ちょーっと長くなっちまうが、そこは必要経費ってやつさ。
『ヴェスパー第2隊長スネイルです、これより作戦内容を伝達します』
アーキバスから直々の依頼を受けた621は、ブリーフィングで作戦内容を確認していた。
『以上が今回の作戦の概要です、あぁそういえば...どうやら先走り壁越えを果たそうとしたベイラム部隊は、ものの見事に壊滅したようですね。。
狂犬どもには相応しい末路です。
出撃していたレッドガン隊員2名は、部隊のMTが最後に残した戦闘ログによれば、どうやら解放戦線側のBAWS製重装甲4脚MT5機と2脚通常MT20機に囲まれ、ACはほぼ大破に近い状態まで追い詰められたようですね。
現在は消息不明のようですが、時期に死亡判定になるでしょう」
621は驚きを隠せなかった。
モニターに写し出された消息不明のレッドガン隊員2名というのは、以前共にガリア多重ダムを攻略したG5イグアスとG4ヴォルタだったのだ。
彼らの実力を側で見ていた621は、あの2人がMTなんかに負けるわけがないと、2人をバカにしたような物言いのスネイルをモニター越しに睨んだ。
『あぁもう一つ、現場では所属不明のACが1機確認されています。
どうやらベイラム部隊と解放戦線の戦いに乱入しようとしていたようですが、カメラで追いきれない程の尋常ではない速度で動いていたうえに、途中で強力なジャミングが入り見失ったそうです。
それと、現場から微量ですがコーラルが検出されたという報告も上がっています。
現在我々ヴェスパー部隊の第8隊長ペイターが調査を行っていますが、まぁ放置しておいて良いでしょう』
『コーラルが検出された』その言葉を隣で聞いていたウォルターは、何処か悲しそうで深刻な表情をしていた。
『数時間前 壁 街区中央』
G4ヴォルタとG5イグアスは壁の街区で建物の陰に隠れながら解放戦線と交戦していた。
「くそったれ、上層部の奴ら俺たちを嵌めやがったな!」
ベイラム上層部から伝達された『壁』とその近辺に存在する解放戦線側の保有戦力に関する情報は、全て間違っていた。
情報より明らかに敵の数が多く、そのうえ武装が充実していたのである。
「イグアス!、12時の方向から砲撃多数だ」
「任せなぁ!」
イグアスはこんな時のために用意していたシールドでミサイルを全て防ぎ切ったが...。
「くそっ、残弾が残り少ねぇ!、このままじゃ一方的に殺られちまうぞ!!!」
「さっきからミシガンと通信が繋がらねぇ、強力なジャミングが張られてやがる!」
「どうするヴォルタ、他の奴らはほぼ全滅だぞ」
「なんとか撤退してぇが、周り中解放戦線のMTまみれだ...しかも連中全員グレネードで武装してやがる」
「クソが、下手にここから出たら2人揃って木っ端微塵かよ、上層部の連中後で全員ぶっ殺してやる!」
『..ザザッ.ベイラムのレッドガン部隊員2名のACを捕捉、これより殲滅行動に移る』
「やべぇ!、発見されちまったぞ!!!」
「こうなったらいちかばちかだ...一気に突っ込んで奴らの陣形を崩すしかねぇ!」
「しゃあねぇな行くぞ!、俺は後ろから援護して2脚MTを何体か殺る、その隙に突っ込んで包囲をぶち抜いてやれヴォルタ!!!」
「あぁ!、行くぞしみったれた解放戦線のクソども!!!」
『.ザザッ..レッドガン2機、来ます!』
イグアスの乗るヘッドブリンガーはヴォルタの斜め後ろでシールドを構えながらマシンガンを連射し、ヴォルタの乗るキャノンヘッドは、肩に装備された2連装グレネードランチャーと分裂ミサイルを一斉総射した。
「よしっ!陣形に穴が空いたぜ、このまま突っ込ぞ!!!」
「待てイグアス、こっちに近いてくる反応が3つ...いや4つだと!?」
「あぁ!?、いったい何が...おいおいまさかあれ!」
イグアスのヘッドブリンガーが向いた方向から、雪煙をあげてこちらに近いてくる大きな機影があった。
「嘘だろ?、まさか...あれ全部4脚MTなのかよ、最悪じゃねぇか!!!」
イグアスがこんな反応をするのも無理はない、621はイグアスたヴォルタがMTなんかに負けるわけがないと怒っていたが、それは相手が散らばっている状態での話だ。
流石の2人といえど、今回のように敵が纏まった状態で攻めてくれば、対処しきれなくなってしまう。
尚更悪いことに、今回は地形が解放戦線に味方をした。
ガリア多重ダムの時は、段差が激しくMTが動き辛い地形だったが、今回の壁周辺街区は開けた平らな地形が多く、MTでも動き易い場所だったせいで、解放戦線側がイグアスたちを包囲しやすい状態だったのである、
その結果、他の場所で待機していた重装甲の4脚MTまでもが、この場所に集結しつつあった。
「ん?、おいおい後方から更に1機来やがったぞ!」
「くそっ!、俺たちを完全に囲み込むつもりだな?、ちくしょうどうすりゃ良いんだ」
「おまけに2脚MTまで集まって来てやがる、戦るしかねぇぞイグアス!」
「ちくしょう、ちくしょう!、こんなところでくたばってたまるかぁ!!!」
イグアスとヴォルタは負けじと武器を構え応戦するが、次第に角へ角へと追い込まれていった。
『レッドガンAC2機を射程に捉えた!、全員構えろ...侵略者どもに一致総射をくれてやれ!!!』
「イグアス、お前だけでも撤退しろ!、ヘッドブリンガーの推進力なら行ける筈だ!」
「ふざけんなヴォルタ!、てめぇを置いていけるかよくそが!!!」
最早万事休すといった...その時だった。
『なんだ?、何かが物凄い速度でこっちに...うわぁぁぁー!!!!』
『どうした!、なんだこの反応は...ACか!?』
「なんだ?、解放戦線の奴らが慌ててんぞ」
「今ACが近づいてるって言ってたな、もしかして俺らを確実に殺すために傭兵でも雇ったのか?」
ヴォルタがそう言ったその瞬間、『それ』は現れた。
『..ザザッ.最優先救助対象を確認、レッドガンG4ヴォルタ:ACキャノンヘッド、並びに同所属G5イグアス:ACヘッドブリンガー、これより殲滅し対象を救助する...排除開始』
男性とも女性ともつかない機械が喋っているような声を響かせる謎のAC。
『なんだこいつは!』
『注意しろ!、後方にいた同士たちが全滅しているぞ...ぎゃあぁぁぁ!!!』
『貴様!、よくも同士たちを...うっ、うわぁぁぁ!!!』
それはまさに化け物だった、全身がくすんだ鋼のような色で鈍く輝き、その双眸を鮮血のような禍々しい赤に光らせながら縦横無尽に戦場を駆け巡るその姿は、まさしく異形であった。
「なぁヴォルタ、俺たちは夢でも見てんのか?、あんなにいた解放戦線の連中が一瞬で...」
「夢じゃねぇ...なんなんだよあのACは、普通あんなスピードで動いたら弾なんてまともに当てられねぇ筈なのによぉ、すれ違った瞬間にMTどもが穴だらけになってやがるぜ」
「それもそうだけどよぉ、あいつのACから出てるあの赤い炎は何だ?」
イグアスが指摘した赤い炎、それは所属不明ACのブースターから出ているものだった。
「ありゃまさかコーラルの燃えた炎か!?、嘘だろ...ACにコーラルなんか使ってやがるのかよ!」
「おいおい、今度は4脚MTを殺りやがったぞ!?、しかも目の前で発射された弾丸を全部避けやがった...どんな反応速度してんだ!」
2人が驚いている間にも、解放戦線のMTは次々と葬られていった。
『くっ、このままでは全滅する...本部!、増援を寄越してくれ!!!』
『無理だよ忘れたのか?、今この辺り一帯にはジャミングが張られているから通信は繋がらない!』
『だがこのままでは!、あぁ...来るなぁぁぁ!!!』
最後に残っていた4脚NT2機に一瞬で距離を詰めた所属不明ACは一番近くにいた1機を両腕に装備された小型のハンドガンのようなもので蜂の巣にすると、左腕に装備していた銃を肩にマウントされていたもう一つの武器に持ち変えた。
『くそっ!、何で弾が一発も当たらないんだ早すぎ...ぎゃぁぁぁー!!!』
半狂乱になりながら両腕のガトリングガンを乱射する4脚MTだったが、所属不明ACはそんなことお構い無しに接近し、つい先程持ち変えた武器を構えすれ違いざまに4脚MTのコックピットを両断した。
『.ザザッ..全敵対勢力の殲滅を確認、これより最優先救助対象2名を安全地帯へ誘導する』
「すげぇ、たった1機であんなにいた解放戦線のMTを全滅させやがった」
「ヴォルタ、気のせいか?...あいつ俺たちを安全地帯に誘導するって言ったぞ、あれ味方なのか?」
「俺にもわからねぇ、だが味方なんだったらこれ以上の幸運はねぇ、イグアス...絶対にあいつに武器を向けんなよ?」
「あんなの見せられた後に武器なんか向けるかよ、俺は死にたくねぇぜ」
『現在 壁付近 雪原地帯』
「621、今回の依頼はあくまで戦闘ログの回収だ...レッドガン隊員2名の捜索はあくまでついでだということを忘れるな?」
621はベイラムからの依頼により、壁付近の雪原地帯で解放戦線のMTなどの残骸から戦闘ログを回収していた。
「りょうかい
イグアスたちもみつかるかな?」
「期待はしない方が良い、あの状況では殆どの場合2人は死亡している可能性が高い、下手に深追いすればお前にも危険が及ぶ、それだけは避けなければならない」
「うん、きをつける」
気がついただろうか?、今の通信で621がちゃんと人の名前を発音できていたことに。
そう...なんと621は、ナインと会って以降...人の名前をちゃんと覚えて発音できるようになっていた。
その後、初めて一緒に戦ったイグアスたちの興味を持ち、依頼を完了した後に直接会って交流を深めていたのだ。
スネイルが2人を貶すような物言いをした時に怒っていたのも、仲良くなった2人がバカにされたことに腹をたてていたからである。
「ウォルター、あーきばすのえむてぃーがなにかをさがしてる」
「おそらく連中も調査を行っているのだろう、スネイルが言っていた第8隊長ペイターに遭遇しないよう気をつけろ、今見つかれば厄介なことになる」
「わかった、なんとかみつからずにじょうほうあつめる」
621はログの回収を再開した。
「ウォルター、しょぞくふめいえーしーのじょうほうあったよ!」
「こちらでも確認した...そろそろ時間だな、帰還しろ621」
「うん」
ログの回収を終えた621が帰還しようとしたその時、頭上の崖上から声が響いた。
『お前、私たちの同士じゃないな!、お前が皆を殺ったのか!!!』
「てき!?」
驚いた621が声のした方向を見ると、そこには凄まじい重装備のACがいた。
「この識別コードは、解放戦線の幹部リトル・ツィイーか!」
621は目の前に現れたACを観察する。
全身にBAWS製の『芭蕉』で固めたフレーム構成で、右腕にメリニット製のバズーカ、左腕にファーロン製の分裂型ハンドミサイルを装備し、右肩にはこれまたメリニット製の大型グレネードランチャーを装備している。
極めつけは左肩に装備された巨大な武器、今まで見たことのない形状をしている。
『よくも同士たちを!、絶対に許さない!!!』
「ウォルター、にげるのはたぶんむり...おうせんする!」
「待て621、そちらにもう1機ACの反応が向かっている」
『おや?、解放戦線の幹部に壁越えの英雄とは妙な組み合わせだ。
ですがこの場にいるということは両方ともアーキバスの調査を邪魔する敵ということになりますね。
ならば、両方とも落とさせていただきます』
「V.Ⅷペイターか...気をつけろ621、やつは第10世代の最新型強化人間、ニューエイジと呼ばれる者たちの1人だ」
「りょうかいウォルター、やっかいそうなほうからたおす!」
そう言うと、621は解放戦線幹部『リトル・ツィイー』に狙いを定めた。
「ナインからおしえてもらったほうほうでたおす!」
ナインに調整してもらった後、621の機体は依頼の報酬で購入したパーツなどを組み込まれ、現段階で組める中ではかなり良い状態に仕上がっていた。
特に変化があったのはフレームで、腕はRAD製ACパーツ『C2000シリーズ』をそのまま使い、それ以外の部位を凄まじい安定性を持つ大豊製ACパーツ『天槍』と実弾及び爆発武器への耐性が高くバランスの良いベイラム製ACパーツ『メランダー』の2種類を組み合わせ、そこにアーキバス製のジェネレーター『VP-20S』を使用することで、初期フレームに足りなかった耐久性と推進力を底上げしたのだ。
「まずはみさいるでうごけなくする!」
621の戦法はいつも通りのものだ。
最初に左肩に装備されたデュアルミサイルを放って敵の逃げ道を塞ぎ、そこへ右肩に装備された4連装ミサイルを発射することで相手の動きを封殺する。
『インデックス・ダナム』と戦った時もこの戦法で倒したのたが...。
『生憎私のユエユーは、その程度じゃびくともしないよ!』
なんとリトル・ツィイーのACユエユーは無傷であった。
それどころか、急速に接近し両腕の武器をこちらに向けて構えている。
『食らえぇぇぇ!!!』
ACユエユーのハンドミサイルからから放たれた分裂ミサイルとバズーカから放たれたロケット弾が621のAC『ハウンド』に殺到する。
「こんなときは、うえによける!」
621は、自分がいつも使っている戦法を敵も使って来たときのことをずっと考えていた。
その結果たどり着いた答えは『上に避ける』だった。
『なに!?、あの数のミサイルとロケット弾を全部避けたのか、だったら!』
ユエユーは、右肩に装備された大型グレネードランチャーの砲身をハウンドに向ける。
『こいつで落とす!』
そして、ハウンド目掛けて凄まじい威力のグレネード弾が放たれ、もはや直撃は避けられないものとだと思われた。
だが621は次元が違った。
「くいっくぶーすと!」
なんとグレネード弾が当たる直前にクイックブーストで避けて見せたのだ。
『そんな、あれも避けられるなんて...だったら!」
リトル・ツィイーは、そう言うと左腕に装備していたハンドミサイルを、左肩にマウントしてあった巨大な武器に持ち変えた。
『これならどうだぁ!!!』
ユエユーがその新たな武器を構えると、なんと2つのチェーンソーが展開された。
「んっ、こういうときはうしろにさがってバズーカ」
ユエユーがハウンドにチェーンソーで突撃しようとした瞬間、621はユエユーに向けて大豊製バズーカ『DF-BA-06 XUAN-GE』を撃った...すると。
『くそっ、機体への衝撃でチェーンソーのチャージが解除された!?、まずい...動けない!』
そう、これまでのハウンドによる攻撃によるダメージが蓄積し、ユエユーはスタッガー状態に陥ったのだ。
そしてその時。
『どうやら好機みたいですね、両方落とさせてもらいます!』
それまでツィイーと621の戦いを静観していたV.Ⅷペイターが動きだした。
『くっ、こんなところで!』
だが、ペイターの攻撃がツィイーに直撃しようとするまさにその瞬間。
あり得ないことが起こった。
『なっ、なんだ!?、機体が動か...ガッ!』
ペイターの機体『デュアルネイチャー』硬直し、いきなり吹き飛ばされたのだ。
『大丈夫かい嬢ちゃん?、中々良い勝負をしてたから割って入るタイミングを見失っちまってたところだったんだが、丁度よくそこでのびてるサイコバカが隙だらけの背中晒してたもんで思わず撃っちまったぜぇ、ハハハハハッ』
なんと、ACに乗って現れたのはアセンブルアドバイザー『ナイン』であった。
『アドバイザーあんたAC乗りだったのか、その黒い機体はなんなのさ?』
『その声はツィイーか?、その機体構成を見るにようやくクソアセンを卒業できたってところか。
まぁ、及第点だな...今度じっくりACを見てやるよ。
取り敢えず今は離脱しな、俺のACのことは気にするな、企業秘密ってやつさ』
『感謝するよアドバイザー、また今度会おう』
「...ナイン、なんでここに?」
『おぉ?悪いな嬢ちゃん、ちょいとある男から依頼を受けてな、さっきの戦ってたACをサポートしに来たのさ。
まぁ、到着が遅れたせいで、さっき言ったとおり割ってはいるタイミングを見失っちまってたんだけどな』
「あなたも、てき?」
『おいおい、あんま殺気立つなよ!、俺は嬢ちゃんの任務邪魔するつもりはないし、嬢ちゃんも別に無理してまで戦いたいわけじゃないだろ?、ここはお互い協力といかねぇかい?』
「どういうこと?」
『もうすぐここにはアーキバスの連中がぞろぞろやってくる、さっきの嬢ちゃんとツィイーの大乱闘に気がついてな。
んで、俺はツィイーのやつが安全圏に離脱するまでサポートしなきゃならない。
そして嬢ちゃんは、ここで得た情報を持ち帰るために早くここからリターンしたい。
丁度良く目的が噛み合ってるだろ?、俺と協力すればアーキバスに見つからずに帰るのは超簡単だぜ?』
「...わかった」
『よしっ!、そんじゃさくっと行こうか!!!』
こうして621とナイン、そしてリトル・ツィイーは雪原地帯から離脱した。
その後、ツィイーを迎えに来た解放戦線の面々とひと悶着あったが、それは今回の話に関係ないので割愛させてもらおう。
さて、これで今回の話は終わりだ。
また次の依頼で会おうぜ...じゃあな。
【今回の武器紹介】
『DF-BA-06 XUAN-GE』
大豊が開発した単発式のバズーカ、他のバズーカより威力などは低いが、序盤から手に入る点と総弾の多さなどで他のバズーカと差別化できる優秀な武器。
【ナインからのコメント】
金さえあれば、傭兵ランクが低いうちからでも手に入るから、これが買えるようになったら初心者卒業って言ってる傭兵たちをよく見かけるな。
まぁ、こいつを手に入れられたってたけで初心者卒業できるほど、独立傭兵は甘くないけどな。
というか、ちゃんと腕が立つやつが使わないと撃った時の硬直に攻撃合わせられてそのまま殺られる場合があるかな、皆もバズーカ使う時は気をつけるんだぜ?。