個性:人修羅   作:飲んだくれ閣下

9 / 16
第9話

 

 

後日、校門で群がっていたマスコミを無視して入ると、クラス委員長決めがあった。指名されたが、勿論断った。

指名した本人──飯田天哉に対して返した内容を分かりやすく言うと

 

1、短期間で決めるべきでは無い。せめて5月までは決めなくて良いのでは?

クラス個々人の性質が分からない内は辞めるべきだろう。指標が狂うと学級崩壊から除籍や永久剥奪の可能性が出てくる。慎重になるべきだ。

 

2、偏りが発生するし、自推をした生徒がそもそも委員長候補になることが問題。

そんな存在にクラスの舵を取らせるのは無謀だろう。履歴があるとしても、知っても知らずも関係なく、相応しい生徒がやるべきである。

 

3、指名した説明が強いから、という理由だと暴政と思われる内容にしかならない。

ヒーローが力で統率をするか?圧政しろ、ヴィランになれ、と言ってるに等しい。

 

この事を言ったら、飯田は肩を落としながら「君の言う事は最もだ。時期早々過ぎた上、身勝手な理由なのは間違いない。悪い事をした……申し訳ない」と謝罪された。

キチンと止まり、反省し謝罪する。彼は交渉が上手く感じる。

謝罪を受け取り、気にしてないと返す。

 

飯田天哉

個性:エンジン。燃料を使って速度を出す、純粋にフィジカルがモノを云う個性。

ギアを上げれば速度も増す、まるで車のような個性だ。体格も合わさって、高速で動く装甲車とも言えるだろう。

個性把握テストの時は初速が遅いのを自白していたが、それでも50mを3秒は充分速いだろう。助走が着いたら1秒で行けてる可能性がある。

……まっすぐで誠実な性格だ。仲間に入れるには、しっかりとした理由があれば良いだろう。そう簡単には折れないだろうから、そのままありのまま、自然に引き入れるのが良いだろう。

楽しみだ。

 

 

 

先生が提案を合理的と判断し、5月に委員長決めが持ち越される事となった。

 

トガ、切島、芦戸と一緒に食堂で昼食を摂っている時、構内のブザーが鳴る。

生徒達が慌てる様子を怪訝そうに眺める切島と芦戸は、疑問を口にする。

 

「マスコミが入ったんじゃねぇの?朝からずっといるし」

「正直、メーワクだよねぇ。まぁビッグニュースなんだろうけど」

 

その通りではある。

入学する生徒とその親族には伝わっているが、オールマイトが雄英で教鞭を打つという情報は、メディアを騒がせるのにもってこいな情報である。

校門を埋め尽くす程だと流石に迷惑な為、警察が少し出張るとすぐ散る有象無象ではあるが、生徒にとってはそうでは無い。

純粋に邪魔だが、スキャンダルの対象にしてへばりつくゴミのような存在もいる。

最悪のリスク。ましては相手は大人だ。自分みたいな存在や、トガのように親や周辺の大人による迫害があった存在からしたら、単純な大人とは言えど、充分恐怖を感じるだろう。

……最悪、自分が消してやっても良いだろう。だが、それをやる程の価値と脅威が無い。だが、野放しにする訳にはいかない。

 

この混乱であれば、切島達以外の生徒がこっちを向いている事は無いだろう。

切島達に、紙風船で全体を黙らせる事を伝え、耳を塞がせる。

 

 

食堂全体に、破裂したような音が響く。

急に静まり返った食堂で、たまたま食事をしていた飯田が起立し、声を張り上げた。

 

「大丈夫!!マスコミが敷地内に入っただけです!!先生達が対応し始めたので、慌てずに行動しましょう!!」

 

飯田の声が届いたのか、生徒達の間で安心の声が上がり始め、各々食事に戻り、昼休みの喧騒が食堂に戻りだした。

 

切島達の肩を叩き、耳塞ぎを止めさせる。

 

「飯田か?」

「だねぇ?」

 

黙々とパスタを食べていたトガは呑気に返す。トガは耳を塞がなかったのだ。

デコピンを食らわせておく。痛がるトガに耳は大丈夫かと言うと、大丈夫だし利いていない、と返ってきた。耳だけ変身させたとかではなく、普通に問題ないらしい。

 

食べ終わった後、教室に戻る前に飯田が来た。

 

「君が紙風船を破裂させてくれたんだな。助かったよ、おかげで声が届いた」

──気にしなくて良い。友人達との食事を楽しんでる時に、あれだけ騒がれるのは迷惑だから

「そう言って貰えると助かる。じゃ、また教室で」

 

そう言い、緑谷達と一緒に去っていった。どうやら、向こうも集まって昼食を摂っていたらしい。

 

それ以降、何事もなく授業は進み、1日が終わった。

 

 

 

嘘の災害や事故ルーム

通称USJで訓練をするとの事。その名称大丈夫なんだろうか……?

 

バスの中で爆豪が何やら騒いでいるが、気にせずバスに揺られていく。

暫くすると、巨大なドーム状の建物にたどり着く。中にはさらにドームがあり、様々な災害現場が再現されているとの事。

小ドーム以外の場所も災害現場が再現されており、雪崩や洪水、地震による倒壊や水難、森林による遭難まである。至れり尽くせり、との事だ。

 

中に入ると、13号と呼ばれるヒーローがおり、そこでヒーローの心得を説かれる。

 

「私の個性は簡単に人を殺せてしまいます。ですが、上手く調節すれば救助に於いて有用な物となります。皆さん、個性を上手くコントロールできるように、共に訓練していきましょう!」

 

ヒーロー名、13号

個性:ブラックホール。……なるほど、個性名だけでも凄まじい物を使えるようだ。火力は申し分無い、というよりは相手を消滅させてるから火力という表現より、殲滅力の方が正しいか。

本人は自制している為、コントロールが上手い。小型を相手に投げつけるだけで一撃死が狙えるのは、本人のスペック関係なく強力に違いない。

どのヒーローよりも優先的に味方に引き入れたいが、敵になった場合が1番困る相手だ。

流石に仲魔を消されては困るので、敵対したら真っ先に狙う事にしよう。

こっちに付くなら歓迎するが。

 

にしても雰囲気がおかしい気がする。

まるで、ボスがいる部屋のような気がしてならない。この場は危険な感じがする。

誰かが犠牲になる可能性もあるが、いずれ仲間に引き込む候補を失うのは困る。現地の仲間がいれば居るほど、実力者になりうる卵であるなら尚更だ。

 

先生になにかおかしいことを伝えると、先生も違和感がある事を察知したようで、13号に雄英に連絡するように指示する。

 

「相澤先生、電波が遮断されています。これは……」

「違いない。……襲撃だ」

 

警戒。先生の言葉を聞いて、生徒の何人かが構えをとる。

自分とトガは自然体だ。追う側だった事も相まって、冷静に周囲を確認する。

入口側から黒い霧を纏った存在と、手のようなアクセサリ塗れの存在が突如現れた。

 

「ヒーローの卵の皆様、ごきげんよう。我々はヴィラン連合と申します」

 

やけにて礼儀正しい霧の男の挨拶によって、相手がヴィランである事を全員が理解した。

すると、何も無い所に黒いモヤが現れ、そこからゴロツキのような者達がゾロゾロ出てくる。

 

「オールマイトがいねぇじゃねぇか!!」

 

手だらけの男が叫び、霧の男に文句を垂れている。

 

「まぁいいや。ヒーローの卵を潰せば、出てくるよなぁ!!」

 

合図によってゴロツキ達がこっちに向かってくる。

それを先生が首に巻いていたマフラーで拘束したり殴って気絶させて行く。

13号も同様に格闘で無力化していくが、個性の使用を制限しているのか芳しくない。

他のクラスメイトもそれぞれ個性を用いて抵抗していく。ただのゴロツキでは相手にならなず、段々と無力化していく。

 

「散らせ」

 

黒い霧に包まれかけた為、後ろに退いて回避する。

他の奴らは……全員飛ばされたようだ。トガも巻き込まれて飛ばされたか。

 

いるのは13号、相澤先生、自分。相手は霧のヴィランに手のヴィラン。数では勝ってる。勝ってはいるが──

 

「行け、脳無」

 

そうは問屋が許さない、か。

脳みそがむき出しの、いかにも化け物と言わんばかりの、筋骨隆々の何かが霧から現れた。

 

13号が弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

声を上げる暇すらなくやられたようだ。

死んだら死んだで仕方ないが、生きてはいるようだ。個性による回復だと言い張れば言い訳が効く。

メディアラハンを使い、完治させる。気絶から回復はしてないが、これで問題ないだろう。

相澤先生も戦っているが、単純にパワー負けしている。殴打を受けて半分気絶している。

 

──仕方ない。こちらの楽しみが無くなるのはいただけない

 

スカウト対象が死んでは元も子もない。選り好みはしたいが、かと言って交渉材料が減るのはナンセンス。ただでさえプロヒーローからも引き抜きがしたいのだ。その足がかりになるのに必要だからだ。

 

─死亡遊戯

 

脳無とやらを、相澤先生を掴んでいた腕ごと胴体を真っ二つにした。

縦に真っ二つにしないのは、少し試したいことがあるからである。弱点の頭部がモロに見えてるので、あえて避けて攻撃する。

 

離された相澤先生を掴んでメディアラハンを使う。スタンから復帰できないのか、そのまま体を支えて13号の元まで移動して降ろす。

 

「すまない、間薙…」

──時間稼ぎとか、色々やってみます

 

気絶したのを確認した。つまり──

 

──どうやって料理してみようか

 

ジャベリンレイン

再生して襲いかかってきたのがわかっていたなら、迎撃する。頭部以外が穴だらけになったが、少しのクールタイムを挟んで即座に再生されていく。

動かれる前にアナライズ。……ごちゃ混ぜになっていて、得られる情報が整理できない。

確認できただけで、超再生、ショック吸収とは見えた。物理耐性とはそれなりに厄介だが、ジャベリンレインが貫通したので、こちらからしたら有ってもないようなものだが。

だが、確定として複数の個性と、死体である事だ。これではマネカタの方がマシまである。

邪教の館で合成失敗でできた悪魔の方がマシかもしれない。こいつはこれ以上、強化できないだろう。

 

支配する価値無し。新月時のウィル・オ・ウィスプ以下じゃあしょうがない。

外部に直接行ったと思われる飯田が応援を呼ぶ前に──処理しよう。

 

殴打を正面から受け、デスカウンターで顎を殴り抜く。続け様にアイアンクロウで頭以外を3つに切り裂く。

 

再生しながら飛び込んで来たので、ヒートウェーブで両足を破壊する。その場で倒れ、もがくのを見下ろす。

デスカウンターが効いたのか、動きがぎこちない感じがする。脳にダメージが入ったらしい。

ヒーローの理であるが、これはもう死体である、死体蹴りは人間としての倫理だとは思うが、楽にしてやる慈悲も人間としての倫理だ。

 

頭を踏み潰す。痙攣し、そのまま動かなくなった。

 

黒い霧と手だらけのアクセサリを付けてた奴は、いつの間にか姿を消していた。

 

 

 

 

 

──

 

「先生、なんだよあのバケモンは!?」

 

死柄木弔は、脳無を圧倒した存在を目の当たりにして、そそくさと逃げて来た。

 

『……これは、脳無をぶつけて時間稼がせる方が良いね』

 

判断に困るレベル。そう言うと聞こえ映えは良いかもしれないが、まだ時間稼ぎができるだけマシと割り切らせる事にしようと、弔に言ったのだった。

 

『間薙シン、か。厄介な存在だ』

 

AFOは、騒いでいる弔に聞こえないように呟いた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。