コーラルという物質がある。
真空下では無限に増殖し、指数関数的に増えてしまうそれは、時に意思を持つこともあった。
Cパルス変異波形と呼ばれるそれらは、ルビコンに大きな影響を与えた。
だがそれはまだ先の話、この物語は何の因果かARMORED CORE Ⅵの世界に生まれ変わってしまった俺の物語だ。
『惑星ルビコン3 汚染都市』
「ふざけんじゃねぇ!、なんで封鎖機構の大型ヘリ*1とHC*2取り巻きのLC*3がオールスターで来てやがるんだボケェー!!!」
ここは惑星ルビコン3のベリウス地方にある汚染都市街。
めちゃくちゃ寂れてるうえに有用な物資や施設が何もないため普段なら間違っても封鎖機構の部隊など一切来ないのだが、今日は事情が違った。
「クソッ、衛星砲掻い潜って無理矢理密航するバカがマジで出るとは思わなかった!」
そう、ARMORED CORE Ⅵにおける物語の始まり『密航』の直後*4だったのである。
「せっかく回収したパーツは落とすわ、封鎖機構の部隊と出くわすわで踏んだり蹴ったりだな...RADの頭目からお仲間がいつルビコン入りを決行するか聞いておくべきだった」
『そこのAC、今すぐに武器を捨て投降しろ!』
「あぁもうくそったれっ、こうなりゃやけだ!」
俺は一番近くにいたHCに右腕の武器MAJESTICと左肩のSONGBIRDSを向ける。
「派手に吹き飛びな!」
放たれた高威力のロケット弾と2発のグレネード弾は急接近していたHCに直撃し見事に相手の動きを止めた。
「ついでにこれも食らっとけぇ!」
更に左腕に装備されたパルスブレードHI-32:BU-TT/Aで切り込みHCの装甲を抉り切り中身のパイロットごと両断する。
『コード31A!、少尉がやられた』
「性能が良いからって調子に乗るからこうなるのさ、カタフラクト*52機とエクドロモイ*64機に強襲された時よりはましだ!」
『この化け物め!』
「いやAC1機に大型ヘリとHC差し向けるアホどもに言われたくない」
ぶっちゃけ普通に過剰戦力だろこれ、HC一機でも並みのACなら何体で挑んでも瞬殺するようなもんを一個人相手にぶつけるとか頭沸いてんのか?*7。
「この後予定が詰まってるんでな、そろそろ撒かせてもらうぜ!」
俺はこんな時のための隠し玉を起動する。
『これは!、高出力のパルス反応を検出...総員退避!』
「判断遅すぎ、そんじゃさいなら~!」
瞬間、俺のACから凄まじい光が放たれ辺りを覆い尽くした。
アサルトアーマー、ACに搭載されているジェネレーターをオーバーロードさせることで強力なパルス爆発を起こす逆転の一手だ*8。
ただし、ジェネレーターにとんでもない負荷がかかるため、一度の戦闘で最大3回までしか発動できないという欠点こそあるが、それでもなおACが戦闘中に使える攻撃手段の中では数少ない超広範囲に対応できるものであるため、OSの強化権限を得たAC乗りの大半はこいつを真っ先に取る。
「よ~し、ここまで来れば大丈夫だな」
アサルトアーマーを放った直後、俺は即座にその場を離脱し汚染都市街の外縁にある作業用ドックに来ていた。
「例の客はまだ来てないみたいだなぁ?、もしかして初心者用の教習シミュレータでも受けてるのか?」*9
「すまない、少し手続きに手間取っていた」
「おっ?、あんたが予約してた客かい?」
「あぁ、この子のACを見てやって欲しい...621こっちだ」
「621?、おいおいまさか見て欲しいACに乗るやつってのは第4世代の600番台か?」
「そうだが、何か問題が?」
「はぁ、知らぬこととはいえあんたも大概趣味が悪い」
『うぉるたー、このひとだれ?』
依頼主の後ろから現れたのは全身を包帯で覆いその上からAC乗り用のジャケットを羽織った10代くらいの子どもだった。
「あぁ~、ちょっと待っててな」
621side
c4-621それがわたしのなまえ、ちょっとまえにいまのハンドラー『うぉるたー』にひきとられてようへいになったの。
きょうはうぉるたーといっしょにえーしーのメンテナンスをしてくれるひとのところにでかけることになっていたけど。
うぉるたーによばれてへやのなかにはいったらめのまえでしらないひとがあたまにてをあてはじめちゃった。
「あぁ...やっぱりな、第4世代の中でも一番酷い時代に改造されたのか、脳がかなりやられてるし体もボロボロになってる、しかも戦闘に必要がない機能はほぼ削り取られてるな」
「驚いたな、621の状態を全て言い当てている、噂のAC技師は強化人間にも詳しいようだ」
「まぁな、昔その手の実験に関する資料を読んだことがあるんだが...あんたが引き取ったこの子たち600番台は特に酷い実験をしてた時期に手術を受けてる」
『ねぇ、なんであたまにてをあててたの?』
「ん?、あぁごめんな嬢ちゃん、ちょっとお前さんの脳内にあるコーラル管理デバイスにアクセスして体の状態を調べさせてもらった」
「!?、何故そんなことができる!」
「言っただろぉ?、資料読んだって...そん時にたまたまデバイスへ干渉する方法も書いたあったのさ(まぁ、それだけじゃないけどな)。
後一つ教えといてやるが、第4世代の600番台は孤児の...特に10代前半の少女に限定して強化実験を行ったかなり曰く付きのナンバーでな、その時の研究者たちときたら被験者のことを一切考えずに色々やりまくったせいで大量の死者をだしたうえに、後の研究結果でその時の
『ねぇ、えーしーみてくれないの?』
「おっとすまねぇ、長話をし過ぎちまったぜ、ごめんな嬢ちゃん」
『むぅ~、そのよびかたいやっ!』
「少し待ってくれ、先程から621のことを『嬢ちゃん』と呼んでいるがまさか」
「はぁ...言わせんなよ、さっき600番台の奴らは全員10代前半の少女たちだって言ったろ?、この子も例外じゃねぇし、もしこの子より前に600番台の奴らを雇ってたならそいつらも全員そうだぞ?」
「...すまない、少し外に出させて貰う」
「おぉ、その間にアセンプラン纏めとくからゆっくり外の空気でも吸ってきな」
少女にウォルターと呼ばれた依頼主の男は、濁った目をして苦しそうに青ざめた顔をしながらドックの外に出ていった。
「よし、んじゃ取り敢えず嬢ちゃんからのリクエストを聞こうか?」
『リクエスト?』
「そうだな、自分のACにどんなパーツを組み込みたいか...或いはどのパーツを残したいかってところだな、AC乗りは皆それぞれ自分の機体に拘りを持ってんのさ、それを損なわない程度にお勧めのパーツを紹介してアセンブルを手助けするのが俺の仕事だ」
『じゃあ、ひだりうでのぶれーどはのこしてほしい、あとぶきがついてないほうのかたになにかつけてあげて...なにもついてないとこのこがかわいそうだから』
「この子?」
『うん、このこ...このこもわたしとおなじだから』
「同じってのは?」
『わたしもこのこも、つかえなくなったらすてられる
「あぁ~、なぁ嬢ちゃん」
『なぁに?』
「多分嬢ちゃんの雇い主は絶対に嬢ちゃんを捨てたりしねぇと思うぞ?」
『えっ』
「さっきの酷ぇ顔見ただろ?、あんな顔をするやつが嬢ちゃんを使い捨てにしたりするものかよ」
『でも、わたしたちはたたかうことでしかやくにたてない』
「嬢ちゃん、それだけは雇い主の前で言うなよ?」
『...ヒッ!』
嬢ちゃんは俺の顔を覗き込んで、酷く怯えた。
621side
わたしは、なにかまちがったことをいったのだろうか?、めのまえのおとこのひとは、なぜかとてもこわいかおをしていた。
「良いか嬢ちゃん、俺が傭兵たちのACを見るのは少しでもそいつに長生きして欲しいからだ。
今まで何にもの傭兵たちが死んでいくところを俺は見てきた。
金の為に無茶して死ぬやつ、仲間の為にと最後まで戦い続けて死んだやつ、そして
皆俺の前で死んでいった奴らだ。
けどな、奴らは最後の最後...くたばる寸前まで生きることを諦めちゃいなかった。
わかるか?、最初から生きることを諦めてる奴なんて一人もいなかったんだ。
別に役に立てなくたって良い...けどな、それを言い訳にして生きることを最初から諦めるのだけはやめておけ。
それは、自分が生きてるって事実を冒涜する行いだ」
『でも、わたしたちは...』
「なぁに、長生きしてりゃあやりたいことやら行ってみたいところやら何でも出てくるもんさ、だから...捨て鉢にだけはなんなよ嬢ちゃん」
このひとのいうことはむずかしくてよくわかんないけど、でも...わたしのことをおもっていってくれていることだけはやけてしまったわたしのあたまでもりかいできた。
「さて、それじゃあ今度こそ仕事に取りかかろうか」
『うん』
「まず左肩に何かつけて欲しいって話だったが、それより先にちょっと見せて欲しいところがある」
『なに?』
「ちょっとな、嬢ちゃんのコーラル管理デバイスにアクセスした時、ここに来るまでに行った戦闘のデータを見たんだが、ブースターとジェネレーターの調子が明らかに悪そうだったんでな、後武器を使った際アシストが上手く機能してなさそうだったからFCSもだな」
『???』
「...なんじゃこりゃぁー!!!」
『どうしたの?』
「どうしたもこうしたもない!、ジェネレーターは片落ち品以下の粗悪品だし、ブースターも推進系統がイカれてる...FCSもかなり旧型だし、もしかして側は良いのが手に入ったけどその代わりに内装は粗悪品掴まされた感じか?、嫌...これは多分予算が尽きてしょうがないから機体の性能でごり押しをした感じだな」
『つまりどういうこと?』
「武器より先に内装全部取っ替えないといけねぇ、嬢ちゃん今どんなパーツ持ってる?」
『おーるまいんどからもらったのがふたつあるよ』
「よし、取り敢えずそれ見せてくれ!」
「あっのクソAI、武器しか渡してねぇじゃねぇか!!!」
『ごめんね』
「悪いつい大声出しちまったわ、嬢ちゃんごめんな」
『ねぇ、どうすれば良い?』
「さっきも言ったが内装は全部取っ替えだな、うちの在庫から嬢ちゃんの傭兵ランクで購入可能なやつをプレゼントするからそれに取り替えよう」
『いいの?』
「さっき啖呵切っちまったからな、嬢ちゃんには絶対長生きしてもらわにゃならん、それに嬢ちゃんは何か
『ありがとう』
「おう、任せときな!」
「よし、取り敢えず内装はこれで良い」
『わぁ、なんかかっこいいのついてる』
「あぁ、ブースターとFCSはファーロン製のG2/P04とG2/P10SLTにジェネレーターの方は大豊製のLING-TAIに付け替えておいたぜ、これでしばらくは何とかなるはずだ」
今回持ち込まれたACはRADの連中が作ったC2000シリーズ一式に粗悪品の内装をぶちこんで無理矢理動かしてる状態だったが、元々C2000は作業用のくせにこの星系で手に入るパーツの中じゃあかなり品質が良いから内装さえ変えてやればすぐに十分な性能を発揮できるようになる。
後は、嬢ちゃんがリクエストしてた左肩につける武装だな。
「OK、これで完了だ!」
『すごい、なんかつよそうなのついた』
「左肩武装は依頼主から提示されてた予算内で選んだデュアルミサイルのP31DUO-02、右腕のアサルトライフルはMT相手には十分だが、それ以外にはちょっとキツそうだったからな、リニアライフルのCURTISに変えておいた」
『ねぇ、このこたちはどういうぶきなの?』
「デュアルミサイルの方は相手を挟み込むように追尾するかなり凶悪なやつでな、こいつと右肩の方についてる4連ミサイルを偏差でぶっぱなせば大体の相手は避けられなくなる。
たまに慣れてるやつは前に飛び出して来るがそん時は右腕に装備させたリニアライフルの出番だな、フルチャージで撃てば大体のやつは衝撃で足が止まるからその隙に左腕のパルスブレードをぶちこめばAC以外のほとんどのやつは瞬殺だ」
『すごい』
「だろ?、まぁジェネレーターは後何個か依頼をこなせばもっと良いのが手に入るから自分の戦闘スタイルと相談しながら付け替えるんだぞ」
『ねぇ』
「ん?、どうした嬢ちゃん」
『おなまえなんていうの?』
「あぁ、もしかして俺の名前か?」
『(コクコク)』
「う~ん、俺普段は誰にも名前教えてねぇからなぁ」
『...おしえてくれないの?』
「うっ、わかった...わかったからそんな目で見ないでくれ、嬢ちゃんの依頼主が見たら俺をぶち殺しに来そうだ」
『じゃあおしえて』
「他のやつには内緒だぞ?」
『うん』
「俺の名前は...C5-009そこから取ってナインって名乗ってる今後ともよろしくな」
【今回の武器紹介】
『HI-32 : BU-TT/A』
621ちゃんのACの左腕についてたパルスブレード、皆ご存じ導きの初期ブレ。
下手に他の近接武器使うよりスタッガー状態の敵にこいつブンブンしてた方が強いことの方が多いバグ武器の一つ。
何故こいつとフレームは優秀なのに内装と右腕武器は貧弱なんだ初期機体。
【ナインからのコメント】
こいつはスタッガーしてない敵にも普通に並以上の威力叩き出すからお勧めだぜ、なんなら皆のトラウマ封鎖機構の例のあれにもこいつは効くからパルスガン使い辛いってやつはこっちを積むと良いぞ。