「じゃあ行ってくるね直人」
「行ってきます。直人兄」
荷物を持った香蓮と木綿季が家を出る。
今日から1週間、二人は北海道に帰省兼旅行に向かう。
なので、俺はしばらく一人である。
まぁ…今更一人でも大丈夫だが、大好きな人がいないのはとても寂しい。
こういう時は、仮想世界で思いっきり遊ぼう。
「問題はどっちにログインをするかだが……」
ALOでもGGOでも構わないのだが、今日はALOにしようかな。
近頃はGGOにこもりっきりだし、たまには妖精の世界もいいだろう。
「エイ。ALOに行くがどうする?」
『もちろん同行する。丁度やりたいこともあってね』
「了解。んじゃ第一層の始まりの街に集合だ」
『分かった。何人か声をかけておく』
集合場所を決めてからALOにログインし、始まりの街で待っていると、エイと一緒に、ピナを連れたシリカとリズベットが来る。
軽く挨拶をすると、エイは第五層の迷宮区画にある洞窟に用があるらしく、準備を整えてから迷宮区画に移動する。
「では宜しく頼む皆」
「任せてくださいエイさん」
「こちらこそ宜しくねエイさん」
「案内は任せるよ」
いざ目的の場所に向かう。
その道中で、エネミーを倒しつつ、仲良く話しているエイとシリカ達。
仲が良いのを見ると、俺の知らない所で交流があるのか。
もしかするとユイ絡みかも知らないが、個人的には嬉しい。
「へぇ。今日から香蓮さん、北海道に帰省してるんだ」
「確か、妹さんと帰っているらしいですね」
「あぁ。だからマスターは暫く一人。寂しい思いをしないように私がサポートしないといけない」
「よけ-なお世話だよ」
と、エイに突っ込む。
俺としては、むしろ香蓮の方が心配になってくる。
しかし……エイの奴、また成長したみたいだな。
少し前まで、寂しい思いをしないように、何て言わなかったのに。
「で?その洞窟で、何が手に入る?」
「まだ言ってなかったな。洞窟の奥に行くと、ゴーレムが大量発生するのだが、一定数倒すと、銀色のゴーレムが出てくる。そのゴーレムから落ちる素材が目当てだ」
「そういえばそんな噂聞いたような……」
「私も聞いたことありますよ」
「……へぇ」
俺は聞いたことがないので、少し興味が湧く。
一定数同じエネミーを倒せば、レアエネミーが姿を現すのはよくあること。
こういうエネミーからは、かなり良い素材が落ちる物だ。
「となると長期戦か」
「ピナの支援もあるので、ある程度は長く戦えますよ」
「私も前線でのヒーラがメインだ。マスター含めて皆をサポートする」
「だとすると、私とユキトさんで前衛ですね」
「そうなるな。早めに終わらせよう」
襲ってくるエネミーを倒しながら目的地の洞窟にむかう。
洞窟に到着してから、中に入って一番奥まで進むと、エイの言った通り、かなりの数のゴーレムがいた。
数は10体ほどだが、エイの話からすると、もっと大量に出てくるのだろう。
「さーて。気合入れていくわよシリカ!」
「はい!頑張りましょう!」
「……」
「どうかしたかマスター」
気合が入っているリズベットとシリカだが、俺はふと気になった。
ゴーレムを倒すことで現れる銀色のゴーレム。
そのゴーレムは、何体倒せば出てくるのか。
それがとても気になったので聞いてみることに。
「エイ。
「あぁ。
「「……え?」」
エイの言葉に固まって振り返るリズベット達。
うん、エイが細かい数を言わなかったので気になっていたが、一番確実な数字を言ったな。
「ということは、出現率0,5%か……。頑張るぞ二人共」
「頑張るぞって。ちょっと多くないですか?」
「SAOでもそんな数を一気に倒したことありませんよ!」
「そこは安心して欲しい。運が良ければ10体倒すだけで済む」
「いや…そういうことじゃないんだが…まぁいいか。エイ。次からは先に確率を言ったうえで、必要最低数を言うように」
「…?分かった。ともあれ、素材は確定でドロップするから、皆よろしく頼む」
「了解。確定ドロップが救いだな。交代しつつ戦おう」
持久戦が確定したので、俺とシリカ、エイとリズベットのペアで10体ずつ倒していく。
シリカに背中を任せつつ支援をお願いし、時折ピナのサポートもあったので、苦なく最初の10体を倒すが、銀色のゴーレムは姿を現さず、通常のゴーレムが10体現れた。
「交代だな」
「あぁ。下がってくれ二人共」
エイ達と交代し、今度は彼女達が10体倒すが、やっぱり現れることは無かった。
これはかなりの持久戦になりそうだが、適度に休憩を挟みつつ戦闘を繰り返す事30分。
100体ほど倒した所で、ゴーレムが湧かなくなった。
「あれ?エネミーが出ませんね」
「ということは……」
少し待つと、大きな銀色のゴーレムが現れた。
エイが言っていたゴーレムと全く同じもの。
なら、アレを倒せばエイが欲しい素材が落ちる。
HPゲージが2本あるが、連携すれば問題ないだろう。
「アレを倒せば終わりだ皆。もう少しだけ頼む」
「了解よエイさん」
「はい!任せてください」
「あと一踏ん張りだな」
いざ銀色のゴーレムと戦闘開始。
エイが支持を的確に出しつつシリカと共に支援し、俺とリズベットが前衛でゴーレムの攻撃を防ぎつつ反撃。
結構タフなゴーレムで、中々体力が減らず、こちらがジリジリと体力が減らされていく。
特に、俺とシリカは体力が低いので、気を付けないといけない。
「シリカ!そろそろポーション飲んだ方がいいわよ!」
「それを言うならマスターもだが!」
「俺は大丈夫だから、先にシリカが回復した方がいい。それに…そろそろ行けそうだ」
「そろそろって…きゃ!」
ゴーレムが右腕を薙ぎ払い、シリカに直撃。
体力がレッドゾーンまで落ちるが、すぐにピナとエイが回復する。
「キュイ!」
「ありがとうピナ。エイさんも」
「気にしないで欲しい。さぁマスターも回復を」
「……いや。大丈夫。ゲージが一本消えたら仕掛ける!」
愛剣を強く握ると、エイは直ぐに気付き、リズベットとシリカに視線を送る。
俺も心配要らないと、ハンドサインを送り戦闘を再開。
体力管理を徹底しつつ連携していくと、ゴーレムの体力ゲージが残り一本になった。
「よぉし!スイッチだリズベット」
「了解…ですっ!」
槌でゴーレムの腕を打ち上げて隙を作る。
それと同時に前衛を交代し、光焔の剣を振り上げた。
「インフィニティ・ブレイドッ!」
粒子を纏った一撃を振り下ろし、ゴーレムを一刀両断する。
防御無視の理不尽な一撃は、ゴーレムの残り体力を消し飛ばしてしまった。
体力が無くなった銀色のゴーレムは、結晶となって消え去り、討伐報酬が表示される。
「えっと…白銀石…でいいのか?」
「あぁ。それが私の欲しかったアイテムだ。ありがとうマスター。人数分集まった」
「そっか。全員に落ちるのか」
「「……」」
ということは、エイは4つ欲しかったのか?
そんなに集めて何を作るのか。
とても楽しみになってきたぞ。
「リズベットとシリカもありがとう。この石は武具にも使えるから、気が向いたら作らせてほしい」
「……はっ!そうなのね。腕が鳴るわ」
「な、成程。では帰ったら早速お願いします」
「「……?」」
あれ?ちょっと固まっていたのか?
別におかしいところはなかったような気がするけど……。
まぁいいか。
ともあれ、目的な物は手に入れたので、迷宮区から出て、リズベット達の拠点に移動すると、キリトとユイの二人が、エギルと談笑していた。
「あれ?キリトにエギルじゃない。今日ログインしないって言ってなかった?」
「そのつもりだったけど、予定が無くなったから来たんだ」
「俺も嫁さんと店番変わってな。客もいなかったから来たんだよ。で。お前らは?」
「えっと、私たちは……」
三人に迷宮区で素材集めをしていたことを伝える。
キリトやエギルも、白銀石の事は聞いたことがあるらしいが、色々と大変なことを知っていたので挑まなかったらしい。
「それで、何体倒したんだ?」
「100体だな。そこで湧かなくなって出てきた」
「100体か…結構な数だな。そこからNMが相手となると、結構しんどいだろ」
「それが…序盤はきつかったけど、終盤は…その」
リズベットとシリカが俺を見てくる。
えっと…見られても困るのだが、戦闘中何かあったか?
別にいつも通り……あ、もしかしてエクストラスキルか。
そういえば、身内以外に見せてなかったか。
「あー…その。あのスキルは秘密に頼む」
「いや、秘密って……」
「流石に体力ゲージを一本削るのは秘密に出来ませんよ」
「やっぱり?」
流石に隠し通せないか…。
確かキリトの二刀流も一度披露して、その後大変だったっけ。
寝床にもいられない状況だったとか。
「スキルってもしかして、以前ユキハさんが言ってた、先輩の剣のエクストラスキル発動後の特殊スキルか?」
「誰が先輩…ってもういいや。そうだ。滅多に発動できないスキルだな。効果は二つあるんだが」
「へぇ…二つもあるのか。どんな効果だよ」
「秘密。いつか披露する時が来れば教えるよエギルさん。一応切り札だからね」
インフィニティ・ブレイドは兎も角、もう一つは教えるわけにはいかない。
俺にとっての切り札だし、出来ればゲームを楽しむために使いたくない。
余程の事がない限りは。
「そんなことよりエイ。早く作ってきなよ」
「ん。そうだな。付き合ってほしいリズベット」
「了解よ」
拠点の奥に向かう二人。
何が出来るか楽しみに待っていると、10分ほどでエイ達は帰ってくる。
リズベットは小さな盾と、エイは腕全体を覆えるガードを持ってきた。
「いい盾だなリズ」
「えぇ。最高の出来よ。ほらエイさんも」
「あぁ。マスター…これを」
持っていたアームガードを渡してくる。
てっきりエイが装備するものだと思っていたが、俺のために作ったらしい。
その訳を聞きたいが、彼女が自分の意志で決めたのなら聞かないでおこう。
「マスターの紙のような防御を補う為に作成した。服装も一新したことだし、似合うと思う」
「誰が紙だ…って。まぁいい。ありがとうエイ」」
アームガードを受け取って右腕に装備。
腕から肘の辺りまで覆われて、邪魔にならず軽い。
ドロップした石が大きかったから、結構重いと思ったのだが、軽くて助かった。
「良い感じ。新調した服とも合う」
「それは良かった。なら早速フィールドに出て試そう」
「了解。んじゃまたな皆」
キリト達と別れ、再びフィールドに向かうのであった。