【Wake Up:MasterCard】
【Hello、ディーラー】
突如として脳内に響く機械的な声。昨今で言うところの初音ミク的な感じだろうか、声質だけで言うなら重音テトに近いだろう。ただその無機質さは人の声から作られたVOCALOIDの比ではなく、ゾッとしてしまうほどの声質だった。
「怖」
【失礼、修正いたします】
【〔Human Genom〕Do you want to DL???===>y/n】
【YES】
【Redy Go】
【■■■100%■■■】
【Complete】
[改めて。初めましてディーラー、私はMasterCard。この度<強靭無敵最強な奴ら召喚用アイテム・たろっとかーど*1>の統括存在として選ばれました、
「急に流暢になった。どこからそのデータをダウンロードしたんだ……?いや待てなんだその呼び名は!?」
突如何かをダウンロードしたかと思えば流暢に喋り出すし、そんな流れで意味不明すぎるタロットカードの呼び名を垂れ流しやがった。なに、強靭無敵最強な奴ら召喚用アイテム・たろっとかーど*2って。無駄に長ったらしいわ。
[何、と申されましても……我々を呼び出すための道具であるタロットカードの正式名称ですが?]
「え、マジで?マジで言ってんの???」
[そのようにデータベースには登録されております]
「変更できたりとかは……」
[……【問い合わせ中】……]
[不可だそうです]
「……ウィッス」
思わずさっきまで百々目鬼と交流した場所から離れるために動かしていた足を止めてタロットカードを凝視してしまう。さっきまで世界救うための超凄い道具的な認識だったのに、突如としてクソダサアイテムに見えてきたんだが。なんでそんなにダサいの……?
「というかそれどこに問い合わせてるの……?」
[この世界の統括機構である<あらゆるものをすべるもの・とうかつちゃん>に問い合わせました]
「え、なんて?」
[翻訳しますか?]
「頼む」
[あらゆるものをすべるもの・とうかつちゃん、でございます]
「…………」
どう反応すればいいのか。
この世界を統括している存在がそんなふざけた存在なのか。まだ幼い存在だからこそそんな感じの名前なのか。
え、俺はどうすればいいんだ?この世界に住んでることを後悔すればいいのか……?
「ま、まぁとりあえず分かった。うん、変更不可なら仕方ないよね……納得しないけど」
今はそこまで重要じゃない。もしその統括機構とやらが侵略してきた世界によって何らかの影響があったりしなければ特にいまは重要じゃない。とりあえず止めていた足を動かし始める、向かう先は人が居ないところ。出来れば山とか洞窟とか人が来ない場所だ、静岡だから富士山に向かうか、この事態に人がいるなんてことは無いだろうし。富士山は曰く付きだ、霊的なアレソレの神とか妖怪とかが多く居そうだし。
「まず状況を知りたい。君達のことも、今世界に起こっていることも」
[ではまず世界の情勢から行きましょう]
[第一に、今この世界は他世界より侵略を受けています]
「うん」
[そしてその事は世界中の国家の中枢。いわゆる政府と呼ばれる場所に所属する人達
「……それおかしくない?とうかつちゃんとやらはこの世界が侵略されるって事前に分かってたんだよね、ならその前に世界そのものが抵抗してないの?とうかつちゃんもさ」
[理由につきましては明白です。世界の防衛機構が敗北したのです]
「え、マジ?その防衛機構がどれほど凄いのか分からんがとりあえず凄いやばい事態でしょ」
[世界の防衛機構、名称を<せかいまもるんですくん>の機能は世界に住む権能行使可能存在の召喚になります。神・天使・悪魔・精霊・妖精・妖怪などの神話生物と呼ばれる存在を使役し、外敵へ差し向けるのを基本機能としています]
「え……何その大怪獣バトル」
[そして他世界、仮称:外界より放たれた刺客はその上を遥か上に行く存在たち、即ち
「は???」
え、世界って……どいうこと?つまり俺たちがいるこの世界が生き物サイズで居るってこと???意味分からんが???
[日本神話とクトゥルフ神話、及びインド神話を除くあらゆる神話の神々が対抗を試みました。ですが如何に全能たる神々と言えど神を内包する程の規模である世界そのものには勝てず──そのまま敗北しました]
「なんでそこで日本神話とか戦わないんですか……?」
他の神話でもそうだけど世界を創造した存在がいるはずだ。こうなったらもはや卵か先かニワトリが先か問題になるが、もっと対抗できたはず。というか日本神話とインド神話はなんで戦わなかったんだよ。クトゥルフ神話然り。
[日本神話はその性質上人々を見守るものが多く、八百万と呼ばれる概念によって神と呼称される存在は多数おりますが戦力にはならず。戦力になる存在も他の神々の戦闘の余波をこの世界へ影響出さずに受け止める必要があるため戦闘に不参加です]
「なるほど、後衛を務めたんだな。でインド神話は?」
[
「あ、カリ・ユガか。てか消し飛ばされたってどういうこと」
[そしてクトゥルフ神話につきましては──不明としか]
「うーん、あいつらこそ世界の外からやってきた存在だからどうなんだろうね」
というかよく良く考えればそんなやべぇヤツら相手に俺は頑張らなきゃ行けないの……?このタロットカードに宿る奴らの力を使って?
てか出来んのそんなこと、相手は最低でも宇宙破壊規模のインド神ども相手に先制攻撃を取れて、尚且つそのまま消失させられるんだぞ。超天元突破グレンラガン並感溢れるインド神共が消し飛ばされるってエグすぎんだろ。
[最終的には<せかいまもるんですくん>の最終機能が発動し外界のものを拒む障壁が展開され、一年間の猶予が人類へ与えられました]
「なるほどね……で、結局侵入を許す事になったがその世界そのものみたいな奴らは攻めてこないのか?」
[世界には幾つか共通のルールが存在しますが、その一つに【世界の中には世界は作られない・存在できない・入ることが出来ない】という項目が存在しますので、仮称:世界存在はこの世界に侵入することは不可能なのです]
「だからさっきのやつらみたいな普通……普通?の生き物みたいな奴らが入ってくる必要があるのね。いくつか質問あるんだけど」
[どうぞ]
「外界の奴らの目的は分かってるの?」
[不明です]
「世界中の国家はどんな対策をしてきてる?」
[軍事拡張及び紛争、戦争の中止。新規兵器の開発、防衛設備の拡充etc.....]
「あぁ、だから紛争地域とかで奇跡的に戦争が止まった!って騒がれてたのか。共通の敵だもんなぁ」
その事を知らない人々はこの1年は奇跡の1年だ、史上初の戦争による戦死者の居ない1年だ!騒がれてたし。かくいう俺も「平和じゃなー」って言いながら餅食ってた。
「んで最後の質問、本当にこのタロットカードに宿る住人達で外界のヤツらに勝てるの?」
[可能性は十分に存在します]
「分かった。ちなみにタロットカードに宿る住人達は、というかこのタロットカードって何?」
[縮小された世界防衛機構<せかいまもるんですくん>の残骸になります]
「え、そんな大事なものかよ」
[そして我々タロットカードの存在は元は別の世界に存在していました。
「へぇ……てことは
[えぇ]
「ちなみになんで他世界のやつがこの世界を助けに来るのか理由あったりする?」
[緊急事態条項のひとつに【連なる世界が危機に及んだ際に救助を送る】というものがありますので]
「なんかそこら辺複雑そうだねぇ」
[世界そのモノのルールですので複雑怪奇所の話ではありません]
「聞かないでおくよ、聞きたくもない」
勉強嫌いだからそんな難しいこと聞きたくもない。脳がパンクしちまう。そんな事よりも聞きたいことはもうひとつあるんだよ。
「テンプレンス、お前はどう言ったやつなんだ?」
[タロットカードにおける14の数字を担うものであり、調和を司るモノ]
[元の世界では至高の人造生命体・ラディアンスと呼ばれ恒星級炉心を備えた太陽系最強の生物と呼ばれていました]
「恒星級?何それこっわ」
人造生命体・ラディアンス
・その外見は人に酷似しているがその中身は違う。内蔵は心臓であり肺であり胃であり腸であり腎臓であり、あらゆる内蔵の機能を備えた核と、細胞周期が秒間に1000回行われておりその異常すぎる細胞分裂を維持するための恒星級炉心と呼ばれる反物質炉が稼働している。なので割と体表は汚いと知らない人からはよく思われていたが、実際は捨てられる細胞は体内で全て反物質に変換されているので実質的に外的要因がなければ永久機関と化している。
そしてその異常すぎる細胞分裂のおかげでありとあらゆる状況に即座に体が適応していく、恒星級炉心以上の出力によるダメージ以外全て受け切るため殺し方さえ不明。一応ブラックホールにぶち込めば死ぬようだが──噂によるとブラックホールに飲み込まれても生き残ったことがあるとか……?
[前宇宙の負の遺産、それが私の元です。皮肉なものですよね、世界を終わらせた物質が世界を救うだなんて]