フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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※はじめに

本セクションは、実際には次話で語られる内容でしたが、その内容がセンシティブなものであるため、分離したものです。

特にジェンターの問題について、見る方によってはかなり不快になる部分があります。また、『日本国召喚』におけるいくつかの国のイメージを毀損していると感じる方もおられるかも知れません。

この為、ジェンダーの問題に関して「フィクション」であると割り切って考えられない方、及び、『日本国召喚』の日本以外の国家についてイメージを毀損して欲しくない方は、ここでブラウザバックしてください。

次話以降は、本セクションを読んでいなくてもだいたいのことはつかめるようにしておきます。

あ、あと現状原作にほとんどネームドがいないクイラのキャラを独自にたてていきますので、そちらもご了承ください。



【前書き必読】外交と貿易の影と闇

 ────エクスプレッセスティとクワ・トイネの国交樹立、交易協定・技術支援協定締結から、2週間ほど後の事。

 

「クイラ王国と我がエクスプレッセスティ共和国、国交と自由貿易協定の締結に至りました! これより、どちらも高めあっていきましょう!」

「こちらこそ、両国の国民にとって、この事実が実りある物になるように、最大限努力いたしましょう!」

 エミリアと、クイラ国王 ファタムスは、お互い調印された合意文書を掲げながら、がっしりと握手をした。

 

 ────と、クワ・トイネと同様に友好ムードを醸し出していたが、実際には、エクスプレッセスティとクイラの関係は、石油が産出する国と石油が欲しい国、というドライな関係だった。

 クイラ王国は、ほとんど人間(ヒト種)が居らず、国民の大半が獣人とドワーフで構成されている。

 それに対して、エクスプレッセスティには人間しかいないと聞かされたクイラは、エクスプレッセスティがロウリアのような亜人排斥国家だと思われてしまったのだ。

 この為、この2国の外交交渉が上手くいっていないと知ったクワ・トイネ政府が仲介役となって、クイラの誤解について両国に説明した。

 …………ところが、これが今度はエクスプレッセスティ側にクイラに対する慎重姿勢を招いてしまった。

 

 それというのも、エクスプレッセスティ共和国は、「女性と女性的性マイノリティ()()の国」。

 つまり、そのフィルタリングの条件こそ異なるものの、エクスプレッセスティが自国の理念・価値観に基づいた排他的政策を行っていることは事実なのだ。

 エクスプレッセスティ国民、つまり、エクスプレッセスティ国籍者に、“男性”は存在しない。

 まぁ、売春が常にGDPの10位以内にいる国ということもあって、外国人男性の入国について制限しているわけではないし、あくまで外国籍のままで永住権を得ている男性はいる。

 だが、エクスプレッセスティはそもそも、()()()()()()()()政策をしている。具体的に言うと、エクスプレッセスティ国籍で生物学的に男性として生まれたこどもは、9歳から性徴操作措置を受け、女性的な身体に育つようにされる。

 当然、転移前はこの点を攻撃する人権保護団体はいたが、エクスプレッセスティに言わせると、これこそが「ジェンダーによる人権諸問題の最終解決」となる。つまり、男性的、女性的という既存の枠組みを破壊し、性機能の雌雄に関わらず女性的な身体を唯一の()()()とし、性機能はただ生殖のために存在するものとすることで、より完全なジェンダーフリー社会を実現するというものだ。

 その理論の補強として、エクスプレッセスティは、雌雄の体格差が顕著な哺乳類は人間以外にほとんど存在しない事を上げている。

 実際、特に高度経済成長期突入後に生まれたエクスプレッセスティの子供は、それが当然の社会で育つため、女性的な体型を魅力的と考える。男性機能を持つ子供でも、思春期には、他者より性徴操作措置の発露が遅れて、自身のバストがなかなか大きくならないことに思い悩んだりする。

 そもそも、「理想の男性像」「理想の女性像」は、文化による影響が大きく、地域や時代によって変化することは、人類史ではっきり証明されている。

 例えば、現代日本だと「美男子」とされるのはカナタやヤゴウのような優男だ。だが、ハンキのような、筋肉質でがっしりした巨躯の男性を魅力的に思う女性もいるし、それが主流だった地域や時代もある。

 現状のエクスプレッセスティの場合、本能的に異性愛に発展したい場合は、その社会の中で、男性機能保有者と女性機能保有者の間でカップリングが成立するだけのことなのだ。

 もちろん、インターネットや書籍、テレビ放送など個人向けメディアの検閲をやっているわけではないので、特にカナタのような中性寄りの男性に魅力を感じる者は、少数派ではあるが存在する。ついでに言うと、サブカル的に()()()()のも珍しいというほど少数派ではないし……

 ────────ともあれ、概ねこの内容が、エクスプレッセスティが、建国委員会による開発独裁の時代から主張しているものである。

 

 

 ────なので、エクスプレッセスティとクイラは、最終的にわだかまりが解けなかった。

 この為、クワ・トイネ公国との間程には、親密な関係は、どちらも望まなかった。

 ただ、実際には、現状の新世界の既知の範囲では強国であるエクスプレッセスティに対し、それを見抜けないクイラは、エクスプレッセスティ側の悪意に気づけなかった。

 まず、ロウリアがクイラに対しても野心を持っていることを、クワ・トイネとの交渉で知っていたにも関わらず、クイラに対しては軍事的な支援は、非公式なものも含めて一切約束しなかった。

 もっとも、これはクイラ側としても、ロウリアに対する防衛に自信を持っている一方で、エクスプレッセスティの軍人が国内に駐留することに、拒絶とまではいかないまでも否定的だった。

 次に、自由貿易協定。

 これは、一見すると大筋でクワ・トイネ公国と交わした交易協定と大差ない内容、 ……と、クイラどころか、クワ・トイネの政府関係者ですらその全文を読んで、最初のうちは気付かなかったのだが、この協定、実は“自由”を建前に────

 

 “クイラの関税自主権を取り上げるもの”

 

 ────なのである。

 確かにエクスプレッセスティは石油を必要としている。だが、エクスプレッセスティは国内に、転移前でも世界最大級だったウェットガス田をもつ、エネルギー資源産出国でもある。

 つまり、クイラからの輸入を必要としている一方で、将来的には商売敵になる可能性もあるわけだ。

 しかも、世界転移したことでガスやその加工品の輸出先がなくなり、国内にダダ余り状態だ。技術支援の代価として石油資源開発、INPEX、台湾中油、Naftgazに優先採掘権を与えていたのがこの状況で裏目に出て、これらの企業から製品を国費で買い取っている状況なのである。

 クワ・トイネへの技術支援も、善意は当然あるものの、将来の需要家の開拓という目的が同時に存在していた。

 なので、石油資源で得られた代価でクイラが工業化し、石油を原油ではなく付加価値のある製品として輸出されると、()()()()()()()()()人件費がべらぼうに高い方になってしまうエクスプレッセスティとしては困るわけである。

 なので、クイラにその目が出た場合、ダンピングをやってでも自国製品を押し付けて叩き潰す。その意図が含まれているのだ。

 

 クワ・トイネの政府関係者は、エクスプレッセスティ-クイラ自由貿易協定締結後に、再度その全文を確認して、気がついた。

 クワ・トイネとの交易協定に含まれている、“緊急時特別関税設定制度”が、クイラとの自由貿易協定には書かれていなかったのだ。

 クワ・トイネの場合、エクスプレッセスティはそれなりに農業生産力がある為、生産品目によってはクワ・トイネ側が被害を受ける可能性がある為、相互の産業を防御するために必要だった。

 だが、クワ・トイネはクイラに対しこれについて指摘しなかった。

 それは、クワ・トイネとしても、クイラが工業化されると困るからだ。

 クワ・トイネは自国出身の職業軍人志願者が少ないため、これをクイラからの傭兵、現代流に言えば“外国人部隊”で補ってきた。

 クイラの産業が発展して、クイラが富み、クイラ国内に雇用が創出されると、それが皆無になることはないにせよ、劇的に減少して、クワ・トイネの安全保障体制に悪影響が出る。

 その一方で、クイラは、自国の地形上の有利もあって、ロウリアの侵攻を自力で跳ね除ける自信を持っていたため、これまでクワ・トイネが何度も攻守同盟を呼びかけても、クイラ側はかえって巻き込まれると拒み続けていた。

 それに対して、エクスプレッセスティは軍事支援に前向きな姿勢を示していた。

 なので、クイラをフォローしても、クワ・トイネには損になることがあっても、益になることはほとんど無いと判断し、それをしなかったのである。

 

 

 綺麗事ではすまない。それが外交である。

 

 

 ────ただ、実際にはエクスプレッセスティは、交渉開始当初、クイラにもクワ・トイネばりの、あるいは、それ以上の技術支援を予定していた。

 なんと、農地拡大のための緑地化計画までたてていた。

 燃料がダダ余りになっているので、それを投資する建前が必要だったからだ。

 クイラは不完全な初期の情報から初動を誤り、これらを享受する機会を失った。

 

「クイラがクワ・トイネの様に支援を受けたかったら、ロウリアや□□□□□□□と同じ様に、エクスプレッセスティと戦うしか無いよ。戦って、その強さと、自国の無力さを知るしかない」

 これはかなり後の話、とある列強の一角がエクスプレッセスティと戦い没落した後、ある国の商人の発言である。

 

 





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