咲-Saki- もし咲が家族麻雀で覚醒してたら   作:サイレン

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この阿知賀編ならぬ白糸台編、それなりに長くなりそうです。
今回

回収する気ないだろ!ってフラグを建てたよ!
マジオカルトな場面があるよ!
異色なオマケが二つあるよ!

の三本建てです。

……ここで一つ。
阿知賀編の主人公は(Futuristic Player)だと思う。



7-3

 

「チャ、チャンピオンの振り込み! 信じられません! 私、初めて見たかもしれません! ぶっちゃけ全然詳しくないけど!」

「ぶっちゃけすぎだよ⁉︎」

 

 実況ルームでは、実況兼アナウンサーである福与恒子と解説役であるプロ雀士の小鍛治健夜のほぼ素の会話が繰り広げられていた。

 相変わらずのテンションの高さに健夜が若干引き気味である。また誰もが疑問に思っていることだが、何故詳しくもないのに恒子が麻雀の実況者なのか……。

 まぁ今更過ぎるので、気にする人も殆どいなくなっていた。

 

「……ですがこの展開は私も初めて見ました。今までの宮永選手にはなかった出来事ですね」

「小鍛治プロ的にはどう思いますか?」

「そうですね……」

 

 健夜は少し目を細めて画面上の照の様子を伺う。

 

「はっきりとは分かりませんが、どうやら東一局で行った観察でしょうか? それを続行しているように見えます」

「あれ? それは東一局だけで済むものなのでは?」

「私もそう思っていたのですが……」

 

(観察というよりは、《照魔鏡》の連続発動が目的なのかな?)

 

 知人の話でしか聞いたことがなく、自身に経験がないため、照の《照魔鏡》がどの程度の性能なのかが健夜には詳細に理解しきれていない。

 それでも今までの対局から判断するに、相手の本質を見るだけなら一回の発動で事足りると推測出来る。

 

(それだと連続発動する意味がない。けど宮永さんがそんな無駄なことをするとは思えない)

 

 以前から興味を惹かれていた存在だったため、少し考え込んでいた。

 そんな健夜を、珍しそうに恒子が見ている。

 

「……小鍛治プロがそんな真剣な顔をしてるのって、珍しいですね?」

「えっ? そうかな?」

「うん。いつもはどこか達観した感じですから! 特に麻雀だと!」

「……そんなこと、ありませんよ」

 

 答えるまでに若干の間があったのは、きっと恒子の指摘通りだという実感があったからだろう。

 

(……そう思えば、麻雀で最後に真剣になったのはいつだろう?)

 

 前はもっと麻雀に真剣で、真摯に取り組んでいた。

 それなのに、気付けば恒子の言う通り、麻雀に対する熱が冷めていた。

 理由は一概には言えないが、恐らくは退屈してしまったのだ。

 張り合いのない麻雀に。

 自身と対等のプレイヤーがいないことに。

 

 ──つまらなかった。

 

 今では第一線から身を引き、地元のクラブチームで細々と打っている。

 そのためもう二度と、麻雀を打ち始めたころの情熱は取り戻せないと思っていた。

 

 それがこの大会で戻り始めている。

 

(もう一人の宮永、宮永咲選手も。彼女たちはきっと私と同類)

 

 ──照と咲、この二人と対局してみたい。

 自分の奥底からそんな気持ちが滲み出てくるのを感じていた。

 可能性という未来を想像するのは存外楽しく、密かに笑いそうになる。

 

(……いけないいけない。今は仕事中)

 

「……とりあえず、今はまだ分かりませんが、宮永選手がこのまま終わることはないでしょう。彼女はチャンピオンなんですから」

 

 気を取り直して解説に専念する健夜。

 だが数年来の友人である恒子からすると、普段とは全く異なる今の健夜は非常に興味深かった。

 

(本当に、こんなに楽しそうなすこやんを見たのは初めてだ)

 

「さぁ! 東二局! 新道寺の連荘です!」

 

 

****

 

 

 〜東二局・一本場〜

 東 新道寺 101900 親

 南 阿知賀  98000

 西 千里山 108000

 北 白糸台  92100

 

(お、思わず和了ってしまいましたが、これは……)

(……奇妙な展開ってこういうことなのかな?)

 

 忠告は受けていたが、それでも予想外な展開に煌と玄はやや動揺していた。

 煌は一応、照は和了らないのではないか? という予想は立てていたが、振り込むことまでは考慮していなかった。心情的にはまさかの展開である。

 

 それは怜も同じ思いではあったが、それ以上に気に掛かることが一つあった。

 

(……おかしい。またさっきの感覚。セーラの話では一回しか使わへんって言うてたのにな)

 

 照が煌に振り込んだ後、再び《照魔鏡》が使われていたのを感じ取った。

 煌はそういうオカルトを感じ取ることは出来ないが、怜と玄は違う。東一局でもあった、自身の何かが見られている感覚がまたあったのだ。

 玄は照との対局が今回が初であり、尚且つ情報もないため違和感をあまり感じていないようだが、怜からするとこれは間違いなくイレギュラーな事態である。

 

(……まぁ、何考えとるかなんて流石に分からんしな。でも嫌な予感がバリバリするわ)

 

 当初はお手並み拝見が目的だったのたが、この嵐の前の静けさというのか。様子見などして対局の流れを止めたら、取り返しのつかないことになる。そんな予感が怜の中にはあった。

 

(──よし。とりあえず、照の次の親を最速で流す)

 

 怜は目標を変えた。

 もちろん最高の形は千里山がトップでこの対局を終わらせることだが、怜は高望みをするのをやめた。

 残り三回ある照の親。その内一回をどうにか削り取る。

 この奇妙な展開が少しでも長引くことを祈りながら。

 

(ツモれるならば一番ええけど、速度を上げるとなるとやっぱり)

 

「ロン。2600の一本場は2900」

「は、はい」

 

(すまんな阿知賀──)

 

 再び《照魔鏡》が使われたのを感じた。

 

(のんびりは出来ないんや)

 

 

 〜東三局〜

 親:玄

 

(また園城寺さんに狙い撃ちされてる。これじゃ二回戦と変わらない。やっぱり鳴いて仕掛けないと)

 

「ポン!」

 

 ()()()()捨てられた役牌を鳴く。これで玄は形さえ出来れば和了れるようになった。

 玄にはドラが集まるため、例えクズ手だったとしても翻数を底上げ出来る。実際に手配には既にドラが三つあり、満貫が確定している状態だった。

 

(二回戦は上手くいかなかったけど、今度こそ!)

 

 玄は和了るのに必死だった。

 

 だからこそ気付かなかった。

 今の照の捨て牌の不自然さに。

 

 煌と怜は密かに照を盗み見る。

 

(このタイミングで生牌を切るなんて、初歩的なミスですね。まさか狙っていたんでしょうか?)

(絶対わざとやろ。勘弁してくれや)

 

 照程の実力者がするとは思えないミス。

 この違和感続きの対局から判断すると、これはミスではなく故意の可能性が極めて高いと二人は判断していた。

 

(ホンマ訳分からんな。まぁやることは変わらへんか)

 

 速攻で流すことを重点に置いている怜は、一巡先を見ながら聴牌を目指す。

 だが、その前に見覚えある光景が見えた。

 

(おいおいおいおい……)

 

「ロ、ロンです! 中、ドラ3で12000です!」

「はい」

 

(今度は阿知賀に振り込むんか⁉︎)

 

 驚くのも束の間、この対局四度目のあの感覚が怜を襲った。

 

(……これ、心臓に悪いわ)

 

 徐々に忍び寄ってくる、悪魔の足音が聞こえた気がした。

 

 

****

 

 

「ふーりこんだー」

「ふーりこんだー」

 

 白糸台高校控え室にて、咲と淡は存分にふざけていた。

 正確には、テレビ画面を偶に見ながらトランプで遊んでいた。

 咲は最初は真剣に見ていたのだが、淡の「多分、面白くなるのに結構時間掛かると思うよ?」という一言を聞いて、態度が適当になったのだ。

 そこで出てきたのが、監督が持っていたトランプ。

 暇していた淡は即座に食い付き、咲を挑発する形でゲームスタート。

 現在は行っているのは、

 

『スピード!』

 

 白熱していた。

 左手で束を持ち、右手を絶え間なく動かし続けている。

 

「はい、私の勝ちー」

「もう一回! サキもう一回やろ!」

「じゃあ次はポーカーにしよう!」

「いいね!」

 

((((…………あれ? この二人こんなに仲良かったっけ?))))

 

 思わぬ盛り上がりように内心疑問だらけの他四人だった。

 

「OK?」

「OK!」

『勝負!』

「フルハウス!」

「ロイヤルストレートフラッシュ!」

「ハァァァァァ!?!!」

 

『ツモ。2000、3900の一本場は2100、4000』

 

 淡の叫び声と同時に、画面上では千里山の園城寺怜が自摸和了り。

 対局が始まってから未だに照に動きはない。

 

(さっきから《照魔鏡》の連発。ホント、こんなお姉ちゃんは初めてだ)

 

「サキ! 次はブラック・ジャックで勝負!」

「……淡ちゃん、ブラック・ジャック知ってるの?」

「相変わらず私のこと見下し過ぎじゃない?!」

 

 一体何が起こるのか。

 それを楽しみに、片手間でトランプに興じることにした。

 

 ……因みに、運の要素が関わるゲームで、咲が敗北することはなかった。

 

 

****

 

 

 〜東四局〜

 親:千里山

 

(……さて、問題はここやな)

 

 怜の親番。

 通常ならクズ手でも和了りを目指すものだ。何故なら親なら連荘出来るからである。

 でも、今回に限って怜にそのつもりはない。照の親を流したい怜からすると、この局は自分以外の者が和了ってくれないと困るのだ。

 

(とは、言うてもな……)

 

 この場合、一番手っ取り早いのは怜が他家に差し込むことだ。

 だが怜としても無駄に点棒を減らしたくはないし、特に玄に振り込むことになったら一気に持ってかれる。

 そのため、怜にとってベストな選択は、煌の安手に差し込むこと。

 

(最善は諦めた方がええか……?)

 

 前途多難な現状に一息吐いていたところで、対局に動きがあった。

 

「ポン!」

 

 煌が速攻で鳴きにきたのだ。

 

「ポン!」

 

 それも二連続で。

 

(……これは都合がええな)

 

 玄がいることでドラを絡ませた役が作りにくいこの対局では、鳴くとほぼ必然的に安手になる。

 清一色だと流石に話は変わるが、見えている牌から判断してそれもない。

 

(……もしかして、わざと知らせてるんか?)

 

 怜は煌の顔を見てみた。

 ばっちりと目が合った。

 

「チー!」

 

(……やはり、私と同じ考えでしたか。照さんの親が怖いのは私が一番実感していますからね)

(ホンマ助かるわ。新道寺には感謝せなあかんな)

 

 初対面の他人とアイコンタクトに成功するという、極めて稀有なことが起きたが、形振り構っている暇はない。

 一巡先を見た上で、手牌から当たりそうな牌を捨てる。

 

「ロン。1300です」

 

 狙い通り煌の安手に差し込むことに成功した。

 この後が大きな分かれ道である。

 照が動くか、それとも動かないか。

 

(……さぁ)

(……どうなる)

 

 ……訪れたのは。

 先程と同様の感覚──だけだった。

 

 

****

 

 

「今の差し込みはファインプレーだね」

 

 散々でトランプで遊び倒した後、少しだけ真面目になった淡がもらした一言。

 淡が差し込みと断定した理由は単純で、一巡先が見える怜が振り込むことなどあり得ないからだ。

 

「そうなの?」

「うん。見た感じ、テルの親番にギリギリ間に合わなかったみたい。これは大きいよ。50,000ずつは削れないかもね」

「ふーん、意外とリスク大きいんだね」

 

 ここまで計六局。

 あの照の奥の手なのだから性能は飛びっきり優れているのだとしても、これでは少し時間が掛かり過ぎている。

 

「きっとテルもまだ慣れてないんだろうね。まぁ、使わなくても元々が強過ぎるってのもあるから」

「因みにアベレージはどのくらいかかるの?」

「私も一回くらいしか見たことないから断言出来ないけど、五局もあれば出来ると思ってた」

「なるほどね。どちらにせよ、個人戦ではそこまで怖くないことが分かっただけでも、私にとっては収穫だよ」

「……咲ならこの内に削りとれる?」

「断言は出来ないけどね。まぁ、リスクがあるのはお姉ちゃんも分かってると思うから、私には使わないと思う」

 

(ある意味では拍子抜けだけど……でも、お姉ちゃんのことだから、もう一つくらい見せてない技があるかも)

 

 咲はあり得そうなその可能性に期待することにした。

 だがその前に、照がこの後出すであろう奥の手を観察することが先である。

 

「ふふ、楽しみだな」

 

 一体どんなものが飛び出してくるのか。

 不敵な笑みを浮かべて、咲は画面に映る姉の姿を見つめていた。

 

 

****

 

 

 〜南一局〜

 東 白糸台   78000 親

 南 新道寺 101100

 西 阿知賀 103100

 北 千里山 117800

 

(……どうやら、賭けには勝ったっぽいな)

(そのようですね。一安心です)

 

 継続しているこの展開から、怜と煌はそう判断した。

 この局を乗り切りさえすれば、負担が大いに減ることだろう。

 

(油断は出来ひん。最速で和了りにいく)

 

「リーチ」

 

 リーチ棒を垂直に立てて立直宣言。

 一巡先を見た上での立直。邪魔さえ入らなければ一発自摸。

 

(頼むからじっとしてくれな、阿知賀)

 

 煌がこの和了りを邪魔するわけがないため、懸念事項は玄だけだ。

 玄とも出来れば協力関係を結びたいところではあるのだが、プレッシャーに弱いタイプなのか周りの状況を把握しきれていない節がある。

 怜は祈りような気持ちで対局を見守る。

 

 無事、怜の番まで回ってきた。

 

(──これで!)

 

「ツモ。1000、2000」

 

(照の親番をなが──)

 

 ──ギギギー

 

 怜の背中に悪寒が走った。

 対局開始前に感じた威圧感とは比較にならない程の恐怖。それに対して怜は、身が竦みそうになるのをなんとか堪えるのが限界だった。

 

(……な、なんや?)

 

 怜は全身の肌が粟立つのを感じながら照を、正確には照の背後を見た。確かに聞こえてくる、この、何か重たいものが軋みながら発する音源を。

 

 照の瞳が見開かれるのと同時にパリンッと照明が割れ、対局室が暗闇に包まれる。

 

「きゃっ⁉︎」

「何事ですか⁉︎」

 

 突然光を失ったことに慌てている玄と煌だが、今の怜にはその姿は目に映らなかった。

 

(……開く。照の背後で何かが)

 

 現れたのは、一際巨大な鏡。

 太陽の輝きを反射するそれは、四人を照らし出す。

 

 ──天岩戸(あまのいわと)が、今開かれた。

 

 

****

 

 

「うおっと⁉︎ て、停電です! ビックリしました!」

 

 中継ルームでもこの事態に驚きを隠せずにいた。

 現代社会で停電はそれほど頻繁に起きるものではないので、急に光を失うと慌てるのは当然のことだ。

 

 そんな状況にも関わらず、健夜は慌てることはなかった。

 しかしそれは冷静でいた、というわけではない。

 

(……そんな、まさか。あれはもしかして)

 

 健夜の目は照に釘付けになっている。

 

「……どうしたんですか、小鍛治プロ? さっきから固まってますが?」

「……動きますよ、この対局」

「……それはつまり、宮永選手がってことですか?」

「えぇ、間違いありません」

 

 健夜は断言した。

 その間に会場の照明が復帰されていく。停電も直り、対局室も白色電球の明かりに包まれた。

 

「さぁ! 小鍛治プロの言う通りなら遂に! 遂にチャンピオンが動きを見せるようです! 皆さん注目ですよ! 南二局開始です!」

 

 

****

 

 

 〜南二局〜

 親:煌

 

「リーチ」

 

(((…………えっ?)))

 

 リーチ棒を垂直に立てて立直宣言。

 怜、ではなく、照が。

 その行為は、今まで怜がしてきた光景を思い浮かばされた。

 

 それはつまり、一発自摸である。

 

(ま、まさかとは思いますが)

(これ、園城寺さんの……)

 

 煌と玄は半信半疑。

 だが、怜は違った。

 

(……冗談やろ。この一巡先の結果、まぐれとは思えへん)

 

 翠色に輝かせた瞳に映った未来には、信じたくはない光景があった。

 

「ツモ。立直、一発、自摸、一通。2000、4000」

 

(なっ……⁉︎)

(一発自摸……しかもいきなり満貫⁉︎)

 

 二人は動揺を隠せなかった。

 照の連続和了には幾つかの規則がある。

 一つは和了る度に点数が上昇していくというものだ。これが最も有名であり、尚且つ照が最強と言われている所以でもある。

 もう一つは、この連続和了が止められると、点数が低い状態からリセットされるというもの。継続するわけではなく、一時的に火力が収まる。

 

 これが、従来の連続和了だ。

 なのに今回の連続和了は満貫から始まった。

 まごう事なき異常事態である。

 

 更に加えて言うならば、今照は怜と同様の立直宣言をして一発自摸和了り。

 

(もし本当に、照にも一巡先が見えているのなら……)

 

 ──勝目なんてない。

 

 

 〜南三局〜

 親:玄

 

「リーチ」

 

 照、再びの立直宣言。

 しかも、リーチ棒を垂直に立てた上で、だ。

 

(……これはもう、あかんかも知れへん)

 

 照が一発で和了る未来。

 そして、その手牌にあるはずがないものまで映っていた。

 

「ツモ。立直、一発、自摸、ドラ3。3000、6000」

「…………えっ?」

 

 意識の外側にあったあり得ない光景に、玄は息の抜けた声を出す。

 

(……ど、どうして。どうして、照さんの、手牌に……ドラ、が……)

 

 ──全てのドラは玄に集まる。

 そう評された玄の場の支配。

 例え相手がどんな打ち手であっても、そこに例外はなかった。麻雀を初めて以来、玄と対局した者にドラが渡ったことはなかった。

 

 その事実が今、脆くも儚く崩れ去った。

 

(……これは、想定外過ぎますね)

(……ホンマどないしよう)

 

 照本来の圧倒的な聴牌速度と連続和了。

 一巡先を見る瞳。

 ドラが集約される場の支配。

 

 状況は絶望的であった。

 

 

****

 

 

 待ち侘びていた照の奥の手。

 それを見て咲は、焦燥しか感じていなかった。

 

(……ヤバい、この力はヤバすぎる)

 

 個人戦の心配はしていない。

 けれども、団体戦では脅威にしかならない。

 

(相手の能力を完璧に自分のものにするの……? 一発自摸だけなら私もブラフで出来る。でも、あの場でドラの支配は私でも奪えないはず)

 

 玄の場の支配は咲ですら対抗出来ない、それ程までの強さだと思っている。

 

(これがもし清澄にも使われたら、優希ちゃんのあの爆発力がお姉ちゃんのものに……)

 

「あれがテルの奥の手」

 

『リーチ』

 

 オーラスでも照は止まらない。

 リーチ棒を垂直に立てて立直宣言。

 

「《照魔鏡》で見て、映し、そして()()()()。……その鏡の名前は──」

 

 現れた巨大な鏡。

 全てを反射するそれは、神話では太陽神すらも映した神器。

 

 ──《八咫鏡(やたのかがみ)

 

『ツモ。4000、8000』

 

「ねぇ、サキ?」

 

 不敵な笑みを浮かべて、淡は咲に問う。

 

一巡先を見る能力(千里山)ドラが集まる能力(阿知賀)絶対飛ばない能力(新道寺)。サキはどこに上がってきてほしい?」

 

 咲はやっと、淡があの時浮かべていた嫌らしい笑みの真意を、理解出来たのだった。

 

 〜前半戦終了〜

 白糸台 112000

 千里山 108800

 阿知賀   90100

 新道寺  89100







Q.つまりギギギーってのは?

A.天岩戸が開く音じゃないの?

一応補足
《八咫鏡》は本作のオリジナルです。原作ではまだ明らかになっていないので、悪しからず。




……小鍛治プロのアレは出来心だったんですぅ。


全然関係ないですが、現在、『となりのヤングジャンプ』というサイトで、西尾維新さん原作の読み切りが幾つか公開されているのをご存知ですか?
その中でつい最近公開されたやつが、興味深く考えさせられるものだったので、ちょっとお巫山戯に。

前半のこのオマケはそれなりにホラー?世にも奇妙な物語?的な感じなのでタイトルでやばそうならバック推奨です。






オマケ:何までなら殺せる?

「ねぇねぇサキ? サキは何までなら殺せる?」
「……何? そのおっかない質問?」

唐突に問われたのは狂気すら感じられるような、猟奇的な質問だった。

「最近東京で流行ってるんだよ! 出処は良く知らないけど、友達から聞いたんだ」
「何それ怖い」
「それで、サキはどう?」
「いきなりそんなこと言われてもなぁ……」

流石に質問が質問なので、咄嗟には具体的な答えが出せない。

人間にとって『殺す』という命を奪う行為には、生理的な嫌悪感があるだろう。
蚊や蝿など一般に害虫と呼ばれる生き物なら、何も感じずに、むしろ明確な殺意を持って殺せる人も多いと思われるが、それ以外となると話が変わる。

その生物を殺せない理由として考えられるのは、生き物の種としての違いが一番の要因ではないだろうか?

先ほどの例を参考にするなら『虫』。
恐らく、これまでの人生で『虫』を一回も殺したことがない、という人はそうは居ないはずだ。直接手にかけたりしたことがなくとも、殺虫剤などは使ったことがある、という人はいるだろう。
次に殺せるのは『両生類』だろうか? もしかしたら『魚類』かもしれない。それとも『爬虫類』? 『鳥類』? 偏見かもしれないが『哺乳類』ではないだろう。

このように、殺せない生物には順位が存在するはずだ。

そして、その最上位に位置するのは、間違いなく『人間』だろう。

「やっぱり、一概には言えないよね」
「それは当たり前だよ。因みに淡ちゃんは?」
「私はとりあえずカならまぁ、って感じ」

華の女子高生の会話ではない。

「そもそも、なんで私に聞いたの?」
「いやぁ〜、サキは心に深い闇を抱えてそうだからどうなのかな〜って!」
「…………ふーん、じゃあ」

ーー試してみようか?

「…………えっ?」
「ここが公園で良かった」

そう言って咲は、偶々足元にいた『虫』を踏み潰した。

「『虫』は出来た」
「サ、サキ……?」
「次は……」

先の尖った木の枝を拾い溜池に向かう。
そこで見つけたカエルを突き刺し、ザリガニを捻じ切る。

「次は……」
「サ、サキ⁉︎ お願い落ち着いて!」

これまた偶々あった鉄パイプを手に茂みに入る。
そして、そこにいた野良猫を叩き付ける。

「サキ⁉︎ もうやめて‼︎」
「ーーそれじゃ最後は」

咲は淡に、その血だらけの武器を振りおーー





「嫌ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!!!」

淡は飛び起きた。
全身汗でびっしょりになっている。
息も絶え絶え。

「………………………………夢かぁぁぁ」

最悪の目覚めだった。

「どうしたの、淡ちゃん?」
「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
「な、何⁉︎」
「……………いや、ゴメン。なんでもない」
「もう。お姉ちゃん起こしに来たら凄い声聞こえてビックリしたよ」

(……そう思えば、長野のサキの家に泊まりに来てたんだっけ)

あんな夢の後だったから、咲の姿に心底驚いてしまった。

(……とりあえず着替えよう)

汗で服が張り付いていて気持ち悪いことこの上ない。
咲が一度部屋を出て行った後に淡は着替える。本当はシャワーも浴びたかったのだが、自宅ではないので自重した。
時間も経ち冷静にもなってきたので、先ほどの悪夢を思う。

(心に深い闇を抱えているのは私かも……)

苦笑してしまった。
その後、咲が再び訪れた。

「あっ!そうだ、淡ちゃん。さっきテレビで凄いこと話してる番組があってね。淡ちゃんに聞きたいことがあったの」
「ん?なに?」

友達同士の微笑ましい会話のノリで先を促した。促してしまった。

「えっとね、淡ちゃん。淡ちゃんはーー」

ーー何までなら殺せる?









キチった咲さんと振り回される淡ちゃんが書きたかっただけです(笑)

因みに原作とは全然展開が違うので、興味を持った方はどうぞ検索してみて下さい。
個人的に一番お気に入りは、今月のジャンプスクエアに掲載されている
『友達いない同盟』
マジ面白かったです。

というわけでこちらも自分なりに再現してみました。原作とは出来るだけ違うネタを使ってますよ。
設定としては淡と咲が同じクラスいればそれでOK

オマケ:友達いない同盟

私の名前は大星淡。
私と隣の席のサキは『友達いない同盟』だよ。
英語の授業とか修学旅行の時とかの「はい、じゃあ二人組作ってー」という緊急事態の際は、お互いに助け合うことを約束してるんだ。

サキは言った。

「淡ちゃん。休み時間は二人でどーでもいい話をして切り抜けよう。それにその方が本物の友達っぽく見えるでしょ?」

いいねそれ! 採用だよ!

今日も今日とて『友達いない同盟』の関係維持のために、同盟相手のサキとどーでもいい話をしようと思う。

おはようの挨拶〜朝礼まで
『朝のニュース』
(大抵その日の朝に見たものが話題のきっかけになるよね!)

「おはよーサキ」
「おはよう淡ちゃん」
「サキ、サキは朝のニュース見た?」
「一応見てるには見てるよ」
「今日これから雪が降るんだって。しかも結構大雪らしいよ」
「ホント嫌になるよね。交通機関は止まるし歩き辛いし、何より革靴だと滑りやすくて」
「ホントそれ! あと滑るで思ったけど、サキはここ受験して来たんだよね?」
「当たり前だよ。何言ってるの淡ちゃん、頭大丈夫?」
「そこまで言われるとムカつくね。いやー私受験期の時さ思ったんだよね。クラスで騒いでる連中がさ「今日学校来るとき滑ったんだよね。なんか縁起悪い」とか言ってんの聞いて、その程度で揺らぐ気持ちなら受験なんてすんなって」
「それは良く分かるよ淡ちゃん。良くそんなことで一々騒げるなと日常的に思ってたよ」
「確かにね。しかもそういうの言ってるやつに限って無駄に成績いい奴がいるのがまた腹立つよ。何なのその私に構ってアピール。こっちは必死で勉強してるんだよ」
「あぁ、私もそんなことあったよ。まぁ、いざ受験が終わった時、その騒いでる連中の一人が落ちて超気まずくなってるの見るのは楽しかったな!」
「…………ゴメン、それはないわ」

サキの性格の悪さは神がかってると思う。

1時間目(国語)〜2時間目(社会)まで
『作者の気持ち』
(前にあった授業の内容に影響されるのって結構多いよね!)

「小説とかさ、ぶっちゃけ運ゲーの時あると思わない?」
「そうかなー? たとえばどんな時?」
「いや、よく問題であるじゃん。この時のこの人は一体どんな心情ですか? みたいなやつ。あれを見て私は思うんだよ。「そんなのこの問題考えたお前の気持ちだろ」って。それが自分の考えと違ってたら間違いとか理不尽過ぎない?」
「なるほど、一理あるね。普通の思考している人ならまだいいけど、偶に頭おかしい登場人物いるもんね」
「だよねぇ。ホントこんなの勉強して何になるの? 何なの? これからの人生で本を読む際、一々この時この人はこんな心情で、なんて考えると思ってんの?」
「それは愚痴っても仕方ないよ。所謂受験科目なんだから」

サキの正論にはぐうの音出ないよ。

「まぁ、いいんだけどね」

先程返された小テスト。92点。
ん? 出来ないなんて一言も言ってないよ?

「サキは何点だった?」
「100点」

私的に、高校の100点と小学校の100点には天と地以上の差があると思う。
あと、小説を日頃から読んでると小説の点数上がるよ。ラノベでも可。でもあまりに小説に慣れすぎると、その代わり評論が意味不明になるけどね。

2時間目(社会)〜3時間目(体育)まで
『最近のスポーツ事情』
(東京オリンピックが決まったし、知っておいて損はないでしょ!)

「淡ちゃん。次の体育なんだっけ?」
「えーと、確かバレーだと思う」
「えぇー、嫌だなー。レシーブとかすごく痛いじゃん。やってる人達はドMしかいないでしょ」
「サキー? その発言はかなり危険だよ? 一体どれだけの人を敵に回すと思ってるの?」
「あとは長距離走とかもだね。箱根駅伝なんてドMパラダイスだよ!」
「おい! やめろ! 別にあの人たちは拷問とかでやらされてるわけじゃないの!」
「私としては考えられないね。何が彼ら彼女らを支えているのか不思議でならないよ」
「それはあれじゃないの? スポーツマンシップとかそんなの?」
「スポーツマンシップねぇ。最近は聞くに堪えないニュースも多いけどね。なんだっけ? サッカー日本代表の監督が過去のなんたらでクビとか」
「あぁ、確かに」
「少し前には、未だに日本の国技なのかモンゴルの国技かよく分かってない相撲でも一悶着あったじゃん」
「あったねぇ、そんなこと」
「……スポーツマンシップ(笑)」
「だからやめろっての!」
「つまり世の中金なんだね!」
「いい加減にしろッ!」

サキの闇が深過ぎて偶に対処しきれません。誰か助けて!

昼食〜5時間目(理科)まで
『あれってどう思う?』
(ご飯食べてると自然と食べ物関係の話題になるよね!)

「サキ、サキは目玉焼きに何かける? 私は醤油!」
「ん? 私は塩胡椒だけど?」
「……なんだろう。なんかすごく負けた気がする」
「私は勝った気がする(笑)」
「ウザッ! まぁいいや。それで本題なんだけど、目玉焼きにソースかける人ってどう思う?」
「うーん……。かけた事ないから分からないんだよね。流石に食べたこともないものを一方的に批判は出来ないよ」
「それもそうだね。私もかけた事ないや」
「……それでも、合うとはあまり思えないけどね」
「そこは同感」
「まぁ、人様の趣味嗜好にとやかく言うつもりはないよ。そんな小さなことを気にするようじゃ、器が小さいとか言われかねないしね」
「……じゃああれは? ブラックコーヒー飲めない人に「お前ブラック飲めないのかよ(笑)」とか言うやつ」
「それはウザい」

その時のサキは殺意すら混ざった真顔でした。ヒィィィィィィィッ……⁉︎……超怖かった。

5時間目(理科)〜6時間目(数学)まで
『やぶへび』
(どーでもいい話題でも、ミスすることってあるよね!)

「そう思えばサキは授業中とかもよく本読んでるけど、そんなに面白いの?」
「……淡ちゃん。私、嫌いな人って一杯いるけど、その中でも二番目に嫌いな人を教えてあげる」

……あれ? 地雷踏んだ?

「私はね、大した興味もないくせに「ねぇ、何読んでるの? それ面白い?」って聞いてくる有象無象や淡ちゃんが二番目に大っ嫌いなの」
「正面切って言われた⁉︎ ゴメンってサキ。悪気はなかったんだよ」
「大体面白いかどうかなんて最後まで読まなきゃ分からないのにさ、それを途中で聞いてくるあいつら。何? 私は一度読んだ本を複数回に渡ってまで読む読書狂(ビブリオマニア)にでも見えるの? 暗記するレベルまで読み込んでる残念な人にでも見えるの?」
「……まさかの無視」
「しかもその後「どんな話なの?」って聞かれたから、真面目に説明してあげると「ふーん、そんなんなんだ」って、は? 何? 喧嘩売ってるの? 買うよ、私」
「……因みに一番嫌いな人って?」
「そんなの決まってるじゃん。公共の場で大声でネタバレを話す屑どもだよ。ホント彼奴は殺そうかと思った…………工藤」
「いやに名前が具体的だね⁉︎ もしかして経験談?」
「うん。列記とした(サイレン)の経験談だよ」
「ルビッ⁉︎ ルビがおかしい⁉︎ そしてそれはアウトォォォォォォォォ!?!!!」

幾らよくある名字であっても実名は控えようね。

放課後〜帰宅まで
『家に帰るまでが同盟』
(最後の最後まで続けますよ!)

後は帰るだけ。
でも、私たちの同盟は帰るまで続けるよ!
部活? 何それ美味しいの?

「サキ! この後行きつけの喫茶店に行く予定なんだけど、サキも行く?」
「……ゴメンね淡ちゃん。この後は予定が詰まってるんだ」
「そっか、それは残念だな」

というのは嘘だけどね。
そもそも行きつけの喫茶店など存在しないし。

「因みに、その予定って何?」
「そんなの決まってるじゃん」

サキはとてもいい笑顔を浮かべて言った。

「考えるんだよ。明日淡ちゃんと話すどーでもいいことを!」

私たち『友達いない同盟』は新規加入者を絶賛募集中だよ!
加入条件はたった二つ!
一つ、友達がいないこと!
一つ、友達にならないこと!

それじゃ、友達がいないみんな。また明日どーでもいい話でもしようね!
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