「んっ……はぁ……はっ、はっ……」
「やっ、んっ、キツすぎ……ぁぁっ……」
「ふふ、良ければ後でやり方教える……?」
「はっ、はひっ……ぁっ……」
エクスプレッセスティ共和国、エナジポリス。
グレイス・アサギ・アダムス陸軍大尉とイーネ・グレイシス・アダムス陸軍兵曹長の自宅。
アサギがイーネを攻めていた。アサギは基本的に
マンネリを避けて、2人は色々なかたちを試し、
「んっ、はっ、あ、出る、っ……出るっ!!」
今日はアサギが攻めていた。
ただし、アサギは自身の
「はー……」
2人は行為の後、ベッドの上で余韻を味わいつつ、徐々に息のペースを落としていたが、やがてイーネが起き上がり、一旦キッチンに向かう。
ナショナル・エクスプレッセスティの大型2ドア冷凍冷蔵庫、『The Big 2door』の冷蔵室を開ける。
ナショナル・エクスプレッセスティはパナソニックの現地法人だが、パナソニックの100%子会社ではなく、第2位のマシニラスティ・テックインダストリーを始めとして、国内資本が入り込んでいる。
The Big 2doorはかつて、松下電器産業・ナショナルブランド時代の大型家庭用冷蔵庫『ザ・ビッグ2ドア』に由来する製品で、 ────
「マルチドアなんてしゃらくさい事はせずにとにかくデカい冷蔵庫」
という事で、国内で製造されている。自動製氷とチルドパーティションはついているが。
ついでに日本にも輸出していた。
イーネは、冷蔵庫からアクエリアスの500ml缶を2本取り出し、寝室へ戻る。
「はい、アサギさん」
「ありがと」
イーネがアクエリアスの1本をアサギに差し出し、アサギがそれを受け取る。
イーネ自身もステイオンタブを開け、裸で立ったまま煽った。
エクスプレッセスティは本格的に夏になりつつある。リベレックシス製エアコンが稼働しているが、窓からは、エナジポリス駅から港湾への貨物用引込線の、併用軌道区間を通過している際に鳴る警鐘音が聞こえてくる。
日本様式、特に鉄道は強くそれになるのが基本のエクスプレッセスティにあって、この部分はアーチに振り子式の警報灯が取り付けられた、アメリカ式の “
「ぷはぁ……」
イーネは、飲み物を嚥下して息をついた後、アサギに視線を向ける。
「はー、明日から大変になりそうですねぇ」
「そうね、あーめんどくさ……」
イーネの言葉に、アサギは気怠そうにそう返した。
「めんどくさい? ですか?」
イーネは苦笑しながら、アサギに問い返す。
「いや戦争するのはいいんだけど、準備がかったるくない?」
「元
アサギがぼやくように言うと、イーネは、苦笑したままそう言ってから、
「私はそうでもないですけど……まだ始めて見るものとか、結構ありますし」
と、言った。
「ふーん、そっか」
決して投げやりと言った様子ではなく、アサギはそう返した。
「あ……」
イーネの身体の
「ふふっ、もう1回戦行っとく?」
それを見たアサギが悪戯っぽくそう言った。
「えっと……」
イーネは、少し戸惑ったように言う。
「テク……教えてあげるから」
「……お願いします」
そう言い交わすと、まず2人はベッドの上で、お互い
────1週間後。
エストシラント南東沖、空母『ヴァルキュリア』。
『グレイス2より入電中。エストシラント上空に多数のUnknownの反応有り。発艦後も情報には注目されたし』
「了解。ヴェルダンディ1、発艦許可願う」
MiG-29Hi/S艦上戦闘機のコクピットで、チポー・アンドロジナス・ズマ大尉は、無線に向かってそう言った。
ちなみにどっかのヘリコプター搭乗員同様、名前を
既にBr-1050AEW空中早期警戒機が飛んでおり、エストシラントとその洋上の上空を監視している。
『
その通告があり、アンジーは射出の衝撃に備える。蒸気カタパルトが作動し、MiG-29Hi/Sが甲板から打ち出され、蒼穹の空へと向かっていく。
パーパルディア皇国、皇都エストシラント。
朝────レミールの私邸。
起床したばかりのレミールが、寝室のテラス窓から空を見上げる。
この日もうなされていたのか、寝汗でびっしょりになっている。
朝の澄み切った蒼穹の空には、防空のために飛び上がった多数のワイバーン・オーバーロードが見える。
──心配しすぎていたのかも知れない……
ワイバーン・オーバーロードの姿を見て、レミールはそう考えていた。
ワイバーン・オーバーロードは、専用種であり、厳選された親の交配によって生まれた卵に、専用の魔法陣の上で大量の魔石を使って干渉することで生まれる。その為、生産にはかなりのコストを要する。
加えて、生殖能力がない1世代限定であり、ワイバーン・オーバーロード自体の繁殖ができない。この為、大量生産ができない。
その事もあって、エストシラント軍港奇襲や、デュロ空爆の際には、僅かな数しかなく、エストシラントの防空部隊と最新鋭竜母だった『ヴェロニア』にしか配備されていなかった。
エストシラント軍港奇襲の際には、防空網の隙をつかれたことが皮肉にも幸運で、10騎程度しかいなかったワイバーン・オーバーロードの損失は避けられた。デュロにはまだ未配備だった。
一方で、ヴェロニアに搭載されていた36騎のうち24騎は、ヴェロニアが不明の大爆発 ──── エクスプレッセスティ潜水艦『ミズハルカ』の雷撃により、母艦もろとも失われ、上空警戒中だった12騎も、アルタラス島のハイペリオン基地に不時着した。この時点でハイペリオン基地はエクスプレッセスティ軍の空爆により機能を喪失しており、ワイバーン・オーバーロード自身も不時着によって傷ついていて再離陸できない状況のため、搭乗者の手によって殺処分された。
その後、本土が敵の航空攻撃を受けるという状況になって、コスト度外視で大量生産する事になったものの、遅々として進まず、100には程遠いと言ったところだ。
なので、実際にワイバーン・オーバーロードとMiG-29GE、MiG-23GENが直接戦ったことはなく、軍の一部には「ワイバーン・オーバーロードの配備が進めば恐れるに足らず」という楽観論もあった。
ただ、レミールの場合は、希望的観測に基づいた楽観論とは少し異なる。
彼女自身、MiG-29Hi/USの音速突破の瞬間を見ており、「ワイバーン・オーバーロードでは絶対に勝てない」事を、理性としては理解していた。
それでもその存在に縋ってしまうのは、自身が敗戦の責任を負わされ、罪人としてエクスプレッセスティに引き渡される事に対する恐怖からくる、精神疾患を伴う現実逃避だった。
──そうだ。皇国に……この皇都まで攻め上げることなど不可能……
レミールはそう思い、ワイバーン・オーバーロードだけではなく、ワイバーンロードも含め、多数の飛竜隊が皇都上空を飛んでいるのを見て、自身に暗示をかけるかのように、胸中で繰り返しそう呟いた。
エストシラント上空。
──もはや軍事に疎い者でも解っている……ワイバーン・オーバーロード程度ではエクスプレッセスティの “飛行機械” には対抗できないと……
飛行隊長を努めているデリウスは、いつその時が来るかと怯えていた。
彼の恐怖は自身の死に対するものではない。否、まったく含まれていないと言えば嘘になるのだが、それ以上に、どう考えても勝ち目のない相手に戦いを挑ませることを、部下に命令せざるを得ないということだった。
エクスプレッセスティの“飛行機械” ──── 戦闘機のカタログスペックは驚くべきもので、そもそもワイバーンが生物兵器である限り、実現不可能と思うしかないものだった。しかもこれも “ソビエト連邦” で開発されたタイプのものが公開されているだけで、エクスプレッセスティ共和国向けに改修されたものの詳細なスペックは隠されているという。特に武装の “ミサイル” については、より高性能な物を搭載されているとのことだ。
しかし、だからといって飛竜隊が皇都防衛の任を放棄し、無防備にする訳にはいかない。
デリウスは、
『隊長! 南です! 南から光が接近してきます!』
部下の1人であり、累積ではダントツのベテランであるプカレートが、魔信越しに緊張した声を発した。
「散開しろ、纏まっているとやられる!」
デリウスがそう指示し、自らワイバーン・オーバーロードを急機動させる。
デリウスの小隊は編隊を解いて一気に散開するが、光 ──── 『ミーティア』AAMはレーダー反射波を捉えて、その方向へと向かっていく。
「クソッ────」
ミーティア・ミサイルはデリウスと彼が跨るワイバーン・オーバーロードの、防具が反射するレーダー波を捉えて、突っ込んでいった。
近接信管が作動するのに充分な反射波がなかったのか、ミーティア・ミサイルはデリウスの腹部に飛び込み、そこで撃発信管が作動した。
────デリウスは、すべての苦悩から永遠に解放された。
「あ……あ……」
その光景を見てしまった。
そもそも、“飛行機械”は姿すら表していない。遥か彼方から飛来した誘導魔光弾らしきものが、視界の中に入ったかと思うと、次の瞬間にワイバーン・オーバーロードの編隊に飛び込み、いとも容易く破壊した。
レミールは腰を抜かし、自室の床に背中からへたり込んでいた。
ヒィイィィィンッ……
甲高い爆音を聞き、レミールは背筋が凍りつくほどの恐怖を感じ、意識が遠のくような思いをする。
レミールの視界の中に、青灰色の悪魔 ──── MiG-29Hi/Sが姿を表した。
ヴェルダンディ1──── アンジー機は、一旦超音速で敵飛竜隊のすぐ上を通過すると、エストシラントの防空網を内陸側に過ぎたところでターンを打つ。
ウェポンセレクターを中射程AAMから短射程AAMに切り替える。アンジーのヘッドマウントディスプレイに、止まっているような相対速度で飛行するワイバーンが表示され、そのままロックオンされる。
「
アンジーが呟き、トリガーボタンを押す。
MiG-29の翼から、ASRAAMミサイルが発射される。
「報告します! 駐屯地の隊舎群に敵の爆弾が多数命中、多数の兵が死傷しています!」
「クソッ!」
軍基地の司令部である塔で、エストシラント防衛隊総指揮官の陸将メイガは、入ってくる報告に、ただただ荒く言葉を出すことしかできなかった。
MiG-29Hi/USの1個小隊が、エストシラント軍基地上空に侵入し、隊舎群に対して合計48発の250kg爆弾がバラまかれたところだった。
──最初から太刀打ちできないとは解っていたが、ここまで一方的とは……
メイガは表情を歪ませ、声に出さずに呟く。
「とにかく飛竜隊を上げろ! 緊急発進させて、これ以上の侵入を許すな!」
メイガはそう命令するものの、
「で、ですが、既にワイバーン・オーバーロードの部隊は全滅しています!」
と、部下の戸惑った声が聞こえてくる。
「構わん! エクスプレッセスティの “飛行機械” の弱点は、数が少ないと言うことだ! すべての飛竜隊を発進させて、連中の対処能力を飽和させる以外、攻撃を止める手段はない!!」
「おーっと……ぉ」
どこかメランコリックな様子のアンジーとは対称的に、自機の主翼に無誘導爆弾がぶら下げられただけで、これ以上なくハイテンションになる御仁が、それを見つけて楽しそうに声を出す。
イリーナのヘッドマウントディスプレイの中で、エストシラント軍基地のひときわ巨大な塔状の建造物を見て、そう言った。
「あの塔、狙っていいかなぁ、ねぇ?」
イリーナは、後席のナオミに声をかける。
「いいんじゃないでしょうか……」
ナオミは、少し辟易したような様子になりつつ、言う。
「重要な建造物のようですし、見張りにも使われているでしょうから」
「よっし……ナオミ、操縦頼む」
「えっ!?」
普段、マニュアル操作での攻撃でも、ナオミに操縦を預けることがないイリーナの言葉に、ナオミは、一瞬、呆気にとられて、短く声を漏らした。
「しっかり軸を向けてよ! コントロールリリース」
「こ、コントロールオン」
ナオミのしっかりとした返事を待たずに、イリーナが前席の操縦装置を解放待機状態にする。ナオミが後席の操縦装置をオンにし、しっかりと自機の正面に塔を捉えながら直進させる。
──この前のときは命中させておいて、ここで外したとなったら、私があの世に行っても誰にも顔向けできない…… ────
イリーナはそう思いながら、ヘッドマウントディスプレイ内の目標を追う。
「パーパルディア陸軍の諸君! これはささやかなプレゼントだ! 受け取ってくれたまえ!!」
塔の基礎が照準リングに捉えられた瞬間、イリーナは投下ボタンを押す。
12発の250kg爆弾は、塔の基礎部分から3階あたりまでの高さにそのほとんどが飛び込み、破壊した。
イリーナの小隊の後続機が、塔周辺に爆弾を投下する中、軍用爆弾の直撃を受けて損傷したその塔 ──── メイガ達エストシラント防衛部隊の指揮官が集まっている司令部建屋は、下層が上層を支える強度を失い、倒れるように崩れていった。
ここ数日開いてしまって申し訳ないのですが、おそらくこれが年内最後(2023年)の投稿となるかと思います。
コミカライズ版で現在進んでいる部分が尽きてしまったことと、パーパルディア戦のここからの流れは原作(書籍版、Web版とも)から大幅に変わることから、今までより筆はかなり遅くなるかと思いますので、どうかご容赦ください。
蛇足:エクスプレッセスティ共和国国有鉄道(ExR)・首都エムブラセクス近郊で活躍している電車達の出自と編成とか。
https://twitter.com/kaonohito2/status/1796988051119571036
(2024/06/02-JST基準版)
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https://twitter.com/kaonohito2
レミールの処遇は……
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原作通り
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総統閣下のわからせ棒
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行方知れず(故意)