BTR-70系→BTR-4系
AAV-70→2K015
PHW-70→2S016
エストシラント都心部より東へ約15km。
エクスプレッセスティ軍橋頭堡。
「東側のUnknown、尚も接近中」
「西側から……エストシラント側からは来ていないのね?」
ビアトリーチェは、再度確認する。
「はい。作戦本部からの情報にもありません」
ロウリアもそうだが、見た目は中世から産業革命黎明期の軍隊という見た目をしながら、既に航空戦の概念がある為、最初に圧倒的な航空戦力を投入して優位を得るという、第二次世界大戦以降の戦術が基本になっている。
それにしては、パーパルディア軍が橋頭堡に差し向けた飛竜隊の数が少なすぎると、ビアトリーチェは感じていた。
「こちらの攻撃での被害が大きかったかな?」
「そうですね。東側が少ないのは、リーム方面に展開しているのもあると思いますが」
ビアトリーチェが誰にともなく呟くと、副官が付け加えるように言う。
そうは言っても、エクスプレッセスティ側も、この東側からの飛竜隊に即応できる戦闘機は少ない。
空母のスクランブル機が向かってきているが、2機のみ。
ゴーマ空港からもMiG-29GE・4機、MiG-23GEN・8機が向かっているが、少し時間がかかる。
──やっぱり、それなりの犠牲が生じるのは不可避かな……
ビアトリーチェは胸中で呟く。
ジン・ハーク攻防戦での反省で、相手を侮らず、どれだけオーバーキルでもとにかく戦力を揃えて送り込むという方針を採っていた。
しかし、エストシラント強襲作戦はその作戦目標から、方針に反して、ある程度損害覚悟で実行された。
エストシラント南方沖、上空。
スクランブル待機していたヴェルダンディ小隊のうちの2機が、陸上部隊に向かうパーパルディア飛竜隊を迎撃するため、緊急発進して北上していた。
アンジーは、眼の焦点を変えてヘッドマウントディスプレイに表示された輝点を確認する。既に敵飛竜隊は早期警戒機に捉えられている。
「中AAM発射」
『了解』
アンジーが無線で僚機に支持するし、返答があった。
ヘッドマウントディスプレイの、 “Enemy” マークの4つを指定し、ミーティアミサイルを発射する。
エクスプレッセスティ軍橋頭堡から東北東、上空。
「警戒を怠るな。敵は既にこちらを見つけていると思え!」
デュロ基地駐屯の部隊から捻出された、エクスプレッセスティ軍橋頭堡への攻撃隊の隊長は、部下にそう指示する。
当然の話だが、エクスプレッセスティ国防軍は、現用のレーダーの能力については軍事機密としている。日本の型遅れである JTPS-P9E はある程度推測されてしまうものの、 Br-1050AEW の搭載レーダーについては、搭載しているレーダーの型式からして極秘扱いであり、カイオス達が収集した資料からはその能力について知ることはできなかった。
ただ、今までの戦闘の経験則から、エクスプレッセスティのレーダーの性能は、少なくとも自軍の魔振感感知器より数倍の探知範囲を持っている事は確実だった。
そしてその探知範囲内にいる場合、有視界外から突然ミサイルが飛んでくる。
『隊長! 9時半の方向、光が接近してきます!!』
想定の通りに、ミサイルの接近が報告されてくる。
「散開! 纏まっていると被害が大きくなる! すり抜けた者は顧みず敵に向かえ!」
隊長の指示を受けるや、30騎程の飛竜隊はお互いの距離をとって散開した。
襲いかかってきたミーティアミサイルは8発、8騎が落とされたが、散開が功を奏して、1発の複数が一気に落とされることはなかった。
「対策してきてはいる、か」
アンジーがそう呟いた、時には身体が動いていた。
増槽を投棄すると同時に、スロットルレバーを戦闘出力に押し込む。アフターバーナーに点火、2機のMiG-29は衝撃波を伴って音の速さを超える。
ウェポンセレクターを中射程AAMから短射程AAMに切り替え、ワイバーンの飛行高度に向かって緩降下しつつ、短射程SAMのロックオンが表示された瞬間に、ASRAAMを2発、発射する。
ドバッ!
飛竜隊の、先頭を飛行していた小集団の1騎が、突然爆発に飲まれた。
「くっ!」
先頭集団の目の前を、2機の MiG-29Hi/S が高速で横切る。飛行音が後から聞こえてきた時には、飛竜隊は再度散開し、分散する。
4発のASRAAMが飛竜隊を屠る。残りは18騎。
MiG-29・2機は一度内陸側に抜ける。飛竜隊はその隙にやり過ごそうとするが、 MiG-29 は捻りこむように旋回し、飛竜隊の方向に機首が向いた瞬間に、2発ずつの ASRAAM を発射する。
──広範囲に分散している……こちらの手数が足りない!
憔悴した言葉を胸中で呟きつつ、ヘッドマウントディスプレイに表示される目標を追う。
既にウェポンセレクターは“Gun” に設定、有視界戦闘 ──── 照準器に捉えられたワイバーンロードに向かって操縦桿のトリガーボタンを押す。
ダダダッ
僅かに発射された20mm機銃弾が吸い込まれ、ワイバーンロードは搭乗者もろとも爆ぜて、分解された血と肉の塊になる。 ────その時には、MiG-29 は飛竜隊の編隊を追い抜いてしまっている。
──煩わしい!!
アンジーは声に出さずに毒つく。
今までは、陸上部隊の進出前に航空撃滅戦を展開して敵の航空戦力を破壊してからの進出だったため、潜在的には認識されていても然程問題にならなかった。だが、このようなシチュエーションだと、自前の高速が仇になる。
──こういう相手には、P-63の方がいいくらいかも知れない……
アンジーはそう思いつつも、旋回を終えて反航で迫るワイバーンロードに向かって、機銃で撃ちかけていた。
『2機、超低空をすり抜けた。海軍機は戦闘継続中』
「了解」
空中早期警戒機からの報告が、野戦指揮所に報告されてくる。
──予想より少ないわね……これなら被害は出ないか。
「対空、戦闘準備!!」
戦車と並んで4両が並べられた2K015S自走対空砲が、警戒レーダーが捕捉している目標に向かって、照準用レーダーを照射する。
──やはり、陸上の部隊には、海軍のような高度な対空兵器を持っていないようだ!
空戦領域から突出することに成功した竜騎士の1人は、自分達の行動が正解だったと確信する。
MiG-29が2機しか来なかったことで、悪い言い方をすると、他の竜騎士が戦闘機に狩られている隙をつき、レーダーが反応しにくいという極低高度へ降り、エクスプレッセスティ軍の部隊に向かって突進した。
第3外務局の収集した情報を纏めると、エクスプレッセスティ国防軍は陸軍主体の編成であるにも関わらず、防空戦闘では海軍ほど絶対的な防空力を持たないと分析できた。そしてそれ自体は間違いではない。
間違いではないが、残念ながらそれでも、数騎の飛竜隊を処理するのには充分すぎる能力を持っていた。
「目標、いつでもロックできます」
「射撃!」
ダダダッ、ダダダッ……
2K015Sは、照準レーダーに捉えた2騎のワイバーンロードに向かって、T75 20mmリボルバーカノンを射撃した。
『目標クリア』
エクスプレッセスティ軍に対するパーパルディア皇国軍飛竜隊による最後の攻撃は、これで終わった。
「おかしい」
「可笑しかったら笑ってください、隊長」
「何か言ったか?」
「いえ! 何がおかしいので?」
エストシラント側からエクスプレッセスティ軍橋頭堡に向かう、パーパルディア陸上部隊の指揮官、ルクレンが、怪訝そうな顔をする。
「エクスプレッセスティ軍が我々を攻撃しない事だ」
ルクレンは、険しく眉を顰めたまま、手振りを加えつつそう言った。
「エクスプレッセスティ軍の野戦砲なら、我々の現在地どころか、既にエストシラントの東部まで届くはずなんだ。エクスプレッセスティ軍が市街地攻撃を避けていると考えても、我々は既に街道の上だ。一般市民を巻き込む危険性は少ない……」
「デュロからの部隊に備えて、温存しているのではないでしょうか?」
副官は訊ね返すようにそう言ったが、ルクレンは安易に楽観的な意見に乗らなかった。
「だとしても……否、だからこそ、私なら先に我々の部隊を殲滅してから、大部隊を迎え撃つ準備をするところだと思うんだが……」
ルクレンがそこまで言った時────
ゴォオォォォォォ……
乾いた音が、頭の上から聞こえてきた。
「こ、これは!!」
ルクレンは空を見上げて、驚愕と危機感に眼を見開いた。
大型の“飛行機械”が4機、1機あたり4本の雲の尾を曳きながら、明らかにエストシラントへと向かっている。
「不味い!」
ルクレンは、そう声を上げると、
「進軍中止!! 通信兵! 軍務局の作戦司令部に繋げ!!」
と、麾下の部隊に指示を出した。
「これは、我々の方が挟み撃ちされたかも知れないぞ!」
ゴゥ……ン……
An-12BK-100の後部カーゴドアが開かれる。
『降下準備よし』
ブザーとともに、スピーカーから機長の声が聞こえてくる。
「25AC────」
胸元の無線のPTTスイッチを押しながら、ユキが引き締まった表情で下令する。
「降下開始!!」
空挺降下のため、割合低高度を飛んでいるとは言え、それでも常人なら足がすくんでしまいそうな高さから、ユキは自ら先陣を切って、空中へと身を踊らせた。
「降下!」
「降下!」
「降下!」
ユキに続いて299名の隊員が、4機のAn-12から次々と飛び出してくる。
「機内確認よし!」
ユキが搭乗していた1番機の、殿となる第1小隊々長、ティイナ・ノギ・ライネン中尉が、空軍の乗員とともに荷室内の指差し点呼をする。
「お世話になりました!」
ティイナは、そう言って敬礼すると、自身も空中へと、大気に身を任せるかのように飛び出していった。
ユキの背中に背負われたMC-4自由降下傘が展開する。相対的に上へ向かって強烈に引っ張られる感覚を感じる。握っている操縦索にに引っ張られるかたちで両手をバンザイの形にし、目標とした地点に向かって降下していく。
エストシラント北の空に、無数の落下傘が舞うようにしながら降下していく。
「た、大変です!!」
皇宮パラディス城、議場。
帝前会議は行き詰まり、室内に息が詰まりそうな程重い空気が漂っていたところだった。
「なんだ、陛下の前で無礼であろう」
息が詰まるような思いをしつつも、苛立っていたレミールが、棘のある言葉でその士官を咎めた。
「そ、それどころではありません! 敵が……敵の新手が!!」
「どこだ!?」
一気に緊張感が走る。アルデが問い質した。
「今度は西か!?」
「い、いえ、北です!」
「北!?」
全員が驚いた声を出す。ルディアスとカイオスはそれほど劇的ではないが、驚愕している事に違いはなかった。
「何を言っている…………北は内陸だぞ。いくらエクスプレッセスティ軍でも唐突に湧いたように兵を出現させることなど不可能なはずだ」
引きつった様子で、レミールがそう言った。
「飛行機械です! 敵は、大型の飛行機械で無数の兵を地上に降下させているのです!!」
「なっ……」
レミールが絶句する。
「ですが、それではエクスプレッセスティ軍の強みである火砲や戦闘車両は持ってこれないのでは?」
エルトが、怪訝そうに眉間に皺を作って、疑問を口にした。
「それならば────相手は所詮、 “女だけの国”、兵の能力で上回れるのではないでしょうか?」
リウスが、エルトの言葉の尻馬に乗っかった。
「いえ、そ、それが────」
「LAPES投下準備! 目標進入経路確認!」
「進路確認!」
空挺部隊員を硬化させた機体とは別に、1機のAn-12BK-100が、地表スレスレまで高度を下げる。主脚を展開した状態で、更にランプゲートを開く。
「姿勢確認!」
「姿勢確認よし!」
機長の言葉に、副操縦士が復唱する。
「1号車投下!」
ランプから引き出し用のドラッグシュートが展開され、
「1号車投下成功!」
「2号車投下!!」
ビーッ
荷室内でブザーが鳴り、指示用の信号灯が赤色から黄色の点滅に変わる。直後にドラッグシュートが展開され、もう1両のLT-019が引き出された。
「2号車投下成功!」
「投下行程終了」
ランプゲートと主脚を格納しながら、An-12BK-100は上昇していく。
「各小隊長は隊員の確認! 車両隊、迫撃砲隊は投下装備の回収急げ!!」
既に地上に降り立ってパラシュートを切り離したユキは、右手でミネベアミツミ ニューナンブ M9/357 『ピースキーパー』を構えつつ、無線の PTT スイッチを押しながらインカムのマイクに声を上げる。
車両隊が投下された2両のLT-019に取り付く。装軌モードで投下された車両のハッチを開けて乗り込み、エンジンを始動させる。
『1号車、エンジン始動、システム起動成功!』
『2号車、エンジン始動、システム起動成功!』
「了解、OUT」
ユキがそう言った時には、81mm自動迫撃砲も回収し、射撃待機に入っていた。
「敵の兵力はおよそ300、車両の他、野戦砲らしき物も確認できます」
「300だと! その程度、容易く殲滅できるであろう!」
士官の報告に、レミールが叱責するように憤りの声を上げる。
「いえ……即応可能な兵力はすべて、東の上陸部隊の方へと差し向けてしまいました……兵員は多少抽出できますが、滑走路の再建も途上で、敵の野戦砲に対抗するのに充分な装備がありません……」
「っ…………!!」
困惑しきった様子の士官の説明に、レミールが絶句する。
「一度退座いたします。どれだけの兵力が抽出可能か、把握しなければなりませんので」
アルデは、立ち上がり、直立してそう言うと、議場の外へ出ようと ──── したところで、突然、武装した兵士が、議場になだれ込んできた。アルデは議場に押し戻される。
「な、なんだお前らは!?」
「動くな! 全員、席に着いてじっとしていろ!!」
アルデが驚愕の声を上げる。軍服を着た兵士たちは、マスケットを構え、帝前会議の参加者各々に銃口を向ける。
「お前ら……近衛隊じゃないか……────」
レミールがうろたえた声を出す。
「そのお前らが、一体何をやっているか解っているのか!? 畏れ多くも、陛下の居られる前でこの狼藉、大逆罪だぞ!」
兵士達を脅すかのように、レミールはそう言ったが、
「大逆罪はどちらの方ですかな?」
その声は、レミールの背後の方から聞こえてきた。
レミールが振り返ると、1人、カイオスだけが銃口を向けられることもなく、自身の席から少し離れて立っていた。
「貴様……貴様がこれを手引したというのか!?」
「左様。今のままでは、皇国は滅亡の途を歩むことになる。それを未然に防ぐために、あなた方には皇国の表舞台から退場していただきます」
カイオスがそう説明している間に、マクシミリアンが入室してきて、カイオスの隣に並んだ。
「貴様、近衛師団の連隊長ではないか! 栄えある身の立場で、よもや陛下に弓引くとは、恥を知れ!」
レミールがマクシミリアンを罵ると、マクシミリアンは軽く肩を竦めた後、視線をルディアスに向けた。
「レミール様はこの様に仰って居られますが、陛下はいかがですか?」
「そうだな」
マクシミリアンの問いかけに、ルディアスはどこか不敵に言う。
「茶が冷めきっている。代わりを持ってきて貰えるか?」
前書きにも書きましたが、BTR-70系をBTR-4系に変更しました。
プラットフォームとしての能力を考えた場合、BTR-70ではどうしても旧さが隠せないかなと。
その関係で情報を収集していたため、週末に更新ができませんでした。
申し訳ありません。
評価や感想など、具体的な反応があれば、続きを書くことがはかどります。TwitterでもOK。
https://twitter.com/kaonohito2
レミールの処遇は……
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原作通り
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総統閣下のわからせ棒
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行方知れず(故意)