「旗艦『ヴェネレイト』に報告。ロウリア艦隊、変針せず、速度5ノット、概ね想定通りに航行中」
「
ミズリューム級潜水艦『ミズヴェール』(“Mizuver”)。
エクスプレッセスティ海軍が5隻しか保有していない(すべてミズリューム級)潜水艦の1隻。日本のそうりゅう型の準同型艦で、AIP機関に閉サイクル蒸気タービンと余剰熱回収スターリングエンジンを採用している点と、女性用のサニタリー設備を持つ点、それと水中発射ミサイルの形式が異なる。
タービンと言うと火力発電や水上艦が使う軸流型が思い浮かぶだろうが、本級で使われるのは自動車用ターボチャージャーなどで定番のラジアルタービンである。燃料は自国産エタンガス由来のエタノール系燃料を使う。 ……が専用燃料のため遠征時に外国で補給を受けた時の事を考え、ヤンマーディーゼル製6気筒ディーゼルエンジンとニッケル水素バッテリーを搭載している。特に4・5番艦はバイポーラ型ニッケル水素バッテリーを採用して高性能化が図られているが、ミズウェールは初期型の3番艦だ。閉サイクル蒸気タービンのボイラーはジェット燃料も使えるっちゃ使えるが二酸化炭素発生量が増大しAIP性は失われ蒸気タービンの不利な点だけが残る。
建造が川崎重工で行われ、『ミズリューム』の竣工式典が行われたこともあり、就役時には「イギリスのK級(1917年)以来の蒸気タービン潜水艦」と世界のミリオタ界隈にさんざんイジられた。
現在は通信・レーダー用アンテナマストと、ディーゼルエンジン用
その状況は水上艦や航空機のレーダーに引っかかるし、水上艦より小さいとは言え目視で発見する事も可能なので、潜水艦にとってリスクのある潜航状態だが、見つかったところでロウリア海軍には対潜攻撃の手段はない。逆にミズヴェールはSM.39『エグゾセ』対艦巡航ミサイルでもJTPD-89 533mm魚雷でもなんでもお見舞いできる。ただガレーや木造帆船相手にそれらは死ヌ程コスパが悪いが。
一方、追跡を受けているロウリア艦隊では、そのことにも気付かず、ロデニウス大陸北岸沿岸を東進している。
「いい光景だ」
艦隊指揮官のシャークンが、旗艦である木造武装船の甲板上で、腕組みした仁王立ちで、笑みを浮かべながら言う。
彼の視界に入るのは、強襲揚陸用のガレー、武装帆船、合わせて4,400隻の大艦隊だった。もっとも、武装と言っても、矢を射るためのポートが設けられているだけだ。地球では見られなかったこれは、パーパルディア皇国の戦列艦を真似たものだが、パーパルディアがロデニウス大陸に技術が伝わることを嫌って、魔導砲そのものは搭載していない。
「クワ・トイネよ、空前絶後の我が艦隊に驚くがいい」
シャークンは機嫌良さそうに言う。この後、自分が驚く事になるとも知らずに……
バタバタバタバタ…………
「むっ!?」
まもなくマイハークが見えてきたところで、何かを激しく
「ワイバーンか!?」
シャークンは、一瞬そう思ったが、
「いや……違う? あれは何だ?」
と、その奇妙な飛行部隊を見て、顔をしかめる。
「なんだ、あれは?」
「新種の飛龍か?」
そのあまりの音に、兵たちも甲板に立ってそれを見上げながら、ざわつき始める。
『我々はエクスプレッセスティ共和国海軍。ロウリア王国海軍艦隊へ警告する。エクスプレッセスティ共和国は貴国のクワ・トイネ公国侵攻に際し、クワ・トイネ防衛と国境の原状回復を目的として直接介入を決定した。貴艦隊にエクスプレッセスティと交戦の意図なくば直ちに回頭し、クワ・トイネ領海内より退出せよ』
ミル・アントノフ Mi-17An/D-S 『Hind Diesel』が、ロウリア艦隊に警告を行う。
エクスプレッセスティ国防軍の創設初期に
「レシプロエンジンは
この為、その再生産まで検討し実際に実行し、ボーイング(パイアセッキの現在の事業継承先)に呆れられたり、Ka-226を提案するロシアン・ヘリコプターズに対しレシプロのKa-26に拘泥し外交関係の悪化とは
しかし、他目的ヘリとして官民問わず重用されるKa-26An/Dと異なり、流石に1,300hp級単発でタンデムローターのCH-21S・SH-21B・AH-21Bは能力の限界がある上、ジェット燃料で燃料供給系を整理しようとしているところへ空冷星型ガソリンエンジンで代替になるエンジンもなく、問題になっていた。
そこで思い切って2,000hp級航空用ディーゼルエンジンを搭載したヘリコプターの開発を決断した。かつてレシプロエンジンヘリコプターとしては最大を誇ったシコルスキーCH-37を参考に、Mi-17のフレームを叩き台とするかたちで、Ka-26やCH-37同様にスタブウィングを突き出した先に、第二次世界大戦時の航空用ディーゼルエンジンをベースに現代化して大胆な軽量化と僅かな出力増強を行ったチャロムスキー ACh-30BD を搭載し、機体強度への負担増を最低限にするため、主脚はCH-37同様エンジンポッド側に装備される引込脚とされた。ついでに前脚もブリスター型格納部を設けて半引込脚となった。まぁ
Mi-17An/D-S(Mi-17Bo/D-S)は洋上哨戒ヘリコプターで、機首にFLIRドームが突き出ている。機体側面下部及びスタブウィングのハードポイントの他に、胴体テイルブーム付け根下にM621 20mm機銃座が装備されている。これは、転移前のエクスプレッセスティにとって、最も身近な脅威が、非合法武装集団だったため、洋上でその船舶、所謂海賊船に掃射をかけるためだ。
『繰り返す、貴艦隊にエクスプレッセスティと交戦の意図なくば直ちに回頭し、クワ・トイネ領海内より退出せよ。回頭の意思なき場合、攻撃に移る』
「エクスプレッセスティだと……女だけの武には欠く国だと聞いていたが……」
彼らの感覚ではあまり時間が経過していない上、アデムの思惑もあり、ロウリア軍陸上部隊と王都ジン・ハークとの間には情報伝達の齟齬が生じていた。この為、北ジン・ハーク港を出港し、帆走とオールだけで進んできたシャークン達には、まだギムで何が起きたか、正確な情報が伝わっていなかった。
「どうしますか? 停船を呼びかけていますが……」
「無視しろ! この大艦隊相手に何ができる!」
部下の問いかけに、シャークンは、自軍の圧倒的優勢に対してなんの疑問も抱かずに、そう返答した。
すると、今度はヴェネレイト級駆逐艦『アフロディーテ』が、ヌッ……という感じで姿を表し、ロウリア艦隊の行く手を塞いだ。
「クソッ、ぶつける気か!?」
「回頭、回頭!」
先頭の数隻は、アフロディーテのあまりの大きさに距離感が狂ったこともあって、衝突を避けて慌てて転舵する。
「うぉおぉぉっ!? なんて大きさのフネだっ! 女だけの新興国ではなかったのか!?」
シャークンも、その大きさに圧倒され、思わず声を上げていた。
だが……
「しかしッ! たった1隻で何が出来るというのだ!! 我ら4,400隻の大艦隊だぞ!」
シャークンは、この段階ではまだ、本来の目標に至る前の些事と考えていた。
「面舵!! 距離200、敵艦に並走、攻撃準備!!」
シャークンが下令すると、艦隊は先頭で方向を乱している数隻を除き、回頭してアフロディーテの至近を並走する。
その弓座で、火矢をつがえたクロスボウが、アフロディーテを狙う。
「撃てーッ!!」
シャークンの号令とともに、彼の乗艦からアフロディーテに向かって矢が放たれる。それに続いて、他の艦からも矢が放たれた。
しかし……
カンッ、カンッ……
火矢はアフロディーテの艦体や甲板上の構造物に当たるが、当然のように弾き返される。
「…………! 刺さらぬ、燃えぬ! まさか鉄で鎧われているのか!?」
シャークンが驚愕の声を上げている最中に、アフロディーテは小型蒸気タービンを使って戦闘出力用のガスタービンを始動していた。
増速したアフロディーテは、左に転舵して、ロウリア艦隊に艦尾を見せる体勢になった。
それを見て、ロウリア艦隊の将兵が、「ヒャッハー」、「うぉぉ」、と歓声を上げる。
「提督! 敵艦が逃げ出しました!」
部下が言った。
だが、シャークンはア
──逃げた、逃げただと……!?
フィィン……
──なんだ……!? 猛烈に嫌な予感がするッ
シャークンの予感は、その直後に的中した。
ゴッ!
1隻の武装船が、シャークンの真横でその大半が砕け散り、炎上する。
「何だッ!? 何が起こったッ!?」
シャークンには一瞬の事過ぎて、理解どころか何が起きたのか視認しきれてすらいなかったが、アフロディーテの後部のボフォースMk110 57mm砲が撃ったのだ。
「アフロディーテに攻撃、反撃を実行。命中しました」
アフロディーテ艦長、ノラ・アンナ・ジャパロヴァ中佐は、旗艦ヴェネレイトの司令部に、インカムから隊内無線で報告する。
「変針、取舵80」
アフロディーテが回頭し、再度ロウリア艦隊とマイハーク方面を遮る。
「ロウリア艦隊、退行しません」
「どうする?」
アフロディーテCIC。
オペレーターの声に、ノラが発した問いかけは、自軍ではなく、ロウリア艦隊に対するものだった。
──やる気だと言うなら、殲滅するけど。降伏するなり退行するなりするなら、それを撃つのは流石に忍びない。
前部のModèle 68 100mm砲とMk110 57mm砲、合計3門が、すでにロウリア艦隊のいる左舷側を向いて、射撃体勢にある。
「ロウリア艦隊、停止!」
「!?」
オペレーターの言葉に、ノラは少しの驚きを覚えた。
「帆を畳んでいます。ほぼ完全に停止」
──これは……降伏? それとも……?
ノラがその意図をつかみかねていた時、
「竜騎隊による空撃支援を要請しろ」
と、シャークンは通信士に指示していた。
「“鉄船”の中で蒸し焼きにしてくれるわ」
まだ余裕がある────ただ、それは今のアフロディーテが数十隻を一瞬にして粉砕できることを、認識していないがゆえの、笑みを浮かべていた。
ロウリア本国、東部飛竜飛行場。
非舗装の滑走路に、ワイバーンが並べられていた。
かつて地球にいたプテラノドンなどもそうだが、このタイプの有翼生物は、鳥と違い、はばたきだけで上昇することは難しい。非常時にはできないわけでもないが、翼の骨を痛めてしまう。
その為、軍用のワイバーンが纏まって離陸するには、その脚で助走する、つまり滑走路が必要だった。特に、導力火炎弾の射撃のための装備をしたワイバーンは、魔石による発進促進設備が不可欠だった。
「第17竜騎隊、離陸せよ、離陸せよ」
整列していたワイバーン────ロウリア軍竜騎隊が離陸にかかる。そして、次の竜騎部隊が整列する。
「これでは、もしクワ・トイネの飛竜隊や、エクスプレッセスティが持っているという飛行機械が出現した際、邀撃部隊がいなくなるのでは?」
この基地に配備されていた200騎全てに、エクスプレッセスティ艦攻撃と自軍艦隊への航空支援の為の出撃が命じられた。
その事に対して、指揮所にいた筆頭宮廷魔導師ヤミレイが、パタジンに問いかけた。
「アデム副将の報告では、エクスプレッセスティは魔導兵器を持ち、対竜用の魔杖も持っているという。先遣隊は50騎以上の損害を出したと」
「だからこそだ」
懸念したように言うヤミレイに、パタジンが自信あり気に言う。
「エクスプレッセスティの力がどれほどでも、所詮女だけの国。本土深く王都まで攻めてくる能力などある訳がない! ならばここで徹底して叩き、我々の力を思い知らせ、戦意を挫くのだ! それに敵が強いというのならば、なおさら兵力の逐次投入など愚策だ!」
パタジンの主張は、その時点で彼らが与えられている情報に基づけば、決して間違ってはいなかった。だが────
『お前らが怯えるほどの大損害を出したあの力は、エクスプレッセスティにとっては、その力の、チリほどの一欠片に過ぎない』
モイジのこの言葉を、アデムは、ある程度の虚仮威しだと判断し、これをそのまま本国に報告していなかった。 ────もっとも、それをパタジンらが知っていたところで、実際のエクスプレッセスティの力を図れるかは、甚だ疑問であり、これに関しては、アデムの落ち度とまでは言えなかったが。
ロウリア竜騎隊は、自分達が何処へ向かうことになるのか知らないまま、飛んでいく────
ヴェネレイト級駆逐艦
基準排水量 7,200t
全長165m
主要武装
Modèle 68 100mm砲 ×1 (前部)
Mk110 57mm砲×2 (前後各1)
シルヴァーA50 VLS 8セル×3ユニット (主にアスター30Block1NT SAM用)
アスター15 SAM・R-360K『ネプチューン』 SSM兼用連装キャニスター×2
(ただし、アスター15は準備のみで未導入)
艦載化された2K12『クーブ』SAM3連装発射機×2
CIWS『ガーディアンスフィア』×2
ガン・ミサイルコンプレックス砲塔『SIGMA20』 ×2
RBU-1200 5連装対潜迫撃砲×4
RPK-2対潜ミサイル発射機能を持つ533mm魚雷発射管 4連装×2
艦載機:ヘリコプター1機
機関:COSAG方式(COmbined Steam-turbo And Gas-turbine)
全開時出力98,400hp 設計:三菱重工(7番艦のボイラのみIHI)
同型艦
建造:三菱重工(1・2・3番艦) 台湾国際造船(4・5・6・8番艦) IHI(7番艦)
特記事項:本級に限らないが、ウクライナから入手した東側型兵装の仕様を日本と台湾に渡したためプーチンと習近平がイラッ☆
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