エムブラセクスを
エムブラセクス首都圏を抜けると、左右は田園風景となる。大規模農園の水田は、稲穂が
エクスプレッセスティが鉄道技術の導入元とした日本と比べ、軟弱地盤は共通しているものの、開けた平野に最初から区画された大農場を建設し、鉄道路線も可能な限り直線的に敷設された。
日本国内型鉄道車両の、加減速を繰り返す想定とは外れるものの、線形がよくダイヤ密度の低い区間を最高速近くで巡航することを苦手としているわけではない。それに681系やキハ189系の導入が始まった頃は、すでに大都市圏のダイヤが過密化しており、加減速性能は必要だった。
ピィイィィィーッ
AW2警笛の音に、ミルヴィアとソフィアンが車窓に目を向けると、相対速度200km/h以上で、DD51形重連の牽引する貨物列車とすれ違う。
積載するコンテナがほとんどタンクコンテナのコンテナ車が連なる。日本のコキ100系貨車に準じた性能のものだが、台車などの部品についてはその前の、コキ50000形、コキ10000形など、中古で入ってきた車両の発生品が使われているグループもある。
2人は、最初は、好奇心はあれどさほど驚いたわけでもない様子で、車窓の外側の至近距離をすれ違う貨物列車を見ていたが、 ────
「え……は?」
ミルヴィアが、間の抜けた声を出してしまった。
高速ですれ違っているはずなのに、貨物列車の最後尾がなかなか見えてこない。何両ものコンテナ車が自分達の来た方へと飛ぶように走り去っていき、ミルヴィアが声を出した直後、最後尾の大型有蓋車ワキ10000形、ワラフ11000形(元・日本国鉄スニ41形)2両が過ぎ去り、走り去っていった。
エクスプレッセスティ国鉄最大の1,100トン特急貨物は、貨車だけで22両、非電化の南東本線ではDD51形重連の2両が加わり24両になる。全長は480mを超える。北米大陸のマイル・トレイン(全長1マイル≒約1.6km以上)ほどではないとは言え、先頭から最後尾まで走ったら息切れする長さだ。
実際のところ、ミリシアルやムーの貨物列車は、規模だけ考えればこれを上回っている。だが問題は速度だ。旅客列車とさして変わらない速度ですれ違っていったように見えた。こうなると、特に直通ブレーキの効きが問題になってくる。機関車でブレーキ操作をしても、最後尾のブレーキ弁が応答するまでに相当のラグが発生してしまうのだ。
「貨物列車も相当な速度で運転しているようですが……安全面は大丈夫なのですか?」
ソフィアンが、向かいに座っているユウキに訊ねた。
「はい。高速運転そのものを起因とする事故はほとんど起こりません。事故自体、軽微なものや天候などの不可抗力を除けば、年に数件あるかないかです。旅客列車と同じ最大制動距離以下で停止できるようになっています」
ユウキは、中性的 ──── とはまた違うが、女性の顔で男性性を表現したような、自信あり気な表情でそう答えた。
「我が国の自動空気ブレーキでは、どうしても機関士のブレーキ操作から、列車最後尾の車両のブレーキ応答まで時間がかかってしまいます。エクスプレッセスティの貨物列車はこれとはまた違う機構なのですか?」
ソフィアンが、重ねて訊ねる。
「ええと……私は専門外なのですが、おそらくブレーキの基礎構造自体はムーと同じです。ただ、ブレーキの応答を高めるために、空気圧での操作以外に、電磁中継弁を併用しています」
「ああ、その方法があるのか!」
申し訳無さ混じりにユウキが答えるが、それを聞いて、ソフィアンの顔がぱっと明るくなる。
それに対して、ミルヴィアは少し浮かない表情になる。
ムーにとっては、もう解決したも同じだ。技術形態が近いのだから、エクスプレッセスティの真似をすればいいだけだ。だが、ミリシアルはその前に魔法技術に応用して反映させるという、超えるべきハードルが存在している。
「それと、もうひとつ気になったのですが」
ソフィアンが、さらに訊ねる。
「この南東本線は、ガス燃料の輸送に使われていると聞きました。ただ、今の貨物列車を見たところ、ほとんどがコンテナ車で、その上にタンクが載っている感じでしたが……」
「あ、はい。おそらくお2人の御国では、貨車毎に行き先を割り振って、操車場で繋ぎ替える、私達が “ヤード・バンプ方式” と呼んでいる方式が使われていると思います」
ユウキが、手振りを加えつつ説明する。
鉄道の走行装置に関しては、ユウキは専門外だが、鉄道コンテナ輸送については、エクスプレッセスティではガス事業と密接に関係していて、ある程度の知識がある。また、今回、タンクコンテナ輸送について質問された時のために、予備知識を入れてあった。
「ですが、この方法ですと人員が多く必要な上、到着までに時間がかかります。そこで、我が国の鉄道貨物はほとんどがコンテナ化されています。行先が違う場合も、積替えも車両ごとではなく、コンテナ単位で、フォークリフトで短時間に積み替えることが可能です。また、コンテナは自動車でも輸送可能なので、鉄道が行き届かないエリアやダイヤがうまく合わない場合、末端を自動車輸送で補うことが可能です。列車運行に関しても、言わば貨物列車の “指定席化” が可能になり、単純化できます。これらにより、省力化、速達化、効率化が同時に図れるわけです」
「なるほど……」
ソフィアンが、納得の声を出したが、
「このような形態は、転移前世界の標準的なものですか?」
と、ミルヴィアは重ねて問いかけた。
「いいえ。国としては少数派です。ただ、先進的な国での採用が多いです。我が国が大胆な鉄道コンテナ輸送を標準化しているのも、その鉄道技術が日本国を由来にしているためですね」
ユウキは、僅かな苦笑交じりに、そう言った。
車窓の光景は、引き続き田園地帯だったが、エクスプレッセスティの耕作地の大半を占める水田から、野菜や小麦の畑に変わってくる。
エクスプレッセスティは、小麦に関しては輸入に頼っていたが、国産がまったくないわけではない。ほとんどが麦には適さない湿地土壌の中で、プロパラダイスス付近は比較的水はけがよく、野菜類とともに小麦栽培を行う農園が点在している。
ま ━━━━━━━━ た例によって日本の固定種に頼り、昭和26年に開発された、万能性のある
もちろん、どこぞのように黙って持ち出すのではなく、メディアを呼んで感謝式典まで大々的にやって正式に譲ってもらうアピールをした。
話題が途切れて少し経ったところで、
「ところで、お2人は、昼食は済まされてきたので?」
と、ユウキが、人懐こそうな少年のような表情で訊ねた。
すると、
ぐぅ~きゅるる~
と、ミルヴィアの上腹部あたりから、空気を震わせる低い音が聞こてきた。
「その……」
「あ、え、えっと、そのような時間がありませんで……」
顔を真っ赤に染めるミルヴィアの隣で、ソフィアンが慌ててフォローするように、手振りを加えながらそう言った。
「そう言うことでしたら、何か食べ物をお持ちしましょうか?」
「そうですね……」
ユウキの提案に、ソフィアンが少し考え込む。
「この車両がカフェカーだと聞いておりましたけど、よろしければそちらに案内していただけますか?」
ソフィアンが答える前に、ミルヴィアがそう言う。
「せっかくでしたら、文化がどのようなものか知っておきたいですし」
「なるほど。それではご案内いたします」
ユウキがそう言って、3人は貴重品を手に、座席から立ち上がった。
「えっと」
通路に出てすぐ、ソフィアンが、どこかもじもじとした様子で言う。
「私は先に、お手洗いに行きたいのですが……」
「え、あ、ああ、すみません、気づきませんで」
ソフィアンの言葉に、ユウキがあえて謝るように言う。
「ミルヴィアさん、しばらくお待ちいただけますか? 先に案内してきますので……」
「あ、いえ」
ユウキがミルヴィアにそう言ったが、それをソフィアが遮る。
「鉄道車両に慣れていないわけではないですから、場所だけ教えていただければ」
「そうですか?」
ソフィアンの言葉に、ユウキは、少し戸惑った様子で訊き返すような言葉を出してから、
「では、お手洗いはカフェ室の反対側になりますので」
と、手を差し出すようにして、デッキの方を示しながら、そう言った。
「ありがとうございます。失礼いたしますね」
そう言いながら、ソフィアンはデッキ側の客室仕切扉を開けて、その外へと出ていった。
「では、先に行きましょうか、ミルヴィアさん」
「あ、はい。お願いします」
ユウキは、ミルヴィアを先導して、反対側の客室仕切扉を開け、2人で扉をくぐる。
「はー……」
カフェ室の車内を見て、ミルヴィアは物珍しそうに、室内を見回した。
「ライドルカやカリンテ……あ、失礼、他のセクションの者から聞いておりましたが、確かに
「ええ……転移前世界ですと、ファースト・フード・ショップと呼ぶ形態がより近いですが」
言いながら、ミルヴィアが視線をユウキに戻すと、ユウキは整った笑みでそう言った。
「ファースト・フード……というのは?」
「手づかみか、フォークやスプーン1本程度で食べられる軽食を、
「手づかみで……あ」
ユウキの説明を聞きつつ、ミルヴィアは、カウンター上部に提示されているメニューの写真を見て、気がついたように声を出すと、一旦周囲をキョロキョロと見回す。
「なるほど、こういう食べ物なのですね」
ミルヴィアは、スツール席でハンバーガーにかぶりつこうとしている乗客を見た後、視線をユウキに戻してからそう言った。
ユウキは、ミルヴィアを促しつつ、エスコートするかたちでカウンターに向かう。
「いらっしゃいませ」
ミルヴィアの目には、異質だが衛生的なように見える衣装に身を包んだ、カウンターのオーダー係が挨拶をする。
「メニューはありまして?」
「はい、こちらをどうぞ」
ミルヴィアが訊ねると、オーダー係はカウンターの表面の、透明アクリル板の下におかれたメニューを示した。…………のだが。
「あ、えーと…………」
「す、すみません、この方ミリシアルからお越しになられた方で……」
困惑気な声を出したミルヴィアに続いて、ユウキが軽く慌てたように言う。
「失礼しました。世界共通文字で大丈夫でしょうか?」
「あ、は、はい」
ミルヴィアが答えると、オーダー係はクリアホルダーに挟まれた、世界共通語話者向けのメニューをそっとカウンターに置き、示した。
「…………」
そのメニューを見て、ミルヴィアは一瞬それに見入る。
「あの……おすすめのものとかありまして?」
「国外からの方が初めてお試しになられるのであれば、シャウエッセンホットドック・プレーンペッパーが、一番クセがないかと」
「では、それをお願いします」
ミルヴィアがそう言うと、オーダー係は端末に入力する。
「サイドメニューとドリンクはよろしいですか?」
「ええと……サラダがあればと思ったのですが……」
「ございますよ。2種類だけになってしまいますが」
オーダー係は、そう言って、ミルヴィアが見落としていた小さな写真を示す。緑色野菜中心のフレッシュサラダと、緑黄色野菜中心の温野菜サラダ、がラインアップされている。
「では、このフレッシュグリーンサラダをお願いします」
「かしこまりました」
「それと……飲み物なのですが、その、後ろの写真にあるものを頂きたいのですが……」
ミルヴィアがそう注文すると、ミルヴィアの視界の外で、ユウキが悪戯っぽく苦笑した。
「ドクターペッパー・クリーム・フローズンですね。Lでよろしいでしょうか?」
オーダー係が訊き返す。LargeのLだが、
「はい」
「かしこまりました。他に御注文はございますか?」
「いえ、ひとまずここまでで」
「かしこまりました。お会計は ────」
「あ、自分が払います」
精算に移りかけたところで、ユウキがスマートフォンの電子決済アプリを立ち上げた状態で、割って入ってきた。
「Budding pay」という、エクスプレッセスティ国内でデファクトスタンダード化している電子決済システムで、felicaリーダーを使って支払いを済ませる。
「ありがとうございます。こちらの番号でお待ち下さい」
オーダー係が、レシートプリンタから吐き出された番号札を差し出す。ミルヴィアがそれを受け取ってから、次の利用客の邪魔にならない場所まで離れてから、
「それは ────」
と、ユウキの手の中の、AQUOS sense9を指して、言う。
「確か、音声通信中心の端末だと聞いていましたが」
「あ、ええ……今のは電子決済システムと言って、直接現金を持たず、えーっと……決済用に用意された口座情報から直接支払いを行えるシステムです。元々は情報が書き込まれたカードを使うシステムでしたが、それに代わってこのスマートフォンを使うようになりました。カードを別に携行する必要がないだけではなく、銀行口座から専用口座に預金を移したりすることも移動端末からできます」
「そのサイズで、そこまで……ううん……」
ミルヴィアは、少し難しそうに考え込んでしまう。
エクスプレッセスティ国外から見ていると、センセーショナルな軍事技術に目が行きがちだが、実際には市井の生活まで、自分達の感覚からは想像を絶する超技術が行き届いている。
「せっかく可愛いらしいのですから、そう難しい顔ばかりしないでください」
「え?」
ユウキの言葉に、ミルヴィアは、少し驚いたように、跳ねるように視線をユウキに向ける。
「憂い気な顔も女を引き立てるとは言いますが、やはり笑顔が一番
「は、はい……えっと……」
サラッと自然体で言うユウキに、ミルヴィアは、少し戸惑ったようにして、あたりを見回す。
「そ、ソフィアンさん、遅くないですか?」
「そう言えばそうですね……」
言われて、ユウキも少し心配そうな顔になり、自車の客室側の仕切り扉に視線を向けた。
「なっ、なにこれ……」
「ひっ、はっ、す、すいちゅく……」
「ひゃあぁあ゙ぁぁぁん!! 洗われてる、おひっひょのでぐひ洗われてるふぅうぅぅぅっ!!」
「んにゃあぁあ゙ぁぁぁっ、お豆、お豆みがいひゃらめぇえぇぇぇっ!!」
「ん゙にゃあぁあ゙ぁぁァァァッ!!!!」
「番号札206番でお待ちのお客様ー」
「あ、はい」
自身の番号札を確認して、ミルヴィアは受け渡しカウンターに向かう。
「お待たせしました。ホットドックのプレーンペッパー、フレッシュグリーンサラダ、ドクターペッパー・クリーム・フローズンのLですね」
「はい」
番号札と引き換えに、ミルヴィアは注文の載った紙製トレイを受け取る。
「ケチャップ、マスタードはそちらに用意してございますので、お好みでおつけください」
小パウチのケチャップやマスタード、それに木製使い捨てのスプーンやフォークが並べられた棚を指して、オーダー係は言う。そして、
「ありがとうございました」
と、丁寧に言って、ミルヴィアを見送った。
「あ、ソフィアンさん!」
ユウキの声で、ミルヴィアもそちらへと視線を向ける。
仕切り扉から、項垂れた様子のソフィアンが、よろめくように2人に近づいてくる。
「どうしました? 気分でも悪くなりましたか?」
慌てた様子で、ユウキが訊ねる。
「いえ……気分は悪くないというか……気持ちは良かったです……ただ……」
「ただ?」
事情を知らないミルヴィアが、続きを促すように問いかける。
この時点で、ユウキはすでに顔を手で覆っていた。
「スゴかった…………」
「??」
まだイマイチピンとこないミルヴィアだったが、半ば無意識に、フローズンのカップを持ち上げて、ストローを吸った。
「こ、これは!」
驚いて、一瞬口を離すものの、カップを凝視すると、
「冷たい刺激……こんなのは始めてですわ……でも美味しい……!!」
ミルヴィアの反応を見て、ユウキが、アニメのように後頭部に汗をかく。
──我が国の人間が言えた義理じゃないが、なんでこの世界の住民、やたらドクターペッパーの受容率高いんだ…………?
よし、鉄道編に一度は誰か餌食にしないと(何
https://twitter.com/kaonohito2/status/1784363880271213022
NovelAI Dffusion V3版総統閣下。
2枚目は初生成、はっちゃけモード。
エミリアがおかしいのは性別よりもトシ(アラフォー)なんだよね。
具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。
ユウキは……
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ミルヴィアを食う
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ソフィアンを食う
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2人とも食う
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紳士と言う名の淑女はそんな事しない