ありふれた異世界剣豪は世界最強   作:NOUMINのライバルTUBAME

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第九話

 

 ◇

 

 

「あー……光輝、訓練したいなら俺が相手になるぞ?」

 

 光輝の宣戦布告とも取れる言葉にメルド団長が割り込むが「いえ俺は佐々木とやりたいんです!」と言い頑なに譲ろうとしなかった。

 

「光輝!あんた何言ったのか分かっているの!?」

「ああわかっているさ!偉そうなことを言っていた癖にずっとサボっている腰抜け──って言ったんだ!」

「──っ馬鹿!」

 

 ヒートアップしていく光輝を止めようと雫が言葉を尽くして止めようとするがその静止も振り切るようにして、一心に近付いていく。

 

 対して一心は──

 

「……面倒で仕方がないって顔だな」

 

 メルド団長が異様に静かになった一心が気になって見てみれば、口をへの字に曲げていかにも「面倒だ」と言いたげな雰囲気が、全身から滲み出ているようで思わず苦笑してしまうメルド団長。

 

「俺が代わりに行こうか?」

「……いいや、指名されてんのは俺だからな。メルドさんはそこで見ていてくれよ」

 

 太刀のように長い木刀を肩に担ぎながら訓練場の中心、主に実践稽古用の線がある場所まで歩み出た。

 一心の目は面倒さを全面に押し出している顔と違い、酷く凪いでいた。何故ならば一心にとってこの程度の事は些事に過ぎないからである。なんなら一対一(タイマン)で挑んでくれるなんて優しいなと思っているくらいであった。

 

 これが彼の実家であったのならば、移動禁止は基本として「片手だけしか動かすな」であったり、「自分は真剣で一心は木刀」など、恥も外聞もかなぐり捨てて決闘を挑まれたであろう。

 ──無論、一心はその条件を全て呑んだ上で叩き潰したのだが。

 

「ともかく!一旦考えなおして!一心は敵じゃない、同じクラスの仲間なのよ?」

「雫ちゃんの言う通りだよ!なんで怒ってるか分からないけど、とりあえず一回話し合お?ね?」

 

 雫と香織が光輝を止めようとするが、光輝はただ「退いてくれ」と言うのみでその意思は固かった。

 

「そうなっちまったらソイツは止まらねーよ。いいぜ、受けて立ってやる」

「一心……」

 

 挑発的に笑いながら、来いというジェスチャーをする一心。雫はこの状況をよく思って居ないためか、メルド団長に助けを求めるために視線を向けるが、メルド団長は「諦めろ」と言うように肩を竦めた。

 

「(メルド団長もああは言っているが、この判断が一番現実を知らしめるためにはいいと思ってんだろうな。この場で一番強いの俺だし。──だが気になるのは……)」

 

 目の前にまでやってきた光輝の目はどこか不安げだった。まるで、自分に自信がなくなっているような──それでいて"何か"に縋っているような……。

 何かを盲信している、またはそれが天之河光輝という人間を成り立たせているような──そんな危うさを一心は感じ取った。

 

「──ん?」

 

 ──視線。誰かが見ている。

 

 気付いていない風を装って訓練場を見渡す。──すると、

 

「(──ビンゴ。あの服装……やはり教会からの差し金か)」

 

 サッと慌てて柱の影に隠れたが、一心の目は誤魔化せない。明らかに第三者の干渉を受けているのを察するとおもむろに舌打ちを鳴らす。

 

 さながら操り人形と言ったところか。自分たちの都合のいいように動いてくれる光輝は格好のカモだろう──と、面白くなさそうにため息を吐く一心。

 対して、光輝は決心ついたように、自信ありげに一心の目の前に立った。「……しょうがない。俺が審判をしよう。やりすぎないようにするための、な」と言ってメルド団長が進み出ながら一心に目配せをする。一心は少し居心地が悪そうに目を逸らした。

 

「両者、構え!」

 

 メルド団長の鋭い掛け声で、光輝が木剣を構え、一心は木刀を肩から下ろし正眼の構えを取る。

 生徒たちは二人から距離を取って固唾を飲んで見守っていた。

 

「──俺が勝ったら、お前は口出しするなよ?」

「では、俺が勝ったらその態度を改めてもらう!」

 

 メルド団長が高々と上げた右腕が──

 

「(俺は勇者だ。誰にも負けない、俺は勇者だ。こんな所で──)」

 

「始めッ!!!」

 

「──負けない!!」

 

 開始の合図と共に、挨拶代わりの一撃を頭から振り下ろさんと距離を詰めるが、

 

(トロ)い」

 

 あっさり躱し、メルド団長も、対面の光輝ですら認識出来ない程の速さで腕を振るう。

 同着二連撃。光輝の木剣とそれを握っていた両腕に叩き込んだ。

 

「アガッ!?」

 

 痛みに悶える間もなく、更に攻撃が後に続いて打ち込まれて行く。

 光輝は何とか構え直して受け止めようとするが、相手は一心。本気で振れば音速を優に超える速度(スピード)を出せる彼に対し、少し武術の心得がある光輝。結果は目に見えていた。

 無論、一心は手加減はしている。いかに木刀とはいえ音速で振るわれれば物を断つ事など造作もない。

 木剣によるガードが間に合わず光輝の鳩尾に直撃する木刀。そのまま光輝は線のギリギリまで吹き飛ばされる。

 

「(な……んだ……?まるで木刀が蛇のように曲がって……見え……?)」

 

 光輝の経験上、剣道においての試合は何度かある。しかし、より実践的な──所謂剣術においての試合はしたことが無い。

 故に、剣道では既に光輝の負けとして終わっていた試合はまだ一心にとっては続いているのだ。

 

「ひっ……!?」

 

 追撃。

 脳天へと振り下ろされた一撃は本当に偶然に運良く躱すことが出来た。土埃を立てながら、そのまま横へと回転し数十歩ほど距離を離してから──先程までいた場所を見ると地面はぼっかりと穴が空いていて、一歩でも遅れていたらあれほどの威力の攻撃が自身に当たっていたら最悪死んでしまうのではないかと、光輝は内心で震えあがっていた(実際にそんなことはありえないが)。

 

「も、もう決着は着いてるだろう!?何故続けようとしている!?」

「メルドさんが勝敗を付けていないからだろ。何言ってんだ」

 

 一心の言葉を聞いてハッとなった光輝がメルド団長を見ると、言われてるようにメルド団長はまだ静観していた。

「何故」と口が動く前に──一心が光輝との距離を詰めていた。

 

「本当の命の遣り取りしてる時にそこで呆けてるとか舐めすぎてねぇ?」

 

 呆れながら、反応が周回遅れでいる光輝目掛け一心の木刀が──「そこまでだ!!」

 

「……お優しい事で」

「お前の力でやれば後遺症が残りかねん。ある程度揉むのは結構だがやりすぎて光輝が戦えなくなってしまえば本末転倒だ」

 

 ──それに、勝負はずっと前から付いていた。

 

 振り下ろされた木刀をメルド団長が持っていた剣で受け止めつつ一心を窘める。それに対し一心は「へーへー」と軽い調子で肩を竦めると、木刀を収め礼をした。

 

 

 なんだかんだ言って、光輝は勇者だ。一心にも食いついていけるだろう──と、華々しい戦いを期待していた生徒達が見たのはそんなものとはかけ離れた一方的な蹂躙であった。一心を除けば生徒たちの中で一番強いはずの光輝が手も足も出ない。そんな事実を突きつけられると、今まで一心の態度を良く思っていなかった生徒たちも何も言えなくなった。

 

「……なんで、一心は敵を作るような真似を……」

 

 ──いいや、理由は分かっている。分かっているからこそ──

 

 そんな一心の様子を見て、彼の幼馴染は悲しそうに呟いていた。

 

 

 ◆

 

 

「──うちのクラスメイトに余計なことを吹き込むのはやめてもらおうか」

「これはこれは一心殿……はて、余計な事とは?」

 

 決闘のあと、俺はそのまま訓練場を出ると聖教教会の狸爺ことイシュタルの元へ来ていた。理由は簡単、釘を刺しに来たって訳だ。

 

「あくまで白を切るつもりか。まァいい。別に天之河くらい好きにさせてやる──だがな」

 

 俺も色々あってイライラしてんだわ。

 よー分からんが最近俺を監視してるっぽい()使()()()()は鬱陶しいし、ハニトラもうざいし、極めつけに食事に入ってた微量の毒とかもう隠す気ないだろ。効かんけど。

 でもまぁ、そこまではいい。矛先は俺にしか向いてないからな。俺の目標は"みんなで"元の世界に帰ることだ。そのためのヘイトタンクならいくらでも買ってやる。

 だが。

 

「直接俺に手を下せないからって間接的に、しかも仲間をそそのかしてどうにかしてやろうってのが気に食わねぇ」

「……一体何に怒ってらしているのかは存じませんが、気分を害したようでしたら──」

「とぼけんな。アンタの余裕はその()()()()()()()によって生まれてるんだろうが──俺には関係ない。数ある有象無象と変わらん」

「なッ!?」

「オイオイ、化けの皮が剥がれかけてんぞ。それにその反応、認めたって言ってるようなモンじゃねぇか」

 

 ちょっと鎌を掛けたらこの反応だ。やりやすくて助かるね。

 

「…………失礼しました。ですが──その態度はいただけないかと」

「はっ、随分と偉く出たもんだ。よほどケツ持ちがでかいらしいな?」

「私たちは聖教教会、神エヒト様を信仰する者ですから」

 

 エヒト、エヒトか。勝手に転移させやがってこの野郎くらいにしか感じねぇがこの様子だと相当心酔してんだろうな。まったくやりにくいったらありゃしない。

 

「ああそうかい。──ともかく、俺が言いたいのは宗教勧誘は間に合ってるから俺たちを巻き込むのはやめろってこった」

「……なんのことやら」

「まァ別に認めなくてもいい。犯人探しはする必要ないからな」

 

 ──だって犯人なら目の前にいるものなぁ?

 

「…………」

 

 俺の皮肉をにこやかに微笑んで躱すイシュタル。やはり狸爺とだけあってこういう腹芸には慣れてるらしい。

 

 ……これ以上は水掛け論じみてくるな。どんだけ追求しようとこいつはのらりくらりとかわすだろうし、今日のところはここまでか。

 ああでも──

 

「刺客を仕向けるならもっとマシな奴を持ってきてくれ。歯応えがないから」

 

「……………………はて、なんのことやら」

 

 図星で草。

 

 

 ◇

 

 

「……………………はて、なんのことやら」

 

 イシュタルはやっとの思いでその言葉を口から出した。

 

 ──よもやここまでとは。

 

 最初に出会った夜から警戒はしていた。絶対に敵対してはいけない存在と分かっていた筈だ。だが、思い出されるは己が信仰し、敬愛してやまない唯一神(エヒト)の声。「佐々木一心を始末せよ」という天啓。

 基本的にエヒトに対しては絶対服従の構えで居るイシュタルですら、それを聞いた時は「何をバカなことを」と思ってしまった。だがすぐに頭を振ってその考えを頭から追い払った。万が一、億が一にでもそんなことを口走ってしまえばどのような"天罰"が下るか分からない。

 イシュタル──否、この世界の人間に取ってエヒトというのは信仰の対象であり、また絶対的恐怖の象徴でもあるのだ。

 

「(クソっ!クソっ!クソっ!この前送った暗殺者だって裏社会では伝説として恐れられていた男だぞ!?それを……それを……っ!!)」

 

 背中を見せて去っていく一心の姿に下唇を噛みながら見送るイシュタル。

 不意にハッと視線を感じ後ろを振り向くと誰も居ない廊下。しかし、おそらくは監視しているのだろうとイシュタルは察する。

 

「誰かいますか」

「は、こちらに」

 

 内心焦りつつイシュタルは傍で控えていた騎士に声を掛けた。

 

「暗殺者を前よりも倍の数で動員してください……そうですね……ざっと100は欲しいです……」

「……ですがそれだけの数を集めるとなると……」

「わかっています。時間が掛かるんですよね?しかし、彼ほどの実力者であれば質よりも量で攻めるのが良いでしょう。疲弊したところを狙うのです」

「なるほど……ではそのように」

 

 そう言うと騎士はその場を去った。

 

 ──イシュタルとて愚かではない。勝てない戦いはしない主義である。

 

 一心という男にどれだけ雁首揃えたところで無駄になるということくらい分かっている。しかし、絶対に逆らえないエヒトからの圧、そして同じく絶対に逆らっては行けない存在たる佐々木一心からの圧でイシュタルは今板挟みにあっていた。

 

「ぐうっ……!!」

 

 この世界に生まれて数十年。色んなことを経験してきたがここまでのストレスは初めてだったのか、老体には少し厳しい位には胃がキリキリと痛みだした。

 

 自業自得である。

 

 

 ◇

 

 

『……ふむ。佐々木一心……イレギュラーと呼称するには些か特異か』

『地球侵略の足掛かりとして呼び寄せたはいいがよもやここまでの実力者がいるとはな』

『──まァ良い。この世界(トータス)は私の箱庭、玩具に過ぎん。直接手を下すまでも無い』

『ああ我が器たる神子……小賢しい邪魔をされたが見つかるのも時間の問題だろう』

『そうすればあの地球も……ケヒッ!ヒヒヒヒヒヒッ!ヒャハハハハハハハハハハ』

 

 

 ──それは神と言うにはあまりにも歪で。

 ──それは神にしてはあまりに悍ましい笑い声が。

 ──神域にて響いていた。

 

 

 




一般兵よりも遥かに強い人間ならそら粉掛けるよねってことで原作よりも早めに聖教教会が天之河達に干渉してきています。

前話でかっこいいおっさんが皆さん好きと聞いたので今話では色々可哀想なおっさんを出してみました。この二次創作ではイシュタルおじさんに胃痛で苦しんでもらいます。

追記
あとめちゃくちゃ遅れて申し訳ない。感想欄でもエタを疑われてしまう始末で創作者として恥じ入るばかりです。
別の方でも連載を抱えているのでそっちに力入れていたら少し遅れてしまいました。これからは二日に一回更新出来たらいいな(願望)と思っているのでこんなダメなTSUBAMEをよろしくお願いたします
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