フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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注意
 今回、独自解釈・設定多いです。


“帝国”の誇り

 ムー大陸南岸沖、マギカライヒ・ニグラート国境線の延長線上の洋上。

「これは壮観ですね」

 彼の副長の言葉を聞いて、神聖ミリシアル帝国海軍、レルジェン大佐は、自身も自然に笑みになるのを抑えきれない様子を見せる。

「ああ、そうだな」

 彼が艦長を務めるマーキュリー級戦艦『ベガルタ』は、今回の作戦の為に再編されたミリシアル帝国海軍第3艦隊、大型空母4隻、軽空母4隻、特設空母2隻を主軸とする部隊の露払い役として、他の艦とともに西進している。

 レイフォルに展開しているグラ・バルカス海軍艦へ打撃を与えるべく征西作戦が決行され、ミスリル級、ゴールド級の各戦艦合計12隻を主戦力として、100隻以上にもなるミリシアル艦隊が、レイフォル沖へと向かっていた。

 文字通りの先鋒として進む第零式艦隊に、ロウリアの2隻のミサイルコルベットが同行している。

 他方、能力、特に防御力の面で、帯魔性装甲材が単独では抗堪性が充分ではない()()()()()が使われている為に不安のあるマーキュリー級は、グラ・バルカスの戦艦と直接殴り合う部隊からは外されている。

 ベガルタはもう1隻の『モラルタ』と共に、空母の直掩役として第3艦隊に配備されているわけである。

 エクスプレッセスティとグラ・バルカスが転移してくるまで、大艦巨砲主義が支配していたミリシアル海軍において、典型的な士官だったレルジェンにとっては、ベガルタの処遇は若干の不満があったが、乾坤一擲の作戦に参加できる事については、喜ばしく思っていた。

 ── 我が神聖ミリシアル帝国が、依然、強大な力を持っていることを、世界に知らしめねば…………!!

 ミリシアル海軍の士官たちはその想いを抱いて、作戦に従事している。その背景には、昨年末に発生したヒノマワリ会戦・バルクルス基地襲撃において、レイフォル東部に展開していたグラ・バルカス軍の陸軍戦力が、壊滅的な大損害を受けたという事実がある。その主役はまたしてもエクスプレッセスティ共和国。そして、エクスプレッセスティと同じ科学文明国であるムーは、エクスプレッセスティ空軍の超音速機部隊に基地を適応させるまでの間、新型戦闘機でエアカバーを提供し、存在感を示している。ミリシアルも何らかの形でその威厳を表す必要があった。

 もちろんメンツだけの問題ではない。大損害を被ったグラ・バルカス軍は、レイフォル陸上戦力の回復、さらなる増強が必要になるが、この間に海上でも海軍部隊に相応以上の損害を強い、ムー大陸西岸一帯の海上交通路がグラ・バルカスにとって安全ではない事を思い知らせれば、今後のグラ・バルカスのムー大陸占領の戦略に対して、強烈なストレスを与えるはずだ。

 艦隊の進路上を警戒するため、第3艦隊の空母群から、複座型の『ジグラント』2Ε型が発艦していく。

「世界征服などという世迷い言が通用してなるものか ────」

 作戦総旗艦、ミスリル級戦艦『カレドヴルフ』の司令部公室で、ミリシアル艦隊司令、レッタル・カラウンは、司令部要員に訓示を下す。

「グラ・バルカスに、敵がエクスプレッセスティだけではないことを今一度思い知らせ、その妄執を捨てない限り世界は受け入れないと示す! その為に各員、奮闘し各々の役割を果たせ!」

 一方 ────

 第3艦隊、それに大型空母2隻を含む第6艦隊とは別に、スタリオン級軽空母『パライソ』を旗艦に、同型1隻、軽巡洋艦1隻、嚮導駆逐艦2隻、駆逐艦6隻の艦隊が、他の部隊と共に進んでいた。

「いいか、この征西作戦、本来の主役は我々だぞ」

 別働隊の指揮官に任命された、タキオン准将が言う。

「うまいことグラ・()()ルス軍が本隊に釣られてくれるかは賭けだが、奴らに自分達が置かれている状況を思い知らせる必要がある。その役目を負うのが我々ということだ」

 ──── また、彼らの他にも、別の場所からレイフォル沖へ向かって西進する部隊もあった。

 

 

「敵の艦隊は、戦艦20隻以上、空母大小10隻以上、その他、総数100隻以上……か」

 レイフォリア南西沖。

 グラ・バルカス東方艦隊、旗艦戦艦『ラス・セレナール』。

「よくも出してきたと感心するが、ムー国経由の北回りではなく、マギカライヒ経由の南回りという事は……」

「はい。報告にもあります」

 東方艦隊司令、カイザル・ローランド大将の、報告を反芻するような言葉に、彼の参謀長が、同意の声を出した。

「ほぼ、ミリシアルだけの艦隊です。エクスプレッセスティ、ムーは参加していません」

「舐められたものだ」

 多少の憤慨を表情に出しつつ、カイザルは、そう言い、息を()いた。

「確かにミリシアルやムーの軍備は、エクスプレッセスティの技術情報の提供で加速しているようだが、だからといってエクスプレッセスティ軍抜きで我が帝国海軍に挑むなど、現地民の分際で思い上がりが過ぎる」

「確かに……」

 カイザルの言葉に、参謀長も同意の声を出す。

 カイザルは、状況を楽観視していない、むしろ悲観的でさえあった。

 ただ、彼が脅威として認識しているのは、俄には信じ難い程の能力を持つ兵器類を装備するエクスプレッセスティ軍と、同じ科学文明国としてエクスプレッセスティからの技術供与を受けているムー軍だ。

 それ以外については、基本的に “野蛮な現地民の前近代的な軍隊”、ミリシアルについても「エクスプレッセスティが共闘している場合には補助戦力として軽視できないが、それ以上ではない」という、カイザルに限らずグラ・バルカスの悲観論者の典型的な思考をしていた。マグドラ沖海戦後の評価で、ミリシアルの海軍技術水準については、グ()・バル()ス程度の物を持っているとしつつも、ミリシアルが大艦巨砲主義を崩さない事が原因だった。

 ミリシアルとエクスプレッセスティの各海軍の技術評価で、エクスプレッセスティ側の、兵器プラットフォームとしての戦艦の再評価論を伝えたうえで、そのエクスプレッセスティをして、

「戦艦の相手は戦艦にお願いしたい」

 と、ミリシアルに伝えられたことを、グラ・バルカス側は知らないため、ただ頑迷にミリシアルが大艦巨砲主義に固執していると考えていた。

 ── とは言え、()()()返り血は覚悟しなければならないな。

 カイザルは、声に出さずに呟きつつ、思考を進める。

 艦隊決戦となった際、無敵を誇った巨大戦艦『グレートアトラスター』は、もうない。

 グレートアトラスター級戦艦の2番艦以降の計画は、一度決済されているものの、転移直後の混乱に際して工事中断、そして、イルネティア南岸沖海戦、マグドラ沖海戦の結果が、海軍内部の戦艦不要論と、議会の反対を勢いづかせて、正式に中止とされた。

 その後にもたらされた “ムーが建造中の6万トン級戦艦” の情報は、完全に寝耳に水となった。ただ、政治家連中のメンツの問題か、グレートアトラスターを再建という計画は、未だ実になる気配はない。

「グレートアトラスター、か」

 それについて思考がいった時点で、カイザルの口から声になって出た。

「はっ?」

 参謀長は、多少怪訝そうに聞き返す。

「現地民に再度、我が帝国の実力を植え付けてやる必要があるということだ」

「ああ、そう言うことでしたか」

 西の新たなる覇者、異界の無法者、絶対なる独裁者、海を渡る暴力 ──── マグドラ沖海戦の前、グラ・バルカス帝国と、その海軍はそのように形容され、グレートアトラスターはその象徴だった。

 だが、マグドラ沖海戦の結果と、その時、先進14ヶ国会議で見せた失態により、今やグラ・バルカスは、エクスプレッセスティどころか、ムーやミリシアルよりも更にずっと格下の国でさえ、

 グラ・()()ルス

 と、侮蔑のアナグラムで呼ぶことが定着してしまっている。

 グレートアトラスターが占めた、力と畏怖の象徴は、想像を絶する超音速戦闘機MiG-29へと置き換えられている。

「この戦い、負けられんぞ。あくまで我が帝国に抗せるのはエクスプレッセスティ共和国であって、この地の未開な原住民ではないことを知らしめねばならん」

「同感です。各員にもそう伝えましょう」

 カイザルの言葉に、参謀長も強い意志を感じさせる言葉と態度で応じる。

「ひとつだけ懸念があるとすれば、ロウリア海軍の、エクスプレッセスティ製コルベット2隻が参加している、という情報があることですが……」

「うむ。だが、懸念材料であることは間違いないが、エクスプレッセスティ軍そのものほど評価することはないだろう」

 参謀長の言葉に対し、カイザルはしかし、表情を緩めずに言う。

「近代海軍は、軍艦の性能だけで能力が決まるわけではない。それを使いこなす人員がいてこそだ。ロウリアについての情報局の資料を見たが、エクスプレッセスティとの戦争以前は、この世界でももっとも未開かつ野蛮な国家と評価されていたようだ。ほんの数年前まで、ろくな大砲もなく木造船と弓矢、それにガレーで戦っていたような国が、あの超先進的な軍艦を使いこなせるはずがない」

 1124PEC計画型コルベットの性能は、大型駆逐艦に比べれば限定的だが、それでもその防空能力は侮れないものがあるはずだ、と、カイザルは考えていた。

 だが、それも近代海軍を理解しているミリシアルやムーの人間ならともかく、この世界の中でも最後進国とされていた国の人間が使いこなせるはずがない、と、自軍の将兵達の常日頃からの訓練の事を想像しても、そう評価するしかなかった。 ──── カイザルは先進14ヶ国会議の内容までは、詳細には知らない。

「それも含めて、現地民に身の程を知らせてやるのだよ」

「了解です」

 その間も、グラ・バルカス東方艦隊は、ミリシアル艦隊要撃のために、南下を続けていた。

 

 両者は、ムー大陸西方沖のバルチスタ海域に、ほぼ同時期に到着する航路を進んでいた。

 

 

「レーダーに感」

 ミリシアル第零式艦隊、ゲスト艦『マーサ・ルセリア』。

 CIC。

 (C)術情(4)(I)システムS-OYQ-9II(2)の、2つ並んだディスプレイの片方で、捜索レーダーの画面が表示されている。そのスクリーンの中、1つの “Unknown” とされるフリップが、徐々に接近しつつあった。

 筋骨隆々とした、前近代海軍が似合いそうな水兵が、エクスプレッセスティを範とした制服に ──── ただし男性はズボンだぞ、ズボン!! ──── 身を包んで、オペレーターとして2人、そして魔導通信担当の臨時通信士として1人が、並んで座っている。

「Unknown、接近しています。反応と速度から航空機ですが、速度は遅いです」

「味方機の可能性は?」

 オペレーターの報告に、オルクーニュが問い返す。

「味方機のマークはすべて捕捉しています。該当しません」

「了解、旗艦に報告」

「了解」

 通信士が言い、ムー製の電気作動の魔導周波通信機の受話器を手に取る。

「しかしひどく遅いなぁ……ワイバーンと大差ありませんぜ」

 監視担当オペレーターが、どこか呆れたように言った。

「遅いか……グラ・バルカスは、ヘリコプターはまだ未開発のはずだし、資料で見た限りではおそらく水上偵察機だな。着水用フロートのせいで、速度が出ない」

 オルクーニュは、オペレーターの疑問に答えるようにそう言った。

「旗艦より通達です」

 カレドヴルフとの通話を終えた通信士が、オルクーニュに伝える。

「『偵察機は放っておけ、敵攻撃隊をよろしく頼む』だそうです!」

「了解!」

 通信士の言葉を聞いて、オルクーニュはニヤリ、と口元で笑い、下令する。

「司令部から別命ない限り、そのUnknownは放っといていい。接近してきたらRWSで対処。本命はその後からウジャウジャくるぞ!」

 マーサ・ルセリアの乗員には、ロデニウス北部沖海戦の生き残りもいる。

 あの日、200のワイバーンを(ことごと)く消した力が、今は自分達の手の中にある。

「身の程知らずのグラ・バルカスに、エクスプレッセスティをこの世界で唯一恐れさせたのは、我がロウリアだと思い知らせてやれ!」

 

 

 その頃、グラ・バルカス海軍東方艦隊も、ミリシアル海軍機の接触を受けていた。

 先鋒部隊として南下する第1打撃群の上空を、通り魔のように1機の敵機 ──── ジグラント2Εが通過していく。

「くそっ、ダメだ、追いつけない!」

 直掩機のアンタレス戦闘機が追尾するが、それを嘲笑うかのように、辻斬りするが如き勢いで、グラ・バルカス艦隊を目視可能な距離を通過した後、離脱していく。

 改良型ジグラント2系の公称水平最高速度は650km/h。プライベートレコードでは、軽装時のジグラント2Εは、水平飛行で695km/hを超える事が可能であるとされている。

「くそっ!」

 第1打撃群を指揮しているカオニア少将は、自艦隊の防空圏を悠々と飛び去っていった敵偵察機に、思わず声を出してしまっていた。

 ユグドでは無敵を誇ったアンタレスだが、今となってはその神通力は失われている。エクスプレッセスティの超音速機の前に手も足も出ないのを別格としても、ムーの『スペアコブラ』にもほとんどの要目で上回られている。

 マグドラ沖海戦の段階ではまだ少数だったスペアコブラだが、初期型に存在した問題も現在ではほとんど解決され、前任の複葉戦闘機『マリン』は、数の上ではまだ多いものの、制空戦闘機としての任務は既に譲っている、と報告されている。

 まだミリシアル機と本格的に交戦したことはなかったが、エクスプレッセスティが魚雷の技術を渡している事を考えると、楽観視は危険と考えた方が良いだろう。

 ── 超音速機に勝てないだなんて言ってる場合じゃない。新型の戦闘機を開発しないと、ムーやミリシアルにも歯が立たなくなるぞ!

 カオニアの心中を知ってか知らずが、第1打撃群の上空を、第一次攻撃隊144機が北から南へ向かって通過していった。

 

 





https://x.com/kaonohito2/status/1841067747041820761
レオナ こういう三白眼でどっちかって言うと悪人ヅラの美人も好きです(何

https://x.com/kaonohito2/status/1841067282317140082
デミリフ 2枚目はメスガキ(アラサー)帰りしてそう
多分この話の後強い酒飲まされた結果。

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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