オリキャラによる原作キャラ◯害シーンあります。
────エクスプレッセスティの有期限戦闘停止宣言から110時間経過。
「やり辛い戦いだな……」
パーパルディア皇国軍、アルタラス暴徒鎮圧作戦部隊の指揮官に抜擢されたマクシミリアン准将は、少し焦れた様子を見せつつ、そう言った。
場所はアルタラス島、ル・ブリアス、商業港地区。再占拠後、指揮所として確保した、旧アルタラス王国、ル・ブリアス港管理事務所のオフィス。
前日の午後、パーパルディア軍部隊は、ル・ブリアス商業港、ハイペリオン基地軍港、ルパイル平原北東部海岸から、合計13,000の兵力で上陸した。さらに3万強の後続部隊が上陸する予定になっている。
アルタラス・レジスタンスは刀剣類程度の武器しか持っていない。港湾施設や都市の郊外は、装備の較差に加え、竜母部隊による空襲と艦砲射撃で割合容易に上陸しレジスタンスを追い払うことができたが、問題は市街地だった。
侵攻であれば、皇国軍であれば飛竜隊や艦砲射撃、野戦砲で街ごと焼き払う。だが、今回は属領とは言え皇国領内の暴徒を鎮圧する任務だ。
もっとも、それでもこれまでは見せしめとばかりに無差別攻撃をかける事もあったが、今回は、それは戒められている。
「此度の作戦は、皇都やパールネウスなど都市が暴徒に占拠された想定で実行する必要がある。極力、アルタラス・レジスタンスを自称する暴徒のみを排除し、一般市民、特に女子供の犠牲は最小限に抑えなければならない。皇都がその状態に陥った想定の作戦だと心して臨め。これは皇帝陛下からの命令である」
平時は近衛師団第1連隊の指揮官であるマクシミリアンに下された命令はこれであった。
作戦部隊の編成の際、皇都防衛隊から抽出したのは、迅速な再上陸を行う為だったが、同時にこの様な、現代地球で言うところの非対称市街戦を想定した訓練を受けている部隊を用意する為でもあった。
特に、直ちにレジスタンス掃討にあたるル・ブリアス商業港上陸部隊には、取り回しやすい
──アルタラスに対しここまでの配慮をする必要があるのかも疑問だが、それ以上に……
マクシミリアンは、ある懸念について逡巡しかけたが、
──いや、それは今、この場で自分が考えても仕方ないだろう。
と、それは現在の作戦とは無関係だと、ひとまず意識から振り払った。
マクシミリアンが憂慮していたのは、皇都防衛隊から再上陸部隊を引き抜いた穴を、内陸のアルーニからの部隊で補填するという点だった。
確かにエクスプレッセスティとの戦争が再開された際、当然、沿岸部が攻撃されるのだから、内陸から部隊を引き抜いたのは理解できる。
ただ、問題は、その内陸部においても、リーム王国が不穏な動きを見せている、という情報が、パーパルディア軍務局にもたらされていた。
「状況はどうなっている?」
マクシミリアンは、自身の副将であるテオドールに問いかけた。
「ハッ! 予定通りとは言い難いですが、確実に進行しております」
テオドールはそう言い、ル・ブリアスの地図をマクシミリアンに見えるように広げた。その地図には、魔信、あるいは伝令で報告された、ル・ブリアス市街地内のパーパルディア軍部隊の制圧具合が、ペンで何度も上書きされていた。
その地図の書き込みが示す通り、ル・ブリアスの暴徒鎮圧作戦は、
「む、皇帝陛下の厳命であると言うが、一般市民と暴徒の区別はきちんとできているか?」
「はい。武装蜂起した暴徒と、一般市民を、簡単に見分ける手段がありましたので」
「ほう?」
テオドールの答えに、マクシミリアンは意外そうな声を出した。
「どのようなものかね?」
「簡単ですよ。暴徒は必ず本格的な武器を持っているのです。本来、これらは最初の占領時に没収しましたから、今、これを持っているのは武装蜂起に関わった者ということです」
「なるほどな、それは意外な着目点だ。 ……────」
テオドールの説明に感心したマクシミリアンは、そう言いつつ、
「────将来、役に立つかも知れん。戦闘詳報に記載しておけ」
と、「将来」の前に「近い」と付きかけたのを、とっさに飲み込んでそう言った。
マクシミリアンが想定したのは、エクスプレッセスティ軍がエストシラントを強襲してくる可能性だったからだ。
「ですが、属領に対するものにしては、随分とデリケートな扱いになっていますね」
「お前もそう考えるか」
テオドールの言葉に、マクシミリアンは、自身の考えを当てられたように感じて、そう言った。
「今回の戦いに限らない────皇国が、全体的になにか変わりつつあるのは、軍人なら誰もが感じているだろう」
「ええ────臣民統治機構のパーラス本部長が更迭されたあたりからでしょうか」
マクシミリアンの言葉に、テオドールはそう返した。
2人とも、近衛師団にいると言う関係で、皇宮内部の情報はある程度流れてくる。
「そうだな。
「そう考えると、我々のこの作戦も、陛下が軍をお試しになられているのかも知れませんね」
「それならば、増々気を引き締めてかからないとならんな」
近衛連隊によるル・ブリアス掃討戦は完了していないが、多くのアルタラス・レジスタンスは、拠点としていた廃鉱山地区に追い詰められつつあった。
「これは……ハメられたのかも知れないな……」
作戦室に鬱々とした空気が流れる中、ライアルが呟いた。
『タスの日』、何もかもが想定通りに進んでいた、蜂起は成功した、そう思っていた。
歯車が狂い始めたのは、“民生アルタラス軍”を名乗るアルタラス人の集団が、中央広場に突入してきた時だった。
その時、広場では、市街地の詰め所で降伏したパーパルディア兵を、自分達の屈辱を込めて、尊厳を辱めながら処刑しているところだった。
人員数が違いすぎた。突撃してきた“民生アルタラス軍”は、アルタラス・レジスタンスの数人を殺害し、負傷させたが、レジスタンスが直ちに包囲し、殲滅した。
しかし、その僅かな間に、生存していたパーパルディア兵は、あろうことか王宮アテノール城に集まり、籠城した。
アルタラスの誇る王城が、皮肉にもアルタラス・レジスタンスの攻撃を妨げた。
だが、籠城したパーパルディア側も弾薬食料の備蓄に乏しかった。特にマスケットの発射薬は調達のしようがなかった。
包囲の後、パーパルディア軍残存兵の銃撃が止み、レジスタンスはアテノール城強行突入を ──── しようとした時だった。
パーパルディア軍の飛竜隊が飛来し、アテノール城を包囲していたレジスタンスに導力火炎弾を撃ち込み、焼き払った。
鮮やかな形勢逆転だった。パーパルディア軍部隊はル・ブリアス商業港に強行上陸を果たすと、王城前に集まっていたアルタラス・レジスタンスに携帯式魔導砲を撃ち込み、レジスタンスは追い払われた。
旧アルタラス王国軍経験者が多かったとは言え、レジスタンスは組織の系統化もされておらず、文字通りの烏合の衆だった。ル・ブリアスに直接上陸したパーパルディア軍は然程の大群ではなかったが、統率された動きの取れないレジスタンスは各個撃破された。
────そして、現在に至る。
「エクスプレッセスティも、アルタラス再興などさせる気はなかったのかも知れん。逆に、我々を炙り出して、パーパルディア軍に始末させるつもりだったとしか……国王陛下の仰られたとおりだった……」
追い詰められ、誰もが言葉を発する気力を失っている中、椅子に座り込んだライアルは、ボソボソと言う。
「ですが、間違いなくルミエス王女の声で、我々に対して放送がありました……リルセイド騎士長の声も確認しました……まさか、ルミエス王女も、それに加担しているというのですか……?」
疑問を投げかける声もあったが、
「エクスプレッセスティの虜になり、脅迫されて言わされたのかも知れん…………リルセイド騎士長も、ルミエス王女を人質に脅されれば、従うしかなかっただろう……」
と、別の、ライアル以外の誰かが、自棄的な口調でそう言った。
「隊長!」
暗鬱な空気の中、張り詰めたような声が響いた。
緊迫した声だが、明るく覇気がある様子ではなかった。
「今、以前にルミエス様の放送があったチャンネルに、先程からエクスプレッセスティからの放送が届いてきています」
「……エクスプレッセスティからの…………」
今のライアル達には、エクスプレッセスティに対しては既に疑心しかなかったが、自分達の状況が変わるヒントが備わっているかも知れない。そう考えると、ライアルは周囲にいた部下数人と共に、その放送を聞く為に、広帯域受信機が置かれている部屋へと向かった。
『こちらはエクスプレッセスティ共和国国防省、この後特別放送を実施します。繰り返します、こちらはエクスプレッセスティ共和国国防省、この後特別放送を実施します…………』
ライアル達が部屋に入ると、ホーン型スピーカーから、女性の淡々とした声で読み上げるコールが聞こえてきた。そのコールが、2分ごとに繰り返されていた。
数回コールが繰り返された後、
『こちらはエクスプレッセスティ共和国国防省、只今より、パーパルディア皇国属領に向けた特別放送を開始致します』
と、同じ女性の声が入った後、一瞬、音声回路を繋ぎ替えるノイズが入った。
『パーパルディア皇国属領、そして、本土の民よ。聞こえておるか? ────』
「ルミエス様じゃない……この声は!」
ライアルが、気がついたその声の主が、放送の向こうで名乗る。
『余はロウリア連合王国国主、ハーク・ルセリア・ロウリア35世である。パーパルディア皇国属領の運命について、まずは余から説明させてもらう──── ────
まず前提として、パーパルディア皇国は、エクスプレッセスティには絶対に勝てぬ。これは実際に戦った、ロウリアの者であれば誰しもが認めるところだ。余もロウリア国主としてそれを保証しよう。
今回、余の口から伝える事になったのは、この事があったためだ。
その上で、単刀直入に言ってしまえば、エクスプレッセスティはパーパルディアの解体を望んでおらぬ。それは無数の小国と、無政府地帯を生むことになるからだ。
それに、
ただ、属領にパーパルディアからの分離を望む声があるのは無視できなかった。
そこで、エクスプレッセスティは、属領の民が自立できるかテストした。
────────アルタラスでな。
「!?」
ルセリアがアルタラスの名を出すと、ライアル達の表情が変わる。脱力した状況から、俄に表情が険しくなる。
ライアル達の様子の変化が解るはずもなく、放送の向こうのルセリアは続ける。
結果は失敗だ。ルミエス王女が繰り返し自制を求めたにも関わらず、蜂起に際して捕らえたパーパルディアの官憲に、復讐として
挙句の果てに、それに反対するアルタラス人の集団も虐殺し、ル・ブリアスの広場に晒した。
やっていることがパーパルディアと同じだ。
つまり、アルタラスの結果、属領を分離させると、現状のパーパルディアみたいな国が70余国も生まれ、それにひとつひとつ対処しなければならなくなる。と、エクスプレッセスティはこう判断した。
だったら、ひとつのパーパルディア皇国のままの方が余程楽ではないか。
エクスプレッセスティは無償の奉仕者ではない。戦争もあくまで自国の利益が前提に行われる。
エクスプレッセスティが選択したのは、パーパルディア皇国を中央集権国家として残す
ヒィイィィィィィン……
「これ程気乗りしない爆撃はないな」
イリーナが珍しく、渋い口調でそう言った。愛機MiG-29Hi/USの翼の下には無誘導の爆弾が装備されているにも関わらず、だ。
「じゃあ、私がやりましょうか?」
「…………、いや、私がやる」
イリーナが一瞬言い澱んだことに、後席のナオミは、それを意外に思ったが、同時に無理もないとも考えていた。
────────これが、今回のアルタラスの蜂起の結果だ。属領の民よ、残念だが、エクスプレッセスティはそなたらが独立を主張したとして、これを認めぬ。無謀な戦いは避けよ。流血は意味がない』
「我々が試されていただと…………」
「我々のやっていたことが、パーパルディアと同じ……だと……」
ライアル以下、アルタラス・レジスタンスの指導者層が、唖然としながらボソボソと呟くように言う。
ルセリアの言葉は、感情では到底受け入れられなかったが、客観的にそうだと言われれば、否定のしようがなかった。
『属領の皆さん!』
不意に、声がルセリアとは別の女性の声になった。
「る、ルミエス様…………!」
ライアルが愕然とする。
『思うところはあるでしょう。ですが、パーパルディアから分離するのではなく、パーパルディアの一員として、状況を良くする事を考えてください。戦争の後、その機会は訪れます。辛抱はもう少しの間です。もう少しの間だけ、無謀な挑戦を避けて、自制してください。自制できなかったアルタラスのようにならないでください』
「エクスプレッセスティ軍の“飛行機械”、我が軍の警戒範囲内に侵入!」
「!」
それを聞かされて、マクシミリアンは、座っていた椅子をガタッ、と鳴らしながら、立ち上がった。
「攻撃を仕掛けてきているのか!?」
「いいえ、高速でワイバーンロードを振り切っていますが、我が軍への攻撃はしてきません!」
マクシミリアンの問いかけに、テオドールが答える。
「こちらからも、先に手を出すな! 全軍に伝えよ!」
『滅びた国を、滅ぶ前に戻すことはできません』
「ルミエス様! なぜ、なぜそのようなことを仰るのですか!!」
ライアルは、受信機を両手で掴み、ルミエスに聞こえるはずもないのに、激しい声で問いかける。
そして、彼の最期の一瞬前、ルミエスはその希望をすべて打ち砕いた。
『アルタラスは、おしまいです』
────エクスプレッセスティ国防軍制式の数少ないアメリカ製兵器、BLU-109貫通爆弾が、イリーナ機から投下され、アルタラス・レジスタンスが立て籠もる坑道に突き刺さり、炸裂した。
補足しますと、BLU-109貫通爆弾は、エクスプレッセスティ国防軍では海軍航空隊の装備になっていて、空軍は持っていません。これは、東アジア有事の際、空母で駆けつけた後、CやらNKやらの戦略核施設をブチ壊す為です。
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レミールの処遇は……
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原作通り
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総統閣下のわからせ棒
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行方知れず(故意)