フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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※要注意※
 ここらへんから筆者の好き勝手が始まります。



狂宴の終わり

「!」

 ユキ達が最後の突入準備をしていると、自分達が(のぼ)ってきた方から、足音が響いてきた。

 一瞬、全員が弾けたようになり、2名が足音のする方へ銃口を向けた。

 だが、ユキはすぐに、薄く笑った。

「納豆といえば!?」

「土浦のひげた食品!」

 暗闇から姿を表したティイナは、ユキの質問にそう答えた。

「よし」

 そう言ってから、ユキは、ティイナ達の方に銃口を向けた2人の頭を、ヘルメットの上から軽く小突いた。

「ったく……金属靴ガシャガシャやってるのと味方のとぐらい、音でわかるでしょーが……」

 ユキはそう言ってから、正面大階段の上を見上げた。

「よし……突入準備」

 ユキはそう言うと、右手でM9/357を構えながら、左手で棒状の物を階上に投げ込んだ。

 同様に、隊員が何人か、それを投げ込む。

「うわっ!?」

 階上から、驚いた声が聞こえてきた。

「突入!!」

 それを合図とするかのように、ユキの下令とともに、第25空挺中隊々員は階段を駆け上がる。

「!?」

 駆け上がった隊員は、そこで一瞬、硬直した。

 無数の“光る棒”が転がっている。これは、先程ユキ達が投げ込んだものだ。20W程度の蛍光灯に相当する発光量をもつ高輝度サイリュウム棒である。閉鎖的な暗所での照明弾の役目をするものだ。

 そのサイリュウム棒の1本が転がっている奥で、1人のロウリア近衛兵が腰を抜かしている。が、それは割りとどうでもいい。

 問題は、正面にいた3人だ。

 2人のメイドが並び、その後ろに、指揮官くらいと思しきロウリア近衛隊員……

「やめろ!」

 ユキが言い、空挺隊員は全員、銃口を上に逸らす。

「ほぅ……やはりな。お前達は“()()()()ヤツ”なのだな……」

 ロウリア近衛隊指揮官────ランドが、飄々とした様子で言う。

「『力による現状変更』────武力での侵略を強く批難し、ギムでの行為を口実に参戦……北東ロデニウス沖海戦では回頭した艦隊に追撃せず、工業都市ビーズルを徴発もせず迂回し、北ジン・ハーク港の被害は軍艦船と軍事施設のみ────どこか漠然と感じていた違和感……、そう……────」

「…………!」

 ティイナがチラリ、とユキを見ると、ユキは微かに唇の端を吊り上げていた。

「エクスプレッセスティの軍人は、民間人に戦禍が及ぶことを許されていないのでは……と……」

「ころさないでください……ころさないでください……」

 メイドの1人がガクガクと震えながら、ユキ達に命乞いをしている。

「無言は時に雄弁より事実を語る……『丸腰で無抵抗の人間であれば(いくさ)()でも殺せぬ』という実証を得た」

 ──パタジン、まだか、早く戻ってきてくれ、時間を稼いでいる内に……!!

 ランドは、心中で焦りつつも、その様子を微塵もユキ達に見せることもなく、ただ、飄々と続ける。

「そこで俺はエクスプレッセスティの軍人は“とても厳しい騎士道的規範”で縛られているという推測をし……お前たちは、“武器を捨てて投降する”を選択」

「皆」

 真っ先に、ユキが手に持っていたM9/357を床に落とし、両手を上げた。

 他の隊員も、それに倣う。

「ほう……」

 ──何……ッ!

 ランドはその驚愕を表に出さないようにするのが精一杯だった。

 ランドがしたかったのは“時間稼ぎ”だ。ユキ達があっさり投降するとは考えていなかった。

「私からもひとつ聞かせてもらっていいかな?」

 ユキが妙に明るい口調で言う。

「なんだ…………?」

「いや、最近はそうでもないんだけどさ、エジェイでの戦いのあたりまでは、なんかエク()プレッセ()ティが大胆に動けるのは、“女しかいない国”って事で、他国に姦計を図っているから────ってしょっちゅう言われてたっぽいじゃない?」

 あまりに場違いな、緊張感の欠片もないフランクな口調で話すユキに、ランドは妙な緊張を覚えていた。

「それが間違いだった……これだけの武力を、己で持っている国だと……今は理解しているが」

「ふーん、へー……そうなんだぁ……」

 ──なんだ、コイツは!? この状況で、なぜこんな口を聞ける!?

 ランドが戸惑っていると、ユキはアラサーには到底見えない童顔で、ニヤッと笑った。

「あのさ────」

「な、なんだ……」

 

「────────()()()()()()()()()()()()!!」

 

 ゴキャアッ

 ユキがそう言った直後に、メイドの1人が、ランドの端正な顔に裏拳を叩き込んだ。

「ぐ、ぁ……!?」

「銃を拾え!」

 ユキは部下に言いつつ、胸ホルスターのCOP .357を抜く。

 柱の影から出てきたロウリア近衛兵に、 .357Magを叩き込む。

「ぐぁっ、くっ!」

 メイドは────メイドとして潜入していたエクスプレッセスティ総統府情報総局付空軍少佐、ウィラ・マロンウォズは、ランドの腕を締め上げ、関節に力が入らないように、完全に押さえ込む。

「気をつけて! 左右に隠し部屋がある! その後ろにまだ1個中隊いる!」

 ウィラが、緊迫感のある声で叫ぶように言う。

 エクスプレッセスティ空挺隊員のM9/357の射撃が、近衛兵をハチの巣に変えていく。

「!」

 隠し部屋の伏兵に備えて、ユキ達がM9/357のマガジンを交換した時。

「もうよい、ランド」

 そう言って、ランドの左耳から、そっとインカムを取り外した。

「殿下!?」

「で、殿下! まだ…………」

 ユキが、そしてティイナが、驚いたように声を出す。

 少女を護衛していたはずのジュリエットが、慌てて前に出て、少女を庇おうとするが、逆に、少女はジュリエットを押しのけるようにしつつ、インカムを自分の耳元に当てた。

「隠し部屋の近衛兵へ……勝敗は明らか。武器を捨てて出てくるが良い。まだ戦うというのであれば止めはせぬが、(わらわ)もエクスプレッセスティ軍の者を止めはせぬ……」

 そう言うと、通路に対して左右の壁が、扉として開き、剣を捨て、手を上げながら出てきた。

「な、なぜ……ルセリア様……」

 ランドが、縋るように、その少女に向かって問いかけた。

「解らぬか?」

「…………()()()で、まだ、大王様を?」

 ランドが問い返すように言うと、ルセリア、と呼ばれた少女は、はぁ、とため息をついた。

「ないといえば嘘になろう。だが、現状をよく考えよ。妾とて、国がそれで纏まるなら、妾自身の心は閉ざしておくべきと思っていた。だが────国内の安定の代償に、多くの怨嗟、呪詛の声に(まみ)れ、ク()・ト()ネの心も掴めず、その代わりにパー(大陸)パルデ(外の)ィア(列強)に抑えつけられ…………挙句の果てに、己の力、敵の力を計り違え、武を以って隣人を従えようとした結果がこの(ザマ)よ……」

「…………」

 ルセリアの言葉に、ランドは膝をついた姿勢で俯き、黙る。

「妾は……玉座を奪う。()()()からな……止めたくば、妾の命を奪うが良い」

「…………」

 ランドも、他の近衛隊員も、何も言わなかった。

「『無言は時に雄弁より事実を語る』……確かにそうだな、ランド近衛隊長」

 まだ、銃口は向けつつも、ユキは淡々とした口調でそう言った。

「ユキ隊長、行こう」

「…………了解です、ルセリア殿下。1機目の7人ついてこい。後は近衛隊を武装解除せよ」

 そう言って、ルセリアはユキ達と共に、玉座の間へと入っていった。

 

 

 妾には────

 

 妾には……幼き頃に友人が居った……

 半獣人の、可愛らしい娘だった……

 

 数日前。エナジポリス────ハタリアのHCUの外。

「大人が誰も彼も妾に杓子定規な反応を返す中で、あの娘は妾を他の子供と同じように扱ってくれた。同じように戯れてくれた。ただそれだけで、妾の心を潤してくれた」

 ルセリアが語る言葉に、エクスプレッセスティのSPも、エミリアも、悲痛そうな表情で、俯きがちな様子で、ルセリアの言葉を聞いている。

 

 ルセリアが知らない、市井の子供たちの遊び。

 詰んできてくれた花。

 甘酸っぱい木苺。

 些細な喧嘩。

 そして、仲直り。

 みんな、その娘がルセリアに与えてくれた。

 

「それが、あの日、あの日────」

 

「そなたが新たな騎士とな?」

「はい。アデムと申します」

「ふむ。伯父上が信用しておるのならば間違いないのだろうな」

「もちろんですとも」

「よろしく頼む」

「はい、早速ですが、今日はルセリア様の夕食に、私めが用意いたしました食材を召し上がっていただきたく」

「ほう? そう言うからには珍味を期待していいのであろうな?」

「ええ、もちろんですとも」

 

 ────その日の、妾の夕餉に並べられたのは────────

 

「あの男が来てから、伯父上、いやロウリア全体が変わってしまった。確かに、元々亜人を忌み嫌い、また見下すことは珍しくはなかった。だが……────まだ年端も行かぬ妾でも解る。今のロウリアは異常だ。このままでは、エクスプレッセスティに叩き潰されて干し上げられるか、パーパルディアに隷属を迫られるか。そんなことになる前に────」

 

 

 ────現在。

 

「────妾が、その玉座を貰い受けます、伯父上」

 突然の沈黙の後、エクスプレッセスティ兵とともに入ってきたその姿を見て、ハーク・ロウリア34世は、顔を強張らせ、明らかに竦み上がっていた。それでも、玉座から逃げ出すという選択肢を選ばなかったのは、彼の君主としての最後の矜持だろうか。

 だが、ユキ達に銃口を向けられながら、 ────懇々と、ルセリアはハーク34世に説いた。

「──…………自らのみ滅ぶか、国ごと滅ぶか、国主としてとるべき選択肢はお解りですな? 伯父上」

 ルセリアがそこまで言うと、ハーク34世は、チラリとユキ達を見る。

 ユキは、ハーク34世の視線が自分に向いたことに気がつくと、半ば演技で、カチャッ、とM9/357の機関部を鳴らした。

 ──ルセリアは二択を突きつけたが、実際に選べる選択肢が片方しかないことは、火を見るより明らか────ハーク34世は、それを思い知り、ガックリと項垂れ、脱力した身体を玉座に預けた。

「ハーク・ロウリア34世」

 M9/357をストラップで提げ、ユキは手錠を取り出し、ハーク34世に近寄った。

「クワ・トイネ侵略と戦争犯罪行為の責任者として、拘束させていただきます。陛下」

 ガチャッ

 ハーク34世の手首に、その手錠がかけられた。

 

 

『『全軍、戦闘中止━━━━ッ!!』』

 エクスプレッセスティ軍の無線、ロウリア軍の魔信、双方で同時に伝達された。

 いよいよ流血不可避か、と、マックス少佐がT-54-120のRWSを起動し、ヤミレイがファイアボールの詠唱を始めたところだった。




この戦争を「本当に」終わらせるには、って考えると、ハーク34世の代わりに誰かを玉座につけるしかないよなぁ、と以前から思っていて、それが妄想に発展して、ルセリア殿下の登場に繋がりました。
全面戦争ってやっちゃうと、勝者ってこういうところが面倒くさいんですよね。日本なんか大東亜戦争で間違ってアメリカをボコボコにしちゃってたら、ドイツはなんか敵視してくるしどうしていいのかわからなくなってたんじゃないかと思います。

NAIで描いてもらったユキ中佐。
小柄です。合法ロリです。それであれです。
多分この後行く先々でいろいろ言われると思います。
https://twitter.com/kaonohito2/status/1759221091111956653


あ、あと今回の新登場ネームドもちょっと仕込んであります。

ウィラ・マロンウォズ少佐
英字で"Willa Maronwods"。
ヒント:異世界自衛隊無双モノといえば『日本国召喚』と……


評価や感想など、具体的な反応があれば、続きを書くことがはかどります。TwitterでもOK。

https://twitter.com/kaonohito2
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