ここは遙か遠き宇宙の彼方。
「……いやぁ随分と遠い場所に来たなぁ」
天ノ川銀河の外縁部──の外にいるその存在はかつて思いっきり投げられた力をそのままに宇宙を横切っている。
愚者はかつて神と呼ばれた種族と戦っていた。天ノ川銀河の半分を占めるその勢力と、もう半分を占める半神半人の種族達に滅ぼされかけた地球を助けるために機械の体を得て、宇宙最速のその機体を利用して、地球を救いきった。
神々の裏切り者、地球の神が想定したそれよりも
お陰様でかれこれ100年以上何も出来ずに吹っ飛んでいた。
燃料も全部使い果たして、ボロボロのその機体はもはや何をするも出来ず。微弱なエネルギーのみがその機体を維持しているが、恐らくあと数年で尽きる事が分かる程度には命の危機に陥っている。
レーダーは未だ機能するため使用し、地球からこちらに向かってくる船の存在を感じながら電源を落とそうとしたら──
「んぉおお?」
なんかぽっかり空いた穴がこちらを追って来た。
よくよく見るとなんだこれ、そういえば数年前から追っかけてきてたな、一瞬でぶち抜いていたけど。数年越しに見たそれをちょっとだけ動くカメラで解析した瞬間。
飲み込まれた。
「おわああああああ!?!??!!」
地球に魔法が現れ、ダンジョンが蔓延った世界で。
未だかつて無いほどに興奮しているその肉体。全身に迸るナノマシンを視界の隅に抑え、全身を駆け巡る人工血液を冷却していく。
「ふぅあ……はぁはぁ。ぅうあふぅん……」
漏れる吐息は超高温で、膝をつき手を地面に置いた瞬間ドロリと土が溶ける。超高熱の体が土を溶かし溶岩にしているのだ。
「れいきややややややぐ、おおおいつかががかぬにぇなぁ」
言葉にならぬソレを捉えながら。体を巡るナノマシンは熱を抑えるために付近の湖へ管になりながら伸びて水を取り込む。莫大なその水の量が体内へ入ってきて、水蒸気となり人工血液が背中から吹き出させる。肉体が死ぬことは無いが、このままではエネルギーの暴走でアメリカ大陸が消し飛ぶ──その瞬間。
足元に穴が空いた。
「!?!!!?」
そこは荒廃した世界、ミュータント共が大地を食らう世界。かつて
肉体の半身は消し飛び、頭上に聳える天を
「……ふぅ、成すことは成しました」
空間を破りながら天へ天へ昇るそれは世界の最終機構。あれを起動させるために襲いかかってくる大陸級と呼ばれる全高30kmの超巨大ミュータントを尽く殲滅せしめたそれが死にかけていた。
「彼らは無事でしょうか」
その身に宿る力は精神力。既にその全てを使い切ったそれは体が砂になりかけている、が。気力のみでまだ世界に居た。
世界を救う役目を担った神の塔を守った者にしてはあっさりとした終わりだが、その心は満ちていた。
が、当然の如く穴に落ちる。
かつて神々によって永劫の楽園を保証された世界があった。かつて
「世界が終わる間際まで世界を食い尽くす寄生虫なんざいなくていい」
ごりゅ、そこにあった
「なぁにが愛だ。てめぇらのは愛でもなんでもなく食欲だろうが」
人が飼われていた場所で、特異点と呼ばれるその女が全てを喰らい尽くして。世界は正常な世界へと戻っていた、だが世界中の人間はそれに気づくことなく、やり直された世界が彼女を裏世界へ閉じ込めて寄生虫と呼ばれる世界を食らう獣を殺し尽くす役目へと押付けて──
穴が上から降ってきた。
そこは魔眼と呼ばれる力を持つものが虐げられる世界。
この世のありとあらゆる魔眼を備えた杖を片手に歩く男。その眼は聖神の祝福眼と簒奪の神眼が光っていた。
かつて奴隷だったその男は簒奪の神眼を使い苦しむ魔眼使い達から魔眼を継承しながら世界を旅していた。
「……返還の時間、か」
世界の果て、その崖の先にいる神を見つめる。聖なる力を撒き散らし、世界の安定を担うその神へ右目に宿る聖神の祝福眼を抉り出し、ケースに収められたもう片目を取りだし差し出した。
「聖なる神よ。かつての約定に従い力の返還をしにまいりました」
<おぉ……ミリアーナはどうした……?>
「聖女ミリアーナは私に未来を託して──死にました」
<そうか……では約定に従い返還者たる其方の願いを叶えよう>
その両眼が光と変換され、聖なる神の元へ。
そして約定がなされた故に契約が履行される。
「この世界とは関わりのない世界へ。既にこの世界には魔眼使いは生まれず、安定しております」
<……そうか、其方が最後のモノか──願いを受理した。さらばだ>
「……乱暴すぎでは?」
聖なる神の拳が皇帝を貫きその背後に現れた穴へ叩き込まれた。
そこは平穏な剣と魔法の世界。
「いやぁっはっはっはっ」
その体は耳も口も目も鼻が鈍色のソレ。ゴーレムと呼ばれるそれは全身の関節を駆動させながら目の前の魔女を見やる。
「ごめんごめん、私が作ったその体がボロボロになるまで戦ってたんだもんね……ただなんだっけ?」
まるで溜息を吐くように全身を使い肩を落とすゴーレムはどこか諦念を抱えていた。
「あぁ、発声器官が壊れているじゃないか。これでよしっと」
『ナンダッケじゃないんですよ馬鹿が』
「ば、馬鹿とはなんだ!?この大天才様に向けてそれは無いじゃないか!」
『あんたが作ったとんでも兵器をぶち壊すためにコアが半壊するまで戦ったんですよ、なんか褒美ないんすか』
杖を一振で喋れるようになったゴーレムが魔女の顔を掴みながら文句を垂れる。
「ほ、褒美?そういえばアンタ元の世界に帰りたいとか言ってたわね、あんたの後継機もいるし戻っていいわよ?というか戻すわ」
『は?』
そう言った瞬間ゴーレムのコアを中心に空間が歪んだ。
「ま、アッチの世界からの依頼って訳だし。終わったらこっちとそっち行き来できるようにしておくから」
『ちょ待てやゴラァ!!!』
「じゃあね〜」
『実年齢200【検閲済み】歳がァ!!!』
そこは地球がVRという技術を用いて異星と交流を謀った世界。
「グーラ、今日の飯はどうする?」
「うーん……コウマとか?」
「ハハハ、こやつめ」
つい先日まで星が滅びかけていたというのに呑気に会話を楽しむ2人。この2人が世界の滅びを阻止したため無事であるが、原罪の影響は未だに世界に残っている。
しかし2人にとっては終わった出来事。しかも原罪が現れた原因は2人に関係ない存在のせい、じゃあその存在に関わりがあったやつに任せればいいと完全に無視していた。
「暇だねぇ」
「そうだね……あ、でも最近『憤怒』がまた喧嘩したいって言ってたよ?」
「マジ?だっる、しばらく隠れとくか……っと?」
空間が歪む。その気配に視線をそちらへと向ける男。
「……ふむ、どこか救いの気配をまとっているな?」
「なんかわかるの?」
「なるほどなるほど、力を貸して欲しいと……ラバーズ、恋人?あぁ、俺ら2人に向けての招待状ね」
うんうんと頷く姿はどこか理解し難いものがあるが、手を女へと差し出し一歩踏み込む男。
「面白そうだし行こうぜ。新婚旅行だ」
「新婚旅行!!!行く!どんな所なんだろうね!!」
そこは西暦6135年の一度文明がリセットされた世界。
「やっと生活基盤ができたな」
『そうだなぁ……相棒、そろそろあいつに告白したらどうだい?今ならここは安定してる、それにお前さんも結構いい歳だ。確か今年で30歳だろ?子供作んなきゃな』
「……AIのくせに下世話だな」
『もうここは俺達がいないとダメな弱者だけの場所じゃねぇ、腰を据えろとは言わんが……荷は下ろせ』
紫色の巨大なロボットが眼下に広がる街を見る。ここはかつて荒れ果てた大地しかなく、ただ地下水源が豊富なだけの場所だった。
ここにロボットとその相棒が避難民を連れて街を作り、安定した場所を作り出した。他の場所にも手を伸ばし、今や世界はもう一度文明を築き始めている。
「ん?」
そんな彼らの目の前に引き裂かれた悲鳴のようなものと共に穴が開く。
『──解析』
「どうだ?」
『ふむ、どうやら別空間に繋がってるらしいな。次元が違う訳じゃなくて……平行世界か。繋がってる先はどうやら2000年代らしい、遙か過去じゃねぇか。だがこの世界の過去じゃない。それだけは分かる』
「……悲鳴が聞こえたぞ」
『ん、まぁ救援要請だわな。シグナルがあった、SOSのな』
「なら行かないと」
『まぁた余計な荷物を抱え込む気か?別にいい、俺はお前さんの指示に従うさ』
1歩ずつ穴へと入っていくロボット、鈍い音を立てて空間が閉じるそれへ決意の眼差しを向けながら。
一体の巨大な龍が守護する世界。
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【あ、ごめん。情報量多すぎたね。流石に神の化身だと許容量オーバーしてたか。体デカすぎてごめんね。】
観測可能な宇宙の外側に龍らしき影を観測
「……世界がまた危機に。何故だよボケカス世界め今度はぐちゃぐちゃにかき混ぜてやらねぇと正常に戻る気配がないなそれよりもどこに向かうんだこの穴なんだお前やめろおわあああああああ」
異世界が隣接する世界。
『おっとこれ以上はネタバレだ。流石にこれ以降は見せられないな、あとのお楽しみってやつだな』
『ん?あぁ、斬り所が悪かったか。データが一部破損しているな。うーむ、これならクトゥーリャが直せるだろう……うんいけるいける』
『最悪脅せば何とかなるだろ』
『俺が何者かって?俺は
『いやぶっちゃけ誰か一人でも行けば問題ないんだけどな。過剰だよ過剰、一人一人が規格外、中には宇宙創造クラスのやつすらいる』
『でもまぁ権限だけで見ればこれから向かう世界が一番上だからな、救援要請をされちゃあ向かうしかないって訳よ。ちなみに救援要請されたけど応答しなかった、もしくはできなかった世界は強制的に戦士が徴兵される』
『愚者とかがその例だな。あの世界の管理者である地球の神が死んでるもんでな、その系譜で世界最強のあいつが連れてかれたわけ』
『ん、開示できる情報はこんなもんだ。それぞれ特技があるからそれ使って世界を救う話って訳よ』
『え、俺の特技って?そりゃお前──全部ぶった斬る事よ』
『んじゃ、またな!』