また、プレイヤーのペットの中ににゃん太郎がいたとしても、本作とは関係のない一般通過ペットです。
ダンジョンの二層、初心者も多く潜っている浅い階層のモンスターを、持ちなれない武器を持ち、一撃で倒しながら探索を続ける男がいた。
「なあ、にゃん太郎」
「なんだにゃ」
男は自分のペットである黒猫──にゃん太郎に声をかける。
20秒の休息時間で、少しでも気を紛らわそうと、にゃん太郎の毛並みを堪能しながら話を続けた。
「俺、今回で何回戦闘したっけ」
「355回……いや6回? とにかくたくさんだにゃ」
「幾つレベル上がった?」
「34レベル上がったにゃ。そろそろ転生できそうだにゃ」
経験値稼ぎは上々、今日も目標にしていた1日1転生を達成出来そうだ。
しかし、それ以外は大問題であった。
「ちなみにアイテムドロップはいくつあったでしょーか?」
「なかったにゃ」
「そうです、0個です……。356回戦闘して、34レベル上がって、アイテム0です……」
「いつものことだにゃ」
にゃん太郎は、特に傷ついた様子もなくダンジョンの壁で爪を研ぐ。
一方男は頭を抱え、呑気なにゃん太郎を睨んだ。
「いつものことであってはいけないだろ……! 祝福とまでは言わずとも、せめて武器とか、転職アイテムとか、種とか!」
「まあ、落ちないなら仕方ないにゃ。街に戻ってエサくれにゃ」
にゃん太郎がそう言うと、男はニヤリと笑って財布をひっくり返した。
チャリン、チャリンと言う音と共に地に落ちたのは12マーだけだった。
「これしかないのでアイテム拾わないとにゃん太郎にエサもあげられません!」
「12マー!? なんでにゃ? ちょっと前に祝福の宝石をドロップしたから1000マー以上はあったはずにゃ!」
「露店見たら使ってる武器あって……。これ買えば合成出来るから思わず」
「……そういえばいつもの武器持ってないにゃ」
「合成失敗しちゃった……」
男はダンジョン内の温度がグッと下がる錯覚を覚えた。
にゃん太郎は研いだ爪を立てて鎧を引っ掻いた。
「おいやめろよ傷になるだろ」
「なんでっ! 無計画なことをっ!! するんだにゃっ!!!」
「仕方ないだろ! 強さを追い求め、金と時間をかける。そして少しずつ高みに登っていく。それが、俺らなんだから」
「格好つけるにゃっ!」
ギギッ! ギギッ! と金属の擦れるような嫌な音を出しながら、にゃん太郎は鎧に傷をつけ続ける。
「そもそもご主人に運が無いのなんて今までの探索でわかってたはずにゃっ! なんでそんなにギャンブル性の強い人生を送るんだにゃ!?」
「今生はそういう業(カルマ)の元に生まれたのかな……」
「どの生でも業が深いだけにゃっ!」
そう言いつつ男は367回目の戦闘。
またしても一撃でモンスターを切り捨て、1人と1匹は固唾を飲んだ。
「ゴクリ……」
地面には、何も落ちていなかった。
「もう……終わりだ……。にゃん太郎、今までありがとな……俺がいなくなっても達者で……」
「どうでもいいから次の戦闘の準備するにゃ!」
「だってもー無理だろ! 367回だぞ? 367回! そもそもさー、なんでモンスターが倒れたらアイテムがドロップするんだよ!」
「それは考えちゃいけないにゃ。全てのRPGに弓を引く問いにゃ」
「全てはぷりけつ神の力によるもの、か……」
「アイテムが落ちないのもぷりけつ神のせい……「おいやめろぷりけつ神様いつもありがとう愛してるラブフォーエバー!」」
男とにゃん太郎が騒ぎながらさらに戦闘を繰り返していると、ようやくドロップアイテムを拾った。
「ようやく拾った……」
「種、だにゃ。なんの種にゃ? ものによってはにゃーが食べるにゃ」
「えーなになに……あー……まあ、食べられる種だけど」
「なんの種だったにゃ?」
「不幸の種……」
「にゃぁ……」