オリキャラによる原作キャラ説教回です。
「国王様がわざわざ出向かれずとも良かったのでは……」
「ええい、それは何度目だ!? いい加減しつこいぞパタジン!」
ルミエスが覚醒しかけた時、そんな、建物の中で篭ったような声が響いてきた。
「仮にも王族であれば、こちらも王が出向いて何の問題がある!?」
「しかし、実際にそうと決まったわけではありませぬ」
「最初にルミエス姫
「状況証拠からの憶測に過ぎませぬ」
「ならば、真贋は余が見極めるわ!」
なにやら、男性と、おそらく子供であろう少女が、言い争う様な声が聞こえてくる。
「ここは…………」
見慣れない天井。
身を起こし、周囲を見る。
着ていたはずの踊り娘の衣装は、シンプルで清潔な衣装に代わっていた。
どこか無機質な内装の部屋。金属でできた、無機質だが複雑な構造のベッド。何か理解できない。妙な、複雑な構造をした板。作り付けの収納。そこに入れられた、何かわからないダイヤルのようなものが付いた箱。
ただ、ルミエスが見慣れた存在は、シンプルだが妙に頑丈そうな金属製の椅子に座ってうたた寝している、リルセイドの姿だった。
窓の外を見る。
目に入ったのは海。やたら整然とした港。人が歩き回っている。
驚くほど巨大な、帆もない、船体を横に2つ繋げた構造の船が、霧笛を鳴らしながら出ていく。人々が活気的に歩きまわり、その喧騒が多少、ここまで聞こえてきている。
──ここはどこ? この部屋は一体……
ルミエスは立ち上がり、よく理解できない存在を観察しようとした。
ガタッ!
突然、その背後で音がする。
「姫様!!」
ルミエスが振り返ると、リルセイドが驚いたような表情で、自分へ迫ってくる。
「勝手に起き上がってはなりません! 医者を呼びますので!!」
そう言うと、いとも簡単にルミエスを文字通りの
正確には“横抱き”と呼ばれるこの抱き方は、好いた男性にそうされる事に憧れる若い女性は多いが、実際には人体を工学的に見た際に余計なモーメントのかかる部分が多く、人を抱えて移動させる方法としては適さないとされている。
にもかかわらず、鍛えているとは言え、体格がルミエスとほとんど変わらないと言うのに、リルセイドは、いとも簡単にそのまま、ルミエスをベッドに横たわらせた。
リルセイドが、ナースコールの有線の送受話器に手を伸ばし、そのボタンを押した。
『はい、どうされましたか?』
女性の声が、スピーカーから発される。
「姫様の意識が戻られました」
『了解しました。お伺いいたします』
リルセイドの言葉に返事があったかと思うと、電話型の送受話器を戻した時のものだろう、ガチャッ、という音がして、通話が途切れた。
──今のは……一体…………
ルミエスは、一体何が起きたのか理解できずにいた。
「それにしてもルミエス様……お目覚めになられて……手放しでは喜べぬ状況ではあるとは言え……良かった……」
リルセイドは、そう言うと、母親に縋る子供のように、ルミエスに抱きついた。
「目覚めて見れば見知らぬ異国の部屋という状況ですが────」
そのままルミエスの魅惑的で豊かな部分に顔を埋めるリルセイドの頭を撫でながら、ルミエスは言う。
「────あなたの姿があったから理性を保てました。ありがとうリルセイド」
「見知らぬ異国というわけではないぞ」
ルミエスがそこまで言った時、そう、部屋の出入り口の方から聞こえてきた。
ガラッ、と引き戸が開き、衛生的なモノトーンの
「おっと、パタジン、剣は外に置いておけ……ルミエス姫、というよりそこの従者が安心できぬ」
「ですが、自分は国王様の安全を考えれば────」
少女の言葉に、腰元に吊っている剣の鞘に手をかけつつ、男性が困ったように言う。
「ここで余を襲うような命知らずが居ったら見てみたいわ」
少女が苦笑しながらそう言うと、男性は渋々と言った様子で、一度部屋に背を向け、剣を外したようだった。
「パタジン……ロウリア王都騎士団長……と言う事は……」
身を起こしていたリルセイドは、そう呟き、少女に対して身構える。ルミエスは、その両者を見てどこか困ったようにしている。
「すみません、ちょっと検査させてください」
「あ、は、はい」
病衣姿のルミエスは、医師にそう言われて、我に返る。
「うむ、知っておるようだが……」
リルセイドに向かって、少女は続ける。
その時、男性が室内に入ってきた。
「肩書きが違っておるな……現在はロウリア王立軍総指揮官、パタジンだ。まぁやっている事が大きく変わった訳ではないが」
少女がそう言うと、紹介されたパタジンは直立不動になり、敬礼した。
「そして、余がロウリア連合王国国主、ハーク・ルセリア・ロウリア35世である」
明らかに自身よりずっと年少の少女の、しかし威風堂々としたその様子に、リルセイドはすぐに声を出す事ができなかった。
「まぁ、ルミエス姫もそちらの従者も、おそらく我が国を訪れた事は初めてであろうから、確かに見知らぬ土地ではあるかも知れぬな」
「と、言う事は、ここはロウリアなのですか!?」
体温、血圧、血液内酸素飽和度などを計測されながら、ルミエスが驚いたように言った。
「……はい、そうなります…………」
どこか気まずそうに、そしてルセリアに警戒する視線を向けながら、リルセイドは答えた。
「そんなに警戒せずとも、パーパルディアに引き渡すつもりなど毛頭ないわ」
ルセリアは、勝ち気そうな苦笑を見せながら、緊張感を崩すようにそう言った。
「パーパルディア
リルセイドは、攻撃的な様子を崩さずに、ルセリアに問いただすように言う。
「エクスプレッセスティの話をしておるのか? それこそあちらは、フェン事変の始末で頭を悩ませておるところだろう。わざわざ進んで火中の栗を拾いたいとは思えぬ」
ルセリアは、そう言いつつ、口元に笑みを浮かべてはいるが、凛とした視線をリルセイドに向けた。
「それに、もうアルタラスは落ちた」
「────!」
「
「黙れ!!」
「リルセイド!!」
ルセリアの言葉に、リルセイドは、ルミエスが制するが早いか、激昂して思わずルセリアに迫りかけた。それを遮るように、パタジンがルセリアの前に出る。
「アルタラスは滅びていない!! ルミエス様がここにいる! いつしかアルタラスを再建する為に命を、王統を繋がれたのだ!!」
「ほう、国を再興すると」
「そうだ!」
「どうやって?」
言いながら、ルセリアはパタジンを押し退けるようにして、再び前に出る。
「それは……」
ルセリアの指摘に、リルセイドは言葉を詰まらせ、ついには視線を逸してしまう。
「パーパルディアも嫌だ、エクスプレッセスティも嫌だ、それでどうやって国を再興すると?」
「あなたが言うな!」
どこか、歳に不相応なほど飄々とした様子のルセリアの言葉に、逆にリルセイドは声を荒げた。
「ロウリアを売った王族が!!」
「国が滅びるよりマシだ!!」
リルセイドの言葉に対し、ルセリアは叱り飛ばすような怒声で即座に言い返した。
「ハーク・ルセリア・ロウリア35世はエクスプレッセスティが立てた傀儡……エクスプレッセスティを快く思わぬ者、国が、そう言っているのは知っておる。余はその全てを否定する事はできぬ。国家同士の関係は対等、支配・被支配はない、エクスプレッセスティはそう言っておるが、現実に覆し難い力関係があるのは事実……今のロウリアはエクスプレッセスティどころか、クワ・トイネにも頭が上がらぬのが実態よ」
ヒートアップした口調を一度整えつつ、ルセリアは続ける。
「だが、それでもだ……パーパルディアの思惑に翻弄され、目先の益しか興味のない諸侯にひとつの敵を示して無理やりまとめ上げ、己の力、相手の力を測り違えて ──── このような国でも、仮にも王の縁戚者としては滅ぼすわけにはいかぬ。国が滅びて誰が苦しむ? 王族か? 諸侯か? 笑わせるな! 一番苦しむのは民だ!!」
「────ッ……」
再び感情の昂ぶった声を出すルセリアの言葉を聞き、ルミエスが心苦しそうに、きゅっ、と、胸元で手を握った。
「余はロウリアの民を亡国の流浪者とせぬ為に
「そんな……私は……」
ルセリアはリルセイドを見据えて言ったが、その言葉にルミエスが震えたような声を出した。
「私は……お父様は……」
「姫様!」
リルセイドがベッドの上で震えているルミエスの近くに駆け寄り、背中を擦るようにする。
「国王陛下は何も間違えてなどいません! ロウリアとは条件が違います。今のパーパルディアに目をつけられては為すすべはありません」
リルセイドは、ルミエスを慰めるようにそう言った。
ルセリアは、鼻を鳴らすように軽く息を吐いた後、
「先王も臣下にだけは恵まれたものよな」
と、呆れたように言った。
「国王様」
「いや、パタジン、余の決断を聞いてからの、そなたらの忠義を疑った事はない。そなたらは先王だの余だのではなく、ロウリアの為に尽くしているのだ。何ら恥じる余地もない」
パタジンの声に、ルセリアはそう言う。
「どれだけ不利な状況にあっても君主に耳あたりの良い事だけを報告した訳でもなく、圧倒的な力を目の前にしてなお諦めず、手を尽くして立ち向かい、最後は自ら矢面に立つ……そなたらはロウリアの至宝だ。それだけは余が否定させぬ」
「……有難き幸せ」
ルミエスとリルセイドの方に視線を向けたまま言うルセリアの言葉に、パタジンが畏まった言葉を口にした。
「確かに少し前であれば、それしかなかったろう。しかし今は、選択肢はあった」
「僭越ながら、自分から……王都竜騎士団から報告を受けております。海賊船を一撃で木っ端微塵にしたところ、お2人も見られていた筈です。攻撃したのはエクスプレッセスティ海軍バステット級コルベット ──── あれでもエクスプレッセスティでは最も小さな戦闘艦です。薄々解っているでしょう、パーパルディアではエクスプレッセスティには絶対に勝てませぬ。実際に戦った我々がそう言うのです」
ルセリアの言葉に、パタジンが説明を加えた。
「フェンのシハン剣王も、クワ・トイネのカナタ首相も再三呼びかけたはずだな? だが、ターラ14世は頑として受け入れなかった。まぁ、余の存在が悪印象を与えてしまっていたのだろうが……」
ルセリアがそこまで言うと、ルミエスが、ハッ、として、ルセリアに視線を向けた。
「もし、エクスプレッセスティに則すると言うのであれば……」
ルミエスの言葉に、ルセリアは、まず、深く頷いた。
「さっきはああ言ったが、実際、エクスプレッセスティもパーパルディアもお互いの外交に相手の存在が邪魔というのが事実。まぁ、頭ン中お花畑のちゃらんぽらん集団に見えて実に
そう言いながら、ルセリア自身、妙に愉快そうに口元で笑う。
「姫様、そのような事をせずとも……────アルタラスの民はそのような事は望んでおりませぬ」
「それはどうかな?」
リルセイドがルミエスにかける言葉に、傍からルセリアが言葉を挟んだ。
「先程言った筈だ。国が滅びて苦しむのは民だと。自分らに塗炭の苦しみを強い、のうのうと逃げ出した王族を敬う民はそういないであろう」
ルセリアが、飄々としながら皮肉がこもったような表情でそう言うと、
「そんな事はない!」
と、リルセイドが声を張り上げる。
「ルミエス様がお帰りになれば、アルタラスの民は諸手を挙げて歓迎するだろう」
リルセイドの言葉を聞いて、ルセリアは、眉間から鼻の上の辺りの間を揉むようにしてから、言う。
「それはパーパルディアの支配が苛烈で理不尽だからだ。民は愚かではないが単純だ。現状よりは良くしてくれるというのであれば受け入れる。ただそれが以前より良くならないと解れば見捨てるだろう」
「そんな事は────」
「────ないと言うのであれば、アルタラスの民は救いようのない愚民だわ!!」
リルセイドが怒鳴り返す言葉に、さらにかぶさってルセリアが言い返す。
「なぜ、余がロウリアの民の心を掴み、諸侯を抑えて盤石の親政を敷けたと思う? それは、先王の頃より、より良き国を目指すと約束したからだ。無論、一朝一夕にしてそのような事は達成できぬ。だが、エクスプレッセスティの軍の強さを目の当たりにし、その技術を導入すると言うから、民は未来を見て余とともに歩む事を決めたのだ! ただパーパルディアを打ち払い、アルタラスと言う国を再興したところでその先に何をもたらせられる!?」
ルセリアは、再びリルセイドを叱り飛ばすように声を張り上げた。
「ぐっ…………」
リルセイドを黙らせてから、ルセリアはその視線をルミエスに移す。
「今からでもエクスプレッセスティに助力を求めると言うのであれば、余が口を聞いても良いが…… ──── いくつか条件があるな。余やロウリアではなく、エクスプレッセスティに対してのな」
ルセリアはそう言うと、ちらりとパタジンを見た。
「条件と言うのは?」
ルミエスが問い返す。
「エクスプレッセスティは王を戴かぬ、民選制元首の国。それが別の国の為に軍を動かすとなれば、民にその理由を説明する必要がある」
「理由……ですか」
ルセリアの言葉に、ルミエスがどこかキョトン、としたような表情で聞き返す。
すると、ルセリアに代わってパタジンが、手振りを咥えながら説明する。
「ロウリアのクワ・トイネ侵攻に対して挙兵の大義名分となったのは “力による現状変更”と、“その際の占領地での非人道的行為”。つまり、侵略と、その現地住民に対する理不尽で外道な暴力と言う事になります。はっきり言ってしまえばすでにパーパルディアはこの一線を越えております」
「ただその段階でアルタラスを“国家承認”していなかったから、直ちにという訳にはいかぬがな……ただ、フェン事変ですでにパーパルディアと交戦している。パーパルディアはエクスプレッセスティを侮っておるだろうし、今頃は面子を潰されたと思っておるだろう」
「我々も陥ったものです」
ルセリアが説明を付け加えると、パタジンが頷いた。
「まず、“文明圏外の新興国”、次に“女だけの国にそんな武力はない”、ある程度被害が出たところで“奸計を使って他の列強を動かしている”、最後に圧倒的な力で叩き潰されてその実力を思い知る事になります」
「成る程……」
2人の説明を聞いて、ルミエスが静かに言った。
「ただ────これだけは戒めておいて欲しいのだが、“非人道的行為”についてアルタラス側の勢力が同じ事をやり返してしまうとエクスプレッセスティとしては身動きしにくくなる。最悪、撤兵を決めるやも知れぬ」
「何故。我が国民はパーパルディアに苦しめられているでしょう、報復したいと考えるのを抑えるのは難しいのでは?」
リルセイドが聞き返すと、ルセリアとパタジンは顔を見合わせて、ため息を
「それはエクスプレッセスティの民には関係のない事です。それをやってしまうと、逆に同情がパーパルディア側に移る可能性も否定できません」
「だからこそ、エクスプレッセスティは余を立てたのだ。クワ・トイネ側もロウリア側も憎しみを先王と侵攻軍の副将アデムに全て押し付け、両国の民に矛を収めさせたわけだ。アルタラスであれば、そうだな……ターラ14世に無礼を働いたというカスト大使、現皇帝ルディアス、その皇帝の権威を笠に着て外国に無礼を働くレミール、このあたりに憎悪を集中させて、パーパルディア全体が憎しみにならぬように誘導するのだ」
パタジンの説明に続いて、ルセリアが苦笑しながら言った。
「成る程……それならば、上手く民を納得させられるかも知れません」
ルミエスは、低い声で、その内容を呑み込むように言う。
「姫様、では、本気で……?」
リルセイドが少し慌てたような表情で聞き返すと、ルミエスは、視線をリルセイドに移して、まず頷く。
「リルセイドが挙げた亡命先の候補……ナハナート、ガハラ、ムー、これらの国は中立主義をとっている国でしょう。情けで私達を匿ってはくれるかも知れませんが、アルタラス再興を目指すのであれば……────」
『蛮勇の果てに』(システム上の54話)にいくつか感想を頂いておりますが、それに答えてしまうとこの後の核心に触れてしまうので、返事ができません。ご容赦ください。
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レミールの処遇は……
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原作通り
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総統閣下のわからせ棒
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行方知れず(故意)