フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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お詫びと訂正
「トーパ神話の4勇者」のうち、魔女ルーサを“ルーシ”と間違えていました。
あと他にもう1人間違えていたのもサイレント修正しました。(何

 ついでにエクスプレッセスティ製トラックの周りをちょこっと弄りました。


砂楼の皇国

 パーパルディア皇国、皇都エストシラント。

 皇宮パラディス城、略式拝謁の間。

 上座に座っている不機嫌そうなルディアスを前に、1人の男が、竦み、縮み上がっている。

 ルディアスの演台には、山のような報告書が積み上がっていた。ルディアスは演台に手を起き、トン、トン、と指を鳴らしている。

「パーラスよ……」

「はっ、はひっ!」

 ルディアスにその名を呼ばれた、臣民統治機構部長のパーラスは、怯えのあまり裏返った声を出してしまっていた。

 臣民統治機構とは、パーパルディア皇国の内務全般を司る部署で、日本であれば総務省、エクスプレッセスティであれば内務省に相当する。

 パーパルディア皇国は、特に直轄領以外の属領に対し、恐怖政治で強権的に振る舞う、それがルディアスの方針だというのは事実ではある。

 だが────

「ほんの数日でこれ程の報告が上がってくるとはな……」

 ルディアスはパーラスを睨みつけるようにしつつ、憤怒と呆れの混じった低い声で言う。

「で、ですが陛下」

 パーラスが、声をあげようとするが、

「黙れ!!」

 と、ルディアスは、自分より年嵩のパーラスに怒鳴りつけた。

「余は確かに恐怖によって属領を支配せよとは言ったが、それは安定した統治の為の手段としてのものだ。官憲の私服を肥やす手段にしろと言ったつもりはない!!」

「もっ、申し訳ありません!!」

 ルディアスが激しく叱責すると、パーラスは床に頭がつきそうな程平身低頭する。

「言い訳は無用だ! これでは属領の風紀は最悪であろう。パーラス! お前に対しては極刑を以って臨む他ない!」

「ひっ!?」

 ルディアスが強い語気でそう言うと、パーラスは顔面を真っ青にした。口をパクパクとさせるが、絞り出そうとする抗弁の言葉は声にならない。

「現状、皇国がどのような事態にあるかは解っているであろう? ──── 余の危惧していた “力” が、皇都に対して振るわれたのだ」

 過日のエクスプレッセスティ軍の攻撃は、 “飛行機械” ──── MiG-29Hi/US・2機の投下した爆弾により、戦列艦8隻が破壊され、軍港施設の一部も損傷した。

「無論、エクスプレッセスティの戦力が皇国を討ち滅ぼせる程のものということはありえないであろうが……その前提も統治が正しく行き届いていればこそだ! 皇国に損害を与え、臣民を裏切り、余の権威に(きず)をつけた罪はこれ以上なく大きい。しかも属領の民の命を()()()()()()()()()()に奪うことすらしている! これを看過したのではすべからく臣民に示しがつかぬわ!!」

 ルディアスが一喝すると、パーラスは、ガックリと崩れ落ちるかのように全身から力が抜けた。

「引っ立てろ! 続報を待ち次第その事情を聞かせてもらう、牢獄に放り込んでおけ!!」

 ルディアスがそう命じると、近衛兵がやってきて、辛うじて自力で立っているパーラスを連行していった。

 ──さて、これからどうすべきか……

 ルディアスは、椅子に座り直すと、軽くため息を()きながら、今後の事について考える。

 ──エクスプレッセスティの戦力を測り間違っている可能性はあるが、皇国を完全に滅ぼせる能力がないのは確実だ……

 ルディアスは、そう思うものの、それはほんの少しの気休めでしかない。

 ──軍港設備を破壊したのは、その証拠だ……

 奇襲攻撃が通用するのは、基本的に一度だけだ。エクスプレッセスティがパーパルディアを完全に滅ぼすつもりであれば、最初の攻撃で皇宮を狙い、ルディアスや有力な皇族、官僚を抹殺しているはずだ。或いは市街地を攻撃すれば民衆にパニックを起こすことができるだろう。

 そう考えるルディアスの想定は、それほど外れていない。エクスプレッセスティ側としては、市街地への攻撃に関しては、民間人に対する無差別攻撃を最初から想定していないが、皇帝や高級官僚を狙わなかったのはルディアスの読みどおりである。

 ルディアスの統治が盤石であれば、下手に皇族を殺害するとパーパルディア国民の反感を買う可能性もある。だが、現状ではそうなるとは考えにくいし、その理由をエクスプレッセスティ側は知っている。

 ──国の建て直しと戦争と……両立する事は困難ではあるが……今はまだ、矛を収められる状況ではない……それでは属領や周辺国に対する皇国の権威を毀損することになる。

 事態の重さは理解しているものの、列強としてのプライドをかなぐり捨てるまでにはいかない、それはルディアスもまた、他の皇族や官僚のそれから脱するに至っていなかった。

 ──なにか、決定的な勝利を収めて、かたちの上は皇国の方が慈悲を示して矛を引く、その状況を作り出さなければならぬな……

 

 

 同じ頃。エクスプレッセスティ共和国、首都エムブラセクス。

 国防省、第1大会議室。

 そこに、マコト・ハンナ・イノウエ国防省長官以下のエクスプレッセスティ国防軍のブレインと、総統のエミリア、ハンナ・テイラー外務省長官、ユリ・キャサリン・タナカ内務省長官、マリーナ・ボロディン情報総局長、等の面々が、作戦の事前説明の為に集まっていた。

「────……事前の戦略目標に従い、アルタラス島のパーパルディア皇国軍を排除するための攻撃行動を実施しますが、それに先立ち、パーパルディアの継戦能力を削ぐため、まずは東部の工業都市デュロに対し、空爆を実施します。もちろんこれは、陽動の意味も持ちます」

 マコトは、高輝度プロジェクターが映し出した、パーパルディア皇国の略地図を示す。パーパルディア東部沿岸部、エナジポリスの軍基地から空軍機が軽く届く位置に存在するデュロに、マーカーが置かれていた。

「うーん……この段階で本格的な本土攻撃をするの?」

 エミリアが、少し渋い顔をしながら、問いかけた。

「下手に都市を攻撃すると、返って抗戦の声を煽ることにもならない?」

「それについては、私から説明します」

 マリーナが切り出す。

「先日のレポートにも書きました通り、現在、パーパルディア皇国は政府機関の規律の緩み ──── と言うか、まぁ完全に腐敗ですね。腐り切って秩序がないに等しいので、その心配はないと思います」

「ちょちょちょ」

 マリーナの説明を聞いて、エミリアが慌てた声を出した。

「それだと、逆に攻撃したりすると、パーパルディアが分裂する危険があるんじゃない?」

「ご心配はもっともな事です。そのリスクは低くはありません。ただ、パーパルディア側の継戦の意図が挫かれず、長々続くと、やはりそのリスクを抱えた状況もズルズル続くことになります」

 エミリアの言葉に、マリーナがそう答える。

「それよりは、パーパルディア側に継戦を断念させる要素を増やしていった方が、より短期間で講和の目があると、情報総局と国防省、それに外務省で意見が一致したのです」

「パーパルディア側も、得体が知れないなりに脅威ではあると見做しているってわけね……だから第3外務局がコネクションを確保したがったってワケか」

 エミリアは、軽くため息を吐きながら、そう言った。

「それで? 都市攻撃────軍需工場を攻撃するってことになると思うんだけど、そうなると、ある程度の範囲を攻撃する事になるんじゃない?」

「はい。Su-22UGEとBr-1050Aを動員しまして、滑空爆弾で初撃を入れた後、コンベンショナルな爆弾で工場施設に対する爆撃を実施します」

「誘導能力を持たない爆弾での攻撃……って、え?」

 エミリアに説明を求められたマコトが、そう答えると、それを聞いたエミリアが戸惑ったような声を出す。

「ま、待って待って。Su-22でも作戦時で搭載力は、燃料差っ引いても3tでしょ? それを工場地帯にバラまくの?」

「大丈夫です。Su-22UGEであれば無誘導の爆弾でも、ある程度の精密さで爆撃できますから、広範囲に及ぶ “無差別爆撃” にはあたりません。ただ……都市を爆撃する以上、民間人の犠牲を完全にゼロにする事は難しいですが……これはミサイルの類を使ったとしても大差は出ません」

 マコトは、そう説明するものの、隣に立っているマリーナともども、険しい表情をしている。軍人だから無差別に殺していいというわけではないだろうが、やはり民間人に累が及ぶ攻撃に対しては、一線越える感覚はどうしても拭えない。

「難しいわね……こちらの非武装員を殺害している以上、多少荒っぽい事をやっても、強い批難の声は出ないでしょうけど……逆にそれが怖いのか、こちらも『パーパルディアけしからん、完全に叩き潰せ』って言う意見が高まらないうちに()め時を確保しなきゃならないのか……」

 エミリアは、ぼやくように言って、腕組みしてかくん、と首を傾けた。

「これが地球であれば僅かなのリスクの低減でも誘導兵器を使うところなのですが……正直、パーパルディアの軍事力の質と数を考えますと、半導体を浪費するのは……たしかに、クワ・トイネとロウリアの()()で供給の問題は解消されつつありますが……────」

 

 

 クワ・トイネ公国、山岳地帯の城塞都市エジェイ近郊。

 CASIO Quartz & Semiconductor クワ・トイネ-エジェイ工場。

「お忙しい中、お手を煩わせて申し訳ありません」

「いいえ、これはクワ・トイネの国益に関わる国家的プロジェクトとの事ですから」

 視察に訪れたカナタに、案内役の従業員がそう言った。

 エクスプレッセスティは転移前、高純度シリコンウェハの89%を日本からの輸入に頼っていた。

 国内でも、有事に備えて技術の確保はなされていたが、どうしても日本並みの品質はできないし、突然の輸入途絶分を補える程の生産力もない。

 そこで────────“科学”で不足する分について、 “魔法” に頼ることにした。

 この打診に対し、先行したのはロウリアの方だった。元々ヤミレイを筆頭に魔法学の研究が盛んだった事もあり、珪石からシリコンを抽出する技術を編み出した。

 原料の珪石は、ロデニウス大陸を南北に隔てる山岳地帯の、山麓部分に採掘可能な地点が点在していることが判明していた。

 そして、ロウリアはビーズルの工場が操業を開始したのが、1ヶ月ほど前。

 クワ・トイネも負けじと、後追いで1週間ほど前にこのエジェイの工場の操業を開始した。

 カナタは、クリーンルームを空気が遮断された視察・見学用の通路から見下ろしている。アメジスト色に光る筒状の魔導反応体が差し込まれた抽出装置を中心に、生産ラインが稼働していた。

「武を使う戦争ではありませんが、これもまたロウリアとの競争……国が発展していくにはそれは必要不可欠なものです。クワ・トイネがただの農業国のままとなるか、より付加価値のある製品を送り出せるようになるか ──── あなた方の努力にかかっています」

「はいっ! 我が国のためにも、エクスプレッセスティの恩義に報いる為にも、従業員全員、それを肝に銘じて、毎日の作業に取り組んでいます!」

 カナタの言葉に、ハーフエルフの従業員は直立不動でそう言った。

 

 

 エクスプレッセスティ共和国、最大の工業・港湾都市エナジポリス。

 ピッ

 シャープ・エクスプレッセスティ、エナジポリス本社に勤めるサラ・ボロマは、交通ICカード『ExR-Touch』を料金授受機の読み取り機にかざして、自宅近くのバス停でトロリーバスを降りた。

 ヒィイィィン……

「…………」

 エナジポリス在住だと、一般人でも聞き分けられるようになる、エクスプレッセスティの民間機のほとんどを占めるターボプロップ機とは異なるエンジンの音。

 サラが振り返ると、朱に染まる空を、エナジポリス軍基地の滑走路へと、Su-22UGEが着陸態勢に入っている。

 非武装員殺害は、エクスプレッセスティ国内ではセンセーショナルなニュースとして流れ、「パーパルディア許すまじ!!」という世論はできていたが、実際には軍人のパートナーや子息子女以外にはどこか、遠くで起きている戦争、という感覚があった。

 しかし、一大軍事基地であるエナジポリスの港湾地帯の近くに住んでいると、軍用機や軍艦の出入りがあって、他の地域よりは多少、“戦争”を身近に感じる。

 サラは、単身向け規格型住宅である自宅マンションの、1DKの一室に帰り着く。

 部屋着に着替えて、一息ついたところで、ふと思いつき、スマートフォンを手に取った。アドレス帳から電話番号を呼び出し、通話をタップする。

 トゥルルルル……、と、何度か呼出音が鳴った後、電話が繋がった。

『はろりん。サラっち、なんかあったん?』

 電話越しに、大学の同期だったカナ・ジェシカ・オオノが、そう声をかけてきた。

「いえ……カナは今、家にいる?」

『んだよー。さっき帰ってきたトコ』

「そう、じゃあ今は、B(ブリュンヒルデ)F(・ファイアー)A(アームズ)は忙しいってほどでもないのね」

『うちんところはね。パーパルディアとドンパチ始めた時は生産ライン調整で忙しかったけど、一度組んじゃえばロボット任せだから』

「ふーん……」

 カナの答えに、サラは、とりあえずといった感じで、曖昧に声を返してから、

「じゃあ、忙しいところってあるの?」

『今忙しいのはBANGの……ってあ、不味い。今の聞かなかったことにして!』

 カナは答えかけて、慌てて誤魔化そうとした。

「別にスパイってわけじゃないんだし……BANGがなんなのかぐらい教えてくれてもいいじゃない」

 サラは、電話口で苦笑しながら言う。

『うーん……まぁ、簡単なことなら……爆弾だよ。戦闘機から落とすやつ』

「ミサイルじゃなくて?」

『そ。誘導装置とかないやつ。イギリスからのライセンスだけど』

「へぇ…………」

 カナの答えに、サラは少し意外に思った。

 エクスプレッセスティ国防軍も軍事機密というものは存在しているが、専守防衛を建前にしている軍隊ゆえ、抑止力のためにある程度の戦力について、公開している。

 それに、BFAは輸出もやっていたし、2022ウクライナ-ロシア戦争では、他の西側諸国とともに実戦経験のない自国開発兵器を供与の名目でウクライナ軍に使ってもらい、フィードバックしたりもしている。

 ──精密なミサイルとかならともかく、普通の爆弾が、誤魔化さなきゃならない程、重要なものかしら?

 サラは不思議に思う。

『あんま広言しないでね?』

「しないわよ」

『どーかなー、サラって結構スピーカーだからなー……』

 サラの答えを聞いて、カナは、緊張感を欠きつつも、訝しむような声を出した。

「しないって。単なる爆弾程度じゃ大した話題にもならないでしょ」

『ん、まぁ、そう言われればそうか』

「それじゃ、近いうちに一緒に食事でも」

『時間があったらね。じゃ』

 そう会話を交わしてから、通話を切った。

 カナが航空爆弾の部門が忙しくなっていることをどうして隠したがったのか、サラには見当がつかなかった。

「ふぅ……」

 サラは、スマートフォンをベッドサイドに置いてから、一息ついた後、帰りがけのミニストップで買ってきた、商品の入った()()から、チョコレートドリンクを取り出した。

 クワ・トイネでは試験栽培のはずが、あっという間に定着し、最初の晩秋にはエクスプレッセスティでチョコレート関連のラインが再稼働できるほどの収穫があった。

 大地の女神の祝福がどういうものなのか、まだ理解の範疇の外だったが、とりあえずチョコレートの生産再開は有り難いな、と思いつつ、サラはストローを吸った。

 





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レミールの処遇は……

  • 原作通り
  • 総統閣下のわからせ棒
  • 行方知れず(故意)
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