雷光の軌跡   作:ぴなお

4 / 4
どうもみなさん。お久しぶりです。そしてすみません。前回から約3、4ヶ月お待たせしてしまい申し訳ありません。もうどうにもならないレベルの更新速度なので、気が向いたときに更新、という風にさせていただきます。
それでは、第4話、どうぞ


新たな日常

 朝、電車を降り、駅のホームで操神さんと合流する。

 

「おはよう。」

「おーす、おはよー。」

「おはよう!」

「お、おはようございます。」

 

 挨拶を交わし、雄英に向かう。

 

「今日はあったけぇな〜。」

「日差しが強えからなぁ。」

 

 確かに今日は雲も少なくて日当たりがいい。そよ風が吹き心地よい天気だ。

 

「本当ですね。」

「いい日になりそうだな。」

 

 そんな他愛もないことを話しながら歩く。しばらくすると、山の上にそびえ立つ雄英が見えてきた。

 

「いやー、昨日教えてもらったばっかだけど、校内の施設とか覚えられないわ。」

「まぁ、生活してるうちになれるだろ。」

 

 正直俺も覚えられる気がしないが、なんとかなるだろう。川越は覚えてるらしいし。

 

 

------------------------------------

 

A組教室

 

 天童と別れ、自分達の教室で過ごしていると、クラスメイトの千里明華が近づいてきた。

 

「おはようございます。皆さん。」

「おはよう。」

「おはよー。」

「千里さん、おはようございます。」

 

 クラスメイトとはいえまだ会って2日目なので少し緊張する。千里さん、ザ・お嬢様って感じで気品たっぷりだし。

 

(わたくし)、千里明華と申します。御三方と仲良くしたいと思いまして。改めて自己紹介をと。御三方も、よろしいですか?」

「ああ、川越恭子だ。雷閃とは同中だ。」

「走田雷閃。よろしく、千里さん。」

「操神一手、です。あ、改めて、よろしくお願いします。」

 

 操神さんはまだ緊張しているようだった。でも俺たちとは普通に話してるし、すぐに慣れるだろうな。それは置いといて、千里さんから仲良くしたいと声をかけてくれるのは嬉しい。友達が増えるのはいいことだ。

 

「恭子さんと雷閃さんは昔からの付き合いでしたか。ですからそんなに仲がよろしいんですね。操神さんも?」

「あ、えと、私は、入試の日に知り合ったっていうか、いろいろ助けてもらって。」

「そうでしたか。それにしてはとても仲がよろしいですね。」

「ほかに、話す人もいなくて...。」

「まだ入学して2日ですし、仕方ないですよ。もしよかったら、今日のお昼は一緒にいただきませんか?雷閃さん達も一緒に。」

 

 そう小首を傾げ、微笑みながら提案してくる。断る理由もないし、ぜひ一緒に食べたい。にしても、本当に仕草の一つ一つに気品というか育ちの良さが溢れてて、なんだかこっちも畏まってしまう。

 

「いいよ。」

「私もいいぜー。」

「では決まりですね。そろそろホームルームも始まりますし、一旦席につきましょうか。」

「あ、ほんとだ...。」

 

 それではまた後で、そういい千里さんは席についた。昼食楽しみだな、今日はなにをやるのかな、なんてことを考えているとチャイムがなり、計先生が入ってきた。

 

「おっは〜!ホームルーム始めるよ〜!」

 

 

------------------------------------

 

 四限目、英語。教科担任はB組の担任、独特な緑髪のアフロが特徴の、バイブスヒーロー"ビートアッパー"、心地上城。

 

「え〜、この英文Aと英文Bの違いが分かる人、手を挙げて〜。」

 

 思ったよりも普通だ...。いやまぁ、ヒーロー科といっても高校だからそりゃそうなんだけど。

 

(ここは、そこが間違ってるからAか。予習しといてよかったー。)

 

・・・・・

 

 キーンコーンカーンコーン

 授業終了のチャイムが鳴る。

 

「お、終わりか...。よし、挨拶。起立。気をつけ。礼。」

『ありがとうございましたー』

「はーい。じゃ、昼休み楽しんでねー。ゴホッゴホッ。」

 

(大丈夫だろうか...)

 

 過去にヴィランとの戦闘で喉をやられて常に絶不調らしい。そのおかげで今は教職に専念できると言っていたが...。まぁ、元気そうだしいい、のかな?

 切り替えて、四人で大食堂に向かう。

 

 

「心地先生、な、なんか、テレビとかとはやっぱり全然違いましたね。」

「そうですね。やっぱり、喉が不調になったせいで満足に活動できていないからでしょうか?」

「本人はあまり気にしてなさそうだったけど、やっぱラジオとかやりてぇのかな?」

「どうなんだろうな。でもDJの時とかはほんとに楽しそうだったもんな。」

 

 四人で昔のビートアッパーについて語り合いつつ、昼食をなににするか考える。

 

(唐揚げか?あ、いや海老フライ...いっそのことミックスフライ行くか?)

 

 昨日も思ったが、雄英の学食はかなりの種類がある。しかもどれも美味いし安いし早い。最高すぎる。

悩んだ結果、ミックスフライ定食にした。川越はカレーライス、操神さんはネギトロ丼、千里さんはサンドイッチを頼んだらしい。

空いていた席に四人で座る。

 

「噂には聞いてたけど、ほんとに雄英の学食って美味いな!」

「そうですね。その辺の定食屋さんより美味しいかも。」

 

 操神さんと川越がそう言う。この二人、意外と気が合うのだろうか。よく休み時間にも話しているし。

 

「こんなに美味しいのに、あんなにお安いなんて、すごいですね。」

 

 千里さんも話に混ざる。

 

「量も多いからな。食が充実しているのはありがたいよな。」

 

 飯がうまいと言うだけで人はやる気が出るものである。

 

「そういえば、今日のヒーロー基礎学ってなにやるんだろうな?」

「やっぱ、戦闘訓練かな?」

「戦闘訓練ですか...。(わたくし)の個性は戦闘にはあまり向いていませんので、不安です。」

「ヒーローの仕事は、戦闘以外にもあるので、そこで頑張ればいいと思います!」

「そうですね。ありがとうございます。操神さん。」

 

 不安気な千里さんを頑張って励ます操神さん。二人とも、もう仲良くなってるな。

 

「戦闘訓練といえば、被服控除で出したコスチューム、もう出来たのかな?」

「あー、確かに。どんな感じになったかな?」

(わたくし)は、自分のよりも皆さんのコスチュームがどのようなものか気になりますね。特に操神さんは、サポートアイテムを持参されていましたし、他の装備がどのような物か気になります。」

「あ、よかったら見ますか?」

「え、見れんの?」

「あ、はい。スーツも自作してて...」

 

 操神さんは自身のケータイを操作し、画面にスーツを映す。それは、黒のタイツに神経のように青色の線が走っているスーツだった。

 

「「すげー!カッコいいな!」」

「え、えへへ。ありがとうございます。」

「この緑の、脊椎のような線はどういうものなんですか?」

「あ、これは、個性を発動するときに出る信号を全身に伝えやすくするものです。」

「そうなんですね。」

「なあ、他にもあるのか?」

「はい。あと一つあって...」

 

 そう言い別の写真を見せる。もう一つの装備はVRのゴーグルのようなもので、これも黒を基調としている。

 

「こっちは、サポートアイテムの状態とか、ターゲットのロックオンとかができるんです。」

「こっちもすげーな!どうやったらこんなの作れるんだ?」

「個性のおかげで機械の造りとかは把握しやすかったので、あまり難しくなかったです。」

「というか、今更だけど、こういうのって作るのにライセンスとかいるんじゃないのか?」

「スーツとゴーグルについてはコスチュームだし、武装じゃないから大丈夫。サテライトシールドは、事前に学校側に相談してから作ったから、問題ないよ。」

「へ〜。意外と緩いんだな。」

 

 しかし、こんなすごい装備を見せられると、自分があのとき送ったコスチュームの内容をもう少し考えておけばよかったかな〜と思ってしまう。

 

「なあ雷閃。私たちのスーツにもこういうの欲しかったな。」

「ああ。もっとしっかり考えておけばよかったな。」

(わたくし)も、少しサポートアイテムを検討してみたくなりましたね。」

「ま、まぁ、サポートアイテムがあればいいっていうものでもないですし...。それに、サポート科に依頼すればコスチュームの改良とかもしてくれるらしいですし、そんなに気にすることでも...。」

「あ、そうか」

「そういえば昨日の説明にもあったな。」

 

 そうか。改良できるならあまり気に病むことでもなかったか。じゃあなにかサポートアイテムを考えておこうかな?そんなことを考えつつ、最後のフライを頬張る。

 

「ご馳走様でした。先に片付けてくるよ。」

「私も片付けよ。」

「いってらっしゃい。」

「ご馳走様です。(わたくし)は操神さんといきましょうか。」

「あ、はい。すみません...。」

「いえ、全然大丈夫ですよ。」

 

 こうして昼休みは終わり、5限目のヒーロー基礎学が始まるのだった。

 

 

---------------------------------------------

 

1-A教室

 

 5限目のチャイムが鳴る。教室のドアから計先生が入ってくる。

 

「よーし始めよー。きりーつ。礼。着席!」

 

 今日の目玉と言ってもいい、ヒーロー基礎学が始まる。

 

「さて、まず始めに、ヒーロー基礎学の説明をするよ。」

「ヒーロー基礎学はその名のとおりヒーローを目指すにおいて基本となるものを学んでいくよ。戦闘、救助、芸能、とかね。当然、単位数も最も多い!気張ってきなよー!」

「そんで〜、今日やるのは、じゃん!戦闘訓練!」

 

 おぉ〜!と歓声が上がる。しかし、中には昨日のレクを思い返し、少し緊張している者もいいるようだ。

 

「まぁ、戦闘訓練って言っても昨日みたいなガチきついやつではないから、そう緊張せんでね〜!」

 

 計先生もそれを察したのかそう声を掛ける。その言葉に、自分も少し安心する。

 

「どんな内容かは演習場来てからのお楽しみってことで!まずは〜!」

 

 ほいっとな、と計先生がリモコンを押すと、教室の壁が動き、クラスの人数分のキャリーケースを入れた棚に変化した。

 

「この事前に作ってもらったコスチュームに着替えて、グラウンドβに集合!遅れちゃダメだよー!」

 

 各々が自身の名簿番号のケースを持ち、更衣室に移動する。手にとった瞬間、その確かな重さとこの中にあるコスチュームへの期待に、思わず目を輝かせてしまう。他のみんなも同じなのか、少し浮き足だった様子で更衣室へと向かっていった。

 

 

------------------------------------

 

グラウンドβ

 

「何事もまずは見た目から。そのコスチュームを身に纏い、自覚しな!自分は、ヒーローだって!」

 

 各々の個性をより引き立たせる、そのコスチュームを纏い、少年少女達は歩いてくる。

 

「カッコいいじゃん!みんな!マジイケてるよ!」

 

 俺も周りのクラスメイトを見れば、皆んなコスチュームを着ることでより個性的になっている。

 

「あ、操神さん。そのコスチューム、実際に着てみると結構印象違うね!似合ってるよ!」

「あ、ありがとうございます。雷閃さんも、その、すごい似合ってると思いますよ。カッコいいです。」

「ありがとう。」

 

 操神さんのコスチュームは、昼休みに見たタイツの上に黒のパーカーを羽織っていて、だぼっとした印象を受けた。コスチューム単体で見るとただカッコイイって感じだったけど、実際に着ると操神さんらしさが強調されてるな。

 

「さて、それじゃあ今回の訓練内容を教えるよ。まず、ヴィランはよく屋外で事件を起こしているのが見られるけど、真の凶悪ヴィランは屋内に潜み事件を起こすんだよ。」

「つまり、屋内での戦闘訓練ってことですか?」

「そ!今回は2対2のヴィラン役対ヒーロー役に分かれての戦闘訓練。ただ前回や入試の時と違って、ただ戦えばいいわけじゃないよ。」

「屋内で起こる犯罪は、拉致監禁や裏取引などが多い。つまり、人質や危険な兵器、ヴィラン逮捕の為の証拠品もあるということ。それらを傷つけず、ヴィランを素早く抑える技能が必要となってくる。それと、相手は犯罪者といえど人間。あまり強くやりすぎないようにね。」

 

 なるほど。確かに、実際にヒーローになれば、そういう状況の方が多くなるわけか。人々を守るのがヒーロー。気を引き締めていこう。

 

「じゃあ、今回も人質役は先生がやるんですか〜?」

「いや、流石に屋内だと私も巻き込まれる可能性あるし、今回はそもそも人質はないよ。成績もつけにくいしね。」

「チームの分け方はどういった風に?」

「くじ引きでやるよー。楽...じゃなくて、コミュニケーションもしっかりしてほしいからね。」

「どれくらいまでならやっていいんですか?」

「それはこっちで判断するよ。多少の怪我はしゃーなしだけど、動けなくなったりとかはあかんからね。でも、実戦のつもりで、あんま遠慮はしない方がいいかな。」

 

 すごいな...。次々と飛んでくる質問をこんな素早く返せるなんて。

 

「そんじゃ、状況設定を詳しく説明するよ。ヴィラン達はアジトに核兵器を隠していて、ヒーロー達はそれらを処理しようとしている。ヒーロー側は時間内にヴィランを確保するか、核兵器を回収することが勝利条件。ヴィラン側は時間切れまで核兵器を守るか、ヒーローを捕まえること。以上!それじゃあチームを決めるから、くじを引いてってねー!」

 

 皆んなどんどんとくじを引いていく。自分のくじをみると、Bと書いてあった。相方は...。

 

「よろしく。点籐。」

「ああ、よろしく。」

 

 昨日のレクリエーションでも大活躍していた点籐だった。白の裾の長いコートのようなコスチュームで、掃除道具のような装備を身につけていて、これまたガラリと印象が変わっている。 

 俺たちが挨拶をしていると、計先生はヴィランチームとヒーローチームを決めるくじをガサゴソと漁り、決まったのか手の動きを止めた。

 

「よーし、最初の対戦相手は〜...じゃん!こいつらだー!」

 

 計先生の手に握られたのは、白のAと書かれたくじと、黒のBと書かれたくじだった。つまり、俺らがヴィラン役ということか。対戦相手は...。

 

「お、雷閃とか!やる気出てきたぜ!」

「川越かよ...」

「アタシもいるからね!」

 

 Aチームは川越と固城結城だった。固城も手強いが、やっぱり川越が相手にいるのが少し不安だ。

 

「そんじゃあAチームとBチーム以外のみんなはモニタールームに移動してね〜。」

 

 自分達と計先生以外はモニタールームに向かっていく。ていうか、俺の動きとかも見られるのか。少し恥ずかしい。

 

「ヴィランチームは先に入って準備してて。5分後にヒーローチームは潜入してスタートするからね。ヴィランチームはヴィランの思考をしっかり学ぶように。」

「「「「はい」」」」

 

 ビルの入り口から核兵器がある5階へ向かう。5階の扉を開ければ、ロケットのような兵器といくつかの木箱がある。

 

「この核兵器って...」

「ハリボテだね。」

 

 点籐がコンコンと叩くと、中の空洞に響く音がする。流石に本物はないか。

 

「作戦会議をしよう。」

 

 近くの木箱に腰掛け、点籐は話し始めた。俺もそれを見て近くの木箱に座る。

 

「僕の個性は拘束するのには向いてる。けど、川越さんにはあまり効きそうには無い。だから...」

「川越の足止めをしろってことだな?それなら別にいいけど、昨日見せたでかいやつはオールマイトも止められただろ?あれじゃ無理なのか?」

「あれだとここごと壊しちゃう可能性がある。そうすると核兵器を守れない。」

「なるほどな。となるとどこで足止めするか、だな。」

「うん。なるべく二人は引き離して足止めしたい。」

「なら、先に俺が川越に飛びかかる。したら、川越は俺とやりたいだろうから、固城さんを先に行かせるだろう。」

「なら、この下の階で僕が止める。そこで確保できればよし。できなくても、時間いっぱいは持つだろう。」

「OK!それでいこう。」

 

 作戦が決まり、準備をしつつ、時間が来るのを待つ。

 

『それでは、Aチーム対Bチームの屋内対人戦闘訓練、スタート!』

 

 ビー!というブザーと共にスタートの合図がかかった。よし、行くぞ!

 

------------------------------------

 

ビル3階

 

 潜入した川越と固城は、3階の探索をしていた。ここにくるまで、全くヴィランチームからの接触はなく、警戒は最大になっていた。

 

「中々来ないね。二人。」

「ああ。どうせ、上でスタンバってるんだろ。どっちみちねじ伏せるがな!」

 

 がはは!と豪快な笑い方をする川越。その背後に、影が迫る。

 

「...来たな。」

 

 ヒュオっと風が吹いたと思えば、川越に向かって放たれたであろう雷閃の蹴りを川越を受け止めていた。

 

「奇襲たぁ狡いことすんな!雷閃!」

「お前ならいいだろ!受けられたしよ!」

 

 そのまま川越は雷閃の足を掴もうとするが、雷閃は後ろに飛び距離を取る。

 

「結城!先行け!雷閃とは一対一がいい!」

「うん!」

 

 走りだす結城にパンチを仕掛ける雷閃。

 

「させねぇよ!」

「そうくるよな!」

 

 パンチは川越に向かい、再び二人は接近する。

 

「ぜってぇ負けねぇぞ!」

「俺だって!」 

 

------------------------------------

 

ビル4階

 

 雷閃を振り切り4階に上がった固城。下からは二人の激しい戦闘の音が響いてきていた。

 

「すごい戦い...。早く目標を見つけないと、川越さんやられちゃうかも。」

(まあ、川越さんが負けてるところは想像できないけど...時間もないし、急ご)

 

 4階を探索しつつ、固城はもう一人、点籐のことも探していた。

 

(川越さんに走田くんが来たってことは、アタシは点籐くんと当たることになる。点籐くんに個性を使われたら、そのまま拘束されて負ける。だから、なるべくアタシが先に見つけて、不意打ちで倒したいけど...)

 

 しかしながら、当然点籐も固城が単独で4階にくることはわかっている。この状況、どちらが先に見つけるか、という戦いである。

 

(4階にはなさそう...じゃあやっぱり5階にあるのかな。点籐くんもそこで待ち構えてるかも。)

 

 そう思い、5階に続く階段に向かおうとしたとき-

 

「来たね。」

「!!」

 

 待ち構えていた点籐から放たれた引点。吸い寄せられそうになるが、近くの壁に硬化した髪を打ち付け踏み止まる。

 

「次...」

「チャンス!」

 

 一つ目が消え、二つ目を発射しようとしたタイミングで瞬時に曲がり角に隠れる。

 

「しまったな。」

「詰めが甘いね!点籐くん!」

(とはいえ、今のは危なかった...あれを出されたら近づけない。強行突破しようにも吸い込まれ、近づこうにも引力で引っ張られる。どうにか接近して、一撃入れられればいいんだけど...。)

 

 ちらっと顔を出してみれば、点籐は二発目を用意しガン待ちしている。

 

「ちょっとそういうの狡いと思うなー!?」

「作戦の内だ。それに、今の僕はヴィランだからね。ズルもくそもない。」

「それはそうだけど〜。」

(ここでずっと待ってる訳にもいかない。ここは一か八か、やってみるしかない!)

 

 覚悟を決めた固城は、髪を束ねて切り、一本の髪の槍を持って飛び出した。

 

「うおぉぉ!」

(投げやりにでもなったのか?いや、何か策があるはず。)

「どっちにしろ、やることは変わらない。」

 

 点籐の手から引点が放たれる。先ほどのよりも引力が強くなり、身動きを取るのが難しいほどだ。

 

「ぐ、うう。さっきより、強くない?!」

「その髪は杖代わりか。この引力なら、近づくのにどれだけ時間がかかるかな?」

(くうぅ。うまく進めない!髪を杖にして、なんとか歩いてるけど、一歩踏み出すだけで後ろに吸い込まれそう!)

 

 それでも固城は諦めず、目の前の点籐をまっすぐに捉え、また一歩を踏み出す。

 その最中、固城はある疑問を抱いていた。

 

(これだけの引力なのに、どうして点籐くんは立っていられるんだろう?踏ん張っているようには見えない。コスチュームもあれだけたなびいてるのに、なんで?)

 

 点籐の力では、一緒に吸い込まれてしまうであろう引力。何かを掴んでいるわけでもない。何か仕掛けがある。そう判断し、距離を詰めつつ仕掛けを探す。

 

(引点がそろそろ消える...次の用意を。もう逃したりしない。)

(なるほど、そういうことね...なら、次の発射のタイミングで、仕掛ける!)

 

 手のひらを前に突き出し、引点を溜める。先ほどのものよりも、また数段強くなっている。対して固城も、残り数歩で間合いに入るかといったところまで来ていた。しかし、次の引点を受ければ、確実に捕らえられてしまうだろう。ここが、ターニングポイントだ。

 

「もう、ちょい...!」

(もう少しで、消える。3…2…1…)

「「今!!」」

 

 力が弱まった一瞬で、点籐は次の引点を、固城は手に持っていた槍を投げた。

 

「っ!」

「あっ!」

 

 咄嗟に手を前に出すが、引力によって軌道が変わり、足元に突き刺さった。

 

(勝った。この一発に賭けてたんだろ?固城さん。もう引点は放たれた。僕に近づくことも、5階にいくことも叶わない。)

 

 固城は投げによって姿勢を崩し、前に倒れながら吸われていた。

 しかし、固城が狙っていたのは、点籐ではなかった。固城は、その硬化した髪を、体ごと回しながら、床に叩きつけた!

 

「な?!」

 

 ドカン!と音を立てて床が割れる。そして、床との間に設置されていた引点が現れる。そう。固城が狙っていたのは、点籐の足元を崩し、足の引点を無効化することだった。

 

「ぐぅ…!気づいていたか…!」

 

 咄嗟に手のひらに引点を作り、地面に張り付こうとする。しかし、先ほど地面に突き刺さった槍が抜け、点籐に向かって飛んできた。

 

「うわっ!?」

「よっしゃ!」

 

 張り付くのを妨害された点籐はそのまま、固城と共に吸い込まれる。

 

(まずい!固城さんとの接近戦はしないつもりだったのに!どうする?!)

「おいでぇー!点籐くん!!」

 

 確保テープを手に持ちまち構える固城。もう点籐になす術は無く、自身で出した引点に吸い込まれていった。

 

「ごめん、雷閃くん!確保される!」

「!」

 

 しかし、黙ってやられる訳もなく、残りの希望を雷閃に託し、確保された。

 

「確保っと!点籐くん、やってくれたね!アタシ捕まっちゃうよ!」

「ああ、急ぎなよ。」

「ちくしょ〜!」

 

 固城は、勝ったはずなのに、その達成感を噛み締める間もなく、大急ぎで5階へと走り去っていった。

 

「はぁ、負けちゃった…」

 

 対して点籐は、その悔しさを噛み締め、雷閃が早く来てくれることを祈っていた。

 

------------------------------------------

 

 時は少し戻り、固城が4階に上がってすぐの頃。雷閃と川越は、一見一方的な戦いになっていた。

 バシンバシンと蹴りの音が響く。それに対して川越も、ドカンと、大砲のような一撃を放つが、雷閃はすぐに距離を空けて逃げてしまう。

 

「どうしたぁ!?この程度か雷閃?!」

「お前こそ、全然当たってねぇぞ川越!」

 

 互いに煽りあう二人。しかし、その脳内ではしっかりと戦況を判断していた。

 

(雷閃はおそらくこのままヒットアンドアウェイで私をここで抑えときたいんだろう。なんせ、上で2対2になっちまったら、点籐がやられてそのまま強行突破されかねねぇからな。おそらく結城は上で点籐に足止めくらってるだろうな。結城が勝てたらいいが、負けたら、このままだとタイムアップになる。つまり、私が雷閃をぶっ倒すのが1番いい!)

(そのために川越は、一撃狙いで俺にどうにかして当ててこようとするだろう。俺はスピードはあるが防御は薄い。コスチュームも機動性重視のジャンプスーツだしな。その一撃を喰らわないよう、ヒットアンドアウェイでやってるんだが、パターンが読まれてきてる。まずいな…。)

 

 一撃当てればぼ勝ちの川越と、一撃も喰らわず、かつ攻撃を仕掛け続けなければいけない雷閃。一見雷閃優勢だが、その実は雷閃が大分不利であった。

 

(一旦、攻め方を変えてみるか。)

「はぁ!」

(今度もヒットアンドアウェイか?それだけじゃ勝てねぇぞ!)

「ふっ!オラ!」

 

 雷閃の胴を狙った蹴りを受け流し、一撃打ち込む。その勢いのまま、逃げる雷閃に一撃入れようと一歩踏み込む。が、雷閃は一歩下がってから切り返し、川越の腕を抜け、そのまま強力な一撃を叩き込む!

 

「くっ、やるじゃーん雷閃!」

「今のも受けられるとか、バケモンかよ…」

「女の子にそれはないんじゃねーの?」

「女"の子"はないだろ女"の子"は。」

(今の見切られるか…なるべく今ので落としたかったんだけどなぁ)

(パターンを変えてきた…足止めに限界を感じてきたか。焦ってんな?)

 

 再び距離をとる二人。再び雷閃のヒットアンドアウェイが始まる。隙を見計らっては一撃を叩き込もうとするが、川越の牽制によりうまく近づけない。

 

「守ってるだけでいいのか?川越!」

「言ってろ!お前こそ、狙いがバレバレだよ!」

 

 互いに譲らぬ攻防。しかし、雷閃の蹴りは渾身の一撃を狙うことに意識が向き、逆に単調になってきている。対して川越は雷閃の動きに慣れ始め、反撃にもキレが増す。雷閃はそれをスピードのごり押しで無理矢理かわすが、その分消耗し、動きのキレが落ちていく。

 

「煽る割には、ちょっととろいんじゃねぇの?そろそろ息切れも近いだろ?」

「ふぅ、まだまだ、余裕だよ!」

 

 そう声を上げるが、息は乱れ、声は少し震えている。雷閃の体力は着実に削られていっている。そろそろ終わらせにいくか、と川越は意気込んで、一発で仕留めるための拳を握り込む。対して雷閃も、これが最後、と覚悟を決めて、すぐに走り出せるよう姿勢を整える。

 

「…」

「こいよ」

 

 川越の言葉を合図に、雷閃が走り出す--

 

『ごめん、雷閃くん!確保される!』

 

 そのとき、点籐の悪あがきとして残した無線が届く。それを聞いた雷閃はすぐに振り返り、4階へと向かう。

 

「?!」

(なんで急に…結城か!)

 

 川越は決着がつかなかったことを惜しく思いつつも、すぐに頭と身体を動かす。そして、勝利のための行動を起こす。

 

「結城!雷閃そっち行った!急げ!」

『急いでるよー!!』

 

 雷閃は全力で走り、もうすでに4階から5階へと登り、固城の姿を捉えていた。固城はまだ核兵器には届いていなかった。

 

(まだ、間に合う!)

 

 一瞬で距離を詰め、その背中に手をかけようとした、そのとき。

 

「!?」

 

 息切れが、きた。川越との戦闘での消耗と、全力で走ったことで、彼の脚には限界が来た。

 

「ターッチ!は〜、危なー!」

「…はー。マジか…」

 

 ギリギリで届かずに負けてしまった。その悔しさで胸がいっぱいになった。授業とはいえ、負けたくはなかった。

 

「ギリセーフか。ナイス結城!」

「いや〜川越さんが走田くんを引きつけてくれたおかげだよー。」

『終了〜!AチームもBチームもお疲れー!講評をするから、モニタールームにおいで〜。」

 

 戦闘訓練終了が知らされ、それぞれが反省をしながらモニタールームへと向かっていった。

 

---------------------------------------------

 

 モニタールーム

 

「講評を始めまーす!じゃあ初めに、今戦でのMVPを発表します!固城結城ちゃんです!」

「ア、アタシですか?!」

 

 心底驚いたようで、かなり大きな声を上げた。

 

「そう。固城ちゃんのよかったところは、咄嗟の判断能力。あの少しの間で、点籐くんの足元の違和感に気づいて作戦を立て、2手3手先を用意していた。そのお陰で見事勝利に繋げれた!実質初の対人戦でこれはすごいよ!」

 

 計先生は少し興奮しながらそう言った。確かに、固城さんがあそこで勝ったから、ヒーローチームは勝てた。俺は、どうしたらよかったんだろうか。

 

「さて、それじゃあ今戦のポイントを詳しく解説していくね。まず、今回の戦闘で、特に大きな分かれ目は、点籐くんと固城ちゃんの戦闘。ここで固城ちゃんが勝てたから、核兵器への道も開けて、勝利できた。逆に、あそこで点籐くんが勝てば、当然ヴィランチームは数的に有利になる。そうすれば、走田くんにも余裕ができて、川越ちゃんを冷静に対処できる。それに、状況設定的に見れば、ヴィランチームは人質として固城ちゃんを利用できる。こうなったことで、ヒーローチームの勝ちの目は大分小さくなるよね。まあ、川越ちゃんがこの状況から一気に逆転したり、人質を無視する可能性もあるけど。」

 

 そう事細かに解説していく。やっぱり、言葉で解説してもらえるとわかりやすいな。

 

「それじゃあ、そこで点籐くんが勝つには、どうすればよかったか。わかる人!」

 

 彼女はビシッと手を伸ばしてそう声をかける。勝つには、か。やっぱ、俺が先に固城さんを倒すべきだったか?

 

「はい。」

「走田くん!」

「俺が、固城さんを先に倒しておけばよかったってことですか?」

「うーむ。それもいいかも知んないけどー。2対1だと流石にキツいし〜、2対2になっても結果的に同じ組み合わせになると思うから、点籐くんだけで固城ちゃんに勝つにはどうしたらいいか聞きたいかな〜。」

 

 点籐だけで…どっちみち、俺は川越を抑えなきゃいけないし、確かにそうなる。じゃあ…どうすれば、勝てるか…。うーん、俺が点籐の立場だったら…

 

「はい。」

「お、静海ちゃん!」

「無理に体を晒さず、物陰から引き寄せるやつを打ち続けてれば、接近されることもなく、勝てたと思います。」

「うん。そうだね。点籐くんの敗因のひとつは、背後にあった階段を塞ぐことを意識しすぎて、前に出過ぎていたこと。そのせいで、個性の吸引力もセーブしなきゃいけないし、足元に引点をつけたせいで動けなくなった。そこをうまく固城ちゃんに利用されちゃったね。」

 

 指摘を受け、口元に手を当てて考え込む点籐。相当真剣に考えているのか、眉間に皺が寄っていた。俺も、要所要所で至らないところや、判断ミスがあった。それらがなければ少なくとも、最後の手は届いただろう。

 

「まとめると、ヴィランチームは判断ミスが多く、それによって敗北に繋がった。けど、作戦や立ち回り、特に最後の点籐くんの走田くんへの報告は良かったよ。逆に、ヒーローチームは個々の能力や判断は良かったけど、作戦なんかはもっとやりようはあったかな。固城ちゃん頼みになってたのもちょい良くなかったから、次コンビやチームを組むときなんかはその辺を考えてみてね。以上!」

 

 そう締めくくり、そんじゃ次のチーム、行ってみよう!と先生はくじを引き始める。…次が始まるまでに、川越たちや点籐と感想を言い合うか。

 

---------------------------

 

 数分後、第二戦目、Eチーム対Iチームが開始された。Eは彩色と鎖、Iは須楽と筆染のコンビ。ヒーロー側の大規模大火力な彩色に対してヴィラン側は小回りのきく二人。一見、ヒーローチームは大分不利だ。

 

「それじゃあ、ここは任せたよ。」

「うん。…一応聞いとくけど、ほんとに一人で大丈夫そ?」

「ああ、もちろんさ。僕を信じたまえ。」

 

 何か喋った後、筆染は一人で部屋を出ていった。どうやら、筆染は単独行動をするらしい。2対1になれば、一気に不利になるだろうに、なぜなのか?

 そうしてヒーローチームと筆染は接敵し、戦闘に移った。しかし、その様子は、予想外であった。

 

「ああもう!絵の具どんだけ出てくるんだよ!声固!そっちどー!?」

「せっかくの新品コスチュームが絵の具だらけだよー!"タ"!」

 

 彩色が絵の具を壊し、鎖が筆染と戦っている状況。だが、四方八方から飛んでくる絵の具に邪魔され、二人とも手一杯といったところだ。

 対して筆染はかなりの余裕があるのか、笑顔で二人を相手している。

 

「あんまり動かないでくれよ。せっかく僕が君たちのコスチュームを最高のアートにしてあげようとしているのに。」

「余計なお世話だよ!」

 

 一言言葉を交えたと思えば、鎖は突然屈み、両腕を伸ばして筆染の足を掴もうとした。

 それに気づいたのか筆染はバックステップでそれを躱した。だが、そこを狙っていたのか、鎖の後ろに居た彩色が、個性で「く」を放ち、筆染を拘束した!

 

「しまった、やられたな。」

「しゃあ!ナイスー!声固!」

「〜〜!〜〜!」

「?!声固!」

「口を塞ぐのが少し遅かったか。」

 

 筆染を拘束できはしたが、逆に声固も筆染によって四肢を拘束され、マスクを壊されて口を絵の具で塞がれていた。

 

「声固!大丈夫か?」

(僕はいいから先に行ってくれ!)と言っているのか、顎で階段の方を指している。

「えー、何言ってっかわかんねぇけど、とにかく先行けってことだな!?」

(うんうん!)と言っているのか、コクコクと首を振っている。

 

 何か会話?をした後、鎖は筆染に確保テープを巻き付け、階段を上がっていった。

 

「どこにあるんだー?核兵器、って…」

 

 上がって最初に入ったフロアを見ると、鎖の目の前に核兵器のハリボテはあった。

 

「隠したりとかはしてないのか…って、そんな呑気なことを言っている場合じゃねえ!」

 

 残り時間は2分。悠長にしている場合ではない。そう走り出した鎖の背後に、何やらピンクの陰が這い寄る。

 

「うぐっ?!」

「ごめんねー。こういう作戦だから〜。」

「ぞ、ぞんな…ぐ…」

 

 忍びよってきた須楽によって、鎖は締め落とされてしまったため、ヒーローチーム全員戦闘不能で、ヴィランチームの勝ちとなった。

 

(締め落とすのはえぐい…須楽さん、恐ろしいな…)

 

 その後、鎖はすぐ目が覚めたため、講評に移った。 

 

「今回のMVPは〜、まぁ、筆染くんかなぁ。」

「ありがとうございます。」

「理由としては、やっぱ戦闘をかなり長引かせて、ヒーローチームの体力と集中力を削り、焦りを誘発させたところかな。」

(なるほど。それで最後の須楽さんの奇襲が成功したってわけか。勉強になる。)

 

 その後は先ほどと同じように、全体の流れを解説していった。今回は完全にヴィランチームの作戦勝ちってことらしい。俺的にも、第2戦目を振り返ると、ヒーローチームは終始ヴィランチームに翻弄されていたように思う。なんだったら、筆染一人に二人共やられそうだったし。なんだったら筆染はやられることまで計算していそうだ。

 

「はい、そんじゃあ次!ガンガン回してこー!」

 

 そう腕をぶん回しつつ先生はくじを引き、次の試合の準備を進め、また次、その次と、どんどん進んでいった。

 

---------------------------

 

 全ての試合が終了し、今回の振り返りをしていた。

 

「みんなお疲れ!初めての対人戦だったけど、大したケガなく終われてよかったよー。今回は、考えて戦うことをできてる子や、昨日のレクリエーションで見つけた課題の解消ができてた子が多くてすごかったよ。もちろん、まだまだ付け焼き刃だったり、詰めが甘いところもあったけど、そういうのは今後に活かしていけばいいことだからね。戦術の研究を怠らないように!」

『はい!』

「それじゃあ、私はこれで戻るから、みんなも着替えて教室に帰ってねー!」

(もう終わりか…意外と早かったな。)

 

 去っていく計先生。俺たちも少し雑談しつつ戻ることにした。

 

「いや〜雷閃!惜しかったなー!最後あとちょっとだったのに!」

「いや、そうでもないよ。…えっと、真取、でいいよね?」

「そ!真取吉賀!てか、そうでもないってどゆこと?」

「最後、俺、急に止まっただろ?あれは、俺の体力の限界っつうか、個性使って動き続けると体が動かなくなるんだよ。だから、あそこで固城さんに攻撃できても、俺はどっちみち行動不能になって確保されてたよ。」

「あー、なるほど!確かにな〜。」

 

 真取は納得したようで、深く頷いた。真取は、レクリエーションでは前線を張り、共にオールマイトの足止めをしていた。今回の授業でも、その個性を活かした硬さとパワーで、仏山と石爪二人を相手どっていた。

 

「真取もすごかったよ。二人同時に相手してたし、目標まであと少しだったじゃん。」

「いやあ俺も全然だよ。実質仏山と相打ちだし、ペアとの連携も全然だったしなあ。」

「ペアは残野だったよな。確かに途中別れてそれぞれやられた形になったけど、それでも残野が粘ってくれたから結構いいとこまで行けてただろ?」

「そうなんだけどなあ。なんか、やっぱり一緒に戦えば倒せたんじゃないかと思うと、スッキリしねぇな〜って。」

 

 そう言った真取はもどかしそうにその坊主頭をカリカリと指先で掻いた。確かに俺も、点籐とのもっといい連携の仕方があったんじゃないかと考えていた。

 

「まぁ、次に活かせばいいだろ。」

「そうだよな〜。あー、次早くこねぇかなあ。」

 

 そんな風に、今回の反省点を互いに振り返りつつ、教室まで戻っていった。

 

------------------------------------

 

 午後の授業も全て終わり、少し日が暮れてきた頃、俺たちは教室で、今日一日の感想を話し合っていた。

 

「なんか一日普通に過ごしただけなのに、結構疲れたなぁ…」

「そうか?私は楽しかったけどな。なんかさ、こういうハイテクな学校って、ワクワクしない?」

「わかるかもー。地元じゃこんなところ全然ないし、ちょっとそわそわしちゃうね。」

 

 今は先ほどの戦闘訓練でペアだった川越と固城さんと喋っている。二人はかなり馬が合うらしく、趣味や好きなものが似通っている。

 

「それな!マジで一緒だな私ら!あ、好きな曲なに?」

「キセキ!」

「うぁぁ!キセキも好きだけどなぁ!」

「え〜なになに?ゆずとか?」

「YES!」

 

 よほど嬉しかったのか思い切りハイタッチをした。なんか混ざれないし、別のとこ行くか。

 

「実はあの先輩がよー、ん?雷閃も聞く?」

「うん。何の話?」

「今日さ、昼飯の時に偶然3年生の先輩の近くになってさぁ。その先輩が、俺が中1のときめちゃ仲良かった先輩だったのよ!しかも同じヒーロー科!」

「へーすげー!じゃあワンチャンインターンとか一緒?」

「いや、インターンは2年からだからないなぁ。」

「そっかあ。残念だな。」

 

 そう少し興奮しながら鎖が話す。なにやらドラマチックな再会をしていたようだ。

 

「でも体育祭とかは応援しに行くぜ!先輩の晴れ姿を見てぇしな!」

「いいな!俺も行くぞ!」

「熱いねぇ〜。」

 

 そう息巻く鎖に賛同する真取と茂木。他学年の観戦か。観てみたいけど、そんな時間あるのか、という疑問は、今は胸にしまっておこう。

 

------------------------------------

 

 それから少しして、みんな大分落ち着いてきたのか、それぞれ下校していった。

 

「一日だけなのに大分色々あったなぁ。ちょっと疲れたわ〜。」

「こんだけで疲れたとか言ってたら、3年間持たないぞ?お前。」

「逆に元気すぎない?川越。」

「わ、私も少し疲れましたね…」

「まぁ、濃い一日だったのは確かにそうですね。まだまだ慣れていないというのもあるでしょうが。」

 

 やっぱりみんな疲れているようだ。川越が体力お化けすぎるだけである。

 

「今日は結城と仲良くなれたし、良い一日だったなぁ!」

「川越さんは交友を深めるのが早いですね。(わたくし)も見習いたいです。」

「私なんて、今日三人以外と上手く喋れませんでした…これから生きていけるか不安です…」

「操神さんは大丈夫でしょ。操神さんはみんなの方から寄ってくるタイプだし。」

「そうですかね…?」

 

 不安でいっぱいな顔をしている操神さん。でも、俺たちがいるし、別にいいのでは?と思うけど、友達は多い方がいいしな。

 

「ではみなさん。(わたくし)はこちらですので。」

「私も…それじゃ、また明日…。」

「おう!また明日なー!」

「バイバイ〜。」

 

 千里さんと操神さんと別れ、俺たちも電車に乗る。ガタンゴトンと小刻みに響く揺れが気持ちよく、少し眠くなってしまう。

 

「…なぁ、雷閃。」

「ん?どした?」

「なんか〜…忘れてね?私ら。」

「えー?うーん………あ。」

「…気づいた?」

「ああ…」

 

---------------------------------------------

 

 駅 ホーム

 

「……あいつら、いねぇじゃん。」

 

---------------------------------------------

 

「「天童、忘れてた。」」

 

 そんな俺たちを乗せて、電車は進んでいくのだった。




次回予告

雄英生としての日々を過ごす雷閃たち。
次なるヒーロー基礎学は、少し遅れ気味の体力測定と救助訓練。
少年たちの日常はまだ続く。

第5話 連携!救助訓練!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。