今日も今日とて平和な1日である。
「ほへー」
そんな日だったはずなのになんだこれ。寝起きの頭では今起きてる現象がなんなのか理解が追いつかない。
とりあえず分かったことは目の前に浮かぶそれはタロットカードと呼ばれる物だろう。ベッドに寝転びながら眼前に浮かぶそれをジーと見つめる。
『おい』
「ぅぉわっ!?」
頭の中に声が直接
『いい加減呆けてんじゃねぇぞ小僧』
「えぇっと……どちら様?」
『
え、などと疑問を持つこと無く。家の外から轟音が鳴り響く、爆弾が爆発したとかそういう類のものじゃなくて──何かが倒壊した音である。
思わず跳ね起きて窓の外を見ると、そこには立派な30階建てのマンションがあったはずなのにそれが根元からへし折れて倒れていた──こちらに向かって。
「は、ああああ!?!!!?!」
『うるっせぇなお前。とりあえず死にたくなきゃタロットカードを手に取りな』
反射的に大声を叫んだしまったが、冷静な声が響いて少し落ち着きを取り戻した。とりあえず意味がわからない状況なので何か物を知っている存在の指示に従うことにした、というか本能的にそうしなきゃいけないって理解してしまったから。
『ん、最低限のディーラーとしての能力は持ち合わせてるみたいだな。じゃああとは本能に任せて使いやがれ、今回は特別に条件無視で呼ばれてやる』
ガシリ、と。両手で掴んだタロットカードに意識を集中させて本能的に理解した基本的な使い方を頭に思い浮かべて、声を上げる。
「
【召喚:
【条件:未達成──例外的使用を申請】
【該当項目:初使用】
【認証】
【
「あ゛〜、硬っ苦しいぜあの空間。とりあえずふせろ小僧」
光り輝いたタロットカード、光が収まった瞬間先程まで誰もいなかった俺の自室に壮年の男がいた。ヨレヨレのトレンチコートを着てその背中には弓が携えられていた、腰に手を当ててるその姿は頼りない姿のはずなのに理解してしまう、圧倒的な強者だということに。少しくたびれた様子の彼は徐に右の腰に吊り下げられている片手斧を左手で握り軽く、少しの動作で振るう。それすら見えない速度で振るわれている。
「なんでエルコルフィンじゃなくてそこらの片手斧なんだよ。リーダーさんよぉ」
【過剰戦力だと判断】
「ん、まぁそうか……たかがビルだもんな。割と懐かしい光景だが──中に人は居ないってのが妙だが、ぶった切る!」
何か文句を言っているみたいだが、今頭上に迫る質量の塊を見て構えた男──
「こんなおもちゃじゃすぐ壊れちまうっつの。
そして片手斧が振るわれたその先には、何も残っていなかった。多分だけど余りの速度で振るわれたソレによって消し飛んだんだ、どんな威力だよ。
軽い動作で地上に立ったハングドマンを見やる、彼が持っていた片手斧は今の攻撃な負荷に耐えられなくなったのかバギンという音と共に粉々に砕け散った。
「チッ、これだからただの鉄は……ん?」
文句をつくその姿はまるで仕事が嫌になった中年のようで、と思った所でハングドマンは元々マンションがあった場所に顔を向ける。
「あぁ、犯人のお出ましかい。事情説明はそこでするか──」
マンションがあった方角から何かが迫る。そこにあるはずの家を貫きそれは様々なものを倒壊させながら来ている。
その様子を見たハングドマンは背中の弓を取り出し矢を番えていないのに引き絞り始めた。だが、何かの力が集中し始めた途端そこに光り輝く矢が生まれた。
ドンッと、一際大きい音が轟いたのと同時に何か大きなモノがこちらへと急接近し始めて、かろうじて見えたその姿はまるで鬼のようで──それは金棒らしいものをハングドマンに叩き込もうとした瞬間、引き絞られた矢が放たれた。
「貴様が消し飛ば──」
「てめぇも消えな、
「s─────」
雷鳴の音がした。
爆音のそれが先程までの爆音で痺れていた耳を貫き、鼓膜が破れたのか耳から生暖かい液体が漏れだした。
「─────(あ、やりすぎたか。聞こえてるかって、血が出てんじゃねぇか……世話の焼ける)」
何か言ってるのは理解できるがもはや音が聞こえないそんな時、ハングドマンざトレンチコートの裏側からなにか液体が入った試験管みたいなものを取りだし、こちらの口にねじ込んだ。
「……うぇげっほげっほ!!!何すんだ!」
「回復薬ねじ込んだだけだっつゥの、とりあえず命に別状は無いみてぇだな」
「ごっほ……お蔭さまでな……」
「ん、まぁ落ち着いたならいい。とりあえず事情説明しなきゃならねぇなぁ。しばらくさっきのやつみたいなのは来ないだろうし」
よっこらと座り込んだその姿はマジでただのおっさんで。先程までのかっこよさはどこに行ったのか気になる所だが、こいつは強者だからな。文句を言うだけこちらが被害を被るだけだ。
とりあえず事情とやらを聞かないと始まらない。
「あー、まずディーラーよ」
「……ディーラーって俺の事か?」
「そう、俺らタロットカードを使う主の事だな。采配者みたいな感じだと思え」
「お、おう」
「タロットカードはどうせ本能的に理解してるだろ、説明するだけ無駄だ。だからこの世界に起きてる事情を説明してやる」
タロットカード。落ち着いた今なら理解出来る、この力は生まれた時から俺が持つ力であり、世界を救うために世界に渡された手札であると。なんでそんな役目が俺に渡ってきたのかはシンプルだった、適性があった。それだけ。それ以外のタロットカードに関することは理解した、だから説明を聞くだけ無駄だ。
だから世界に起きた危機というものを知らなければならない。
「タロットカードの説明しかお前は理解出来ていないが、俺らタロットカードは事情説明を受けた上でタロットカードに宿っている」
「あぁ、理解した」
「まず世界の危機だが、さっきのやつ見ただろ?あんな異形が別の世界からこの世界に侵攻してきたんだ、侵略だ。戦争だ。恐らくこの世界の国の上層部はそれを理解して今戦力の編成をしているだろうが、それが間に合わずさっきのやつがこの街にランダムで転移させられてきた」
そんなところだな。と言葉少なげに説明を終える。理解出来る、だって難しいことでは無いから。
この世界は今別の世界から侵略されている。
様々な国家の上層部がそれを世界から知らされ戦力の編成を行っている。
だが間に合わず、今世界各国に様々な異形の存在がランダムで転移してきて被害をばら蒔いている。
そんなところだ。それ以上の詳しい事情は知らないし、彼も知らないだろう。
「ん、理解度は高いな。ディーラーとしての能力か?本来なら信じらんないこの事情すら理解する」
「本能で理解している、生まれ持ったこの感覚だけは俺だけの物だからな。だから理解する」
「獣か?だが分かってるならいい。俺は戻る、次から俺を呼ぶ時はちゃんと条件を達成した上で呼べよ。じゃないと」
「ペナルティ、だろ?」
「おう、分かってんならいい。じゃあな」
粒子状になりながら手元にあるタロットカードに戻ってくるハングドマン。
このタロットカードは世界にとっても
この22枚のタロットカードはこれから世界を救う上で必須になるモノ。無くしても手元に戻ってくるとはいえ大事にしなければな。