咲-Saki- もし咲が家族麻雀で覚醒してたら   作:サイレン

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うーん……ネタが尽きてきた気が…………

とりあえずどうぞー。


6-1

 

 全国高校生麻雀大会。

 各都道府県の予選を勝ち抜いた後のいわゆる全国大会は、東京で開催される。団体戦に個人戦、合わせて約二週間行われるこの大会はテレビ中継されるほど全国的に注目されており、この舞台を経てプロとして活躍する選手も少なくない。プロを目指す高校生にとって、ここは夢の舞台の一つなのだ。

 

 全国大会開催に併せて、予選を勝ち抜いてきた強者ともが一堂に会するこの期間。

 今日も今日とて、遥々遠方からやって来た団体がいたようだ。

 

「遂に来たじぇ! とうきょー!」

「新宿だけどな」

「えーと、……乗り換えはこっちね」

 

 新幹線から降りる五人の女子高生の姿。比較的大きな荷物を持った彼女たち──清澄高校の面々は、全国高校生麻雀大会の舞台であるここ、東京にやって来ていた。

 

(約束通り帰って来たよ、お姉ちゃん)

 

 約三ヶ月前、全国大会でまた会おうという約束を姉の照と交わし、咲は遂にここまで来た。

 感慨深くないと言えば嘘になるが、咲的にはまぁ別にそこまで? っといった感じであった。県予選なんて障害にもならない、強いて言うなら調整かなと思っていたから、東京に来た程度で沸き立つ気持ちなどないのだ。

 久し振りに来た東京は以前と変わらず咲の肌には合わなさそうでややげんなりするが、強い雀士が沢山いると思えば楽しく過ごせそうである。特に姉の照と公式の場で対局する機会があると思うと、自然と気が昂るというものだ。

 だが、照と対面するのはまだまだ先であろう。団体戦では照は先鋒で咲は大将。大会の進行上団体戦から行うので、照と対局するのはおそらく個人戦だ。先は長い。

 

 咲は空を振り仰ぎ、その蒼さに目を細める。長野でも東京でもこの景色は変わらないようだ。

 

「咲さん? 早くしないと部長たちと逸れてしまいますよ?」

「……そうだね、早く行こうか」

「はい」

 

 和に声を掛けられ、咲は気を引き締める。

 何故なら、咲の関門はもう既に目の前にあったから。

 

(とりあえず、旅館まで迷子にならなければ私の勝ちだ)

 

 和の隣に走り寄り、絶対に迷子にならないよう注意しながら、咲は先行組の後を追うのであった。

 

 

****

 

 

 咲たちが東京を訪れたのは、抽選会及び開会式の前日。

 その日は一日各自自由行動が許されていたが、清澄以外にも県予選決勝で対局した風越や龍門渕の面々も来ていたため、みんなでのんびりと過ごしていた。

 龍門渕とは咲が衣と仲良くなった縁で交流があったが、後に風越とも繋がりが出来ていた。

 実は全国大会直前に、県予選決勝で対局した全ての高校で合同合宿を行っていたのだ。

 目的は清澄の地力の底上げ。特に咲以外の実力強化が急務となっていたからだ。

 

 良い意味でも悪い意味でも、咲は目立ち過ぎた。

 

 去年『魑魅魍魎の主』と呼ばれた天江衣を圧倒、個人戦での異常な稼ぎ、加えて名字が宮永。チャンピオンである宮永照と同じその名が偶然には思えないなどといった事情から、咲は元から清澄の注目株であった和を凌ぐほどの要注意人物として全国にその名が轟いてしまった。

 

 そして、咲は大将。

 

 このことから、他校が咲にバトンが渡る前になるべく削ると考えるのは至極真っ当である。それに対して久は最大限の警戒を置いており、咲以外の負担が増えると予測していた。だからこその合同合宿であったのだ。……この合宿で優希が再び気絶したのは余談である。

 

 やれることは全てやってきた。

 準備万端である。

 

 清澄が東京を訪れてその翌日。本日は抽選会と開会式がある。

 大会会場へと向かう清澄の一行は支度をし、旅館から出発していた。

 

 前回来たときに乗った東京の電車と違い、満員電車ではないことに安心していた咲。

 引っ越しが多かったためか、東京のような都会にも慣れている様子の和。

 田舎育ちで東京に来たハイテンションが収まらず、さっきからはしゃぎまわっている優希。

 それを抑える役目の京太郎と、微笑ましく見守っているまこと久。

 大した問題も起きず、各々それなりにリラックス出来ていた。

 

 その後も何事もなく無事本会場へと辿り着き、抽選会場へと向かっていく清澄一行だったが、

 

「サァァァァァァァァァァァァァァキィィィィィィィィィィィィィッッッ!!!!!!」

 

 ここに来てハプニングが発生した。

 それもこれは、ある意味超弩級のハプニングだった。主に咲にとって。

 

「げっ⁉ 淡ちゃん……」

 

 その憎悪300%の声の主に、咲はすぐ誰だか気づいた。

 現在二連覇中であり、今回も優勝候補筆頭と言われている白糸台高校、そこの大将を務める大星淡。彼女が咲たちの前にいた。その後ろには“チーム虎姫”のメンバーも伺える。

 少しの縁があり、咲は淡を含めた白糸台高校の人たちと面識がある。その中でも咲は淡との仲が非常に悪い。淡が一方的に敵意剥き出しなだけなのだが、原因は全て咲にあると言っても過言ではない。というより事実そうなので出来れば会いたくない相手だったのだ。

 

(どうして淡ちゃんがここに⁉︎ てか、このシチュエーションはまずい……⁉︎)

 

 実の姉である照との関係を隠している咲にとって、この状況は全く歓迎出来ない。照と同じ白糸台高校のメンバーと仲良くしているなんてことが公になれば、それこそもう照との関係を認めているようなものだ。

 しかも咲が所属している清澄高校は、全国的に見ればポッと出もいいとこの無名校。そんな無名校が超強豪校である白糸台とコネクションがあるなど、普通に考えてありえない。

 こんなところをマスコミに見られでもしたら、咲の地味に安寧だった日々に終止符が打たれること間違いなし。

 シードとして決定している白糸台は抽選会には来ないだろうというのが咲の推測だったのが、それが外れた。いや、淡の様子からするとこれは淡が仕組んだことだろう。まんまと一本取られた次第である。

 

 咲は目の前で仁王立ちする淡を見て、説得は不可能だと察した。

 今の淡は憤怒の怒気がオーラで可視化できるほどに内心キレているのが分かる。心当たりは一つや二つや三つや四つは考えられた。怒って当然だった。

 

(こういう時は……)

 

 咲は睨み合った一瞬の隙に全力ダッシュで駆け出す。だが、それをただ逃す淡ではない。

 

「待ぁぁぁてぇぇぇぇぇ!!!!」

「待つのはお前だ!」

 

 駆け出す寸前の淡を捕まようとする菫だったが、紙一重で間に合わずその手は空を切った。今の淡に言葉は届かないらしい。

 

「これが私の復讐だぁぁぁぁ!!!」

 

 物騒なことを叫びながら、あっという間に小さくなっていく二人。やがて角を曲がった二人の姿はもう見えなくなっていた。

 

『………………はぁ』

 

 残されたメンバーは全員が全員ため息を吐いた。どちらの高校も問題児の扱いには困っているようだ。

 しかしここで立ち止まっていても状況は好転しない。逸早く調子を取り戻した久と菫は互いに歩み寄った。

 

「初めまして。清澄高校部長の竹井久よ」

「こちらこそ初めまして。白糸台高校部長の弘世菫だ。済まない、うちの馬鹿が。散々言い聞かせたつもりだったんだが」

「いえ、出会ったら最後だと思ってたから問題ないわ」

 

 久がなぜそう思っていたかは、咲が淡に宛てたあの手紙を盗み見たからである。久から見てもアレはない、というより間違っても友達に送る手紙ではなかった。

 

「えーと、菫でいいかしら?」

「あぁ。そっちは久でいいか?」

「えぇ、それで構わないわ。……とりあえず私たちがここで仲良くしてるわけにもいかないわ」

「そうだな、咲ちゃんが逃げた意味がなくなる。だが、連絡が取れないというのは不便だ」

「そうね。つまり……」

 

 そこからの二人の行動は迅速だった。

 互いに携帯を取り出し連絡先を赤外線通信。実にこの間無言である。

 その後、両者同時に携帯をしまう。

 

「私たちはこれから抽選会に行くけど、菫たちはどうするの?」

「私たちは部員総出であの馬鹿の確保だな。咲ちゃんも見つけ次第保護して連絡する」

「助かるわ」

 

 なんとか開会式までにあの二人を捕まえなければならない。それも平和的に。

 

「それじゃあここはお別れね」

「あぁ、また会おう」

 

 すれ違いに歩き出す。

 その際、照は久を含めた清澄高校全員に対して頭を下げた。

 

「咲のこと、よろしくお願いします」

「分かってるわ。あなたとも今度ゆっくり話せるといいわね」

 

 こうして、清澄高校と白糸台高校の初邂逅は終わった。恐らくだが、この二つの高校はまた出会うことになるだろう。

 

 次は対戦相手として。

 そして、その時はそう遠くないだろう。

 

 

****

 

 

 その頃一方、咲は後ろから迫る般若の形相をした元美少女に対して、心の中で罵詈雑言を投げかけていた。それはもう徹底的に。

 

(あんの馬鹿ホント馬鹿、馬鹿あわあわ馬鹿泡姫馬鹿淡ちゃん何してくれてんの⁉︎ 今まで一応守ってきたんでしょ箝口令! それをこのタイミングでこの諸行、万死に値するよ‼︎)

 

 普段の日常生活では絶対に使わないような言葉も心の中では出てくる始末。咲も咲でそれなりに焦っていたのだ。

 最近走ることが多くなってきたため、スタミナ的にも速力的にも咲は女子の中では優秀な部類に入ってきている。だから、追いかけられ始めた頃は、そのうちなんとかなるだろうと楽観視していた。

 だが、淡の憎しみは相当に深いものだったらしい。普段から咲のように走っているわけではないだろうに、今の淡は咲に劣らない、むしろ咲以上のスピードで迫ってきていた。そのうちバテるはずだが、このペースを保たれると捕まるのは時間の問題だ。なんとか逃げ切るしかない。

 だが、運の悪いことに曲がり角を曲がった先には横一列で並ぶ団体がいた。

 

(もう! 間の悪い! というより、横一列で歩かないでよねッ!)

 

 視界に捉えたのは五人。

 五人のぱっと見の印象は、顧問っぽい人、黒髪ロング、真夏マフラー、ギャル、山猿裸ジャージ。……最後だけ意味不明過ぎるが、咲にはそう見えた。

 

(ええい、もう──)

 

 あちらも全力疾走で迫る咲の姿を捉えたようだ。表情こそよく見えないが、何事だと思っていることは間違いないだろう。

 

 だが、そんなこと咲には関係ない。

 考えることはただ一つ。目の前の障害の排除のみだ。

 

(──邪魔なんだよッ‼︎)

 

 現在出せる、ありったけのオーラに殺気を混ぜて前方へと解き放つ。

 

『ッッ‼︎⁉︎??』

 

 そのオーラは団体を震え上がらせるには十分以上のものだったらしい。全員が全員、目を見開き、脚はその場に釘付けになっていた。

 その様子を見て咲は舌打ち一つの不満顔であった。

 

(ちっ、道が開ければベストだったのに。オーラの不便な一点だよ、全く)

 

 ……咲に反省の色などまるでなかった。

 きっと心の奥底では「失せろ」くらい言っているかもしれない。

 とりあえず相手方が止まったことで脇の方が通れそうだったので、咲はそこを駆け抜けて行く。

 

 天災のようなものに巻き込まれたその団体はすぐには動けなかった。だが、それからすぐしてもう一つ恐ろしいオーラを纏った少女に遭遇した。

 

「有名になって死ねぇぇぇぇッ!!!!」

 

 叫んでいる意味はよく分からないが、どうやら追いかけっこをしていることは分かった。傍迷惑過ぎるが、当人たちにそのような認識は皆無のようだ。

 二人目の少女も走り去り、しばらく時間が経って落ち着いたころ、その五人は後ろを振り返るが、二人の姿はもう見えなくなっていた。

 

 

****

 

 

 抽選会が終わり、長い緊張から解き放たれた久であったが、まだ問題が残っていた。

 

「さて、私たちも咲を探すわよ」

 

 一度見失った咲を探すのは至難の技。それを経験したことのある京太郎は早くも諦めの境地に立っている。

 

「部長、はっきり言ってかなり厳しいですよ? あいつの方向音痴っぷりはヤバいですから」

「その点はだいじょーぶ!」

 

 自信満々にそう言う久。

 

「実はね咲、龍門渕さんに携帯を持たされてるのよ」

 

 衣といつでも連絡がとれるようにと咲は携帯をゲットしていた。もちろん最初は遠慮していたのだが、ゴリ押しされたのだ。

 

「しかも、その携帯は高性能なGPS付きなのよ」

「おぉ! それならなんとかなりそうですね!」

「えぇ、では早速……」

 

 久は携帯を操作する。久もそんな機能は使ったことがないので心配していたが、そこらへんの扱い方は龍渕に仕える執事であるハギヨシにご教授頂いていた。

 

「どれどれ〜?」

 

 久を囲むように全員で画面を覗き込む。

 画面上には辺り一帯の地図が表示されていて、真ん中に紅い光点が一つあり。

 

 その光点は、ある建物上からピクリとも動かなかった。

 

 逃げ回っているのなら光点が絶えず動き続いているはずなのに、全く微動だにしていない。

 この時点で嫌な予感をビシビシと感じていたが、しばらくの間、誰も声を発しなかった。

 

 そして、

 

「……これ、私たちが泊まっている旅館ではありませんか?」

 

 和の宣告により、全員が自分の勘違いでないことに気付かされた。

 

「……咲ちゃんが自力で戻った可能性は?」

「ありえんじゃろ。そんなことが出来るなら苦労せん。これはつまりじゃな……」

 

 一回溜めて、

 

「咲さんは携帯を携帯していない。恐らく旅館に忘れたのでしょう」

 

 和、トドメの一撃だった。

 

「………………さて、それじゃ咲を探すわよ」

『……おぉー』

 

 全員が諦めた瞬間でもあった。

 

 だが、天は清澄高校を見放さなかったらしい。

 そのタイミングで久の携帯が震え出す。掛かってきた相手は先ほど連絡先を交換した、弘世菫からであった。

 

「もしもし、菫? どうしたの?」

「あぁ、とりあえずうちの馬鹿は確保出来た」

 

 外野の音声から、「離せ! 離せ! HA、NA、SE!!!」という声が木霊する。きっと淡が取り押さえられているのだろう。

 

「そう。それで、咲は何処にいるか分かる?」

「今、部員が追跡中だ。淡が捕まったと分かれば咲ちゃんも止まってくれるだろう」

「助かったわ、菫! それで今どこらへんなの?」

 

 とりあえずなんとかなりそうだ。

 と思ったのだが、只では終わらない、それが咲クオリティ。

 

「それが……私の携帯のマップを見る限り、会場から南西に約3kmの地点だな」

「…………………………は?」

 

(なんであの娘、会場出ちゃったの…………?)

 

「ちなみに私たちも闇雲に追っていたから詳しい地理は私でも分からない。どこだここ? 帰れるのかこれ……?」

 

 どうやら菫の方もピンチらしい。それにもし咲を確保できたとしても、その後も淡に会わせないようにしながら会場に戻って来なければならないという制限付き。一難去ってまた一難というやつだった。

 

「……とりあえず南西に向かうわ。どこか待ち合わせに分かりやすい場所があったら連絡ちょうだい。そこで合流しましょう」

「……そうだな、なんとか開会式には間に合うようにしよう」

 

 通話を切る。

 開会式までの制限時間は約2時間。流石に大丈夫だとは思われるが、安心は出来ない。

 

「部長、それでどうするんですか?」

「えぇ、とりあえず南西に向かうわ」

 

 言っていて久は思った。まるでどこかに遭難したようなセリフだと。

 開会式に間に合うことを切に願いながら、重い足取りで南西へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開会式。

 各校綺麗に整列している中で、肩で息をしてる人間が十人ほどいたらしい。更にその中でも二人はストレスからか尋常でない殺気をばら撒いており、非常に殺伐とした開会式だったそうだ。

 

 ちなみにその二人は、各部長にこっ酷く怒られましたとさ。




最後力尽きましたorz

さーて、本当の問題はこれから。どうしようアニメ全国編の部分…………結末だけは決めてるのですが…………

感想で意見くれるとちょーうれしーよー





久が読んだ淡宛の手紙全文


淡ちゃんお疲れー。
どうだった?衣ちゃん強かったでしょ?勝った?負けた?あぁ、負けた。知ってる。……えっ、嘘勝ったの?淡ちゃんやるじゃん。
それではここで一つ重大なお知らせがあるよ。実はその日の衣ちゃん、全力の60%も出せません、テヘ。というよりその日の衣ちゃんは最弱です(笑)。
あっ、もしかして衣ちゃんに勝てて喜んだりしちゃった?残念、それぬか喜びだから、アハハハハハハ(爆笑)。本気の衣ちゃんに勝つなんて淡ちゃん如きじゃ無理無理無理無理絶対無理。ホント無理!まぁ私は勝ったけど(笑)
あと今更だけど、淡ちゃんって『宮永照の後継者』なんだってね。……あっ、ダメだ、笑いが止まら……面白過ぎるよ淡ちゃん!
まぁ、そんな落ち込まないで淡ちゃん。淡ちゃんには絶対安全圏(笑)があるじゃん。ダブリー(笑)もあるじゃん。いつかきっと淡ちゃんの時代が来るよ、100年後くらいに!
じゃあ約一ヶ月後、それなりに、少しは、楽しみに待ってるから。バイバーイ

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