教師がいたためか対策はいくらでも出来る。もしそうなった場合の対応も。

 

 暗闇の荒野にポツンと一人いるような──漠然とした不安が一心の胸にのしかかっていた。

 

 

 ◆

 

 

 ああ辛い とても辛いよ まじつれぇ 一心、心の一句。

 

 あの後、イシュタルの誘導のままに今いる『神山』というところから麓にあるハインリヒ王国へ、魔法という力を使いロープウェイのように降りる事になった。

 それなりに興奮はしたが、イシュタルの表情と状況を見るに、そういう力を持っているぞという牽制だろうな。まぁ多分、全部斬れるからこちらとしては問題無いんだけどさ。

 

 麓に降りて、ハイリヒ王国とやらに着くとまず王宮に通されて国の王族とやらに挨拶をした。そんときに王が直々に教皇を迎え、手にキスをしていた。パワーバランスが透けて見えるな。んで、そのあと晩餐会が始まった。俺は腹がそんなに減ってなかったから控えめだったけど、周りは結構食べてた。うん、まあ分かる。美味かったもんな。

 

 その後、各自一人一部屋を与えられ、俺に割り当てられた部屋に入り、天蓋付きの豪華なベットにダイブした訳なんだが……

 

 はああ……少し脅しすぎたかなぁ……雰囲気はここに来るまで余り良いものとは言えなかったし。何より辛いのが南雲と遠藤が黙りとなってしまってなぁ……ついカッとなっていつも家の連中共に向けてるような威圧を向けちまった……。

 あと個人的に気になったのは雫だ。ずっと顔色が悪かった。体調を崩してないといいが……

 

 まだまだ未熟だなぁ。

 

 ──コンコン

 

 ん?ノック?誰だろう

 

「はーい」

 

「……あの、一心……ちょっといいかな?」

 

「雫……?」

 

 この声のトーンは……何かあったな?

 ふむ……場合によっては俺が色々やんなくちゃなんねぇかもな。俺の身内に手を出したんなら容赦しないぞ。

 

 そう考えて、俺は扉を開けた。




普通に難産でした。

天之河動かしにくすぎ

あと今の今まで天之河を天之川って表記してました。申し訳ない。訂正しておきます
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