個性:人修羅 作:飲んだくれ閣下
何もなくなったボルテクス界の一角に、墓石が一つ
近くに帽子が置かれている
この光景も何回目かは分からないぐらい見ている。飽きたというより、見慣れたと言うべきか
勇の帽子を拾い上げ、晴れ晴れとした砂漠のような大地の空を見上げる
決戦を終え、ボルテクス界に類する世界を観て、大魔王の在り方を見届け、アマラの海を暇つぶしに泳ぐような日々だ
相棒のピクシーは呼べばすぐに来るだろう。だが何も無い事に流石に飽きたのか、人修羅の頭の上で不貞寝している
「ねぇ、別の世界に行かない?」
サラッととんでもない事を言い出した
というかそんな事ができるのか、と
「今のあなたならできるの!だってアマラの海に呑まれないんだから」
つまり星を、世界を渡れと言うことか
彼の大魔王が頂きに至った末に、またボルテクス界に戻ってきた人修羅だからこそ可能だ、て事らしい
場合によってはアマラの海に潜ればランダムになるが別世界へといけるらしい
あのデビルハンターはボルテクス界になる前から来てたらしいし、世界を渡る事自体は難しくはないかもしれない
力があれば渡れる。渡る時に呑まれる事なく存在できる
なるほど、確かに自分ならできるな、と納得
「じゃ、行こっか」
申し訳程度だが勇の帽子も持っていく
もし元の東京みたいな世界だった場合のちょっとした変装程度にはなるだろう。そういうファッションも着こなしてた勇の帽子は役立つ筈だ
──よし、行こう
ターミナルを経由してアマラ深界に、そこからアマラの海に沈み込む
どんな世界に流れ着くかは分からないが、ボルテクス界よりは面白い所ではあるだろう、と思いたい
場合によっては悪魔がいないかもしれない。いつものメンバーをストックに常備してるから問題はないが、召喚できない場合もありえる
さて、共に
────英雄よ、英雄よ、英雄よ
対価無き正義が真か、正義を成した後に着いてくるモノが対価か
名声か、金銭か、地力か
それとも己か?
堕ちるか、昇るか
───
………目が覚めた
どうやら東京にある、自室のようだ
ピクシーは……居るな。内側から外を覗いている感じだ
単独なら余程な相手じゃない限りは戦えるから問題ないが、自分だけの方が動きやすい状況には変わりないから、暫くは我慢してもらおう
まず、自分の学生証を見る
××中学、3年生:間薙シン
至って普通の学生証だ。若返ってる気がするが、悪魔になった時と特に変化が無い。世界を移動した影響は薄いとみて良いだろう
個性:魔人
……個性?
個性は個人個人の性質や性格、特徴的行動とかの個人の特徴とも言える言葉の筈だ
よく分からない項目だ。悪魔である事を隠す事には都合が良いのは助かるが
どうやら個性としての特徴であるらしく、種族的特徴と言うより、能力的特徴との事だ
だから自分の後頭部の角は個性の影響と言う事で処理されてるようだ。普段は角が見えないが、戦闘になる時や警戒時は隆起するように見せれば良い
これで特に隠す必要が無くて助かる
……今日は休日のようで、部屋のテーブルにはケータイがある
板みたいな見た目をしているが、スマホという物だそうだ
操作感覚はガラケーの文字打ちが楽になった感じだ。画面に直接触って文字を打つのは新鮮だが、やる事は変わらないのは良い
パソコンで調べるのも良いが、スマホの方が手軽で使いやすいので、この世界について調べてみる事にした
……この世界はヒーローが職業として存在しており、個性は所謂『異能』が世界の当たり前であるようだ。漫画で見たヒーローが持つ特殊能力が日常化したような、一般化したようなものだそうだ
それで無個性は排他の傾向。無論、個性の中でも異形系や異質な個性も……
この世界で仲魔を集める際、そういう人をかき集めてある意味軍団を作るのも面白いかもしれない。少なくとも前の世界よりは好意的だろうし、最悪力で従えさせる事もできる
悪魔ほど単純では無いが、コンプレックスを刺激すればいくらでもどうにかできるだろう
力がなければ育てる、鍛える、身につけさせる。そうすれば、排他してた連中はこぞって掌を返すだろう
さて、先ずは暫く学校は休みとの事だ。夏休みだ
宿題は解決してるし、休みは3週間も残っている。仲魔──完全に人間だから仲間──を集めるのにうってつけだろう
無論、ヒーローがいればヴィランもいる
家に自分以外いない状態が続いているからここを使うのも良いが、戦力として使えるならヴィランも囲うのもありだろう
清濁を併せ飲むのはヒーローのあるべき動きな筈だ。有用性を見い出せば減刑されるかもしれない
そして、上手く隠れられればそのまま連れて行けるかもしれない
先ずはこっちが向こうが望む報酬や条件を掲示できるようにしなければいけない。金は、ある。他には宝玉輪や宝石の類がボルテクス界で精霊との交換の為に掻き集めたのがある
………そのまま報酬に使えると思う。売るのに苦労はするだろうが、売れれば価値は本物故の金額な筈だ。何せ偽物は無い、純度100%の宝石だ。特にダイアモンドは喉から手が出る程欲しいだろう
まぁこれは人員が揃ったら幹部レベルの存在に幹部証程度にするぐらいか。個数がある他の宝石に比べて少ない。何せサマエルを倒した時や1部の宝箱やミカエルからソロネに要求するとかしないと手に入らないから仕方ない事だ
では、久しぶりの東京を回って見ることにしよう
将門公にも挨拶に行くのも忘れないようにしよう
神田神社
ここはボルテクス界とかとは違う、あらゆる世界に共通して存在している、東京の守護神たる存在、将門公を祀る場所だ
なるべく人がいない時間である事を利用する。早朝に行けば良いだけだが、昼間に行く事にした
ヒーローがいるような世界だ。夜間時に職務質問なんてされたらたまったものじゃない
だったらと思い、堂々と行く事にした
……人がい無さすぎる
まさか、来る事を予見して人払いをしたのかもしれない
だとしたらありがたい。早速行くとしよう
神殿前に着き、手を合わせる
……少ししたら現れたのは、刀を持った霊体が降りてきた。将門公だ
『人修羅よ、久しいな』
早速、この世界でどう動くのかを伝える
『よい。そして、一つ頼み事がある』
許可と同時に依頼が来た
『近々、この東京をも巻き込む大きな争いがある。未然には防げぬ、大きな争いだ』
人とは争うもの。ヒーローとヴィランがいる以上は避けられないのだろう
だが、将門公が言う程という事は、全面戦争の可能性があるという事だろう
『故に、乗り切る為に力を貸そう。仲間集めに役立つ事を巫女や住職を通して、お主に手を貸すように神託を与える。この場でも良い、何が欲しい?』
この場ではまだ良い。仲間にした者がヴィランだった場合に訪れる事にすると伝える
『ヴィラン、か。だが、お主が雇用すると決めたなら悪い方には行かぬのだろう。上手く使うのだ』
神酒を将門公に渡して、神社を後にする
さて、仲間集めを始めよう