ソードアートオンライン 白い流星   作:八葉と黒神の剣聖

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間章
悩む青年


 早めの夏休みとなった7月上旬。

 最近は講義をみっちりと詰め込んだので10月下旬ぐらいまでゆっくりできるようになった。

 ので、この一週間は、貯めていたレポートや、ラボに退出する研究資料を片付けつつ両親の仕事を手伝い、それと同時進行で、エイに頼まれたあることをしている。 

 

 そのあることというのは、現実世界でも活動可能な体…いわゆるロボットの作成である。

 丁度親父の会社で最新の介護ロボットの開発もしていたし、重村ラボのOBが面白いものを作っていたので、諸々参考にしつつ、手の平サイズの小型ロボットを試作したのだが、エイがALOのような動きをしたので、関節は悲鳴をあげ、バッテリーは速攻で尽き、四肢が捥げるという悲惨なことになった。

 その光景を見てしばらく立ち直れなかったが、キリトが面白いものを作っていてその相談を受けたのをきっかけに何とか立ち直れた。

  

 だが、その後の試作の改良がなかなか進まず、現在苦悩中であった。

 

 

「うーん。エイがALOのような動きをしなかったらいいのだが…。だとしても、走るとかの動作を考えると関節は強化しないと…だががっちり固めると動きが硬くなるし。なんかいい素材ないかな……」

 

 

 模型のようにプラスチックも考えたが、高いところから落ちると割れる可能性がある。

 なので、ある程度伸縮して強度もあり、軽い素材がないか探している。

 一番悩んでいるのが関節部分なので、せめてそこだけでも、何とかしたいのだが。

 

 

「うーん。なんかないかなぁ…。俺のGGOで作ったGNソード(ガンソード)みたいに、宇宙船の装甲とか手に入れば……ん?装甲?」

 

 

 装甲と言えば、確か少し前に親父が買ったバイクのフレームが珍しいものだったな。

 1000ccのバイクなのに重量が180キロでものすごく軽く感じたのを覚えている。

 えっと…何を使っているんだったかな…。

 

 記憶を頼りに思い出そうとしていると、香蓮が紅茶を淹れて、工具箱の横においてくれる。

 一口飲み、再び天井を見上げていると、香蓮が隣に座り、心配そうに声をかけてくる。

 

 

「考え事?」

「うん。エイのボディをどうしようかと。プラスチックだと割れるし、金属だと重いし。四肢が捥げたのも強度不足と柔軟不足。いいのないかな?」

「うーん」

 

 

 試しに聞いてみると、顎に手を置いて考え始める香蓮。

 大学とかでいい話を聞いていたらラッキーだ。 

 でも香蓮は、大学でサークルとか参加していないしバイトもしてない(そもそも香蓮パパが許可を出していない)。

 あと友達も少ない。

 北海道にいる美優やアスナ達とは定期的に会っているようだが、他はあまり聞かない。

 香蓮なりに頑張っているけど、あともう一押し足りないようだ。

 

 

「カーボン…とか」

「成程、カーボン……カーボンかぁ……」

「…?」

 

 

 あれ…結構高くなかったっけ。

 自動車部品とかに使われてるから強度は申し分ないし、軽量化も出来る。

 フルカーボンとかにしたら、結構な値段になりそう。 

 それに予備部品とか含めると……あぁ、財布の中身が空になる。

 

 

「財布がきついなぁ…」

「そっか。仕送りなかったっけ。確か菊岡さんの仕事とおじさんの仕事でやりくりしてたね。でも…GGOで荒稼ぎしてなかった?このゆ…指輪だって」

 

 

 頬を赤く染めながら、左手の薬指にはめられている指輪に触れる香蓮。

 あの指輪は、GGOに導入されているシステムを利用して買ったもの。

 そのシステムというのは、リアルマネーとゲーム内マネーを還元出来るシステムで、そのシステムを利用して荒稼ぎしているプレイヤーや、プロプレイヤーがいるほど。

 

 

「確かに荒稼ぎしているときもあるけど、システムは利用していない。臨時出費の時とか。それに…家計簿みてるだろ」

「それはそうだけど、時々凄い額が振り込まれてるから心配。怪しいバイトしてないか」

「してないさ。きちんとやり取りをした上での報酬だし、振り込まれた後は親父の口座行きだし」

 

 

 怪しいバイトではないことを伝えているが、一緒に暮らしている以上は心配らしい。

 あまり心配をかけると、こってりと搾り取られそうだ。

 怒ると無言でニコニコして口聞いてくれないし。

 ……菊岡からの仕事辞めるのも手か。

 収入源はあるわけだし。

 

 

「香蓮。怪しいバイト件、怒ってる?」

「うん。菊岡さんに怒ってる。例えば……」

 

 

 マグカップを置いてから、香蓮は被さるように押し倒し、須郷さんに斬られた左頬に触れてくる。

 この傷は結局消えず、薄く残ることになった。

 香蓮にも、じっちゃんにも、美優にも色々と言われたのを覚えている。

 

 

「この頬もそうだし、桐ケ谷君が斬られたのもそうだけど、菊岡さんはちょっと直人達に頼りすぎ。自分でやったら良いし、部下に専門の人を用意してもらったら良い」

「全くその通りだな。危ないと感じたら断るよ」

「そうしてほしい。貴方が傷つくのは嫌だから」

 

 

 胸に顔を埋める香蓮。

 俺は彼女の頭を優しく撫でて抱き締めると、リビングの扉が開いて、制服姿の木綿季が、やや疲れた様子で入ってくる。

 

 

「ただいま~。やっとテスト終わったよ。英語と数学が難しくて……あ」

「「……」」

 

 

 とても申し訳なさそうな顔を浮かべる木綿季だが、香蓮は軽く左頬にキスをしてから離れて、テストの内容を聞く。

 木綿季も分からない部分を香蓮に聞くと、香蓮は俺に視線を向けてニコッと微笑む。

 その微笑みの理由がすぐに分かったので、俺は木綿季に『お疲れ様』と言ってから自室に戻り、GGOにダイブする。

 ダイブ先は小さな部屋で、この部屋はSBCグロッケン内にある雪風一家のアジトである。

 

 

「ふぅ…さて。丁度いいしアイツら探すか」

 

 

 部屋を出てリビングに向かうと、そこでは私服姿の母さんとエイが、仕事の書類を確認し合っているところだった。

 声をかけると、今度来る七星博士との対談で必要な物らしい。

 メインは親父だが、内容が一部母さんの方も含まれていて、急ぎで作成しているとのこと。

 

 

「いきなりで焦ったわ。しかもあの子の過密スケジュールに合わせないといけないし」

「成程。確かその子ってレイン…虹架の妹だっけ?」

「そうだマスター。聞けば子供の頃に両親が離婚して、それきりらしい」

「そうか。まぁ人の家庭に首を突っ込むのはアレだが…」

 

 

 どっかで妹と会いたい、という話は彼女から聞いていて、親父がSAOから帰って来てから七星と仕事の縁が出来たので、予定を合わせようとしているがなかなか難しい。

 

 

「ところで、マスターはどうしてGGOに?そろそろユウキが帰ってくるだろう?」

「さっき帰って来て香蓮に追い出さられた」

「怒らせたのか?また口を聞いてくれないぞ」

「違うって。ユウキがテストで分からなかった事を香蓮に聞いたんだ。それよりエイ。ピトフーイとMがログインしていないか調べてくれ」

「了解だ」

 

 

 エイは瞼を閉じて調べると、すぐに場所を特定する。

 あの二人は、俺が愛用している狙撃銃のPGMウルティマラティオを手に入れた遺跡近くにいるらしい。

 

 

「何でまたあの場所なんだ?」

「もしかすると、バリエーションの一つであるヘカートⅡがドロップするかもしれないと思っているかもしれない。マスターのウルティマラティオ狙いもあり得るが」

 

 

 ヘカートⅡか。

 俺のウルティマラティオのバリエーションの一つであるボルトアクション式の対物ライフル。

 今はほとんど見ない対物ライフルの一つで、重いし取り扱いが難しいが威力がとんでもない代物。

 対して俺のウルティマラティオは、ストックを折り畳めて持ち運びがしやすく、雰囲気もガラッと変わる。

 ガスボルトアクションなので少し力がいるが、ALOからコンバートをしているので気にならないし、一定の距離なら片手でも扱える。

 

 

「ま、とりあえず行ってみる」

「なら私も行こう。心配していないが、あのエリアはプレイヤーが多い。君がその銃を手に入れてからね」

「ウルティマラティオはレア武器…入手情報が上がれば躍起になるプレイヤーが多いわ。というわけなので私も行こうかしら。準備してくるわね」

 

 

 メニューを閉じて部屋に入る母さんを見送ると、エイも遅れて自室に戻り、準備を済ませて戻ってくる。

 母さんは身軽な服装で、エイはぴちっとしたスーツを着ている。

 ちなみに俺は、ALOと同じ白に統一した軍服の上に、ちょっと特殊なマントを纏っている。

 

 

「じゃあ行こうか。転移門から向かおう」

「えぇ。今日は暴れるわよ」

「気合入ってるなマリン。では私はスカイに代わって支援をしよう」

 

 

 仕事で色々溜まっているのか、気合が入っている母さん。 

 これは俺とエイが支援に徹した方が…まて。

 このメンバーって、どう考えても俺が前衛だよね。

 母さんはスナイパーで、俺はオールラウンダーで、エイはサポート寄りのオールラウンダー。

 支援専門の親父と、中近距離でかく乱する姉貴がいないってことは、自然と前衛になるじゃん。

 

 

「よし。行くわよ二人共」

「了解。今日は楽しもうか」

「あぁ。全力で支援させてもらおう」

 

 

 ピトフーイとMがいる場所へと向かうのであった。

 

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