ありふれた異世界剣豪は世界最強   作:NOUMINのライバルTUBAME

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説明回につき薄味


第七話

 

 ◆

 

 

 私、八重樫雫にとっての佐々木一心というのは少し特殊な幼なじみだ。

 

 初めて彼と会ったのは十年前の、お見合いの時だった。

 

 その時はおじいちゃんもお父さんもなんだかピリピリしていたのを覚えている。……後から知った事だけど、彼の実家──佐々木家が半ば強引に持ち込んだ話だったらしく、そのことに対して二人は怒っていたのだとか。

 

 当時の私は、八重樫流の厳しい稽古に打ち込みながら自分の性分故か、色んなところで貧乏くじを引き続けて、またその度に苦労をする事になっていてとても疲れていた。

 

 お見合いの話を聞いた時──ああまたか。と思ってしまった。

 

 また、私が頑張らなきゃ。また、私が上手いこと話さなきゃ。

 

 頭の中にあったのはそれだけだった。

 だって、それまでは親友の香織の天然っぷりに頭を悩ませて口を酸っぱくさせながら説教したし、光輝の独善っぷりに迷惑した人達に対して謝って回ったり、そんな目にしか遭ってこなかったから。またか、と思ってしまった。

 

 でも、お見合いのあったその日から──私のそういった苦しみが和らいだ。

 

 だって、だって、始めてだったから。

 女の子として扱って、女の子として接してくれて。

 八重樫の娘だから、なんて言わなくて。

 雫はしっかりしているから大丈夫でしょなんて言わなくて。

 

 ただ、八重樫雫という人間を見てくれていた。

 

 守ろうとしてくれていた。

 

 佐々木家は男尊女卑の激しい家だとお父さんは言っていて、おじいちゃんも一心くんはそんな家に君を迎える訳にはいかないからって断ることで守ってくれたんだよと言っていた。

 

 ……仲良くなりたいなって心の底から思った。

 だから、いっぱい話しかけた。忙しい一心が少しでも一息付けるように、少しでも安息を享受できるように。

 高校に上がっても、その関係性は崩れることは無かった。ただほんの少し変わったのは南雲と遠藤という友人が彼に出来たことくらいだ。

 

 ──でも、あの時のあの声と一心の様子を見て私は……とんでもない間違いをしてしまったのだと感じ取った。

 

 嫌われ、たくない。

 

 そういった悔恨が、私の胸をズキン、ズキンと突き刺してくる。

 王宮での食事を終わらせて、皆に与えられた部屋に戻ったあと、私は一心の元へ向かった。

 

 扉をノックする。扉越しの「はーい」という一心のくぐもった声が聞こえる。「……あの、一心……ちょっといい?」と聞いてみれば、困惑した様子で「雫………?」と呟いた。

 

 数秒の沈黙のあと

 

 ガチャリと扉が開いて

 

「──おう、雫。どうかしたか?」

 

 いつもの様に一心は微笑みながら出迎えた。

 

 一心の部屋に通された私は「座っていてくれ」という言葉に従って、彼のベットに腰かけていた。

 

「悪い、またせたな」

 

 少し取りに行くものがある──と言って部屋から出て行った一心が謝りながら入ってきた。彼の手にあったのはホカホカと湯気をたてる白と黒のマグカップが二つ。

 

「さっき暖かい飲み物を城の人に頼んでいてな。本当は緑茶が良かったんだが……まぁ無い物ねだりしても仕方ないよな。はい、紅茶」

 

 そう言うと、笑いながら白い方のマグカップを手渡してくる。私は「ありがとう」とだけ返事をしてマグカップを受け取った。

 一口飲む。……暖かくて、美味しい。優しい紅茶本来の甘さと、優雅な香りが私を包む。

 

 思わず、「ほぅ…」と一息着くと

 

「さすがは王宮。いい茶葉使ってんだろうな」

 

 一心は薄く笑いながら、紅茶を飲みつつ隣に座ってきた。

 

 暫く、静かにそうしていたと思う。一心は、いつもそうだ。私がこういう時は、私が話し出すまで隣で静かに待っている。決して自分から踏み込もうとはせずに、一定の距離感を保ったまま。

 彼の身近で困ってる人や、悲しんでいる人にはいつもそうやって対応するから、一心もまた色んな人に頼られることが多かったっけ。

 

 ほんと、

 

「──ずるいなぁ……」

「ん?なんか言ったか?」

「……いや、何も。 それで、今日来た理由だけど……」

 

 少し、口篭る。でも、言わなくちゃ。

 

「さっきは……ごめん」

「……? 何に対してだ?」

「その……最初、一心の気持ちに気付けずに光輝達に賛成しちゃった所」

「あぁ……それか。それなら別に謝る事じゃねぇよ。──ただ、本来ならお前がブレーキ役をして欲しかったんだがな……」

「ごめん……」

 

 一心の言う通りだ。光輝は、独善的なところがあってそれを咎めて行く内に私の言葉だけは聞くようになっていた。だから、あの場面は私が悪くて、私が──

 

「──でも、雫が思い悩むことなんて一つも無い」

 

「……へ?」

 

「だってそうだろう?雫もまだ高校生なんだ。そら失敗だってするさ」

「で、でも私はみんなの意思を聞かずに戦争に巻き込もうとしていて」

「それはもう止めたじゃねぇか。俺が」

 

 頭頂部に大きな手の感覚。

 一心が私の頭を撫でているのだと分かった。心の中で暖かい気持ちが広がると共に、顔が真っ赤になりそうになる。

 

「あまり気負うなよ。俺もいるんだ存分に頼ってくれ。……俺がどんだけ強いか、知ってるだろ?」

 

「…………うん」

 

 私が頷くと、安心したようにくしゃりと顔を崩して笑った。

 

 昔から、私でもどうにもならない事があった時に颯爽と助けてくれた大切な幼馴染で、友人。それ以上でも無いし、それ以外でも無い。──そんな関係性に何故だか無性に胸が痛くなる。喉の奥底がカラカラになってしまうような乾きを感じてしまう。私はそれが、恐らく()()()()()()なのだろうと無意識的に理解しつつも、それを表に出すことは無い。

 

「そんじゃ今日は遅いしもう寝ろよ〜 またなんか相談したいことあったら言えよな。何時でも乗ってやるからさ」

 

「……えぇ、ありがとう。少し楽になったわ」

 

 一心はそう言うと「マグカップは俺の方で片付けとく」と言って、私の持っていたマグカップを取ると途中まで送ってくれた。

 

「それじゃ雫。おやすみ」

「うん。一心もおやすみ」

 

 そう、互いに挨拶して私は一心と分かれた。

 

 ──今日はよく眠れそうだ。

 

 

 ◇

 

 

 転移した日から二日後。一日の猶予の後に先生への相談をし終えて、この戦争に志願するか否かをクラスメイト達は決めた。

 そして、最終的にクラスメイト達の三分の二程は志願することになった。そして、志願しなかった三分の一の生徒達も生徒たちで、自衛手段を学び、この世界の常識を知るために今日の訓練と座学に臨んだ。

 

 訓練場には、志願した者、志願しなかった者のグループで分けていて一心は前者のグループの最前列にいた。

 

「(天之河、坂上、雫、白崎はまぁ……こっち側だよな。……うわぁ……アイツ、志願しなかった組に世界を救うためだとか何とか言って引き込もうとしてやがる……雫も大変そうだなぁ……なんかあったら割り込むように準備しとかねぇと)」

 

 冷めた目を天之河に向ける一心。

 ほぼほぼ予想通りとは言え、足を引っ張りそうな人間が来ていて大きなため息を吐く。

 

「(さて、あっちのグループの南雲と遠藤は……え?いない?どこだ?まさか寝坊──)」

「おはよう、佐々木君」

「よっ!佐々木!」

 

「は、はぁ!?なんで二人がここにいるんだ!?」

 

 一心の後ろから声を掛けてきたハジメと浩介の二人に驚いた表情に固まる一心。二人はイタズラが成功した子供のように顔を見合わせ笑っていた。

 

「昨日の佐々木君の言葉を聞いて、僕も、なんかやらなくちゃって思ったんだ!それに、佐々木君一人に戦わせる訳にはいかないからね!」

「おうとも!友達一人に戦わせてやれないからな!」

 

「お前ら……」

 

 その言葉に嬉しそうにはにかむ一心。

 そこには確かな友情があった。目には見えないが、斬っても斬れない絆を確かに感じさせ、一心は心の底から二人と友達になれて良かったと思えた。

 

 そこから数分後、騎士団長のメルド・ロギンスを名乗る男が表れると、まずは集まった生徒たちはまず十二センチ×七センチほどの銀のプレートを配られた。

 

 一心は何となく名刺のようだと思った。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 気楽そうに喋るメルド。彼は、豪放磊落な性格で「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀で話せるか!」と、ほかの騎士団の者にも普通に接するように忠告するタイプで、一心は純粋にその人間性を好ましく思っていた。

 

「(メルドさんは恐らくこの国じゃ一番強いな。……宗真より少し下ぐらいか……?)」

 

 そう分析しながら、貰ったプレートの表裏を交互に見比べる。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 "ステータスオープン"と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

 メルドの説明を聞き、少し目を凝らして見ると確かに魔法陣が浮かんでいて、一心は元の世界とは違うファンタジーな要素に心を躍らせた。

 

「アーティファクト?」

 

 聞きなれない単語に光輝が質問をする。

 

 メルド曰く──アーティファクトとは現代では再現出来ない強力な力を持った魔法の道具の事で、まだ神やその眷属な地上にいた神代に創られたとされており、ステータスプレートもまたその一つだ。

 本来ならばアーティファクトと言うのは国宝級なのだがその利便性から昔から広くこの世界で普及している。

 

「(なるほど。この世界での身分証明書って訳だ)」

 

 興味深そうに頷きながら、一緒に配られた針を指先に刺してからステータスプレートに血を擦り付ける。

 

 すると……

 

 =============

 

 

佐々木一心 17歳 男 レベル:1

天職:剣士《Extend》

筋力:8735《Extend》

体力:7220《Extend》

耐性:7000《Extend》

俊敏:8000《Extend》

魔力:10

魔耐:10

技能:全属性耐性・剣技(岩流)極・物理耐性・気配察知(魔・邪)・魔力感知・宗和の心得・言語理解・縮地・▇▇▇▇・▇▇▇▇▇

 

 

 ===========

 

 ──と、表示された。

 

「(魔力、魔耐が低いのが気になるが……なるほど、自分の今のステータスを数値化するとこんな感じになるのか……それよりも気になるのが技能の欄の最後二つ。真っ黒く塗りつぶされてるところは仕様なのか?)」

 

 一心がそう思考している中、メルドは生徒たちが自身のステータスを確認し終えたと判断したのか続けて説明を開始した。

 

 掻い摘んで要約すると──

 まず、自身の名前の後についている"レベル"は各ステータスと共に上昇、上限は100でそれがその人間の限界を示す物となっている。そして、レベル100というのはその人間が到達できる領域の現在値を示すものである。だが、レベル100というのは人間としての潜在能力を全て発揮した極地という事でありそんな人間は稀だ。

 

 メルド団長はそこで一息着くと「それに──」と続ける。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

「(なるほど、ゲームみたいにはいかないか。魔物殺しまくってレベリング……ってのは難しいな。ま、その辺は元の世界と一緒か。鍛錬あるのみって訳ね)」

 

 好都合だ、と一心は考えた。何故ならば彼の得意な事に効率的な鍛錬がある。

 これは自身の肉体のスペックを高精度で客観視し、現状を理解すると共にどこをどう鍛えたら良いのか知ることにより、余計な無駄を避けていま自分に必要な分野を集中的に鍛えることが出来る。

 この技能があったことにより一心は『岩流』をたったの十数年で免許皆伝に至れたのだ。

 

 閑話休題。

 

 メルド団長の説明は続く──

 

 次に、"天職"という部分について。それは簡単に言えば"才能"という物で、末尾にある"技能"と連動している。そして、その天職においては無類の才能を発揮する。

 そもそもの話、天職持ちは少ない。

 天職は戦闘系と、非戦闘系に別れているが、戦闘系は千人に一人、ものによっては一万人に一人の可能性もある。非戦闘系は戦闘系ほど少ない訳では無いがそれでも百人に一人はいる。だが、十人に一人という珍しくもない天職もあり、生産職は持っている方が多い。

 

 一心の天職は剣士だ。しかし、その後ろに《Extend》というのがついていて首を傾げていた。

 

「(剣士、戦闘職としては珍しくない部類なんだろうが……その後についてる《Extend》ってなんだ?よくよく見ればステータスの後にもついてるし……いや、意味はわかる。延長だったり拡張するとかいう意味だったはず。……待てよ?()()……?)」

 

 ──まだ、俺の全ステータスには"先"がある……?

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

「(つまり俺の魔力と魔耐は平均値と。……まぁ、ホイミくらい使えたなら万々歳だろ)」

 

 一心は圧倒的な実力を自負しているが故か、二つのステータスが平均値であることは気にしていなかった。

 

 とは言え、ゲームのような魔法を使いたくないのかと言われれば嘘になる為少し残念がってはいた。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

 メルド団長の驚く声を聞き光輝の方をチラリと見てみると、嬉しげに「いやぁ、はは……」と頭をかいていた。

 

「(天之河は……ステータスがオール100か……まぁ基礎のスペックは高いからな。当然ちゃあ当然かもしれねぇけど……)」

 

 余り力を持って欲しくない人間に持たれてしまったと、頭を抱えつつ一心の番が来たのでメルド団長にステータスプレートを手渡した。

 

「な、なっ……!?」

 

 メルドは一瞥すると、大きく目を見開いて口をあんぐりと開けていた。

 

「魔力、魔耐は共に10だが……」

 

 檜山はここで初めて一心に勝てたとニヤリと笑ったが──

 

「それ以外は全て四桁だと!?……それに技能も三つ以上……ははっ、今の俺よりも強いじゃないか!!こりゃあ頼もしいなおい!!」

 

 バンバン、と一心の背中を叩きながら豪快に笑うメルド団長。

 

 だが、笑っているのは団長と褒められて満更でもない一心だけで周りは彼の規格外さにドン引いていた。

 

「佐々木君は凄いな……それに引き換え僕なんて……」

 

 そんな一心に、憧れの目線を向けるハジメ。彼は全てのステータスが平均値である10になるといった、逆に珍しいステータスで、天職もこの世界ではありふれている"錬成師"で、少しコンプレックスを感じていた。

 

 そんな感情を察したのか、一心は真剣な表情で「──南雲、それはお前の役職の重要性を理解していないからだ」と、窘めた。

 

「……重要性……?でも、僕の錬成師はありふれたものだって……」

「いや、違うぜ。……そうだな、考え方を変えてみよう。錬成師は魔力を引き換えに物を作り出すことが出来る──つまり言い換えれば"歩く武器庫"になり得るんだ。これは本当に凄いことなんだ南雲。もしかしたら"錬成師"は"ローコスト"で"大量"の武器を作り出せる人材……戦争に一人入ればそれだけで戦況がひっくり返るんだぞ?」

「そう言われて見れば……確かに……」

「だろ?つまりお前も頑張ってレベリングすればまだまだやりようがあるってことだ。──そこでだな?お願いがあるんだが……」

「何かな?佐々木君のお願いなら可能な限り聞くよ!」

 

 いつも助けられてばかりの一心に、少しでも恩を返せると思い、ハジメは張り切ったように腕を捲る。

 

 

「──刀を、作ってほしいんだ」

 

 

 一心はハジメの目を見て──そう、口にした。 

 

 

 

 

 

 

「…………おれが、勇者なのに………ただの剣士に……負けた……?」

 

 

 

 

 

 

 




教えて!小次郎師匠!
extendってなんですか?
「いきなり呼び出しといてなんなんじゃよ……まあ良い。教えてやろう。一心の様々なステータスの後に表示された《Extend》……これは額面通り受け取って貰って構わん。一心はまだまだ()()するということじゃ。──第一、おかしいと思わんかったか?彼奴の天職がただの剣士であったことが。この世界のアーティファクトとやらは詳しく知らんが……はン、大方ステータスプレートの想定してあった値よりも()()()()()()()ああいう風に表記されたんじゃろうな」

ちなみに師匠がステータスプレートを使ってステータスを表記するならどうなる?
「ふむ。全盛期の儂であれば──一心の全ステータスに魔力、魔耐を除いて、0が五つほど足りんのう」
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