フェミニン国家召喚   作:神谷萌

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注:リーム王国の宰相について、独自に名前を設定しました。


過ぎた自尊心、国を滅ぼ(ころ)す。 Part.I

「ウェルドック注水!」

 艦長、ナンタラ・エレーナ・アユタヤ大佐の号令で、ウェルドック型揚陸母艦『セリーヌナ』のそのウェルドック内に周囲の海面と同じ高さまで海水が張られる。

 艦尾ゲートが開放されると、まずは混成砲兵中隊の直掩となるT-54-120戦車と、LT-019軽戦車、それぞれ2両ずつ搭載した4隻のLCM-Eが発進する。

 それに続いて、KBTR.4-1『クーガー』軽装甲車と兵員、もしくは、三菱/セダクション『ストラーダ』(K74T型)と弾薬類や糧秣などの消耗品、それらを搭載したPTS-E水陸両用輸送車が、貨物車デッキからウェルデッキを通って発進する。

 LT-019は空挺戦車として、イギリスのFV101『スコーピオン』の…………簡単に言ってしまって模倣品である。模倣品と言っても、内部のコンポーネントを流用したい事もあって、FV101のメーカーであるアルヴィス社とは、ライセンス合意を行っている。

 実際の車体は、国防軍発足期に旧ワルシャワ条約機構加盟国や旧ソ連構成国から譲り受け、後にBTR-4SEの導入で余剰となりモスボールされていた装甲兵員輸送車GT-MUを解体して、その部品を流用して組み上げられた。…………なしてGT-MUかと言うと、いつもの悪いクセで、開発担当者が「大口径転輪が38(t)軽戦車っぽいから」と考えたためだったりする。

 エンジンとトランスミッションは新しく用意されたもので、エンジンにはBTR-4SEと同じ過給付ターボコンパウンド仕様の三菱4M51を1基搭載としている。

 ()()と名はついているが、マズルブレーキの付いたBFA 31.5口径120mm滑腔砲は戦車に搭載されているKBM-2、つまりNATO標準のラインメタル44口径120mmと砲弾の互換性があるものの、砲身を詰めているため低初速で貫通力は低く、車両も装甲は薄く、敵の戦車と真っ正面から撃ち合う車両ではない。歩兵の火力支援車両なのだ。

 KBTR.4-1はウクライナがランドクルーザーをベースに開発したKrAZ『クーガー』のコンポーネントを、セダクション製ピックアップトラック『エクスタ』に適用したものだ。

 『エクスタ』は2014年までセダクションがライセンス生産していた『ストラーダ』の後継車となる国内設計車で、エンジンはVVT-OHV直5ガソリンターボ、VVT-OHV V6スーパーチャージド・ディーゼル、5気筒ユニフロー2ストロークディーゼルからの選択になる。軍にも納品が始まっているが、まだまだ『ストラーダ』も多く残っている。

 LBTR-018を含め、これらの装備は基本的に、An-12からLAPES方式で降下する空挺用車両として開発されたが、山岳地帯のミズポワーベルク駐屯の部隊や、水陸両用旅団群にも配備されている。

 もう1隻の強襲揚陸艦『アムビリーナ』も強行接岸し、デリックアーム式スロープを下ろし、T-64-120と、LBTR-018、それに2K015S自走対空砲や2S016 自走155mm榴弾砲を上陸させている。

 2K015SとBTR-4SES は、BTR-4SEファミリだが、水陸両用旅団の為に、部品、消耗品数を減らすために、エンジンをチェコのタトラ製空冷V8エンジンをスーパーチャージャー付にしたものとなっている。ただし、同じシャシーがベースの2S016は、 “片肺射撃” ができなくなるため、このバージョンは採用されていない。

 部隊が上陸している上空を、複数のKa-26An/Dヘリコプターが飛び、周囲を警戒している。

 

 

 第1水陸両用旅団は、次の戦力で上陸し、橋頭堡を築き始めた。

 4個水陸両用歩兵中隊

  T-64-120戦車 12両

  LT-019 軽戦車 4両

  BTR-4SES 装輪歩兵戦闘車 10両

  LBTR-018 装輪歩兵戦闘車 30両

  KBTR.4-1 装甲輸送車 40両

  2K015S 自走高射機関砲 16両

  歩兵 600名

 1個混成砲兵中隊

  T-54-120戦車 4両

  2S016 自走155mm榴弾砲 4両

  Thunderbolt-2000/Mk45 多連装ロケットシステム 4両

  弾薬運搬用『ストラーダ』4両

  弾薬運搬・再装填用『ファイター』AWD 4両

 輸送隊

  小型トラック『ルーシア』4WD 12両

  隊員36名

 施設隊

  隊員60名

 本部隊

  軽トラック『スーパーキャリィ』2両

  万能地形車『トレイスティ』2両

  JTPS-P12E / JTPS-P9E 野戦レーダー 2セット

  DS12E/200Dオートバイ 4両

  隊員31名

 総兵員数899名

 

 ちなみにThunderbolt-2000も、同じ車台は『ディオナトラ』だが、非ッ常ぉおォォォに異例な、原設計日本のシャシーに原設計チェコのV8空冷ディーゼルを搭載モデルになっている。

 数の上では寡兵であり、セリーヌナで運んだ浮桟橋の設置が終わり次第、後続の部隊が双胴型輸送船で到着する手はずになっている。

 なっているのだが────

「驚くほどすんなり上陸できたわね……」

 怪訝さ、呆れ、不満、それらの入り混じった様子で、ビアトリーチェは周囲を見渡すようにしながら、つぶやくように言う。

 敵前上陸は水陸両用部隊の華ではあるし、それに憧憬がなかったと言えば嘘になるが、簡単に上陸ができるならそれに越したことはないのだが……

 陸上においても、1:10の兵力でもパーパルディア軍に勝ち目がない、ということを、エストシラントの市民の眼の前で突きつけることが作戦の目標のひとつ ──── というより、それこそが主目的であるため、まったく敵軍が出てこないのはエクスプレッセスティ側にとっては困るのだ。

「まぁ、海岸線が長いですから、うち(エクスプレッセスティ軍)の25倍の兵員数があっても、とても全部に常に兵力を貼り付けておくことはできないでしょう」

 ビアトリーチェの副官が言う。

「それに、空軍と海軍が大分派手に暴れたようです。まだ纏まった兵力は残っているでしょうが、軍司令部の塔が倒され、指揮系統が混乱しているようです」

「誰がやったのか想像がつくわね」

 それを聞いたビアトリーチェは、そう言って苦笑した。

「敵には有視界外からの攻撃手段はワイバーン以外に無いし、とにかく周囲に警戒を払いながら、後続が速やかに上陸できるように準備を続けるしかないようね」

 パーパルディアの野戦砲は射程が4,000mもない事は確実になっている。砲撃準備を始めた時にはこちらの自走砲を嫌というほど撃ち込めるのだ。

 多少の不安が残るのは歩兵の数だが、嫌なのはロウリアのように散開突撃戦術を採られた場合だ。

 だが、パーパルディアは横隊を組んでマスケットで射撃する戦列歩兵戦術が主流で、兵もそのようにしか教育されていない。

 その上、そのマスケットがエクスプレッセスティの自動小銃に比べて射程も含めたあらゆる性能で劣っている。

 これらの事から、歩兵同士の撃ち合いになってもエクスプレッセスティ側の圧倒的優位は崩れないだろうと考えられた。

 

 エストシラント、軍務局。

「現状を報告してくれ」

「ハッ!」

 アルデが問いかけると、参謀の1人がそう声をかける。

 軍基地の司令部がその要員もろとも失われたため、軍務局が臨時の総司令部となり、アルデが陣頭指揮を採っていた。

「陸軍部隊は、兵員5万程度は無事で、再編成を急いでおりますが、何分混乱しており、直ちに抽出できる部隊は限られます。地竜16、兵員3,200程度は即動できますが、エクスプレッセスティ軍の迎撃に向かわせますか?」

「いや……その程度では逆に殲滅されるだけだ。充分な部隊が編成可能になるまでは、こちらからの攻撃は控えておきたい」

 参謀が、報告に続いて提案するが、アルデは、それを否定した。

「ですが、デュロの部隊と同時に動かせば、エクスプレッセスティ軍の上陸部隊を挟撃する事ができます」

「む……なるほど」

 参謀が重ねて提案すると、アルデは考えを改めたように声を出す。

「では、デュロの陸軍司令部に、皇都防衛軍の状況を知らせつつ、ブレムが主導してエクスプレッセスティ軍への攻撃を試みるよう伝えよ」

 ブレムは、デュロの陸軍駐屯軍の指揮官だ。

「ただし!」

 アルデは付け加えて、厳命する。

「デュロの防衛に充分な部隊を残し、引き続きリーム王国との国境の警戒を厳にせよ。これは、皇帝陛下の御意向でもある!」

 エクスプレッセスティ空軍は、デュロを空襲した際、何故か軍の実力部隊に対する攻撃は“ことのついで”程度にしかしなかった。当然、被害もさほど出なかった。

 これはエクスプレッセスティ軍が大型爆撃機を持たず、爆撃能力が限られることも理由ではあったが────

『エクスプレッセスティは、かなり早い段階からリームに不信感を持っていたのだ』

 “北東の悪童”の件でルディアスに呼び出された際、彼はアルデにそう言った。

 ルディアスがそう言う根拠は示されなかったが、火事場泥棒など、特に現王のバンクスが考えそうな事だったし、人の振り見て我が振り直せではあるが、リームが外交的にエクスプレッセスティに対してどう振る舞ったのかはだいたい想像つく。

 なので、アルデとしても特にその事に疑問は持たなかった。

 それに、それならばデュロ空襲の際、エクスプレッセスティ軍がパーパルディアの軍部隊におざなりにしか攻撃を加えなかったことの説明がつく。

 エクスプレッセスティが、自国軍への対抗力を少しでも削ぎたいが故の情報工作とも考えられたが、どちらにしろ、パーパルディア軍がエクスプレッセスティ軍に大部隊を差し向けたところで、どうせ勝てないのだ。それならばいっそ、開き直ってリームに睨みを効かせておいた方がいい。

「緊急帝前会議が招集されている。私は登城するが、何かあったら遠慮なく即座に呼び出せ! それは皇帝陛下も御納得のことである」

 アルデはそう言い、一先ずの処理を参謀達に任せると、パラディス城へ急いだ。

 

 

 リーム王国、王都ヒルキガ。

 王宮セルコ城。

「確実に勝てるのだろうな?」

 国王バンクスは、将軍リバルに問いかけた。

「もちろんですとも」

 リバルは、自信に満ち溢れた様子で答える。

「エクスプレッセスティ軍のエストシラント強襲に、パーパルディア皇国軍は釘付けになっているでしょう。よもや皇都が大事にあって、他所に気を配っている余裕はないでしょう」

「し、しかし……」

 自信満々のリバルに対し、宰相レナルトは深く困惑した様子で言葉を挟む。

「エクスプレッセスティ側からは、我が国のパーパルディア侵攻は認めない、もし行えば敵対する交戦当時国と見做す、と伝えられておりますが……」

「なぁに、女だけの国の戯言です」

 レナルトの言葉に、リバルは、苦笑する余裕さえ見せながら、反論というか、レナルトの意見を封じにかかる。

「エクスプレッセスティ軍は、たしかに質の面では強いのでしょう。ですが、その数はパーパルディアとは比べ物にならないほど小規模……そのパーパルディアと戦争しながら、我が国に攻撃する余裕などあるはずがありません」

 たしかに、リバルの意見は、間違いとは言い切れないのだが……────

「まぁそうだろうな」

 バンクスも、リバルの判断に満足した様子で、笑みを浮かべながら言う。

「そもそも、エクスプレッセスティには何度も屈辱を味わわされている」

 アルタラスの内乱が起こる少し前、リーム王国は、中央世界の列強・エモール王国に使節を派遣したことがあった。

 エモール王国の外務局は、リーム王国の使節団に対してはけんもほろろで、ただ他の国と同じように、アポイントメントをとって順番を待て、としか言わなかった。

 丁度それが、エクスプレッセスティ共和国の使節団とバッティングした。

 文明国のリームがこの扱いなのだから、文明圏外国のエクスプレッセスティ共和国など門前払いも当然だろう、と、リームの使節団は考えていたのだが────

 なんとエモールの外務責任者であり、貴族であるモーリアウル直々にエクスプレッセスティの使節団を向かえ、歓待したのである。

 この事実は、報告を受けたバンクスのプライドを(いた)く傷つけた。

「“空間の占い”だかなんだか知らないが、そんなもので我が国を差し置き、蛮族国家を歓待するとは、考えられん」

 バンクスは不愉快さを吐き出すようにそう言った。

 エモールがエクスプレッセスティの使節団を歓迎したのは、 “空間の占い” という彼の国の儀式にて、 “古代魔法帝国の復活が近いこと” と、 “その闇さえ飲み込む強いピンク色の光” が示され、その “ピンク色の光” の発信源がエクスプレッセスティ共和国だった、からだと言う。

 エモールの“空間の占い”は、98%の的中率を誇ると言われる。もっとも、バンクスはそれも胡散臭いと思っていたが……

 それ以外にも、リームの人間がエクスプレッセスティの工業製品を持ち出そうとしたところ、新世界技術流出制限法に抵触するとされ、税関で止められてしまったことがある。

 この時持ち出そうとしたのは、コンパウンド素材の競技用の弓と、アラミド繊維の糸だったのだが、 …………はっきり言ってアメリカ製のCOP.357やM66『コンバットマグナム』といった拳銃より厳しく輸出入管理されている。これらの素材は日本に匹敵するものがまだ作れないためで、政府の許可した数量だけ、クワ・トイネとロウリアにだけ輸出できる。

「いずれ決着をつけなければならない相手だし、この際我が国の力を思い知らせておくに越したことはない。それに、一度進出して支配下においてしまえば、後から騒ごうとも後の祭り。この機に乗じてデュロを我が物にし、万全の体勢を固めるのだ」

「それでは!」

 バンクスの言葉に、不敵に笑うリバルが言う。

「うむ、パーパルディア皇国侵攻を、国王として命じる!」

「ハッ、必ずや満足できる結果をもたらしましょう!」

 

 パーパルディア皇国、東北部の沖合上空。

「トート1よりEGP」

 空軍所属の空中早期警戒機Br-1050AEWが、エナジポリスの司令部に呼びかける。

 オペレーター席のレーダースコープに、自機から見て北西方向に、無数のフリ()ップ()が表示され、南下しているのが捉えられた。

「リーム王国領内よりUnknown、パーパルディア皇国との国境へ向かって南下中」

『了解。そのまま警戒を続けよ』

「了解。OVER(送話終了)

 

 パーパルディア皇国、デュロ北部の陸軍飛行基地。

 ウゥウゥゥゥ~

『敵飛竜隊接近中! 敵飛竜隊接近中!!』

 サイレンとともに、緊急放送が基地全隊に響く。

 他の地区から抽出されたワイバーンロード、さらに僅か4騎ながらワイバーン・オーバーロードも加わって、デュロを含めた北東部の飛竜隊は再編されていた。

 かつてデュロに配置されていた旧・第11竜騎士団のうち、第1飛行隊々長だったジンスはアルーク北の飛行基地の空中指揮官として異動したため、エクスプレッセスティによるデュロ空襲時の生き残りのうちで最先任となったアスタルは、デュロの飛竜隊の空中指揮官として異例の大抜擢を受けた。

 もっとも、アスタル自身は転換訓練の余裕がなく、乗()はワイバーンロードのままだったのだが。

 アスタルは愛竜の元に駆け寄る。厩務員がそのワイバーンロードを滑走路に引き出してきている。

 それとともに、通信士もアスタルに駆け寄ってきた。

 通信士が持っていた通信文を、アスタルは受け取って、読む。

「なるほど、敵はリーム王国軍か!」

 アスタルは苦笑する。

「それに……エクスプレッセスティ空軍機がリーム騎に攻撃を仕掛けた場合は、離脱しろと……」

「どういう意味なんですかねぇ……」

 アスタルの反芻するような言葉に、通信士は思わずと言った様子で、呟くように言う。

「なんだ、知らないのか」

 アスタルは通信文を通信士に返しながら、苦笑したまま言う。

「リームはエクスプレッセスティにも無礼を働いたようで、あちらの政府はお冠との事だ」

 そう言うと、アスタルは愛竜の鞍に、飛び上がるように乗り込む。

「第12竜騎士連隊、竜騎士アスタル、発進するッ」

 

 

 エクスプレッセスティ共和国、エナジポリス軍基地、空軍司令部。

『トート1よりEGP、リーム領内からのUnknown、パーパルディア領空内に進入!』

「了解。リーム王国からのUnknownをすべてEnemyに設定」

『トート1了解。OVER』

 オペレーターが、端末を操作する。

 リーム領内から南下している“Unknown”の編隊の表示が、赤い“Enemy”サインに変わる。

「作戦統括本部より、攻撃隊出撃命令出ました!」

 エナジポリスの空軍基地で待機していた、戦闘偵察飛行隊のSu-22UGEが、翼に2発のCACM-1『万剣』巡航ミサイルを吊り、発進していく。

 『万剣』は中華民国から導入した空中発射型巡航ミサイルだ。CACM-1の形式号はエクスプレッセスティ国防省が管理用につけている形式名で、Aircraft-lunch Cruise Missileの略に、先頭に原設計国記号のChinaがつく。中華人民共和国とは端っからお互い承認していないため、この場合のChinaは中華民国、台湾を示す。

 4機のSu-22UGEに続いて、滞空時間稼ぎのために燃料2トン分の増槽を装着したMiG-23GEN・8機と、作戦指揮の為の情報収集役として追加のBr-1050AEW・1機が離陸した。

 






評価や感想など、具体的な反応があれば、続きを書くことがはかどります。TwitterでもOK。

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レミールの処遇は……

  • 原作通り
  • 総統閣下のわからせ棒
  • 行方知れず(故意)
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