香蓮のGGOデビューから数日たった。
それなりにGGOを楽しんでいるようで、最近は服装をピンクにして砂漠エリアで暴れているらしい。
何も知らずに行ったシノンと姉貴が、危うくやられそうになったと聞いたが、幸いにもあまり噂になっていない。
噂になると余計な虫が付かないか心配だが、もし付くようなことがあれば、軽くトラウマを植え付けて倒せばいいだろう。
それはさておき、今日はレンと一緒の森林エリアに来ている。
砂漠エリアばかりだと飽きると思ったからだ。
「凄い森だね。視界が悪いし、敵がいたら気づかないよ」
「それに、レンはピンクだから目立つね」
「ナオだって……あれ?いつの間に緑に色変えたの?」
「変えてないよ。そういうマントを羽織っているから」
服の上から纏っているフード付きのマントは、周りの色に同化し、相手に見つかりにくくなる特殊仕様。
いわゆるカメレオンの様なマントである。
なので、わざわざ服の色を変える必要がないのだ。
「便利な装備だね。オーダーメイド?」
「違う。これはドロップ品。しかもレア」
「ドロップ品!?そんなに運高かったっけ?」
「日頃の行いかな」
「そんなに日頃の行い良かったっけ?」
「……ひどい」
グサッと心に大きな剣が突き刺さる。
そんなに日頃の行いが悪いのか。
家事の当番をサボったりとか、悪いことはしていないと思うけど、レンから見たら行いが悪いように見えるのか。
「レン。俺…何かした?」
「うーん…最近デートしてないなぁ…。後、夜遅くまで作業しすぎ。結構心配なんだから」
「ごめんなさい」
うん、これは俺が悪い事だ。
確かに、最近はデートもしてないし、夜遅くまでエイのボディ作成やレポートとかで寝るのが遅かったが、レンが何も言わないので気にしていなかった。
だけど、実際はかなり心配させていたようだ。
気を付けないと。
「危ない事以外は何も言わないけど、もっと構って欲しいかな。せっかく夏休みなのに」
「そういえばどこにも行ってなかったな。じゃあ温泉でも行く?泊りで」
「温泉かぁ…でも私達だけで行くのも気が引けるし、おじさん達も声かけようよ」
「そうだな。予定合わせて予約取ろう。場所は…親父に任せるか。知り合い多いしね」
顔が広い親父なら、いい旅館を選んでくれるだろう。
祖母ちゃんの知り合いも関東圏にいるし、俺の従姉妹一家もこっちで旅館の経営しているし、顔を見せに行くのもいいだろう。
「そのためにも、今日も小遣い稼ぎをしますか。周り警戒してねレン」
「うん。何か気づいたら伝えるね」
周りを警戒しながら進んでいくと、近くから銃声が聞こえてくる。
直ぐに近くの木の裏に隠れて、銃声が聞こえた方向を望遠鏡で確認すると、10人編成の2つのチームが戦闘していた。
距離は400メートルほどで、俺の射程範囲だが、一旦様子見をすることに。
「うわぁ…凄い戦闘だね。武器は…」
「銃声からしてM5.6のアサルトライフルってところか。あとショットガンもいるな。ひとまず戦闘が終わるまで待機だ」
「了解」
戦闘の様子を見守りつつ作戦を考える。
両チーム共にバランスがいい編成で練度もいい。
となると、奇襲するのが一番いいか。
俺が囮になってレンが死角から奇襲。
これなら確実だろう。
「レン。前の戦闘が終わったら飛び出すから、合図送ったら奇襲お願い」
「了解。一人で大丈夫?」
「問題ない。これ付けといて」
胸ポケットからインカムを取り出してレンに渡し、俺も同様の物を装着してから首にぶら下げてあるゴーグルを装着する。
それと同時に、前方で発生していた戦闘が終わったので、物音を立てないように接近する。
距離が30メートル程まで近づいたところで、8人ほど生き残っているのを確認してから、一番近くにいたプレイヤーの頭を撃ち抜く。
「ギャッ!」
「何っ!?」
「どこから!?」
狙撃に驚きつつもすぐに戦闘態勢に映る集団。
それぞれ銃を構えたのを見てから、わざと音を立てつつ走り始める。
「いたぞ!」
「撃てっ!」
彼らの銃口からバレットラインが現れ体に当たるが、ほぼ同時に回避行動をとることにより、銃弾を回避する。
「くそっ!」
「小さくて当たらねぇ!」
「しかもすばしっこい!」
なかなか捕らえられないので苛立つプレイヤー達。
撃つ間隔を変えたり、狙いを変えたりしているが、俺の体には掠ることは無い。
「…よし。皆の注意が俺に向いてるな」
彼らの注意が全て向いているのを確認してからレンに伝えてから、ウルティマラティオを背中に担いで方向転換し、集団に向けて走る。
「正面から来るぞ!」
「隊列を乱すな!」
綺麗な隊列で、銃撃をしてくるが、その間を潜り抜けつつGNソードをライフルモードで構えると、再びバレットラインが見えたので、一旦銃弾を避けるために木の裏に隠れる
すると、彼らの後ろから銃声と悲鳴が聞こえて来た。
「ぐはっ!」
「ぎゃぁっ!」
(うし。いいタイミング)
流石相棒と思いつつ、木の後ろに隠れたプレイヤーを、木と一緒に一刀両断して倒す。
それを目の当たりにした近くのプレイヤーはドン引きしていた。
「嘘だろ……」
「残念だが嘘じゃないぜ」
容赦なく袈裟斬りで仕留め、残りを確認しようとする前に殺気を感じたので、その方向に向きつつ確認すると、ショットガンを構えたプレイヤーがいたので、すぐに腰に携えているGNソードを投擲して腹部に突き刺し、それから一気に間合いを詰め、突き刺したGNソードを斬り上げて真っ二つにする。
「よし。後は…」
『こっち終わったよ。すぐに向かうね』
「了解。待ってるよ」
インカムの接続を切り、周りを警戒しながら待っていると、草むらの中からレンがひょこっと出てくる。
きょろきょろと周りを見て、誰もいないのを確認してから近づいてきた。
「ふぅ…お疲れ様ユキ」
「レンもお疲れ。んじゃ撤退―――っ!」
強烈な殺気を感じ取り、俺は直ぐにレンに覆いかぶさりながら茂みに隠れる。
それとほぼ同時に、一発の銃弾が頭の上を通過した。
「きゃあっ!何っ!?」
「狙撃だな。場所は…森を抜けた先の廃墟エリアか。距離は一キロってところか」
「一キロ!?そんな距離から!?」
狙撃された経験がないレンは驚いているが、俺は日常茶飯事なので大して驚いていない。
しかし、距離を考えると後を付けられていたか。
狙うタイミングもいいし、かなりいい腕前と良い銃を持っているようだ。
「良い腕じゃないか。だが相手が悪いぞ」
「どうする?倒しに行く?」
「行かない。腕のいい狙撃手は一度外すと決まって退散する。二発目ないだろ?」
「確かに……」
一発目の狙撃は兎も角、二発目以降はバレットラインが見える。
しかしそれが見えないということは、狙撃手は退散したということだ。
「というわけだから、俺たちも退散しよう」
「了解……って。こんなに密着するのも久しぶりだね」
「……言われてみれば確かに」
目と鼻の先にはレンの可愛い顔がある。
少し顔を出せばキスが出来そうな距離。
うん、レンを見ていると、子供の頃を思い出す。
あの頃は毎日のように一緒に遊んで、そのまま昼寝をしたっけ。
懐かしいなぁ…。
「襲ったらダメだよ」
「襲わないよ。まぁ…さっき見たいな事を言われたら甘えたくなるけど」
「甘えてくる分には良いけど、現実世界に戻ってから」
「…だな。戻るか」
レンから離れ、周囲を警戒しながらグロッケンのアジトに戻ってログアウト。
時計を見ると6時を回っていたので、晩御飯を食べてお風呂に入り、就寝時間までのんびりしていると、お風呂から上がった香蓮が膝に座って、もたれてくる。
「おっとと。どうした?」
「構って欲しい」
「……はいはい」
両手を香蓮のお腹に回して抱き寄せると、ほのかに薔薇の匂いがした。
そういえば石鹸か何かを変えたとか言っていたかな。
全然気付かなくてめっちゃ怒られたっけ。
『ナオのそういうところがダメ』ってちょっと強めに言われた覚えがある。
「ん…こういうの久しぶりだね」
「そうだな。ちょっと太った?」
「むぅ。そんなこと言う人はこうしてやる」
「え?冗談―――わぷっ!」
冗談のつもりで言ったのだが、香蓮は全体重を乗せてきて、バランスを崩して倒れてしまう。
それから香蓮は俺の方を向いて、両腕を頭に回して思いっきり抱きしめて、顔に柔らかい二つの物を押し付けて来た。
「ちょ、ちょっと!?」
「女の子に重いなんて言ったらダメなんだから」
「冗談だってば」
「たとえ冗談でもダメ」
腕の力を強めて逃がさないように拘束してくる。
こうなってしまったら何も出来ないので、香蓮が解放してくれるのを待つしかないだろう。
「私が良いっていうまで離さないから」
「分かったよ。どんとこい」
香蓮の腰に手を置いて、彼女の頬にキスをした。