個性:人修羅   作:飲んだくれ閣下

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第11話

 

 

 

 

体育祭当日

学校指定のジャージに着替えながら、どれだけ加減すべきかを考える。

少なくともアイアンクロウも死亡遊戯もダメ、ヒートウェーブは魔力剣ではなく拳で行えば良いか。あるいは殴打だけで良いか。

武器類はサポート科の開発限定であるので、どっちにしろ制限が多い。それでも充分勝てるだろうが。

問題は別。実は機動力だけなら他の生徒に負ける場合がある。飯田天哉とかはまさに競争系かつ長距離なら天敵だろう。

ただ、ボルテクス界のように歩けば悪魔に遭遇する物騒な場所では無い。ただ走るだけなら余裕で1位を取れるかもしれない。

 

障害物競走。雄英のヒーロー科前提のコースだと思えば、あくまで障害物限定なのだろう。パズルや迷宮があるわけじゃ無さそうだ。

第2競技は騎馬戦。最低2人以上でなければならない競技。ポイントの着いたハチマキを奪い合う形式。

第3競技はトーナメント戦。これは実技授業でやったのを一対一で行う形だ。辞退もできる。

辞退はサポート科ののように戦闘より技術披露が目的だと、サポートアイテムを破壊されたら以降の戦闘全部に影響が出る為、辞退せざるを得ないかららしい。相澤先生から教えて貰えた。

 

 

─リカバリーガールとオールマイトに『契約』をした後の事。

自分の個性が悪魔に連なる、霊的なモノを視認できると話した。嘘では無い。ウィル・オ・ウィスプが視認できるから。

緑谷出久の個性の中身に、複数人の何かがいる事。これはアナライズした時に無個性の項目に複数の個性の名前が重なった上にワンフォーオールの名前があったというのもある。

継承していくタイプの個性だろう。外付けハードと言うべきか。

オールマイトから彼に譲渡したという事。前任者から譲渡する意思を込めて体の1部(髪の毛でも構わない)を食べさせるという形との事。

……オールマイトは既婚者じゃないとのこと。ふとした切っ掛けで譲渡が行われないようにしたのだろうか?

 

とりあえず、緑谷出久には力を段階的に使っていくやり方だけは教えたので、後はオールマイトがどう教えるかが問題である。

何せ、次代に力というファイルを保存したハードを渡すような能力は、悪魔合体でスキルを合体先に覚えさせるのとは訳が違う。

力の使い方を覚えてからが本番になるが、その使い方を知るのが手探りだ。単純な身体強化だけならそこまで悩むことは無いだろう。自分が教えたやり方だけで済むからだ。

だが、そうではない。アレは個性というファイルがある。歴代継承者の個性のエッセンスがワンフォーオールにある。それは今のオールマイトが残り火だけでも強力な出力を持っているのが充分な証拠だ。

そしてオールマイトは無個性。単純な身体強化として運用した経験が蓄積されたという事になる。

緑谷出久が使う度に壊す訳だ。そういう使い方が最も多く蓄積された力だからだ。オールマイトは歴代の個性エッセンスを使えてないのは、使う必要が無いというのもあるが、1番は真の意味で無個性だったからだろう。

なので自然と使い方は肉体による殴打が多くなる訳だ。これは緑谷出久にも当てはまる。今まで使ってた方法をそのまま継承するなら、同じやり方が当てはまる方が都合が良い。

 

だが、そこで1番の問題がわかった。

パンクしかかっているのだ。個性の力と器が釣り合ってない、というのが正しいか。

なのでどこかしらで100%以上の出力で使って、感覚を掴ませる必要がある。使う出力が高ければ、それだけ肉体強化されるしパンクしなくなる。

そこで段階を踏めとアドバイスをした。さらに追い討ちでオールマイト直々に丁寧に教えて貰う事にする。

負荷が凄まじい、パワーレベリング。入学前に最低限使えるレベルに鍛えたのが功を奏したのか、そこそこ無茶なやり方が素通りしてしまうようになっている。これでは、自分では教えられない。こっちに合わせてしまうと、向こうが壊れてしまうからだ。

なので、経験者直々に教えるのが1番良い。解析系のスキルを覚えて貰いたいが、容量の問題が発生してしまったのだ。ガス抜きをして使える項目を1つ空けさせて貰わないといけない。

 

何れ、手元に置く為に。

 

 

 

 

選手入場で、プレゼントマイクの紹介口上が入る。異様に大きく、長めに紹介されたA組。

これはパフォーマンスであり、雄英の学生はヴィランを退けられるという事を示す意味があるのだろう。プレゼントマイクの私情も入ってるだろうが。

 

対して他の組の紹介は簡素なものだった。差をつけて煽って、A組に危機感を持たせる狙いだろうか。相澤先生に指摘されたプレゼントマイクには困ったモノだ。

出し抜くのも実力の内というのか、B組が体育祭の告知された日にA組を煽りに来たらしい。

挑発を習得無しでやるとは、中々……

 

全組が揃った。プレゼントマイクの紹介に不平不満が充満する。

選手宣誓で、壇上に立つ。

 

悪魔的に、刺激的にやろうか。

 

──宣誓。我々、1年生は入学してから時は経ってません。

ヴィランは待ってくれませんでした。あちらは老若男女問わずに襲ってきます。我々も例外ではありません。

ですが、我々雄英生は戦えました。戦うだけの力を持って、生きて帰ってきました。

偶々A組が狙われてただけで、実際はB組がその時でも同じ事が起きたでしょう。見学で普通科が行った場合も然り、サポート科も然り。

ヴィランに舐められたままで終わって良いのでしょうか?A組だけ勝ち抜いて良いんでしょうか?

否、生徒全員が上へと上がらなければならない。

A組だけが、ヴィランに対抗できて悔しい?それはそうだろう。だが、あれは間違いなく、我々A組は死を感じた。

それがいつ降りかかるか分からない。A組はそれをいち早く経験したに過ぎない。

油断して寝首を掻かれてはならない。学生だが、その前にヒーローを目指す存在である。

普通科もヒーローを目指せるし、サポート科はヒーローには無くてはならない存在だ。

誰も欠けてはならない。それを、我々雄英は示す必要がある。

観客を見てくれ。我々は、これから評価される。

萎びたままでは居られないだろう?なら、奮起しろ。やる気を無くすな。

噛み付きに来い。相手してやる。

 

受けて立つことを誓います。ありがとうございました。

 

 

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!」」」」」

 

 

普通科もサポート科も、全員を煽る。

どうせ相手するなら、少しでも手応えが欲しい。

格上に噛み付いてくる奴が、1番欲しい人材だからだ。育てがいがある。

ワンフォーオール。是非とも手元に置いておきたい能力だ。

だから──噛み付いてこいと、煽る。

 

「間薙」

 

クラスメイトの轟焦凍が話しかけてきた。

 

「俺は──」

──己の力をまともに使わないなら、階段すら登れない

 

個性:半冷半燃。右で凍らせて左で燃やす個性。両方を交互に使えば個性によるデメリットを帳消しできる、ワンフォーオールがなければ1番欲しい個性持ちの人材だ。

コンプレックスか何かで炎の方を使わないようだが、舐められたものだ。

これでは氷結耐性すらまともに貫けない。両方合わせて来なければ欠伸しながらでも相手できる程度でしかない。

競技の範囲だが、全力できてもらわなければ。失望させないで欲しいな、轟焦凍。

 

──つまらない相手でないようにしてくれ

「──っ」

 

勝てないなら、勝てないなりに戦え。少しでも手傷を負わせてみせろ。

できなければ──野垂れ死ぬだけだ。

 

凄い顔で睨みつけてくる爆豪を無視して、障害物競走の概要を確認する。

 

スタジアム外周4キロ。ぶっちゃけ持久走をやるようなものだ。

だがこれに個性使用可能という、無法なレースだ。それに加えて障害物である。鬼畜だが、個性ありきのレースである為、そういうものだと思っておこう。

 

 

位置に着く。周囲からは敵意、羨望、熱意、恐怖。様々な感情が渦巻く。目には見えない、マガツヒを感じる。心地よい。

 

『よーい──スタート!!』

 

アマラ深界でやった、マッカ稼ぎのコースターを思い出す。パワーがなければ物理的なダメージが入る。

足に力を込めて、飛ぶ。

ごぼう抜き、誰もいない先頭に躍り出る。トガには悪いが、先に行かせて貰う。どうせ追いついてくるだろう。

 

すぐ後ろで氷で身動きできない状態となっていた。轟焦凍が妨害しに来たのだろうが、間に合ってない。

空中には爆豪が飛んでいるが、陸上を走っている自分には追いついていない。

やはり障害物があっても基本的には平地だ。敵とエンカウントすることもないので、気持ち的に楽だ。

 

ロボット達はそもそも自分には追いつけない。正面にいたのはそのまま轢き潰す。

 

『1位の間薙!!ロボット達がローラーに潰されたかの様な状態だー!!』

『わかりやすい正面突破。障害物にすらなってないな』

 

第2の障害物、綱渡り。

ハリがあるので飛び込んで掴み、勢いで反対側まで飛んで行く。

『なんという力技……だが、効率的に動く事で無駄を無くしている。俺的には高評価だな』

『ぶっちぎりで1位を独占しているのはA組の間薙シン!!さぁ、次の障害物が待ってるぞ!!』

 

着地してそのまま走る。後続はまだ綱渡りまで来ていない。爆豪が凄まじい勢いで綱渡りを無視しているが、自分はもう第3障害物の真っ只中だ。

 

地雷原。威力こそ無いし殺傷力も無い。ただこれは普通にダメでは?

自分には一切効かない。地面を踏み締め、吹き飛ばない様に走る。

『うぉぉぉ!?間薙、地雷の爆発をものともしねぇ!!』

『硬いというか、強引だな。傷1つ無いのでこれが最善と判断している。というかこいつ強すぎないか?』

 

そのまま1着でゴール。すぐ後ろには地雷をかき集めて爆風で飛んできた緑谷出久。爆豪と轟と続いてゴールしてくる。

 

息も絶え絶えな3人は両手を膝に置いて呼吸している中、自分はその様子を見下ろす様に見ていた。

 

「遠い……あまりにも遠過ぎる」

 

緑谷出久の呟きは、冷えきった轟と汗腺が痛む爆豪には染みるだろう。特に轟は左を使うこと前提でなければ気にかける必要も無くなる。デメリットを自前で帳消しできるのが最大の強みだろうに。

ジャージを深めに着て身体を温めている轟の近くに行く。

 

──左を使え。己の持ち味を活かせ

「ぜってぇ使わねぇ」

──それで負けて笑い物だな

「黙れよ……」

──はっきり言わせてもらう。そのままでお前は父親の下位互換だ。差別化したければ左右使って、独自の方向に進むべきだ

「……」

──弱いままで居たいなら、雄英(ここ)に来るべきではなかったな。1位に噛みつきたければ、使え

 

──父親を鼻で笑えるようになれ。そうなって初めて、お前は強くなる

 

悪魔の誘い。複合個性の最大の強みであるデメリット打ち消し。これが見たいが為に発破をかける。

それに、マグマ・アクシスを伝授したいのだ。両手で放つ都合上、両手でそれぞれの別の属性を放つことになる。アレンジされた自分の技を見てみたい。

最悪マネカタにしても構わないが、面白くない。意志のある人間が、自分の意志で混沌王の技を使うのだ。これを楽しみにしない訳が無い。

ジャアクフロストの様に、何れ王の椅子に座れる器になる。轟焦凍、お前を徹底的に強くしてやる。

その前座で、折れてくれるなよ?

 

 

 

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