皆は転生についてどんな解釈ですか?
ザシュ!!と斬撃の音が鳴り響き、目の前の魔物が倒れこむ。
男が別の2体の魔物と同様、周りの魔物が全滅した事を確認すると、魔物の体が消え去り、辺りには緑色をした浮遊体が大きいのが一つ、小さいのが複数個入り混じって現れた。
その光景に男はちっ、宝箱は無しか、と舌打ちすると手を伸ばす。すると緑の浮遊体は男の腕に吸い込まれるように吸収されていった。
しかし、直後男はムッとした顔をする。浮遊体の小さい粒が、一粒だけ男の吸収を拒むかの様に残ってしまったのだ。こうなってしまう原因は一つしかなく、男はそろそろだったか、とだけ呟くとそのまま立ち去って行った。
探索を終えた男が真っ先に向かったのは神殿。
先程現れた緑の浮遊体…経験マナを限界まで溜めきった者だけが訪問を許される神聖な場所。
経験マナとは、あるけみすとの冒険者にとっては、切っても切り離せない関係である。大小2つのサイズがあり、大きいものは小さいもの10個相当に値する。
そして小きい方で換算して100個分相当を集めると、すこしだけ強くなる事ができる。
経験マナは様々の要素で【必ず】手に入る。
魔物は全滅すると必ず経験マナを放出する。天空闘技場に挑み勝っても負けても経験マナは手に入る。道端で出会った冒険者と決闘して勝利しても手に入る。
すなわち経験マナは冒険者にとって、強さの源であり、努力であり、返り血であり、生き血であり、命、その他諸々の結晶なのだ。
そんな経験マナだが、実は人一人に取り込める量は決まっている。
冒険者見習いなら小さい方にして9000、一般の冒険者なら10000が限界なのだ。
それ以上経験マナを手に入れた所で、体に取り込めないなら意味がない。
その為、その経験マナを体一杯まで満たした者だけが行えるのが転生の儀式。
転生の儀式は、冒険者にとって、一つの通過点であった。
「…転生だ。失礼するぞ。」
神殿に入りそこを管理する女司教に軽く挨拶すると奥の女神の間に案内され扉を開けてもらい中に入ると、祭壇と魔法陣が設営されている、簡素だが豪華な装飾が施された【転生の間】に案内され、では後ほどと部屋を出て扉を閉める女司教。
部屋には、男だけが取り残された。
一般人や経験マナが限界まで溜まりきって居ない者が訪れても装飾が施された部屋だ。しかし、経験マナを溜めきった者であれば、話が変わってくる。男が独りになった時、魔法陣から眩しい光が溢れ出し、【それ】は現れた。
最上神のぷり〇〇神の配下神にして、このあるけみすと大陸を守護する双子の女神の内の片割れ。
【経験の女神】が、魔法陣から現れた。
「よう、女神サマ。1日ぶりだな。正確には30時間ぶりか?」
「31時間ぶりですね。今回は前回より遅かったですね」
「相変わらず可愛げない女神サマだな。事務処理かっての…まるでうちの会社の女専務か?」
「無駄口ゴタゴタ言わずに転生に来たなら腕出しなさいな。いつも通り、肉体はそのままでいいのよね?」
「はいよ。そのままで頼むわ。あ、それと一つだけお願いがあった」
「ダメです。と言いたいところですが聞くだけは聞きましょう。なんですか?」
「妹柱【アイテム神】に会いたいです(祝福の宝石欲しいです)」
「雑魚が調子乗んなカス(せめて単独でバハムート倒せるようになってから言え)」
と、まぁ女神相手にこの軽口だ。
本来なら神様にこのような軽口など不遜極まりないのだがここは自由なあるけみすと。
しかも冒険者によっては毎日会う羽目になる。いやでも口が軽くなる。
この男も女神との20回目の合瀬だ。
話を戻そう。
男が腕を出すのを確認し、女神が手に持った杖を振ると、辺り一面が光に包まれ、今まで男が吸収していた経験マナが全て回収され、代わりに女神の杖から放たれた小さな光が、男と融合し更に光が強くなる。そして…
「ナビ子、出番です。」
「迅雷ハヤテさんが20回目の転生をしました。おめでとうございます。」
このアナウンスの為だけに【経験の女神】の側近に当たる天使、通称ナビ子が現れ、あるけみすと大陸の全体に誰が転生の儀式を行ったかを周知するのだ。
まぁ、周知されるのが苦手な人もいるのだが…
「なぁ、マジでそのアナウンス止めてくんない?恥ずかしいんだけど」
「ダメです。貴方最上位のぷり〇〇神様にも直訴して即却下されてたでしょう。お見通しですよ」
転生の儀式に慣れてしまったのと、元々創造神が割と親しみやすい性格でもあった為か、最近ではこういう軽口を言い合う余裕も出てきた。
「では、またよろしくお願いしますよ。愛する冒険者、迅雷ハヤテ」
「嘘吐け。お前が一番タイプなのは1日に何度も【貢ぎ物】を捧げにやってくる廃人の方だろ。」
「ギクッ!!!……そ、そんな事…ありませんよ?」メガオヨグー
「だったら動揺すんな。ったく…アイツらマジでどういう生活してるのやら…」
そして転生の儀式は滞りなく終了した。
辺りの光が収まって元の装飾だけの部屋に戻るのだが…
今回だけは少々違った。
「あれ?儀式終わったのに女神サマ帰ってな…」「わが創造主の贈り物を忘れ物です恥れ者」ブンナゲー「ブッ!!」ガンメンニシュート!!チョウ!!エキサイティング!!
女神がぶん投げた物が迅雷ハヤテの顔面に直撃し、さらに反動で扉までぶっ飛ばされ激しく打ち付けられた。
何すんだ!!と男が叫んだ時には、女神は既にいなかった。
ピピーっと発せられた音に釣られ投げつけられた物を確認すると、それは人形だった。その人形を確認しようとした矢先
「随分と派手な儀式だったようですね…」
目の前に居たのは、事故とはいえ部屋を荒らされて憤慨する女司教だった。
「AI搭載型身代わり人形?」
この日、創造主ぷり〇〇神より全冒険者に賜れたのは、自分のプロフィールを組み込んでおくと、他の冒険者が訪問した時に、疑似会話が楽しめるという無個性なAI搭載型の人形だった。
とりあえず、自分の簡単なプロフィール、対人関係などを打ち込んで試運転してみる。
『ダンジョンに行って〇〇〇〇【とある冒険者名】が欲しい!!』
「ブブゥーーーーーーーーーーーー!!!」ノンデタミズゼンブフキダシーー
彼はしばらく、自動会話は使わせない事を誓った。
それからしばらく奇妙な身代わり人形との生活が始まった。
ダンジョンに向かえばとてとてと付いて来る。魔物との戦闘では隠れるだけで役には立たない。かといって邪魔もしないのでありがたい。
とりあえず、暇だと思った時に見ると「ゴシュジン」と無機物な声で喋る。AIプロフは全削除した為それ以上は何も言わないが。
まるでペットだな、と彼は思った。
しかし、ペットという文化がある為か、そもそもあるけみすとの世界にファンタジーの概念あれど怪異の概念が無いと思っていたのか、それとも気づいたとしても単なるバグだと思ってしまうからか、それともあの時【経験の女神】が触れてたのがいけなかったのか…
普通のAI人形は自分で歩かない。ましてやAIプロフに何も打ち込んでなければ何もしゃべらないのにゴシュジンと喋るのはおかしい。ましてや、小さい経験マナが沢山散らばって発生した時、ごくごく稀に一粒だけ人形がマナを取り込めていた事に…
迅雷ハヤテは気づけなかった。
しかし、変化の時はやってきた…
彼の、【トレジャーハンター】としての生が終わる時が来たのだ…
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その日、まどろみの中その【人形】は目覚め…もとい起動していた…
(ア、ゴシュジンサマダ。)
濁りきった目と、ボロボロの体と、包帯をぐるぐる巻きに巻かれた首を見せながら、目の前のご主人様は沢山の荷物を詰めていきます。
また、いつもご主人様が身に着けている物も、今日は外され、質素な服だけを身にまとっていた…
あ、ご主人様がこっち見た。
「後でちゃんとしたプロフィール組んでやる。それまで待ってろ。」
そう言い残しご主人様が倉庫から出て行った時には、倉庫の中は、本当に空っぽ。種の一つも残っていませんでした。
今まで見た事がないご主人様の姿に、後をつけていくことにしました。
ご主人様が向かった先は郵便屋と呼ばれる所だった。
「これとこれとこれは○〇さんに、これとこれは△△さんに…後は…」
どうやらご主人さまは先程の荷物を全て郵便で送ってるようです。倉庫の全てを送ってしまうのでしょうか?
「後は手紙を添えて…よし。」
そのままご主人さまは全ての荷物を送ってしまいました。
次に向かったのは賭場でした。
「有り金全部チーム○〇に」
そういって持っていたお金を全部一つのチームに賭けました。結果普通に負けました。
しかし、ご主人様は何も言わずそのまま去っていきました。
最後に向かったのは神殿と呼ばれる場所でした。
ご主人様と女の人が話をし、奥に入っていきます。見つからないように、コソコソ隠れてついていきます。
そしてとある部屋に二人で入っていきました。
近づこうとすると女の人が出てきたので慌てて隠れました。
女の人が向こうに行ったのを見計らって、その部屋に入りました。
部屋の中では、ご主人様が、大きな女の人と話してました。
「そう…これを最後の転生にと…」
「そ、悪いがこれを最後に隠居させてもらうさ。世話になったな。」
「そうですか…あなたにはこの世界を盛り上げる独特の魅力を感じていたのですが…」
「悪いがそれと同じくらい嫌われてるのもお察しさ…流石に心折れたよ…今回ばかりは」
「姿はどうしますか?そのままがいいですか?」
「いや、最後なんだ、バーッと姿変えてしまってくれ。」
「わかりました。それではいきますね。」
なんだかよくわかりません…でも…でも……これが終わったら本当に【ご主人様に2度と会えなくなる】様な気がしました!!なんだか光が強くなってます…おやつだと思っていた緑のふよふよが沢山あらわれてます!!それでもかまいません!!
「ダメエェェェェーーーーー!!」
「!?」
「あの時の人形!?しまっ……」
ドッカーーーーーン!!
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おいおい…なんて言う日だよ…合成に失敗して強制退去にも失敗したら隠居するしかないって全ての整理していたらあの人形が儀式止めに来ちまったよしかもAI人形って普通喋るだけだろ今思えばなんで歩けるんだ!?
そう思いながら大爆発に巻き込まれた転生の間を必死で調べると…
「ウ…ウウん…」
そこには赤い髪をした少年が倒れてて目を覚まそうとしていた…
「ア…ゴシュジンさマ…」
お前、あの身代わり人形ぅ!?
あの後、【経験の女神】と色々調べた結果、元々学習機能の高い人工知能を採用していたが、たまたまこの一個体はいきなり高濃度の経験マナに触れた為に急速に知能が発達した事。
女神の転生の力による肉体変化がよりにもよって身代わり人形に作用してしまった為、事実上の受肉となってしまった事。
経験マナを集める事は出来るが、吸収しても強くはならない事。また、時々エネルギーを補給しなければ動かなくなる事。
そして、肉体や精神は別々ではあるが、魂が繋がってしまったとので、あるけみすとの世界では事実上の二人三脚で過ごさなきゃならなくなってしまった事。
身代わり人形のステータスやスキルは本体のステータスに準ずる事。
事故なのでRP上では多目に見るが二人同時に戦闘したりする事は御法度。
など、様々な事がわかった…つまり、俺は隠居しようともこの意思を持った人形の世話はしなきゃいけない事になってしまったのだ…
ただ俺は大体的に引退宣言をしてしまった身だから表舞台に立つことは出来ないし…
……どうすんだこれ……
せめて名前だけは付けてやるところから始めるか…
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あれからしばらく…
俺はその意思を持ったAI搭載型身代わり人形こと【雪風】と奇妙な生活を暮らしている。
あの後、騒動を聞きつけたのか知らんが、今までデレてくれなかったアイテム神が一度だけ微笑んでくれたのもあって、引退した癖にあるけみすとの冒険者家業を続けているという引退詐欺もいい所の生活になってしまった…
俺は死んだことになっているので墓下…もとい、最後の儀式を行った後にこっそり設置した石碑の下に某ブロッククラフトゲームの要領で作った地下室に引きこもり、【雪風】に探索の指示をポチポチ出しながら引き籠り生活をする羽目になった。
数回雪風に探索の指示を出し、経験マナを持ってきてもらい、運よく宝箱見つけたらそのまま持って帰って来てもらい俺が即座に開封する。そんな生活を送っていたのだが、どうしても転生マナがいっぱいになった時にはナビ子が周知するし、冒険者は、現在冒険中の冒険者をリアルタイムで知る事が出来るので、いくら雪風に探索させても、その欄にはご丁寧に俺の名前が出るわけだ。
しかも経験マナがまた取り込めなくなったので結局転生に行く為周知され存在がバレる。
「ご主人ーただイマー」
雪風の様子はというと、現在成長中なのか、ひらがなカタカナ織り交ぜながらもなんとか普通に意思疎通は出来ている。
戦果の報告を聞き、無事に帰ってきたことを誉め、また次の探索に向かわせる。
そんな中、雪風が聞いてくる。
「ねェご主人さマ、そろソロおそとデナいの?」
外、か……
正直自分は一度高々に引退を宣言してしまった身だ…今更復帰を宣言した所で…皆は受け入れてくれるだろうか…こんな俺を…
不安は消えない……
まぁ…でも…ただ…
………そろそろ、引きこもり生活も…飽きてきたな…