ソードアートオンライン 白い流星   作:八葉と黒神の剣聖

18 / 21
氷の狙撃手

「今日は平和だなぁ……」

 

 

 満点の青空を見ながら言った。

 今日は、朝からGGOで遊んでいたが、適度にエネミーに襲われるだけで、プレイヤーと全く遭遇しない平和な日である。

 なので、ヘッドフォンを付けて、姉貴の知り合いである神崎エルザの曲を聞いていた。

 ちなみに香蓮と木綿季は今日帰ってくる。

 北海道は中々良かったようで、先日大量の写真が送られてきた。 

 特に目立ったのは、木綿季がじっちゃんに連れられて、港のお高い海鮮丼を食べている写真だろうか。

 俺や姉貴には決して与えないようなお高いもの。

 世の中、木綿季のような素直でいい子が一番甘やかしたくなるのだろう。

 そう考えると…俺や姉貴は素直じゃないって事か。

 だけど、それに関してはじっちゃんが悪いと思う。

 ガキの頃から剣道やらをやらされ、長期休みの度に裏山に投げ入れられてサバイバルやらされたら、素直な子に育つわけがない。

 

 

「はぁ…でも、そのお陰で、ALOやGGOではほとんど負けないんだよね……」

 

 

 リアルスキルが絡むゲームでは、現実世界で得た技量が反映されるため、とても強い。

 リーファが剣道をして、その技をALOで使っているように。

 俺も、ALOでは会得した体術を存分に使ってるし、GGOではエアガンを使ったサバイバル訓練での経験を活かしている。

 

 

 

「そう考えると、じっちゃんは退役後に構って欲しかったのか。あるいは現役時の感を失いたくなかったのかどっちなんだろ?」

 

 

 聞いたところで答えないだろうけど、冬に帰省した時は聞いてみるか。

 裏山でキャンプしながらとかいいだろう。 

 まぁ…トラップだらけの道を通り抜けれたらの話だが。

 

 

「密林に場所を変えるか。そしたらプレイヤーと……あら?」

 

 

 背後から気配を感じ、上空から視線を感じたので上を向くと、そこには青髪の美人女性スナイパーの顔があった。

 GGOでも数少ない女性プレイヤー。

 そのうちの一人である彼女の名前はシノンといい、稼働初期からプレイをしていて、一時期狙撃を教えていたこともある。

 

 

「隙だらけよ先生」

「平和だからね。で…何で先生?」

「狙撃の先生だから。隣いい?」

「どうぞ。紅茶飲む?」

「いただくわ」

 

 

 隣に座ったシノンに、持参している水筒に入っていた紅茶を、小さなコップに入れて渡す。

 それから周りを見渡して、いつもシノンと居るプレイヤーがいないか確認するが見当たらない。 

 ということは、珍しく一人か。

 

 

「リヒターやダインはいないんだ?」

「私だって一人で狩りに出るときぐらいあるわ。というか、一人の方がいいし」

「その気持ちは分かるような……」

 

 

 俺も定期的に一人で暴れたいときはある。

 現実世界で嫌なことがあれば尚の事だ。

 ALOで派手に暴れても、無駄に目立って見返りは素材のみ。

 逆にGGOだと、賞金首ランキングが上がっていき、強いプレイヤーに狙われるが、返り討ちにするとお金が手に入り、小遣い稼ぎになる。

 

 

「で。何を狩りに来たんだ?」

「最近になって目撃された新種のエネミーよ。あと15分程で出てくるから、トラップを仕掛けたわ」

「へぇ。HNMかNMか。手貸そうか?」

「お願い。誰かに声を掛けようとしていたし。先生と組めば余裕よ」

 

 

 だといいのだが、正直な所、GGOのエネミーはALOとは違う箇所が多いので、アドリブで何とかしないといけないし、プレイヤーの横入りもある。

 その時々の判断力と、視野の広さがかなり要求される。

 

 

「先生は何を?」

「あぁ。同棲している彼女が北海道に帰省していてね。帰ってくのは今日だけど、それまで暇なんだ」

「成程。迎えに行かなくていいの?」

「帰りに寄る所があるとかで、迎えに行かなくていってさ。まぁ…ナンパとか絶対にないから大丈夫。むしろ避けられるし」

「避けられるって……(何かあるのかしら?でも、いつも話を聞いている感じでは、そんな人ではなさそうだけど)」

 

 

 道を一緒に歩いていると、周りからの視線がかなり感じる。

 その視線の先はどれも香蓮で、身長の高い女性というのは目立つのだろう。

 しかも、香蓮を避けるものだから、色々と言いたくなってくるものだ。

 

 

「長身ってのも問題が―――むっ!」

「この音は―――!」

 

 

 後方から爆発音と共に砂ぼこりが上がる。

 シノンと目を合わせえてから武器を装備、シノンはヘカートⅡを。

 俺は愛銃をストレージに戻してから中近距離用装備に切り換える。

 

 

「後ろは任せた。何がいるかは後で連絡する」

「了解よ」

 

 

 岩山から飛び降りて、爆発音がした地点に向かうと、そこには10メートルほどの異形な形をしたサソリがいた。

 一番目立つのは、両手の大きなハサミと、鋭利な槍の尻尾だろうか。

 体力ゲージも3本あるし、結構大変そうだぞ。

 

 

「でも、その方が燃えるってね」

 

 

 GNソードをソードモードに変形させてまずは間合いを詰めようとすると、異形のサソリは両手を開き、そこから大きい光弾が放たれる。

 

 

「とっとと!」

 

 

 その光弾をかわし続けると、シノンの狙撃が背後から飛んできて、異形のサソリの右腕に命中。

 それにより、異形のサソリの攻撃が止まったので、右腕を踏み台にしながら左腕を斬り落としつつ、胴体に銃弾を撃ち込むと、残った右腕でガードを固める。

 

 

「む…ガードか。実弾は通りにくいし…。シノン。炸裂弾で崩してほしい」

『了解よ』

 

 

 シノンに指示を出しつつ、何をしてくるか観察していると、異形のサソリの尻尾がゆらゆらと動き始める。

 GNソードをモード変更させて防御の構えを取っていると、尻尾の先端が俺の額に狙いを定める。

 

 

(槍のような尻尾…そこから遠距離攻撃も可能だが、この狙い方は…突きか!)

 

 

 瞬時に右に飛ぶと、異形のサソリの尻尾が凄まじい速さで迫ってきた。

 先手を取って避けたので当たらなかったが、アレを喰らうと一撃でお陀仏だ。

 

 

「易々と当たるわけには―――ちょい!?」

 

 

 再び尻尾が超スピードで迫ってきたので慌てて左に避ける。

 あれだけの速度だから連続で攻撃してこないと思ったが、どうやら連撃可能の様だ。

 となると、しばらく避け続けないといけないのか。

 

 

「ちっ。面倒だが…今は待つか」

 

 

 その内シノンの炸裂弾が飛んでくるだろうと考え、しばらく回避に専念していると、一発の炸裂弾が足に命中し、異形のサソリの体勢が崩れる。

 そこを逃さず、尻尾を斬り落としてから、サソリの急所目がけて残弾全て打ち尽くし、それから一刀両断して討伐する。

 

 

「うっし。こんなものか。さてさて何がドロップしたかね……」

 

 

 報酬を確認するが、目立っていいものはなく、売却行きが決まった。

 なのでシノンと合流してからSBCグロッケンに戻って別れる。

 それからアジトに戻り、ラフな服装に着替えてからログアウトする。 

 現実世界に戻ってくると、物音が聞こえたのでアミュスフィアを外して周りを見ると、台所で荷物を片付けている香蓮の姿があった。

 

 

「お帰り。早かったね」

「ただいま。おじさんが迎えに来てくれたから」

「そっか。手伝うよ」

「大丈夫。それよりお願いがあるから待ってて」

「おぅ……(お願いって……)」

 

 

 少し嫌な予感がしたが、片付けが終わるのを待っていると、香蓮は隣に座って俺の頭に手を置く。

 何をするのかと思っていると、彼女は自身の膝に手を置いたので、何をしたいのかすぐに分かった。

 個人的には、そういう年でもないので避けたいが、たまにはいいか。

 

 

「えっと。では失礼してーーー」

「えい!」

「わふっ!?」

 

 

 いきなり抱き締められる。

 何事かと思っていると、香蓮はニコニコと微笑みながら俺の膝に座り、胸に顔を埋めてくる。

 俺は『何で?』と思いながらも、彼女の頭を優しく撫でる。

 

 

「膝枕って思ったでしょ?」

「そうだよ。珍しいと思ったさ」

「ふふ、膝枕はいつでも出きるけど、抱き枕は中々出来ないよ?」

「そうだな…」

 

 

 左腕を彼女の背中に回して抱き締めつつ、頭を撫でていると、香蓮はテーブルの上に置いてある鞄の中から、見覚えあるゲームを取り出す。

 アミュスフィアとALOにGGOだ。

 これこそ珍しいと思って聞くと、木綿季達から楽しい話を聞き、興味を持ったからやってみようと思ったらしい。

 

 

「そいうことだから、明日付き合って」

「了解。楽しみだね」

「うん。新しい自分が見つかるといいな」

「見つかるよきっと」

 

 

 腕の力を強めると、香蓮も体を預けて来たので、暫く抱き枕と化すことにした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。