ソードアートオンライン 白い流星   作:八葉と黒神の剣聖

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猛炎の将

「よし。じゃあ行きますか母さん」

「えぇ。目指せ世界樹ね」

 

 

 次の日の夕方。 

 俺と母さんは世界樹に向けて出発することになった。 

 ちなみに父さんはシルフ領近くにいて、運よくキリトとリーファに遭遇し、彼らと一緒に世界樹に向かうことになり中央都市アルンで合流することに。

 あと聞いた話では、キリトの娘?のユイがナビゲーションピクシー扱いで一緒にいるとか。

 メンタルカウンセリングシステム№1と同じ名前な気がするが気のせいだろう。

 

 

「にしても…母さんの服装、森の狩人みたいんだ」

「似合うでしょ?」

 

 

 異世界に出てくる森の狩人のような服装の母さん。

 シルフ…というよりエルフみたいだ。

 

 

「ユキも似合うわよ。ユキハが選んだって聞いたわ。いい趣味してる」

「ありがと。それじゃ行こう」

 

 

 空高く飛びあがり、まずは中間地点にある街を目指す。 

 やや不慣れな母さんでもついて来れるスピードで向かっていると、いきなりメッセージが届いた。

 

 

「あら?メッセージ?」

「うん。アリシャ…じゃないな。あの人は今頃同盟の調印式に行っているからそれ以外…ん?リーファ?」

「その子って確か…あの人と一緒に行動している子?」

「そう。珍しいな……」

 

 

 

 ウインドウを開いてメッセージを確認する。

 メッセージは一文だけで、内容は……ヤバイ。

 ちょっと大変なことになった。

 どうしよう…これは…放っておけないぞ。

 

 

「…ユキ?どうかした」

「……その。ちょっと問題が。でも…うーん」

 

 

 どうしたものか…リーファのメッセージが本当なら、今すぐにでも行かないといけない。 

 だけど、リーファと一緒に父さんとキリトもいるなら心配いらないが、相手が相手だし……。

 

 

「そうならないようにアリシャとサクヤが上手い事していたはず。となると、どっちかの陣営に内通者がいるのか」

「……(ふむ…。どうやら込み入った内容みたいね)」

「しかし……どうしたものか」

「……直人」

「っ…はい」

 

 

 後ろから母さんに力強い声で呼ばれ、思わずピシッとしてしまう。

 いかん、この声はあまり良くない。

 昔からウジウジしていたり、隠し事とかを時に、決まってこの強い声で怒られたものだ。

 ということは…怒ってる?

 

 

「何があったか言いなさい」

「……はい。実は今日、ケットシーとシルフが世界樹攻略の同盟を正式に調印する日で。両領主が顔を合わせるのですが、どうやら内通者がいたようで、サラマンダーの軍勢が調印式を襲うみたい」

「……それを何ですぐに言わないの?場所は?」

「えっと。ここからすぐ西に滝がある。5分ぐらいで着くかな」

「5分……で西ね。分かったわ。行きましょう。領主様がやられるとまずいでしょう?」

「……そうだな。ありがとう。ちょっとだけ寄り道する」

 

 

 母さんの腕を掴んで調印式の場所に向けて全力で向かう。 

 きっと父さん達も向かっているはずだ。

 多分メッセージも俺達が向かうと読んで送らせたんだと思うから。

 

 

「見えた。あそこだ」

「かなりいるわね。あの赤いのがサラマンダー?」

「そうだ。それに……」

 

 

 サラマンダーの軍隊の先頭にいるのはユージーン。

 猛炎の将と呼ばれるプレイヤーだ。

 確か領主の弟だったか?

 それよりも、アリシャ達と合流しないと。

 

 

「アリシャ!サクヤ!」

「ユキト君!?」

「何で君が!?」

 

 

 俺の姿を見て驚きを隠せない二人。

 周りにいたプレイヤーも驚いていたが、気にすることなく二人の前に降りて事情を説明する。

 リーファからメッセージを受け取ったこと。

 彼女たちもこちらに向かっていること。

 あと一緒にいるのは俺の母親だということを。

 

 

「そうか。それで急いで来てくれたのか」

「でもリーファちゃんは来てないヨ?」

「そうなのか(父さんが先にログインしていたから、結構先に進んでいたのか)」

 

 

 となると、合流するのにもう少し時間がかかるのか。

 だけどユージーンの相手はかなり骨が折れるぞ。

 初めて相まみえるが、相当手ごわそうだぞ。

 

 

「どうするユキト君。あれの相手出来るかナ?」

「やってみないと分からん。とりあえず下がってろ」

 

 

 ゆっくりと浮き上がりユージーンの前に移動する。

 彼は口角を少し吊り上げつつ、口を開いた。

 

 

白い流星(ホワイトスター)…噂に聞いていたが、本当に小さいんだな」

「見た目で惑わされるなよ。弱そうな奴ほど牙は鋭く強烈だ」

「ふっ…見たら分かる。全く隙が無いからな」

「鍛えてるからな。で?調印式を邪魔しに来たのか?」

 

 

 やや圧をかけつつ聞く。

 素直に答えてくれると嬉しいが、最悪、力づくで聞くことになるかもしれん。

 アリシャをやられるわけにはいかないから。

 

 

「そうだとしたらどうする?」

「お前を斬らないといけない。あぁ、アリシャ達を売ったやつもな」

 

 

 光焔の剣に手を置く。

 ユージーンは…動かないか。

 困ったな、奴の狙いが読めない。

 領主の首であるのは分かるが…他にもあるのか?

 

 

「どうする?アリシャ達の首が欲しいなら、まずは俺を倒してもらおうか?」

「ほぅ…願ってもない言葉だな。お前さえ消えれば奴らの首は容易くとれる」

「言ってくれるね。なら―――っ!」

「ん?」

 

 

 後方から何かが接近してくる。

 その何かはサクヤ達の前に勢いよくおり、土煙が巻き起こる。

 一体なんだと思いつつ土煙が晴れるのを待つと、中から親父とリーファ、そして黒のスプリガンが姿を現す。

 

 

「父さん?ちょっと遅くないか?」

「すまないねユキト。これでも全力で飛んで来たんだが」

「遅いわよ貴方!」

 

 

 親父の背中を叩く母さん。

 その様子を苦笑いで見ていた黒のスプリガン―――あれがキリトか。

 

 

「合流出来てよかったですね先生。ですが―――」

「あぁ。ここは息子に任せよう」

「え?待ってください先生。道中で作戦をかんがえましたよね?」

「ん?そうだけど、それは僕たちが先についた場合。彼の方が早かったら手を出さない約束だろう?」

「……(どういう状況?)」

 

 

 

 いまいち話が見えてこないが、首を突っ込んでこないところを見ると、放って置いてよさそうだ。

 作戦が気になるが、この状況で打てる手は限られてるだろう。

 それがユージーン通じるかは置いておき。

 

 

「そうことよキリト君。ここは私の息子に任せなさい。これはケットシーとシルフの問題だから」

「大丈夫。そう簡単にやれないさ。そうだよね?ケットシーの領主さん?」

 

 

 親父がアリシャに聞くと、アリシャは自信満々の笑みで親指を立てる。

 隣のサクヤもうんうんと頷いてるが、リーファはやや心配そうな顔を浮かべていて、時折俺の方を見てくる。

 それはキリトも同じで、とても心配そうな顔を浮かべていた。

 

 

「本当に大丈夫なのサクヤ?相手はユージーン将軍だよ?いくらユキトさんが強いからって」

「大丈夫だヨ。だから…頼んだよ白い流星(ホワイトスター)

「了解。頼まれた」

 

 

 左手で光焔の剣を抜刀し、刀身と装甲から淡い光が放出される。

 その光に、この場にいるプレイヤーが釘付けになる中、ユージーンも背中に担いでいた両手剣をゆっくりと抜く。

 その剣に見覚えがあったし、一時期噂になっていた。

 伝説級の武器を猛炎の将が手に入れたと。

 確か名前は―――魔剣グラム。

 英雄シグルドが使用した龍殺しの剣。

 

 

「噂は本当か」

「ふっ…がっかりさせるなよ」

 

 

 いきなり突っ込んでくるユージーン。

 そのままグラムを上段に構えた。

 その体勢から放ってくるのは袈裟斬り―――馬鹿正直に正面から来るか普通?

 少し気になるが、ここは俺も正面から受け止めよう。

 

 

「っ―――」

 

 

 光焔の剣を正面に構えてグラムを防ごうとしたが、剣どうしが衝突する瞬間、グラムの刀身が消失し、光焔の剣をすり抜けた。

 

 

「なっ―――」

 

 

 グラムが目の間に迫ってくる。

 咄嗟に羽を消してギリギリで回避しつつ地面に降りる。

 それを見たユージーンは、『大したものだ』と言わんばかりの笑みを浮かべている。

 

 成程…馬鹿正直に正面から来たのはそういうことね。

 全く、面倒なスキルを持った剣だな。

 いや…それを言うなら俺の剣にもいえるか。

 

 

「さぁ…どうする!?」

 

 

 再びユージーンが間合いを詰めてくる。

 今度は上段からの袈裟斬りではなく、連続で剣戟を放ってくる。

 本当なら一撃で弾きたいが、剣で防御出来ない以上は避けるしかない。

 なので一旦空に退避してから、ユージーンの連撃を紙一重でかわし続ける。

 

 

「ええい。ちょこまかとっ!」

「そう怒るな。防御出来ないこっちの身にもなってくれ」

 

 

 ユージーンの連撃を避けながらその時を伺う。

 このまま避け続ければ必ず出てくるボロを。

 問題はいつ見せてくれるかだが、ユージーンの顔を見ていると思い他早いかもしれない。

 

 

「何で当たらん!いい加減に―――」

「…!(ここだ!)」

 

 

 グラムを振り下ろそうと腕を上げようとするユージーン。

 次の一撃は袈裟斬りと読み、スピードを上げて懐に入り、彼が腕を上げると同時に右足を掴む。

 

 

「何っ!?」

「さぁ行くぞ!」

  

 

 そのまま片手でユージーンを振り回しつつ地面に向けて急降下し、勢いよく地面に叩きつける。

 

 

「がはっ!」

 

 

 かなりのダメージが入ったのか、痛そうな声を上げるユージーン。

 落下速度と遠心力が加わった一撃だ。

 結構堪えるだろう。

 

 

「もういっちょ!」

 

 

 ユージーンを持ち上げて再び地面に叩きつける。

 2回3回と続けていると、ユージーンの周りに炎が発生したのは見えたので、近くの岩山に全力で投げ飛ばす。

 ユージーンはそのまま岩山に直撃するが、その直前に炎の障壁を展開したので大ダメージは免れたものの、体力は少ないのか、かなりきつそうだった。

 

 

「勝負はここからだ!」

「…!(スピードが上がった…)」

 

 

 さっきよりも速い速度で接近し、その速度を利用してグラムを振り下ろすが、初手とはやや構えが小さい。

 となると二撃目があるな。

 袈裟斬りからの二撃目となると、大体の予想は着く。

 

 

「喰らえっ!」

「っと!」

 

 

 左に回避と同時に、グラムの刀身が横を向き、袈裟斬りから薙ぎ払いに変わるが、しゃがんで回避しつつ、ユージーンの顎に強烈なアッパーを打ち込む。 

 痛々しい音を響かせながらユージーンの上体は大きく後ろに反れ、とても大きな隙が生まれる。

 

 

「じゃあ―――とどめ!」

 

 

 光焔の剣を両手で持ち、ソードスキルであるアバランジュと同じモーションで一刀両断し、ユージーンの体は真っ二つにする。

 

 

「馬鹿な……」

 

 

 そのままユージーンの体は真紅の炎となり、戦闘不能となる。

 そしてサラマンダーの軍隊からは称賛の声が大きく上がった。

 

 

「ふぅ…なかなかいい戦いだった。だけどもう少しグラムに頼らない戦い方を身に着けないとな」

 

 

 全身の力を抜くと、光焔の剣の光は粒子となって四散。

 HP表示の横にあった数字も0になる。

 やっぱりあのスキルはそういう仕様なのか。

 となればやっぱり使いどころが限られるな。

 

 

「っと。アレを回収してサクヤ達のもとに戻るか」

 

 

 ユージーンを回収した後にサクヤの元に戻る。

 さてどうするかと考えていると、サクヤは彼を蘇生し、話をすることに。

 俺も詳しいことを聞きたいが、それよりも親父の方が大切だ。

 ユージーンの事はサクヤとアリシャに任せ、親父達の所に向かう。

 

 

「ったく。息子の扱い酷くないか?リーファにメッセージを送らせたのも父さんだろ」

「君が彼女と知り合いだと聞いてね。加えて調印式の事も聞き、その時刻が君のログイン時刻と重なっていたから」

「だろうと思ったよ…んでアイツがキリト?」

「うん。SAOをクリアした英雄―――僕たちの方が早ければ、彼がユージーン将軍と戦くことになっただろうね」

「ふーん……(作戦が気になるが、どう転がっても彼と戦うのは避けられないのか)」

 

 

 

 親父の考えてたことと、あの場で出来る手を考えると、どのみちユージーンと戦うことは避けられない。

 まぁ先生を倒したならユージーンにも勝てるとは思うが、結構きついだろうな。

 魔剣グラムのエセリアルシフトはめんどくさいにもほどがある。

 防御力無視とかならともかく、防御不可はダメだろ。

 

 

「しかしユキ。ちゃんと稽古してたのね。読みが健在で驚いたわ」

「……まぁ、手に届く範囲内ぐらいは守りたいさ。現実でも仮想でもね」

「そうか。なら頼りにさせてもらおうよ。さぁ行こうか」

「…了解」

 

 

 丁度アリシャ達も話が終わったようで、準備すれば世界樹攻略を手伝ってくれるらしい。(その軍事金をキリトの手持ちをほぼ全部出していた)

 なので俺たちはアルンで待つことになり、一足先に向かうことになったのっだが、その道中。

 キリトの視線をずっと感じる。

 聞きたいことがあれば聞けばいいのだが、そんな気配は感じず、親父達と話をして気づかないふりをしているうちにアルン手前の街に到着する。

 

 

「うっし到着。んじゃまた明日なキリト君。リーファ。攻略の時はよろしく頼む」

「はい。また明日ですね。今日はお疲れ様でした」

「あぁ。また」

 

 

 二人と別れ、俺たちは近くの宿に入ってからログアウトするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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