フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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炎の夜宴 Part.I (改題:2024/08/30-JST基準)

「早く火を消せ!!」

「このままじゃ本棟や兵舎まで延焼するぞ!」

 レイフォル領内、ヒノマワリ国境線付近。

 グラ・バルカス軍、バルクルス基地。

 航空隊の基地施設で、大火災が発生していた。

 時刻は日没を過ぎていたが、暗い空の下、炎が煌々と周囲を照らしている。

 航空燃料タンク群に、エクスプレッセスティ軍の第101ロケット砲小隊によって、立て続けにトーチカU 2発を撃ち込まれた。

 エクスプレッセスティのJet-A燃料と異なり、グラ・バルカスの航空燃料は、揮発性、引火性の高いガソリンだ。

 ウィラが設置した電波標識によって、ほぼ直撃を受けた1基は、一瞬にして火球と化し大爆発を起こして跡形もなくなった。その高温や破片を浴びた他のタンク群も次々に爆発し、炎が撒き散らされる。

 駐機していたアンタレス戦闘機3機ほども吹き飛ばされ、無惨な姿で滑走路上に転がっている。その周囲にあったアンタレスやシリウス爆撃機も、大なり小なり損傷を受けていた。

「ダメだ! このままだと弾薬庫にも火が入るぞ!」

「無事な機体を遠ざけろ! 全部燃えてしまう!」

 整備員や搭乗員が、駐機場の外縁部から、アンタレスやシリウスを移動させようと、機体に取り付こうとする。

 だが ────

 グワッ、ゴワッ、グワッ、ドゴォォォッ!!

「ぐわーっ!!」

 追撃のように、滑走路へと砲撃が撃ち込まれる。

「敵砲兵だ!」

「馬鹿な! 敵の重砲が射程内に展開して、誰も気付かなかっただと!?」

 基地の守備にあたっていた下士官が、信じられないと言った様子で声を上げる。

「違う! 敵の野戦重砲は自走式なんだ!」

 グラ・バルカス砲兵隊の生き残り、観測班の人間が叫び返した。

「装甲車に搭載されている! 展開開始から射撃開始まで10分も必要ない!」

「敵の火点は特定できないのか!?」

 下士官が再度、声を張り上げて聞き返すように言う。

「無駄だ! 既に相手は射撃位置にはいない! そう言う兵器と運用法なんだ!!」

 

 

「第2砲兵小隊、予定通り、第2地点に移動完了」

『了解、再装填終わり次第相応射撃体勢で待機。片肺にするな!』

「了解、OUT(交信終了・返答不要)

 片肺、というのは、元々は双発の航空機でエンジンの片方が停止した状態の俗称だが、そこから転じて、2S016に2基搭載されている4M51エンジンの1基を停止させる事を指した。

 2S016の部隊が長時間の待機する際、エンジンのアイドリングによる燃料消費を節約するため、片方のエンジンを切ることが多い。射撃系は、片方のエンジンだけでも動作する。

 司令部からの指示は、それをするな、というものだ。それはつまり、いつでもその場を離れられるようにしておけ、という事を意味している。

「カートリッジ再装填急げ! いつでもケツまくれるようにしとけよ!」

 アストリッドが部下に檄を飛ばす。

 9T016が2S016に隣接して停車する。9T016の車体後部の再装填用ハッチが開き、2S016の装填機構へ向けて、コンベアブリッジが渡される。

 その最中、その2S016の乗員が、装填機構の空カートリッジを蹴飛ばして後方へと落下させた。

「とりあえずキレーに吹っ飛んだかな?」

 作業中の部下を余所に、エクスプレッセスティ製の双眼鏡を覗き込んでいるアーツに、アストリッドが声を掛ける。

「砲撃だけで黙らせるつもりなら、まだもう一押し必要っぽいですが」

 その視界の中で、滑走路まであちこち炎が上がりつつも、まだ目立った損傷のない単発機があった。

 それを聞いて、アストリッドがスッとぼけた笑顔になる。

「味方がそれだけ待ってくれるか、ってところか」

 

 

「軍団長! 敵襲です!! 敵の装甲部隊が接近しています!!」

「そんな馬鹿な……────」

 半裸のナタリーを連れたまま、火災発生の報で既に軍装を身に着けていたガオグゲルだが、その報告を聞いて、あからさまに狼狽える。

 ──── エクスプレッセスティ軍の、今回の作戦意図は、あくまでヒノマワリとムーの防衛である ──── 思い込みだけではない。グラ・バルカス軍とてあたら盲目ではない。情報は収集していた。

 エクスプレッセスティはレイフォル領そのものには興味がない。バルクルス基地の存在は疎ましく感じているが、それでも、さしあたっての状況としては、基地機能に対する攻撃の可能性はあっても、地上部隊による侵入の可能性は低いとされていた。

 その根拠はいくつかあるが、大きなものとしては兵站の問題がある。

 ムーのアルーまでは鉄道が通っているし、道路もある程度は整備されている。しかし、ヒノマワリ国内は、鉄道はなく、自動車を前提とした道路整備もされていない。

 そこで兵站が隘路になると、現状、グラ・バルカス軍の航空攻撃を完全に防ぐことは不可能であるため、無駄に損害が積み上がる可能性が高い。

 したがって、仮にバルクルス基地制圧が実行に移されるにしても、それは、もう少し先、少なくともミティオ基地のジェット機対応化改修が終わり、エクスプレッセスティ空軍が進出してから、と考えられていた。

 このガオグゲルの想定は誤ってはいなかった。ほぼその通りで準備されていた。

 それにも関わらず、強襲をかけてきた。

 半日ちょっと前まで、エクスプレッセスティ軍自身が想定していなかったのだから、ガオグゲルらグラ・バルカス軍側が想定できているはずがなかった。

「後々の兵站を考えたら、無謀な攻撃のはずだ! それが……それがどうして……」

「まぁ十中八九、捕虜奪還のための襲撃かしら?」

 ガオグゲルが、自問するように呟くと、傍らのナタリーが、どこか他人事の様子で、やはり呟くように言った。

「ほ、捕虜奪還だと!? た、たった11名の為に、この規模の襲撃を決行したというのか!?」

「まぁ~、御国は人権意識の低い国ですし、実際想定していた事をやってしまったわけですから…………」

 信じられない、という様子のガオグゲルだったが、ナタリーに説明されて、顔色を()くす。

「そ、それは……」

 ナタリーの言葉に、ガオグゲルが言葉をつまらせた、その時。

 タン、タン!!

 部屋の外から銃声が聞こえる。司令部棟の外からではない。明らかに、廊下側から発砲音が、立て続けに響いてきた。

 

 

「敵防御陣地まで1000切ります!」

「弾種H()E()! 目標、…………適当でいいそれっぽいのを狙え!」

「そんな、ムチャクチャな!」

 無線のPTTスイッチを押しながらのクロエの指示に、乗車しているT-64-120の砲手が、慌てた声を出す。

「時間が惜しい! とにかく斬り込んで収容予定場所まで突っ込む!」

 クロエはそう言った。

「どうなっても知りませんよ!」

 言いながら、砲手は指示に従って、照準器のスコープを覗き込んだ。

 車体側の操縦助手席に収まっている、本来の車長が、書きれたような表情をクロエに向ける。

「旅団長ォ…………最近、(ユキ)(中佐)に毒されてないですか?」

 

「へっぶしっ!!」

 

 ゴーンッ!

 先頭を走っていた第1装甲連隊・第1戦車中隊・第2戦車小隊の1号車の砲塔前面に、被弾の火花が散り、音が響いたが、その()()は止まらない。

「うわっ! ダメだ! 47mmなんか効いちゃいねぇ!」

「キャタピラだ、キャタピラを狙え!」

 対戦車障害物の後ろから、盛土に隠された47mm速射砲がT-64-120を撃った。目標が大きい上に、薄暮の時間帯にヘッドライトを()けて隠しもせずに突進してくる目標に容易く命中したが、蚊でも指したかのように平然と突進してくる。

 ドンッ! ドン、ドンッ!!

 1個小隊4両のうち、1号車を除く3両が榴弾で撃った。バルクルス基地東側の対戦車陣地に120mm榴弾が撃ち込まれる。

 1号車に命中させた速射砲陣地も、盛土、砲もろとも吹き飛ばされてしまった。

「……──── ッ」

 クロエが、突入直前の指示を出そうと、無線のPTTスイッチを押しかけたときだった。

 バキャッ メキャッ グシャッ!!

 1号車はそのまま敵陣地に突っ込んだ。第2小隊車が付けていたドーザーブレードでパリセードを引きずりつつ、抉られた土塁も、急造の浅い壕も踏み潰しながら、バルクルス基地の敷地内に突っ込んでいった。

「あーあーあー、ムチャクチャだよもう」

 2号車の砲塔内で、砲手が顔の目元を手で覆う。クロエは一瞬前の姿勢のまま、目を点にし、口を半開きにしていた。

『パンサー2-1よりリーダー! 視界内に味方の姿なし、撃っていいですか?』

 敷地内にだいぶ突っ込んで停止した1号車から、クロエに問いかけてくる。

「好きにして……」

『了解、撃ちます!』

 ドゴォッ!!

 メキメキメキメキバリバリバリバリ……

 味方がいない、事だけ確認して発砲された1号車の砲弾は、監視用の櫓の基部あたりに命中した。その櫓がひん曲がり、倒れ込んでくる。

 捕虜が集められている場所がそこではない事だけは解っていた。

『センパ……旅団長、何やってんですか!?』

 無線からユキの、ツッコミ以外の何物でもないそれが入る。

「派手にやるって言ったじゃない」

『ものには限度ってものが……』

 半ば投げやりに言ったクロエに、ユキが呆れた声を返してくる。

『1IMT、私語は慎め』

『ほらァ! ……仕事の話しに戻りますよ』

 アルーHQからお叱りの通信が入ったところで、ユキの言葉とともに、クロエも表情を引き締め直す。

「シーマから報告は?」

『「見えてる、(めくら)撃ちはやめろ」』

 クロエが問いかけると、アルーHQが答えた。

「場所は動いてるの?」

 少し表情を険しくして、クロエが問いかける。

『いや、予定通り。ただ、今1人離れていて、タカナ・インダリ・ミラー・フジワラ一等兵曹と亡命希望の敵軍准尉が救出に向かっているとの事』

「ちょっと!? 捕虜と敵軍兵に救出やらせてるの!?」

『手が足りないんだと。 …………ああ、25ACが一緒なのか。ちょうどいいから暴れてきて』

『25AC了解……先輩奢ってくださいね』

 一緒と言っても、ユキと、ティイナ・ノギ・ライネン麾下の小隊のうちの5名だけだ。

 統合機械化旅団は、ミズポワーベルク常駐で山岳編成の4IMT(第4統合機械化旅団)を除き、障害物があると言っても、せいぜいが日本の平野部程度を主戦場として訓練を受けている。市街戦の訓練も受けてはいるが、敵の重要施設に飛び込むような戦闘はそれほど優先度が高くない。

 25AC(第25空挺中隊)が属する5VDV(第5空中機動旅団)は、特殊戦が想定されるエクスプレッセスティ陸軍空中機動旅団群(Vozdushno-desantnye voyska)の中でも、遊撃部隊の扱いであるため、転移前より非対称戦の訓練を最も積んできている部隊だった。

「はいはい」

『なあなあにしませんよ……1MIP(Mechanized Infantry Platoon)、想定通り攻撃班は突入後、左翼兵舎群を攻撃。回収班は正面本部棟へ向かう! OUT!』

 ユキの声が、一気に“ジン・ハークの鬼”“キージの生まれ変わり”と呼ばれた者のそれになる。

「1IMTリーダーから1TR(Tank Regiment)各局、1MIP、25ACの突入を支援して突入する! OVER」

『パンサーリーダー了解。パンサー1、パンサー2、予定通り敵本部棟正面を固めろ。パンサー3、パンサー4、右翼滑走路へ向かえ! 適当でいいから榴弾全弾撃ち込んでこい! OUT!』

 

 

 タンッ、タンッ、タタンッ、タンッ!!

「そんなへっぴり腰で撃ってるんじゃない!」

 タン、タン、タンッ!!

「がぁっ!!」

 通路の障害物に身を隠しているところへ、グラ・バルカス兵のボルトアクション小銃の射撃が途絶えた瞬間、レオナが拳銃で3連射をかけ、少なくとも1人が倒れた。

 本部棟の中に残されていた人員数が少なかったのは幸いだったが、それでも2人で突破をかけるのは多勢に無勢に過ぎる。

「やっぱり使い勝手が結構違うなぁ……」

 超ロングヘアのレオナに対し、ショートヘアの、エクスプレッセスティのシーメール、タカナ・インダリ・ミラー・フジワラ一等兵曹が言う。

 本来は、転移前の地球であればハーグ陸戦条約違反だが、タカナはとりあえず、レオナが拝借してきたグラ・バルカス軍の制服を身に着けていた。手には、レオナと同じグラ・バルカスのオートマチック軍用拳銃が握られている。

 ドゴォン!!

 グワッシャアン!!

 棟の外から、大口径砲の射撃音と、何か塔のような建造物が倒されたような音が響く。

「どうやら、派手な救援が来たようね」

 レオナが悪戯っぽい苦笑をしながらウィンクして言うと、タカナは苦い笑いを浮かべた。

 

 

「ベタ付けしろ! 味方の射撃の爆風が入らないように!」

 建物に向かって左右を戦車が塞ぐ中、BTR-4SE 2両が展開し、後部から本部棟に近接する。後部ハッチが開く。

「向かえだけっていう話が、突入かけることになってしまって悪いな!」

「想定のうちですよ」

 1両からユキが飛び出し、続いてもう1両からティイナが降りてくる。ティイナの小隊の隊員4名が、M9/357を携えてそれぞれのBTRから降りてくる。

「ついでに、ティーには重責まで背負わせることになっちゃって……」

「これも、25ACの心得のうちです」

 そう言うティイナは、25ACの隊員の中で、唯一、Fort-206/243を手に持っている。

「そう言ってくれれば頼もしいけど」

 そこまで、苦笑交じりに言っていたユキの表情が、泣く子も黙る鬼中隊長の顔に変わった。

「25ACリーダーからシーマへ、準備完了!」

『了解、OUT』

 シーマ ──── ウィラはユキへ返答すると、地下に続く階段から、1人の人影が上がってきた。

「う、撃つなーッ、俺は、味方だーッ!」

 そう叫ぶ声は、男のものだった。

「射撃待て!」

 ターン、ターン!!

 ユキの制止にもかかわらず、響いた銃声は、エクスプレッセスティ軍のものではなかった。

 何発かの小銃弾が命中し、その男は倒れた。

「火点、左!」

 パタタタタタタ!!

「ぐぁっ!」

「がっ!!」

 ティイナの指示に、部下がM9/357を撃ち込むと、そこで3人程のグラ・バルカス兵が倒れた。

「一気に渡る!」

「大丈夫だ、そのまま車内に飛び込め!」

 ウィラの声に、ユキが声を張り上げて答えた。

「亡命希望の男性1から行く!」

「了解!」

 すると、若い男性、ナタリーにチェリーを切られたエリクセ上等兵が、半裸のエクスプレッセスティ軍捕虜を1列に引き連れて、BTR-4SEの1台の車内に飛び込んだ。捕虜も2台のBTR-4SEに分乗する。

「悪ィな、これも戦争なんでね」

 ウィラに、デコイとして放り出され、彼にとっての味方に撃たれて絶命したグラ・バルカス兵の亡骸に、ユキは、まずそう言った。

「2階の図面は完全じゃないかも知れません」

「了解。25AC、目標は2階、突入!」

 すれ違いざまに、ウィラからの言葉を聞いて、ユキが下令する。

 

「目標は、視認可能か!?」

「え?」

 レオナは、彼女には聞き覚えのない声で、階段の階下側からの問いかけに、一瞬、戸惑ってしまう。

「いえ! いません!!」

「了解、死にたくないやつは全員伏せてろ!!」

 タカナの返答に、怒声のような声が聞こえてくると、タカナは慌てて、レオナの頭を押さえつけるようにしながら、自身も床に身体を密着させて伏せる。

 パタタタタタタタタ!!

 無数のサブマシンガンから、.357Mag弾が薙ぎ払うように横方向に降り注ぐ。

「ぐぁっ」

「がぁっ!!」

 ユキを含む3名と、2名とで、交互に射撃を続けながら、通路上のグラ・バルカス兵を排除しつつ、2階へと突入してくる。

 ユキが自ら先頭に、タカナとレオナの脇を通り過ぎて、通路の奥に倒れているグラ・バルカス兵のところまで駆けていき、その持っていた小銃を踏みつけた。

「クリア、で大丈夫?」

 ユキは、表情を緩めて、タカナとレオナを振り返った。

「多分大丈夫だと思うけど……総数を把握してるわけじゃないから……」

「それに、当のナタリー曹長補と、ガオグゲル軍団長がいません……」

 レオナと、それに続いてタカナが、困惑混じりの顔でそう言った。

「そう、そして、王手(チェックメイト)はこちらがかけさせてもらう」

 そう言いながら、ガオグゲルが、ナタリーを片手で捕らえつつ、その頭部に拳銃の銃口を突きつけながら、司令官室から出てきた。

 声を聞いた、ユキ達25ACの隊員は、反射的にガオグゲルの方に向かって銃を構える。

「おっと、この姿が目に入らないかね?」

 下卑た笑いを浮かべながら、ガオグゲルは言う。

「軍団長、いや、ガオグゲル、アンタ……ッ!!」

 憎悪の表情で、レオナがガオグゲルを睨みつける。

「さて、銃を捨ててもらおうか?」

 ガオグゲルがそう言うと、レオナが悔しそうな表情で拳銃を床に捨て、タカナがそれに倣った。 ──── が。

「どうした? お前らも早く銃を捨てろ」

 まだ自分に、(サブ)機関(マシン)(ガン)の銃口を向けているユキ達に、ガオグゲルはナタリーに突きつけている拳銃を見せつけるようにする。

「────……どうして?」

 ユキが、妙に緊張感のない表情で、ガオグゲルに問い返す。

「どうして、だと」

 状況が理解できないという様子でガオグゲルが言う。

「わ、解らないのか? このままなら、この女の命はないぞ!?」

「うん、でも、そうしたらさ、その後でどうなると思う?」

「え ──── ?」

 ユキの言葉に、ガオグゲルは、間の抜けた声を出してしまう。

 すると、ユキは、ジリジリ……と、摺り足で僅かずつ、ガオグゲルに近付く。

「どうなると思うかって聞いてるんだ!!」

「ひ ────」

 突然、ユキが凄みを効かせた表情で荒い声を出す。ガオグゲルは、狼狽えた声を漏らしかけて ────

「ぐぎっ!?」

「はい、どうも」

 両手が完全に拘束されていなかったナタリーが、ガオグゲルの右手を捻り上げて、その拳銃を奪い取った。

「すみません~、私、娑婆では売春婦やってましたけど、今は兵隊やってるもので~」

 柔和な表情のまま、ガオグゲルから奪った拳銃を、銃口を上に向けた状態で自身の手に構えた。

「あ、あ……」

「ハッ!」

 パカーンッ!!

 ガオグゲルが思考能力を奪われた瞬間、位置的にユキを追い越すかたちでレオナがガオグゲルに一瞬で間合いを詰め、ミニスカートに改造されている軍服からパンチラを魅せつつ、強烈なハイキックをガオグゲルの側頭部に見舞った。

「ひゅう……」

 レオナの軽く整える息とともに、失神したガオグゲルが倒れ込んだ。

「ふ、私なら、貴方がたの言う人権問題に触れないでしょう?」

 髪を手で流しながら言うレオナだったが、

「凄いー!」

 と、真っ先にユキが興奮したような声を上げた。

「ね、ね、ね、亡命するんならウチこない? 5VDV(ウチ)。私がこんな()()だし、身長(タッパ)のある人、砲兵小隊にいてくれると有り難いー」

「え、は、ええ……」

 満面の笑顔で、レオナの手を取りながら言うユキに、レオナは、戸惑った様子で、自身の手とユキの顔を交互に見る。

「中隊長~、リクルートはとりあえず、引き上げてからにしましょうよー」

 ティイナが、脱力したように苦笑しながら、そう言った。

 






具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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